179 / 203
『温泉トラブルと、心のおしっこ我慢合宿!?』
第177話『おしっこで繋がる友情って、なんだ』
しおりを挟む
朝。
旅館の障子越しに、やわらかな朝日が差し込んでいた。
鳥のさえずり、布団の上に伸びた日差し。
空気は少しだけ冷たくて、でも心地よい。
「……おはよう……」
ハルカは、もぞもぞと布団から顔を出す。
頭がぼんやりしていたけれど、身体のどこかはスッキリしていた。
というのも──
昨夜は、恋と膀胱が交錯した未曾有の深夜劇場だったのだ。
「は~~~……なんか、濃かったよね……」
横で伸びをしながら起きたミキがつぶやく。
「何がって、全部が。あんなに泣いて笑って漏れかけて……すごい夜だった」
「ほんと、“人生詰め合わせセット”だったね……」
ナナも布団の中で腕を組みながら、どこか遠い目をしていた。
「おしっこ、恋、告白、湿った布団、トイレの音……もう、情報量が暴力」
「青春ってそういうもんじゃない?」
レイナがバサッと布団を蹴飛ばして起き上がる。
「思い出ってさ、ちょっと恥ずかしくて、どうしようもなくて、でも絶対忘れられないやつのこと言うんだと思うんだよね~!」
「……それ、今の状況全部フォローしてるようで全然救ってないから!」
「え~? じゃあ逆に聞くけどさぁ」
レイナはキメ顔で言った。
「またこういう夜、やりたいよね♡」
──一同、静止。
そして、全員が同時に振り向いた。
「やだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「次は絶対! 絶対! 普通の旅にするからな!」
「朝まで安眠! おねしょ無し! トイレの行列無し!」
「告白と放尿音を同時に聞くとか、人生で一回で十分だからな!」
「普通に花見とか行こう! 川とか絶対ダメだからな!? 水音はNG!!」
布団の中で誰かが爆笑して、別の誰かが枕を投げた。
ついでに、布団の湿り気を気にして誰もそのゾーンには近づかない。
そんな小さな気遣いも、笑いのうち。
◆ ◆ ◆
「でもさ」
ふいに、サバナがつぶやいた。
「ほんとに“全部さらけ出した”夜だったよね」
「膀胱も、気持ちも、布団の湿度も……」
「言うなぁぁぁ!!」
「いやでも正直……」
ミキが布団に顔をうずめながらつぶやく。
「ここまで何もかも出しちゃうと、逆にもう“どんな話しても怖くない”感じあるよね……」
「確かに、今さら取り繕っても“おしっこバレてる女”だからね……」
「誰が!? 誰なの!? 結局あの布団誰なの!?」
「言わなくていいの! 人生には“真実を明かさない美学”ってのがあるの!」
「美学っていうか、濡学……?」
「誰がうまいこと言えと……」
◆ ◆ ◆
その後、全員で朝食に向かい、温泉卵と湯豆腐を囲んで、
「食後にまた温泉入ろうね~」「今度こそ落ち着いて入ろうな~」とわいわい盛り上がる。
だが──
帰りの支度を始めたタイミングで、またレイナが爆弾を落とす。
「でもさ、次回の旅行はさ──海外とかどう?」
「え、いいじゃん! どこ行きたいの?」
「フィンランドのサウナとかさ、あるじゃん! 全裸文化!」
「待ってそれまた“漏れ”関係の地雷踏みそうな雰囲気……!」
「海外のトイレ文化って、危険がいっぱい……!」
「やっぱり次は“トイレ付き個室グレードアップ旅”だよ、安心第一!」
◆ ◆ ◆
旅館を出るころ、全員が記念写真を撮る。
それは、誰かが夜中に布団を濡らしたことも、
誰かがトイレで“告白のシャー音”を響かせたことも、
すべて含めた──笑顔の写真だった。
ハルカは、その写真を見て思った。
(たぶんこれが、大人になっても手に入る“青春”なんだ)
全部さらけ出して、全部笑い飛ばして、
それでも変わらず、一緒にいられる仲間たち。
「……おしっこで繋がる友情って、なんだろうね」
ぼそっとハルカが呟くと、
「知らんけど、案外強いのかもなー」
ミキが、にかっと笑った。
