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第4章 ジャンヌの西進
閑話32 立花里奈(オムカ王国軍師相談役)
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将来の夢。
そんなものは特になかった。
ただ漫然と進学して、就職して、結婚して、そのまま死ぬ。
それが私の人生。それでいいと思ってた。
だからこれといって本気で取り組んだことはなくて、何かを必死に一生懸命になったことはなく、本気で何かを叶えるために祈ったこともない。
一度だけ、あるいはと思ったことはあった。
けどその時はただなんとなく漠然とした思いがあるだけだった。
けど今は違う。
砦にある小屋の一室。
そこに横たわるものを見ながら必死に祈る。
明彦くんの無事を。
2日前。
サカキさんに連れられて明彦くんは無事帰って来た。
ううん、無事ではなかった。
その匂いに気づいたのは、それほど感覚が鋭敏になっているからだろうか。
頭と左肩に布を巻かれたまま意識を失っている明彦くんに、明確な死の香りを感じた。
急遽、軍医が呼ばれて明彦くんの治療が行われた。
なんとか一命をとりとめたものの、その日が峠とも言われた。
頭の傷はそこまで大したものではなく、左肩も銃弾は貫通しているため破傷風などの危険性は少ないという。
けど血を失いすぎていた。
輸血を言ってみたけど、周囲からは怪訝な顔をされた。
輸血という概念がないのだとその時知ったのは驚きだった。
だから失った血を取り戻せるか。
そこが生死の分岐点だと言っていた。
それから2日間。
なんとか峠を越えた明彦くんの世話を買って、私は出てここにいる。
といっても大したことはしていない。
適度に水を飲ませて、包帯が汚れたら代えて、体を拭いてあげる。それだけ。
薬は軍医が煎じたものを日に3回、飲ませるだけであとはすることはない。
オムカの王都に伝令が走り、王国一の医者を連れてくると言っていたけど、あと何日かかかるだろう。
だからあとは祈るしかない。
人が本気で何かを祈る時、食を断ったり、水ごりする理由を始めて分かった気がする。
自らを代償にその願いを叶えて欲しいと本気で願った時、そういうことをするのだと知った。
だから私は食事を断った。
口に入れるのは水と、スープだけ。明彦くんが何も食べてないのに、私だけ食べるのも不公平だと思ったから。
「ね、覚えてる? 将来の夢について話した時のこと。達臣くんは就職できればなんでもいいとか言ってたよね。それで明彦くんは……学者さん、だっけ。私にはよくわからないけど、素敵だと思った。逆に私は、何もなかった。それを明彦くんはこれから探せばいいって言ってたよね。でもね、その時から1つの夢ができたんだ。本気っていうよりは、ただの想いというか」
そうやって眠る明彦くんに語るのも日課になっていた。
内容はどうでもいい他愛のない話。
私のことだったり、元の世界のことだったり、この世界のことだったり、友達のことだったり、辛かったことだったり、嬉しかったことだったり、なんでも話した。
意識がない明彦くんだから、なんでも言えた。
「本当はね、文句を言いに来たんだよ。私を置いていくなんて酷いって。でも、こんな姿見ちゃったら……何も言えないよね」
今はただ、無事でいてくれればいい。
それだけが全て。
けど明彦くんは反応しない。
ただただ眠り続けている。
そんな明彦くんの顔がどうしようもなく愛おしくなり、そっと頭を撫でてあげる。
本当に、妹が出来たみたいだ。
ううん、最近思う。
一人っ子だったけど、私には妹がいたんじゃないかって。
おぼろげな記憶。
私につきまとう小さな少女。それを守らなくちゃという思いと、愛おしいという思いが混じり合って、胸から溢れそうになる。
それがいつの記憶か分からない。
子供の頃、親戚の子とかに懐かれていたのかもしれない。
