前代未聞のトイレ異世界転移ファンタジー~うちのトイレは異次元でした。街中は勘弁してください。いや、そこもちょっと!~

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
164 / 234

第160話:製鉄工場で灼熱のミッション!

しおりを挟む
 俺の名前は佐藤太一、18歳。
 コンビニ飯が大好きで、それが原因で腹を壊しがちな、ごく普通の高校生だ……と言えたらどんなに楽か。
 でも俺の日常は、引っ越し先のアパートに備え付けられた曰く付きトイレのせいで、完全にカオスと化してる。  
 トイレのドアを開けた瞬間、どこか知らない場所に便器ごと転移して、用を足さないと戻れない仕様。
 もう何回目か分からないけど、毎回メンタルが削られる。
 このトイレ、俺の状況とか感情とか完全に無視して転移先決めるっぽいし、引っ越した当初は「駅近で家賃安い、ラッキー!」なんて浮かれてた自分が恨めしい。  
 今日も昼過ぎから腹がゴロゴロ鳴ってる。
 原因は朝に食ったコンビニ飯だ。
 半額だった「スパイシー麻婆豆腐おにぎり」を勢いで食っちまって、胃が今になって暴動起こしてる。
 麻婆の辛さと豆腐の油っぽさが胃の中で混ざって、ヤバい感じになってる。
 学校から帰って少し休んでたけど、我慢の限界が来た。  
 仕方なくトイレに駆け込んだら、ドアを開けた瞬間――
 轟音と熱風が俺を襲ってきた。
 目の前には巨大な炉から溶けた鉄が流れ出てて、作業員が汗だくで鉄骨を運んでる製鉄工場。
 俺の便器は、炉のすぐ横、赤く光る溶鉄の流れの真ん中にポツンと出現。  
「うおっ、製鉄工場!? 熱すぎだろ、これ!」  
 ゴオオオって炉の音が響いてて、火花がバチバチ飛び散ってる。
 作業員が「そっち上げろ!」「熱いぞ、気を付けろ!」って叫びながら鉄パイプを動かしてる。
 熱風が俺の顔にビュービュー吹き付けてくる――って、物理的干渉できないから実際には感じないけど、感覚的には全身汗だくだよ!
 すぐ横で溶鉄がドロドロ流れてて、便器が熱で溶けそうな錯覚に陥る。  
「こんなとこで用を足すとか、マジで無理ゲーだろ……!」  
 腹痛は待ってくれない。
 麻婆豆腐の辛さが下腹部をギュルギュル締め付けてきて、冷や汗が止まらない。
 でもさ、工場内の轟音と灼熱の中、どうやって集中しろって言うんだよ!
 作業員が俺の便器のすぐ横で「早くしろ、遅れるぞ!」ってデカいハンマー振り回してるし、鉄骨がガシャンって落ちてくる音でビビるって!  
「いやいや、落ち着け俺。『俺からは見えてるけど、向こうからは見えない』がルールだろ?」  
 そう自分に言い聞かせて、深呼吸する。
 でもその瞬間、炉からドバーッて溶鉄が溢れてきて、俺の便器のスレスレを通過。
 見えてないはずなのに、熱波で気配バレてるんじゃないかって焦る。
 轟音がドンドン響いて、俺の腹もそれに合わせてゴロゴロ加速してるし!  
「集中しろ、集中しろ、集中しろ! 早く終わらせないと精神持たねえ!」  
 腹に全神経を集中させる。
 おっ、おっ、おっ、なんとか出そう……よし、気合入れろ!
 ブッ。  
「……うっ、音が工場に響いた!」  
 轟音の中でかき消されるかと思いきや、作業員の一人が「何か臭くね?」って顔をしかめてる。
 別の奴が「鉄の匂いじゃねえぞ、これ!」って鼻をつまんでる。
 見えてないはずなのに、匂いで完全に怪しまれてるじゃん!
 俺の羞恥心が限界突破してる中、なんとか次のステップへ。
 ポチャン。  
「よっしゃ、出た! 終わった!」  
 次の瞬間、頭の中にいつもの声が響く。
「ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」  
 光に包まれてアパートの狭いトイレに戻った瞬間、便器の冷たい感触と換気扇の微かな音にホッとする。
 心臓バクバクで息を整えながら、俺は便器に座ったまま放心状態。  
「本当に何でこんなトイレ付きの部屋に住んじまったんだろ……」  
 汗だくで呟く。
 製鉄工場の灼熱と轟音の中で用を足した罪悪感と、作業員にバレそうになった恐怖で死にそう。
 昨日はナイトプールで陽キャに囲まれたし、一昨日は忍者屋敷で命がけだったし、毎回毎回が地獄だ。
 でもさ、このトイレの謎が分からないままじゃ、俺の腹痛ライフは終わりそうにない。  
「ったく、次のトイレはどこに飛ばされるんだよ……」  
 腹痛が収まったことに感謝しつつ、俺はトイレのドアをそっと閉めた。
 次に開けるのが怖い。
 でも麻婆豆腐の残りがまだ胃で暴れてる気がするし、またすぐ来るかもしれない。
 コンビニ飯、やめたいけどやめられないんだよな。
 安いし美味いし、半額シール見るとつい手が伸びる。  
 とりあえず、今日はもうトイレ行きたくない。
 でも腹の調子がそんな願い聞いてくれるわけないか。
 製鉄工場で生き延びただけでも褒めてくれよ、自分。
 あの溶鉄と轟音の中でミッションクリアしたんだからさ。  


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

猫のモモタ

緒方宗谷
児童書・童話
モモタの出会う動物たちのお話。 毎月15日の更新です。 長編『モモタとママと虹の架け橋』が一番下にあります。完結済みです。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件 権力闘争編

もっちもっち
経済・企業
世界を混乱に貶めたパンデミック。 それは、民自党を救い、新革党を窮地に追いやった。 結果、新革党党首渦川俊郎は死に、古味良一達新革党は 民自党に吸収される。 そうして、紆余曲折はあったが、古味は緒川順子と結婚し、晴れて与党の政治家となる。 しかし、順風満帆と見えた古味たちに、今度は今までと違う、権力闘争という嵐が迫っていたのであった。 古味良一・・・新革党が吸収され、与党民自党の代議士になる。 古味順子・・・古味の妻兼後援会長。 水本上親・・・地域政党地方の風の党首。今や古味の一番の盟友(本人は結局町議に逆戻り)。息子がいる。 秋屋誠二・・・民自党の重鎮。次の政権を狙う。 水園寺義光・・・民自党の代議士。古味より上と思っている。 阿相元春・・・現内閣総理大臣。古味順子の実の父。 門関幸太郎 ・・・元内閣総理大臣にして政界十常侍の別格。

処理中です...