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15話 宿敵(?)との対峙
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翌日もお出かけに出た。
アーニィはめんどくさかったので撒いた。
今日は別に街に出るわけじゃないしね。
向かうのは平民たちの暮らす上町や下町じゃなく、貴族の屋敷が集まる中央区。そもそもここに入るためには、検問を抜けなければならないために一般人は入れない区画で安全だ。
というわけで変装もなしの、白いワンピースに日傘姿のお嬢様スタイル。たまにはお洒落して外に出たいわけだけど、今回は目的が目的なのでちょっとシンプルにまとめた。
自宅を出て徒歩10分ほど。目的の場所にたどり着いた。
そこは……うん、まぁ私の家の数分の1くらいの一戸建ての家。一応二階建てにはなっているけど、庭もこじんまりとしたものがあるだけだし、すぐそこが玄関だし。正直、ここらの屋敷の中でかなり貧乏くさい。
上町でもこれレベルの家屋はそこそこあったわよ。
まぁ中央区から一番離れた場所にあるわけだから、この屋敷も、窮状も分からないでもないけど。
門も気持ち程度のもので開けっ放し。いつでも来い、いや、来てくださいという家主の気持ちの現れなのか。どこか哀愁漂う雰囲気を感じるわよ。
さて、どうしよう。
この時代だ。インターフォンなんてものはないし、ドアベルを鳴らそうにも門から勝手に入っていいのか。
そもそもが“知り合いでもない相手”なのだから、気安くノックするのも違うし……。
少し迷ったけど、こういうのは正面から。
だって私は何も悪いことしてないし。相手の方が家格は下だし。えっと、確か男爵だっけ? なら何も問題なし!
というわけで門を手で押して――ギィっと錆びた音が鳴った――門番もいない、ほんの数歩で横断できる庭を渡って玄関にたどり着く。
そしてドアベルを鳴らそうとして――
「はい、どなた?」
ガチャリ、と先にドアが開いた。
可愛らしい少女の声と共に。
「え!?」
まさかなんで分かったの? 私が今まさに来たことを。まさかこの娘……エスパー!?
「あ、うち門の建付けが悪くて、それで誰か来たって分か――」
ああ、そういえばギィって鳴ってたわよね。それが聞こえたのね。
「エ、エリーゼ様!?」
と、ドアを開いた少女――そう、ここの家主が驚いたように声をあげる。
くりっとした瞳に小さなえくぼは親しみやすさを感じさせる。髪の毛はさらさらで本当羨ましい限り。身長は私より低いけど、それが嫌味じゃないくらいに可愛らしさを増長させる。
そう、彼女こそが……。
「いや、様づけとか要らないから。えっと……」
…………誰だっけ?
え、てゆうか知らなくない?
だってこないだポッと出てきただけの彼女。
そう、私との婚約を破棄したガーヒルが、新たに選んだ男爵家のお嬢様。
パーティの場で会ったけど、それだけで名前とか聞いてないのよねぇ。
「そ、そうです、よね……エリーゼ様が、わ、私の名前なんか知らないですものね」
いや、そこまで卑屈にならなくても。
「あ、た、立ち話も申し訳ないので、その、上がります、か? その、没落貴族なので大したおもてなしはできませんが」
「いや、いいのよ。ちょっと話をしたかっただけだから」
「あ、はい……」
「おーい、ソフィー。誰か来たのか?」
「あ、お父様。ちょっとその……えっと、ごめんなさい。すぐ戻ります」
そう言って彼女――ソフィーは頭を下げると扉を放って家の中へと戻っていった。
それから20秒ほど待つと、再びドアが開きソフィーが現れた。
そしてドアをしっかり締めると、慌てた様子で頭を膝につくんじゃないかってほど下げて、
「あ、す、すみません。10秒以上待たせてしまって」
「いや、別にいいけど」
「ごめんなさい許してください本当にごめんなさいごめんなさい」
「だから何もしないけど!?」
「え、でもいつもは10秒以内に戻ってこないとビンタだったから……」
いや、なんの話……って、そういうこと?