でもそんなことはどうでもいい。
今、明彦くんが無事ならそれでいい。
それによって、私が罪を背負うことになったとしても。
「またやっちゃったんだ。たくさんの人を殺して、殺して、殺した。そしたらね。皆言ってくれた。ありがとうって。怯えながら。……あはは、おかしいよね。人を殺して、ありがとうって。そんな……」
不意に、涙がにじんだ。
小さく頭痛もしてくる。
「もう……駄目なのかな。私。こんな世界で、人を殺して、皆から怖がられて……明彦くんにも迷惑かけて。また1人、ううん、3千人くらいかな。恨みを買っちゃった。ブリーダって人、知ってるよね。あの人たちの、大切な人の仇なんだって」
マールさんの時でも、実はそれなりに堪えていた。
それにさらに3千人の怨恨が加わったのだ。いや、本来ならもっと多くの人のものを受けているはず。ただ私がそれを知らないだけで、知らずに暢気に生きているだけで。
「それで言われちゃった。平穏に暮らすなんて許さない。汚く、孤独のまま……死ねって」
あの時の言葉が脳裏に張り付いて離れない。
まさしく呪いとして刻まれたその言葉に、精神が殺されていくのが分かる。
「本当に、そうだよね……私なんて、何千人も殺した殺人鬼なんて……生きてる価値なんて、ないよね」
なんで私はそんなことを言っているのだろう。
いや、分かってる。
違うと言って欲しかった。
そう否定して欲しかった。
けど明彦くんは何も言わない。当然だ。私もそれを知って、話しているのだから。
意識が戻っても、今のことは明彦くんには言えない。
私に対しても、ブリーダという人に対しても、明彦くんは苦労を抱えることになる。
それは、嫌だった。
流れる涙をそのままに、しばらく明彦くんを見つめていた。
けどその頭には、胸の奥には、混沌と渦巻く感情がせめぎ合って、ないまぜになって、どうしていいか分からなかったから。
「里奈さん、いる?」
ふと、扉をノックする音に我に返り、慌てて袖で顔をぬぐう。
愛良さんだ。
「はい」
答えると扉が小さく開いて、愛良さんと竜胆が顔を出した。
「少し休んだらどうだい。そんな看病してたら、あんたの方が倒れるだろ」
「そうです! お姉ちゃんも倒れたら意味がないです!」
「ありがとうございます……でも、これが私の役目だから」
「ふぅ……」
私の答えに何か不満でもあるのか、愛良さんは一度空に息を吐く。
そして再び私を見た時には、その顔には険があった。
「あのよ、あんまこういうのは得意じゃないだけどよ。お互いのためにならないから言っとく。あんたら良くないよ」
「え?」
「そのなんつーの。お互いがお互いに遠慮してるくせに、どっぷり依存しあってる感じ? よくわかんねーけど。見ててなんか不安定で壊れそうで……怖いんだ」
愛良さんが何を言っているかよくわからない。
それでも、何か大切なことを言ってくれているような気がして、そのまま聞いていた。
「お互いがお互いを気にして無茶をする。そこまでなら分かるけどよ。なんかあんたらはその無茶に限度がないんだ。ブレーキがないわけじゃない。あるのに踏む気が全くないみたいでよ。どんな峠でもエンジン全開でぶっぱなして、事故ろうが何しようが構わないみたいな」
「はぁ……」
「あーーーーー、くそ。だから得意じゃねぇってのに。だからなんつーか。もっと互いを信じろっつーか……あー、もういい! 竜胆、連れ出せ」
「了解です!」
竜胆が部屋に入ってくると、私を羽交い絞めにしてくる。
それに抵抗する力は、今はなかった。
「なにを……」
「ごめんなさいお姉ちゃん。でもこれが今の正義です」
羽交い絞めにされた私は無理やり立たされて、そのまま部屋の外へと放り出される。
「でも、明彦くんが……」
「死にやしねーよ。オレらを無事に帰すって約束。叶えてもらわなきゃ困るんだからよ」
「それに先輩の世話は私たちがしますから。お姉ちゃんは休むのも仕事です!」
