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『オフィスは戦場!? 仕事と膀胱と恋心と』
【第184話『告白のタイミングはトイレ待ちで!?』】
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金曜の夕方。
社内イベント「部門交流フェア」が無事終了し、社内は一気にまったりモードへと突入していた。
とはいえ、その裏では、片付け作業に追われる影の立役者たちが汗を流していた。
「ナナ、そっちのパネルお願い!」
「はいはい! ケーブルは一度まとめてから運ぶね!」
第一営業部のナナは、率先して備品を片付けながらも、どこかそわそわしていた。
(ケントさん……このタイミングなら、少しだけ話せるかも)
数日前の会議での姿勢、的確なサポート、そして……昔から変わらぬあの落ち着いた声。
ナナの胸の奥に、かすかに灯り始めた“あの頃とは違う想い”がくすぶっていた。
そんな時──
「あ、片付け手伝ってくれてありがとう。ケントくんも」
その声に振り返ると、そこに立っていたのはケント本人。
ナナの呼吸が一瞬止まる。
「うん、イベントお疲れ。ナナさん、今日すごく頼りになってたよ」
「えっ……ほ、ほんとですか……!? いや、たいしたこと……」
目が合った。
ドキン、と心臓が跳ねる。
たった数秒が、異様に長く感じる。
──が、そのタイミング。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
ハルカが、イベント資料を抱えたまま現れた。
そして──まさかの鉢合わせ。
トイレ前で、ナナとケントが二人きりで話している現場。
「……」
「……」
「…………」
ハルカ、硬直。
ケントも「あ」と小さく声を漏らす。
ナナは、ほぼ魂が抜けかけていた。
(ああああああああ!?!?!?)
(なんで!? なんでよりによってトイレ前!?)
(告白するつもりじゃなかったけど、今、完全に“それっぽい空気”になってたし!!)
(そしてよりによって、ハルカ!? いやもう青春ドラマか!? これ!?)
沈黙。
トイレの前という極めてデリケートな空間に、思春期みたいな緊張が流れる。
ハルカは、見てはいけないものを見たような顔で俯き、
ナナは口を開けかけては閉じ、
ケントは「じゃ、俺ちょっと会場戻るね」と察しの塊のようにその場を去った。
──残されたのは、女子トイレ前に立つ、二人の女。
「…………」
「…………」
(また来たよ……この空気)
(また来たよ、この“トイレと恋愛の板挟み”)
(私の恋って、なんで毎回……膀胱とセットなんだ……!!)
「……あの」
「うん」
「先、行って……」
「いや、ナナ先に……」
「ううん、ハルカが……」
「じゃあ、いっしょに並ぼっか」
「……うん」
ぎこちなく並ぶ二人。
トイレの扉が開いても、どちらも一歩踏み出せない。
(こういう時に限って個室から誰も出てこないの、何の呪い!?)
沈黙。
再び沈黙。
そして、不意にナナが口を開いた。
「……ごめんね。さっきの、そんなつもりじゃなかったんだけど……」
「ううん。私こそ、ごめん。……びっくりしただけ」
どちらも、本音の半分も出せなかった。
それでも、その場の空気はどこか、静かに揺れていた。
──友情と恋心と膀胱がせめぎあう、社会人青春トイレ編。
戦いは、まだまだ続く。
社内イベント「部門交流フェア」が無事終了し、社内は一気にまったりモードへと突入していた。
とはいえ、その裏では、片付け作業に追われる影の立役者たちが汗を流していた。
「ナナ、そっちのパネルお願い!」
「はいはい! ケーブルは一度まとめてから運ぶね!」
第一営業部のナナは、率先して備品を片付けながらも、どこかそわそわしていた。
(ケントさん……このタイミングなら、少しだけ話せるかも)
数日前の会議での姿勢、的確なサポート、そして……昔から変わらぬあの落ち着いた声。
ナナの胸の奥に、かすかに灯り始めた“あの頃とは違う想い”がくすぶっていた。
そんな時──
「あ、片付け手伝ってくれてありがとう。ケントくんも」
その声に振り返ると、そこに立っていたのはケント本人。
ナナの呼吸が一瞬止まる。
「うん、イベントお疲れ。ナナさん、今日すごく頼りになってたよ」
「えっ……ほ、ほんとですか……!? いや、たいしたこと……」
目が合った。
ドキン、と心臓が跳ねる。
たった数秒が、異様に長く感じる。
──が、そのタイミング。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
ハルカが、イベント資料を抱えたまま現れた。
そして──まさかの鉢合わせ。
トイレ前で、ナナとケントが二人きりで話している現場。
「……」
「……」
「…………」
ハルカ、硬直。
ケントも「あ」と小さく声を漏らす。
ナナは、ほぼ魂が抜けかけていた。
(ああああああああ!?!?!?)
(なんで!? なんでよりによってトイレ前!?)
(告白するつもりじゃなかったけど、今、完全に“それっぽい空気”になってたし!!)
(そしてよりによって、ハルカ!? いやもう青春ドラマか!? これ!?)
沈黙。
トイレの前という極めてデリケートな空間に、思春期みたいな緊張が流れる。
ハルカは、見てはいけないものを見たような顔で俯き、
ナナは口を開けかけては閉じ、
ケントは「じゃ、俺ちょっと会場戻るね」と察しの塊のようにその場を去った。
──残されたのは、女子トイレ前に立つ、二人の女。
「…………」
「…………」
(また来たよ……この空気)
(また来たよ、この“トイレと恋愛の板挟み”)
(私の恋って、なんで毎回……膀胱とセットなんだ……!!)
「……あの」
「うん」
「先、行って……」
「いや、ナナ先に……」
「ううん、ハルカが……」
「じゃあ、いっしょに並ぼっか」
「……うん」
ぎこちなく並ぶ二人。
トイレの扉が開いても、どちらも一歩踏み出せない。
(こういう時に限って個室から誰も出てこないの、何の呪い!?)
沈黙。
再び沈黙。
そして、不意にナナが口を開いた。
「……ごめんね。さっきの、そんなつもりじゃなかったんだけど……」
「ううん。私こそ、ごめん。……びっくりしただけ」
どちらも、本音の半分も出せなかった。
それでも、その場の空気はどこか、静かに揺れていた。
──友情と恋心と膀胱がせめぎあう、社会人青春トイレ編。
戦いは、まだまだ続く。
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