彼女と実は私――もといエリとソフィーは友達で……いや、違うわね。この感じ。多分、舎弟とかそういう方向。女だけど。
きっと家格とかそういうのを盾に、彼女に色々やらかしたんでしょ。ソフィー自体もあまり自我をだすタイプじゃなさそうだし。
うん。完全に悪役してるわね。私、というかエリ。
まったく最低よ。
こんな可愛い子をいじめるなんて。
こういうのはしっかり弱みを握って、それでいて反逆なんて起こさせないようちゃんと飴と鞭で支配下に置いておかなきゃ。こういうのは普段厳しくてもちょろっと甘いことをしてあげれば、なんでも聞くいい子ちゃんになるんだから。
それにいじめよくない。いじめ格好悪い。
けどいじる程度なら、いいわよね?
「別に気にしてないわよソフィー」
「で、でも……その、私……」
あー、そっか。そういえばこの子がガーヒルと付き合うことになったんだっけ。
いわば私の後釜。略奪愛ってやつ?
それをきっと後ろめたく思ってるんだろう。
ふーん。ってことはやっぱ彼女は私を敵に回したくないとでも思ってるんだろう。
ここに来た本当の目的は、彼女とガーヒル。そのどっちが婚約破棄に、そして今パパの追い落としにかかわっているかを確認するためだったから。
ま、もしかしたら猫をかぶってる稀代の策士なのかもしれないけど。それは話をしていけば分かるでしょう。
「とにかく、別に何とも思ってないから。それから様も禁止。私のことはエリって呼んで」
「は、はい……エリさ……エ、エリ……」
「ええ、よろしくソフィー」
そう呼ぶと、彼女はその愛らしい顔をパァっと明るくして、尻尾でも振りそうな勢いで嬉しそうに何度も頷いた。
ふふ、これこれ。
こうしてやれば何でも言うこと聞いてくれる素直ちゃんなんだから。ああ、本当に可愛らしい。前もちょっと思ったけど食べちゃいたい。
え? そっち系?
違うわよ。私は素敵な殿方が好き。けど、可愛い女の子は……。うん、そう別腹よね?
アーニィはめんどくさかったので撒いた。
今日は別に街に出るわけじゃないしね。
向かうのは平民たちの暮らす上町や下町じゃなく、貴族の屋敷が集まる中央区。そもそもここに入るためには、検問を抜けなければならないために一般人は入れない区画で安全だ。
というわけで変装もなしの、白いワンピースに日傘姿のお嬢様スタイル。たまにはお洒落して外に出たいわけだけど、今回は目的が目的なのでちょっとシンプルにまとめた。
自宅を出て徒歩10分ほど。目的の場所にたどり着いた。
そこは……うん、まぁ私の家の数分の1くらいの一戸建ての家。一応二階建てにはなっているけど、庭もこじんまりとしたものがあるだけだし、すぐそこが玄関だし。正直、ここらの屋敷の中でかなり貧乏くさい。
上町でもこれレベルの家屋はそこそこあったわよ。
まぁ中央区から一番離れた場所にあるわけだから、この屋敷も、窮状も分からないでもないけど。
門も気持ち程度のもので開けっ放し。いつでも来い、いや、来てくださいという家主の気持ちの現れなのか。どこか哀愁漂う雰囲気を感じるわよ。
さて、どうしよう。
この時代だ。インターフォンなんてものはないし、ドアベルを鳴らそうにも門から勝手に入っていいのか。
そもそもが“知り合いでもない相手”なのだから、気安くノックするのも違うし……。
少し迷ったけど、こういうのは正面から。
だって私は何も悪いことしてないし。相手の方が家格は下だし。えっと、確か男爵だっけ? なら何も問題なし!
というわけで門を手で押して――ギィっと錆びた音が鳴った――門番もいない、ほんの数歩で横断できる庭を渡って玄関にたどり着く。
そしてドアベルを鳴らそうとして――
「はい、どなた?」
ガチャリ、と先にドアが開いた。
可愛らしい少女の声と共に。
「え!?」
まさかなんで分かったの? 私が今まさに来たことを。まさかこの娘……エスパー!?