「…………そうなの、かな」
「そうです! だからほらほら。お日様にお久しぶりしてくるですよ!」
そうして、私は明彦くんと切り離され、病室から追い出された。
外に出た。
昼を少し過ぎた時間で、陽光が2日間部屋に籠った私のまぶたを容赦なく貫いてくる。
「あ……」
ふと声が聞こえて、そちらの方を見る。
小屋の前にいたのは……そう、確かサールさんという女の人。明彦くんの護衛をしていた人だ。
彼女は私に気づいたらしく、かといって何か話すこともないらしく、黙って会釈をしてきた。
私もなんとなく会釈を返す。
この子はお兄さんを亡くしたらしく、日がな泣き叫ぶ声が響いていた。
普段の冷静な彼女の感じからは想像もできないうろたえぶりだ。けどそれが士気に影響するとかで、サカキさんとクロエが乗り出してなんとか収まったらしい。そう竜胆から聞いた。
それから私は割り当てられた部屋に戻った。
今、砦の中では臨戦態勢で兵の人たちが慌ただしく走り回っているけど、私に手伝えることは何もなかった。
というより、兵の人たちは結局、私を見てもよそよそしい態度をとるだけで、手伝えとも何も言われない。もとより気軽に話し合える仲でも、たったあれだけのことでわだかまりが解けるとは思ってないからそれはどうでもよかった。
そして部屋に戻ると、電池が切れたように敷かれた布団にダイブした。
お腹が減ったけど、今さらという感もあってそのまま睡眠欲に体を預ける。
ただ眠りに落ちるまでのつかの間。
先ほど愛良さんに言われた言葉が、そしてあの時、彼女に言われた言葉が脳裏をよぎる。
『あんたら良くないよ』
『安穏と平穏のうちに天寿を全うするなんて許さない。戦いの果てに汚く、むごたらしく、孤独のまま――死ね』
その2つの言葉。
片方は善意から、片方は悪意から放たれたものの、どこか根底には共通した何かがあるようで、それが私の心の奥底でつながったような気持ちになる。
あぁ、あるいは。
いや、前から分かっていた。
このままじゃいけないって。
私は、明彦くんの傍にいちゃいけないって。
だから、私は――
そんなものは特になかった。
ただ漫然と進学して、就職して、結婚して、そのまま死ぬ。
それが私の人生。それでいいと思ってた。
だからこれといって本気で取り組んだことはなくて、何かを必死に一生懸命になったことはなく、本気で何かを叶えるために祈ったこともない。
一度だけ、あるいはと思ったことはあった。
けどその時はただなんとなく漠然とした思いがあるだけだった。
けど今は違う。
砦にある小屋の一室。
そこに横たわるものを見ながら必死に祈る。
明彦くんの無事を。
2日前。
サカキさんに連れられて明彦くんは無事帰って来た。
ううん、無事ではなかった。
その匂いに気づいたのは、それほど感覚が鋭敏になっているからだろうか。
頭と左肩に布を巻かれたまま意識を失っている明彦くんに、明確な死の香りを感じた。
急遽、軍医が呼ばれて明彦くんの治療が行われた。
なんとか一命をとりとめたものの、その日が峠とも言われた。
頭の傷はそこまで大したものではなく、左肩も銃弾は貫通しているため破傷風などの危険性は少ないという。
けど血を失いすぎていた。
輸血を言ってみたけど、周囲からは怪訝な顔をされた。
輸血という概念がないのだとその時知ったのは驚きだった。
だから失った血を取り戻せるか。
そこが生死の分岐点だと言っていた。
それから2日間。
なんとか峠を越えた明彦くんの世話を買って、私は出てここにいる。
といっても大したことはしていない。
適度に水を飲ませて、包帯が汚れたら代えて、体を拭いてあげる。それだけ。
薬は軍医が煎じたものを日に3回、飲ませるだけであとはすることはない。
オムカの王都に伝令が走り、王国一の医者を連れてくると言っていたけど、あと何日かかかるだろう。
だからあとは祈るしかない。
人が本気で何かを祈る時、食を断ったり、水ごりする理由を始めて分かった気がする。
