知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

第82話 王の間へ続く道

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 王宮は戦場だった。

 階段を抜けた先にあるのは5メートル四方の小さな部屋。
 もちろんそんなところに2千もの人間が入れるわけもなく、部屋の外に出たのだろう。

 そこで王宮に居残った帝国軍と先端が開かれたらしい。
 おそらく2千は掃討に出たらしくこの部屋にはいない。

 だからここで争っていたのは10名ほどのビンゴ兵と、そして20ほどの帝国軍。

「また来たぞ!」

 帝国軍の兵が叫ぶ。その奥からさらに敵が現れた。
 合わせて50ほど。

 マズい。
 こっちは俺とセンド。それと数名しか外に出てきていない。
 居残ったビンゴ兵と合わせても数で押し切られる。

「アカシ様のため、抹殺する!」

 屈強そうな帝国兵が剣を振りかぶり突進してくる。
 その瞳には狂気の色があるのが見えた。

 先にいたビンゴ兵が必死に防ぐが、帝国兵が突破してくる。

 殺される。
 その死を覚悟した、ある意味捨て身の戦法を今度はこちらが食らう番。
 それは恐怖をもって確実に俺の中を駆け抜ける。

 途端、閃光が走った。
 そして床に衝撃。
 突撃してきた先頭の帝国兵が血を流して倒れたのだ。

 何が、と思う間に、俺の前にクロエとウィットが立ちふさがる。

「隊長殿に――」「隊長に――」

 その手には血に濡れた剣。
 敵が到達する刹那、俺の前に躍り出て一瞬のうちに敵を斬り殺したらしい。

「「手を出すな!!」」

 同時に叫び、そのまま敵の中へ突っ込む。

「ムキー! マネするなっての!」

「真似をしたのは貴様だろう! 大人しく下がって寝てろ!」

「あ、隊長殿と一緒に寝るのいいかも……って、手柄横取りする気!?」

 なんていつも通りの応酬をしながらも、敵を次々に切り倒していく2人。
 強い。
 そういえばこの2人。めちゃくちゃ強かったんだった。日頃の光景を見ていると、どうもそこらへんがおかしく感じる。

「副隊長殿に続けー!」

 と、他の兵たちも上がってきたようだ。
 クロエとウィットを先頭にして、敵を部屋の外へ押し出した。

「まったく、手を出すなって言っといて先に行くとか……ありえない」

「まーまー、自分たちがいるから大丈夫って思ったんじゃない?」

 マールとルックほか30名が追い付いてきた。
 最後は鉄砲を担いだクルレーンで、

「やれやれ、この移動は年寄りにはつらいんだがね」

 あんたまだ20代だろうに……。
 なにそのおっさんキャラ。

 ともあれ、周囲から敵の気配はいなくなった。

「行きましょう、こちらです」

 センドに導かれ部屋を出て、左に出る。そこから廊下を30数人で走った。

「クロエ! こっち!」

 背後でマールが叫んでいる。
 どうやらクロエたちは別の方角へ行っていたらしい。

 とにかく先頭で廊下を走る。
 オムカとあまり変わらない、いや、こちらの方が豪勢か。真っ赤な絨毯に3メートル間隔で壁にはランプがともり、ところどころに肖像画や花瓶といったものが飾られている。

 だがそれも今やめちゃくちゃだった。
 ところどころに血が飛び、死体が散乱した状況。まさにカオスだ。

 いや、今もその死体を量産しているのだからまさに地獄のような光景だった。

「くっ……我らの神聖な王宮が……」

 センドが案内しながら嘆くように吐き捨てる。
 気持ちはわからないでもない。これがオムカだったら、マリアの住む場所で戦闘が起こったと思うと怖気がする。

 正直、ここに突入したことを後悔し始めた。
 俺が無理を言わなければ、ここまで混戦にならなかったかもしれない。
 死ななくていい命が助かっていたかもしれない。

 けどこの敵の状態を見る限り、あるいは俺が適当に言った言葉が現実になりかねないと思った。
 すなわち、一般の国民に多くの犠牲が出ることだ。

 死兵ともいうべき、捨て身となった彼らは何をしだすかわからない。
 だからその前に止めた。
 そう思った。
 そう思うことにした。

「ここです」

 20メートルほど行ったところでセンドが止まった。
 そこはT字路になっていて、右に曲がればその奥は行き止まりでそこには50人ほどが集まっていた。
 何もないところを守る馬鹿はいない。
 その背後にある大きな門が、双子のいる場所だろう。