「あ、うち門の建付けが悪くて、それで誰か来たって分か――」
ああ、そういえばギィって鳴ってたわよね。それが聞こえたのね。
「エ、エリーゼ様!?」
と、ドアを開いた少女――そう、ここの家主が驚いたように声をあげる。
くりっとした瞳に小さなえくぼは親しみやすさを感じさせる。髪の毛はさらさらで本当羨ましい限り。身長は私より低いけど、それが嫌味じゃないくらいに可愛らしさを増長させる。
そう、彼女こそが……。
「いや、様づけとか要らないから。えっと……」
…………誰だっけ?
え、てゆうか知らなくない?
だってこないだポッと出てきただけの彼女。
そう、私との婚約を破棄したガーヒルが、新たに選んだ男爵家のお嬢様。
パーティの場で会ったけど、それだけで名前とか聞いてないのよねぇ。
「そ、そうです、よね……エリーゼ様が、わ、私の名前なんか知らないですものね」
いや、そこまで卑屈にならなくても。
「あ、た、立ち話も申し訳ないので、その、上がります、か? その、没落貴族なので大したおもてなしはできませんが」
「いや、いいのよ。ちょっと話をしたかっただけだから」
「あ、はい……」
「おーい、ソフィー。誰か来たのか?」
「あ、お父様。ちょっとその……えっと、ごめんなさい。すぐ戻ります」
そう言って彼女――ソフィーは頭を下げると扉を放って家の中へと戻っていった。
それから20秒ほど待つと、再びドアが開きソフィーが現れた。
そしてドアをしっかり締めると、慌てた様子で頭を膝につくんじゃないかってほど下げて、
「あ、す、すみません。10秒以上待たせてしまって」
「いや、別にいいけど」
「ごめんなさい許してください本当にごめんなさいごめんなさい」
「だから何もしないけど!?」
「え、でもいつもは10秒以内に戻ってこないとビンタだったから……」
いや、なんの話……って、そういうこと?
彼女と実は私――もといエリとソフィーは友達で……いや、違うわね。この感じ。多分、舎弟とかそういう方向。女だけど。
きっと家格とかそういうのを盾に、彼女に色々やらかしたんでしょ。ソフィー自体もあまり自我をだすタイプじゃなさそうだし。
うん。完全に悪役してるわね。私、というかエリ。
まったく最低よ。
こんな可愛い子をいじめるなんて。
こういうのはしっかり弱みを握って、それでいて反逆なんて起こさせないようちゃんと飴と鞭で支配下に置いておかなきゃ。こういうのは普段厳しくてもちょろっと甘いことをしてあげれば、なんでも聞くいい子ちゃんになるんだから。
それにいじめよくない。いじめ格好悪い。
けどいじる程度なら、いいわよね?
「別に気にしてないわよソフィー」
「で、でも……その、私……」
あー、そっか。そういえばこの子がガーヒルと付き合うことになったんだっけ。
いわば私の後釜。略奪愛ってやつ?
それをきっと後ろめたく思ってるんだろう。
ふーん。ってことはやっぱ彼女は私を敵に回したくないとでも思ってるんだろう。
ここに来た本当の目的は、彼女とガーヒル。そのどっちが婚約破棄に、そして今パパの追い落としにかかわっているかを確認するためだったから。
ま、もしかしたら猫をかぶってる稀代の策士なのかもしれないけど。それは話をしていけば分かるでしょう。
「とにかく、別に何とも思ってないから。それから様も禁止。私のことはエリって呼んで」
「は、はい……エリさ……エ、エリ……」
「ええ、よろしくソフィー」
そう呼ぶと、彼女はその愛らしい顔をパァっと明るくして、尻尾でも振りそうな勢いで嬉しそうに何度も頷いた。
ふふ、これこれ。
こうしてやれば何でも言うこと聞いてくれる素直ちゃんなんだから。ああ、本当に可愛らしい。前もちょっと思ったけど食べちゃいたい。
え? そっち系?
違うわよ。私は素敵な殿方が好き。けど、可愛い女の子は……。うん、そう別腹よね?
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