自らを代償にその願いを叶えて欲しいと本気で願った時、そういうことをするのだと知った。
だから私は食事を断った。
口に入れるのは水と、スープだけ。明彦くんが何も食べてないのに、私だけ食べるのも不公平だと思ったから。
「ね、覚えてる? 将来の夢について話した時のこと。達臣くんは就職できればなんでもいいとか言ってたよね。それで明彦くんは……学者さん、だっけ。私にはよくわからないけど、素敵だと思った。逆に私は、何もなかった。それを明彦くんはこれから探せばいいって言ってたよね。でもね、その時から1つの夢ができたんだ。本気っていうよりは、ただの想いというか」
そうやって眠る明彦くんに語るのも日課になっていた。
内容はどうでもいい他愛のない話。
私のことだったり、元の世界のことだったり、この世界のことだったり、友達のことだったり、辛かったことだったり、嬉しかったことだったり、なんでも話した。
意識がない明彦くんだから、なんでも言えた。
「本当はね、文句を言いに来たんだよ。私を置いていくなんて酷いって。でも、こんな姿見ちゃったら……何も言えないよね」
今はただ、無事でいてくれればいい。
それだけが全て。
けど明彦くんは反応しない。
ただただ眠り続けている。
そんな明彦くんの顔がどうしようもなく愛おしくなり、そっと頭を撫でてあげる。
本当に、妹が出来たみたいだ。
ううん、最近思う。
一人っ子だったけど、私には妹がいたんじゃないかって。
おぼろげな記憶。
私につきまとう小さな少女。それを守らなくちゃという思いと、愛おしいという思いが混じり合って、胸から溢れそうになる。
それがいつの記憶か分からない。
子供の頃、親戚の子とかに懐かれていたのかもしれない。
でもそんなことはどうでもいい。
今、明彦くんが無事ならそれでいい。
それによって、私が罪を背負うことになったとしても。
「またやっちゃったんだ。たくさんの人を殺して、殺して、殺した。そしたらね。皆言ってくれた。ありがとうって。怯えながら。……あはは、おかしいよね。人を殺して、ありがとうって。そんな……」
不意に、涙がにじんだ。
小さく頭痛もしてくる。
「もう……駄目なのかな。私。こんな世界で、人を殺して、皆から怖がられて……明彦くんにも迷惑かけて。また1人、ううん、3千人くらいかな。恨みを買っちゃった。ブリーダって人、知ってるよね。あの人たちの、大切な人の仇なんだって」
マールさんの時でも、実はそれなりに堪えていた。
それにさらに3千人の怨恨が加わったのだ。いや、本来ならもっと多くの人のものを受けているはず。ただ私がそれを知らないだけで、知らずに暢気に生きているだけで。
「それで言われちゃった。平穏に暮らすなんて許さない。汚く、孤独のまま……死ねって」
あの時の言葉が脳裏に張り付いて離れない。
まさしく呪いとして刻まれたその言葉に、精神が殺されていくのが分かる。
「本当に、そうだよね……私なんて、何千人も殺した殺人鬼なんて……生きてる価値なんて、ないよね」
なんで私はそんなことを言っているのだろう。
いや、分かってる。
違うと言って欲しかった。
そう否定して欲しかった。
けど明彦くんは何も言わない。当然だ。私もそれを知って、話しているのだから。
意識が戻っても、今のことは明彦くんには言えない。
私に対しても、ブリーダという人に対しても、明彦くんは苦労を抱えることになる。
それは、嫌だった。
流れる涙をそのままに、しばらく明彦くんを見つめていた。
けどその頭には、胸の奥には、混沌と渦巻く感情がせめぎ合って、ないまぜになって、どうしていいか分からなかったから。
「里奈さん、いる?」
ふと、扉をノックする音に我に返り、慌てて袖で顔をぬぐう。
愛良さんだ。
「はい」
答えると扉が小さく開いて、愛良さんと竜胆が顔を出した。
「少し休んだらどうだい。そんな看病してたら、あんたの方が倒れるだろ」