(つづく)
旅館の障子越しに、やわらかな朝日が差し込んでいた。
鳥のさえずり、布団の上に伸びた日差し。
空気は少しだけ冷たくて、でも心地よい。
「……おはよう……」
ハルカは、もぞもぞと布団から顔を出す。
頭がぼんやりしていたけれど、身体のどこかはスッキリしていた。
というのも──
昨夜は、恋と膀胱が交錯した未曾有の深夜劇場だったのだ。
「は~~~……なんか、濃かったよね……」
横で伸びをしながら起きたミキがつぶやく。
「何がって、全部が。あんなに泣いて笑って漏れかけて……すごい夜だった」
「ほんと、“人生詰め合わせセット”だったね……」
ナナも布団の中で腕を組みながら、どこか遠い目をしていた。
「おしっこ、恋、告白、湿った布団、トイレの音……もう、情報量が暴力」
「青春ってそういうもんじゃない?」
レイナがバサッと布団を蹴飛ばして起き上がる。
「思い出ってさ、ちょっと恥ずかしくて、どうしようもなくて、でも絶対忘れられないやつのこと言うんだと思うんだよね~!」
「……それ、今の状況全部フォローしてるようで全然救ってないから!」
「え~? じゃあ逆に聞くけどさぁ」
レイナはキメ顔で言った。
「またこういう夜、やりたいよね♡」
──一同、静止。
そして、全員が同時に振り向いた。
「やだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「次は絶対! 絶対! 普通の旅にするからな!」
「朝まで安眠! おねしょ無し! トイレの行列無し!」
「告白と放尿音を同時に聞くとか、人生で一回で十分だからな!」
「普通に花見とか行こう! 川とか絶対ダメだからな!? 水音はNG!!」
布団の中で誰かが爆笑して、別の誰かが枕を投げた。
ついでに、布団の湿り気を気にして誰もそのゾーンには近づかない。
そんな小さな気遣いも、笑いのうち。
◆ ◆ ◆
「でもさ」
ふいに、サバナがつぶやいた。
「ほんとに“全部さらけ出した”夜だったよね」
「膀胱も、気持ちも、布団の湿度も……」
「言うなぁぁぁ!!」
「いやでも正直……」
ミキが布団に顔をうずめながらつぶやく。
「ここまで何もかも出しちゃうと、逆にもう“どんな話しても怖くない”感じあるよね……」
「確かに、今さら取り繕っても“おしっこバレてる女”だからね……」
「誰が!? 誰なの!? 結局あの布団誰なの!?」
「言わなくていいの! 人生には“真実を明かさない美学”ってのがあるの!」
「美学っていうか、濡学……?」
「誰がうまいこと言えと……」
◆ ◆ ◆
その後、全員で朝食に向かい、温泉卵と湯豆腐を囲んで、
「食後にまた温泉入ろうね~」「今度こそ落ち着いて入ろうな~」とわいわい盛り上がる。
だが──
帰りの支度を始めたタイミングで、またレイナが爆弾を落とす。
「でもさ、次回の旅行はさ──海外とかどう?」
「え、いいじゃん! どこ行きたいの?」
「フィンランドのサウナとかさ、あるじゃん! 全裸文化!」
「待ってそれまた“漏れ”関係の地雷踏みそうな雰囲気……!」
「海外のトイレ文化って、危険がいっぱい……!」
「やっぱり次は“トイレ付き個室グレードアップ旅”だよ、安心第一!」
◆ ◆ ◆
旅館を出るころ、全員が記念写真を撮る。
それは、誰かが夜中に布団を濡らしたことも、
誰かがトイレで“告白のシャー音”を響かせたことも、
すべて含めた──笑顔の写真だった。
ハルカは、その写真を見て思った。
(たぶんこれが、大人になっても手に入る“青春”なんだ)
全部さらけ出して、全部笑い飛ばして、
それでも変わらず、一緒にいられる仲間たち。
「……おしっこで繋がる友情って、なんだろうね」
ぼそっとハルカが呟くと、
「知らんけど、案外強いのかもなー」
ミキが、にかっと笑った。
(つづく)
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる