『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『温泉トラブルと、心のおしっこ我慢合宿!?』

第177話『おしっこで繋がる友情って、なんだ』

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 朝。
 旅館の障子越しに、やわらかな朝日が差し込んでいた。

 鳥のさえずり、布団の上に伸びた日差し。
 空気は少しだけ冷たくて、でも心地よい。

「……おはよう……」

 ハルカは、もぞもぞと布団から顔を出す。
 頭がぼんやりしていたけれど、身体のどこかはスッキリしていた。

 というのも──

 昨夜は、恋と膀胱が交錯した未曾有の深夜劇場だったのだ。

「は~~~……なんか、濃かったよね……」

 横で伸びをしながら起きたミキがつぶやく。

「何がって、全部が。あんなに泣いて笑って漏れかけて……すごい夜だった」

「ほんと、“人生詰め合わせセット”だったね……」
 ナナも布団の中で腕を組みながら、どこか遠い目をしていた。

「おしっこ、恋、告白、湿った布団、トイレの音……もう、情報量が暴力」

「青春ってそういうもんじゃない?」

 レイナがバサッと布団を蹴飛ばして起き上がる。

「思い出ってさ、ちょっと恥ずかしくて、どうしようもなくて、でも絶対忘れられないやつのこと言うんだと思うんだよね~!」

「……それ、今の状況全部フォローしてるようで全然救ってないから!」

「え~? じゃあ逆に聞くけどさぁ」

 レイナはキメ顔で言った。

「またこういう夜、やりたいよね♡」

 ──一同、静止。

 そして、全員が同時に振り向いた。

「やだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「次は絶対! 絶対! 普通の旅にするからな!」

「朝まで安眠! おねしょ無し! トイレの行列無し!」

「告白と放尿音を同時に聞くとか、人生で一回で十分だからな!」

「普通に花見とか行こう! 川とか絶対ダメだからな!? 水音はNG!!」

 布団の中で誰かが爆笑して、別の誰かが枕を投げた。
 ついでに、布団の湿り気を気にして誰もそのゾーンには近づかない。

 そんな小さな気遣いも、笑いのうち。

 ◆ ◆ ◆

「でもさ」

 ふいに、サバナがつぶやいた。

「ほんとに“全部さらけ出した”夜だったよね」

「膀胱も、気持ちも、布団の湿度も……」

「言うなぁぁぁ!!」

「いやでも正直……」

 ミキが布団に顔をうずめながらつぶやく。

「ここまで何もかも出しちゃうと、逆にもう“どんな話しても怖くない”感じあるよね……」

「確かに、今さら取り繕っても“おしっこバレてる女”だからね……」

「誰が!? 誰なの!? 結局あの布団誰なの!?」

「言わなくていいの! 人生には“真実を明かさない美学”ってのがあるの!」

「美学っていうか、濡学……?」

「誰がうまいこと言えと……」

 ◆ ◆ ◆

 その後、全員で朝食に向かい、温泉卵と湯豆腐を囲んで、
「食後にまた温泉入ろうね~」「今度こそ落ち着いて入ろうな~」とわいわい盛り上がる。

 だが──

 帰りの支度を始めたタイミングで、またレイナが爆弾を落とす。

「でもさ、次回の旅行はさ──海外とかどう?」

「え、いいじゃん! どこ行きたいの?」

「フィンランドのサウナとかさ、あるじゃん! 全裸文化!」

「待ってそれまた“漏れ”関係の地雷踏みそうな雰囲気……!」

「海外のトイレ文化って、危険がいっぱい……!」

「やっぱり次は“トイレ付き個室グレードアップ旅”だよ、安心第一!」

 ◆ ◆ ◆

 旅館を出るころ、全員が記念写真を撮る。

 それは、誰かが夜中に布団を濡らしたことも、
 誰かがトイレで“告白のシャー音”を響かせたことも、
 すべて含めた──笑顔の写真だった。

 ハルカは、その写真を見て思った。

(たぶんこれが、大人になっても手に入る“青春”なんだ)

 全部さらけ出して、全部笑い飛ばして、
 それでも変わらず、一緒にいられる仲間たち。

「……おしっこで繋がる友情って、なんだろうね」

 ぼそっとハルカが呟くと、

「知らんけど、案外強いのかもなー」

 ミキが、にかっと笑った。

(つづく)

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