「そうです! お姉ちゃんも倒れたら意味がないです!」
「ありがとうございます……でも、これが私の役目だから」
「ふぅ……」
私の答えに何か不満でもあるのか、愛良さんは一度空に息を吐く。
そして再び私を見た時には、その顔には険があった。
「あのよ、あんまこういうのは得意じゃないだけどよ。お互いのためにならないから言っとく。あんたら良くないよ」
「え?」
「そのなんつーの。お互いがお互いに遠慮してるくせに、どっぷり依存しあってる感じ? よくわかんねーけど。見ててなんか不安定で壊れそうで……怖いんだ」
愛良さんが何を言っているかよくわからない。
それでも、何か大切なことを言ってくれているような気がして、そのまま聞いていた。
「お互いがお互いを気にして無茶をする。そこまでなら分かるけどよ。なんかあんたらはその無茶に限度がないんだ。ブレーキがないわけじゃない。あるのに踏む気が全くないみたいでよ。どんな峠でもエンジン全開でぶっぱなして、事故ろうが何しようが構わないみたいな」
「はぁ……」
「あーーーーー、くそ。だから得意じゃねぇってのに。だからなんつーか。もっと互いを信じろっつーか……あー、もういい! 竜胆、連れ出せ」
「了解です!」
竜胆が部屋に入ってくると、私を羽交い絞めにしてくる。
それに抵抗する力は、今はなかった。
「なにを……」
「ごめんなさいお姉ちゃん。でもこれが今の正義です」
羽交い絞めにされた私は無理やり立たされて、そのまま部屋の外へと放り出される。
「でも、明彦くんが……」
「死にやしねーよ。オレらを無事に帰すって約束。叶えてもらわなきゃ困るんだからよ」
「それに先輩の世話は私たちがしますから。お姉ちゃんは休むのも仕事です!」
「…………そうなの、かな」
「そうです! だからほらほら。お日様にお久しぶりしてくるですよ!」
そうして、私は明彦くんと切り離され、病室から追い出された。
外に出た。
昼を少し過ぎた時間で、陽光が2日間部屋に籠った私のまぶたを容赦なく貫いてくる。
「あ……」
ふと声が聞こえて、そちらの方を見る。
小屋の前にいたのは……そう、確かサールさんという女の人。明彦くんの護衛をしていた人だ。
彼女は私に気づいたらしく、かといって何か話すこともないらしく、黙って会釈をしてきた。
私もなんとなく会釈を返す。
この子はお兄さんを亡くしたらしく、日がな泣き叫ぶ声が響いていた。
普段の冷静な彼女の感じからは想像もできないうろたえぶりだ。けどそれが士気に影響するとかで、サカキさんとクロエが乗り出してなんとか収まったらしい。そう竜胆から聞いた。
それから私は割り当てられた部屋に戻った。
今、砦の中では臨戦態勢で兵の人たちが慌ただしく走り回っているけど、私に手伝えることは何もなかった。
というより、兵の人たちは結局、私を見てもよそよそしい態度をとるだけで、手伝えとも何も言われない。もとより気軽に話し合える仲でも、たったあれだけのことでわだかまりが解けるとは思ってないからそれはどうでもよかった。
そして部屋に戻ると、電池が切れたように敷かれた布団にダイブした。
お腹が減ったけど、今さらという感もあってそのまま睡眠欲に体を預ける。
ただ眠りに落ちるまでのつかの間。
先ほど愛良さんに言われた言葉が、そしてあの時、彼女に言われた言葉が脳裏をよぎる。
『あんたら良くないよ』
『安穏と平穏のうちに天寿を全うするなんて許さない。戦いの果てに汚く、むごたらしく、孤独のまま――死ね』
その2つの言葉。
片方は善意から、片方は悪意から放たれたものの、どこか根底には共通した何かがあるようで、それが私の心の奥底でつながったような気持ちになる。
あぁ、あるいは。
いや、前から分かっていた。
このままじゃいけないって。
私は、明彦くんの傍にいちゃいけないって。
だから、私は――
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