「簡単には通してくれなさそうだな」

「はい、ですが相手は袋のネズミ。一気に突破しましょう」

 それが危険なんだけどなぁ。
 窮鼠きゅうそ猫を噛むの言葉通り、死兵となった相手はやっかいだ。
 だがゆっくりと相談している場合ではなくなった。

「王の間にいるぞ!」

 前の廊下に角を曲がってきた集団。帝国兵だ。
 30ほどだが、ここで迎撃するのは厳しい。さらに後ろから増援が来ているようにも見える。
 王の間を固める50人ほどがこちらに来れば、左右から敵を受ける挟撃の形になる。

 しかも多少広いとはいえ、狭い廊下では兵力差も活きない。
 互角、いや最悪の場合、負ける未来も見えた。

 なら一旦距離を取るか。
 だめだ今は1秒が砂金よりも大事だ。

 丹姉弟あかしきょうだいを押さえれば、この無駄な戦いも終わる。
 だからこそ、ここで時間を食うわけにはいかない。

 そんな俺の苦衷を察したのか、この男が前に出た。

「こっちは任せてもらおう」

 クルレーンだ。
 一歩前に出ると、腰に回していた鉄砲を一呼吸の間に構える。
 そして撃った。連射だ。
 先頭の5人くらいが倒れる。

 それでも敵はひるまない。
 雄たけびを上げて突っ込んでくる。

 だが、その兵も声を出すのを永遠に中断された。
 胸に一本の矢を受けて倒れたからだ。

「鉄砲にだけ良いカッコはさせられないからねー」

 ルックが矢を放ったのだ。
 さらにはマールが剣を抜き、彼らの前に立ち、叫ぶ。

「隊長、行ってください! ここは私たちに!」

 不安がよぎる。
 彼らは30人ばかり。しかも狭い廊下。
 万が一ということもあり得る。
 もうこれ以上仲間を失いたくない。心の底からそう思う。

 だが、ここでの迷いは彼らの覚悟を見捨てていいのか。
 今は時間が何よりも大事。
 しかも俺は彼らの役に立つことは何もできない非力な身。

 なら、やることは1つ。

「頼んだ! クロエ! ウィット! 続け!」

 背後から追いついてきたクロエたちが雄たけびを上げる。
 そのまま王の間へと走る。

 50人ほどの守護隊が剣を、槍を構えて待ち構えている。
 できれば降伏勧告をしたい。
 だが無駄と分かっている自己満足に、時間はかけてられない。

 すまないが、力づくで通らせてもらうだけだ。

「隊長殿は後ろに!」

 クロエが前に出る。その背中に、思いっきり叫んだ。

「ジャンヌ・ダルクの旗の下に命じる! 全軍、敵を突破しろ!! それでこの戦いは終わりだ!」

 旗なんて持ってきていない。
 けど俺の心に、皆の胸の中にあると信じ、叫んだ。

「はぁぁぁぁぁぁ!」「おおおおおおお!」

 クロエが、ウィットが、兵たちが突っ込む。
 一気に辺りは混戦になった。

 だがやはりクロエとウィットの2人の活躍が目ざましい。

 ほんの数分の戦いで残らず敵を駆逐し、その奥にある重厚な扉を開けにかかる。
 重苦しい音を立てて扉が開く。

 そこはまさに王の間と呼んでふさわしい場所。
 小さな体育館ほどの大きさの広場で、どこかおごそかな雰囲気をかもし出している。

 中心に伸びる赤い絨毯。その先に背もたれが金に輝く椅子が置かれている。

 一瞬、何かわからなかった。
 2つの同じ人形が置かれているのかと思った。

 だが違った。
 そこにいたのは2人の人間。
 テカテカの黒のボディースーツ――ボンテージファッションとでもいうのか――を着こみ、互いの手を足をからませている同じ顔の人間。

 吐き気がする。
 彼らは今のこの状況を分かっているのか、微笑みを浮かべたままこちらを向き、口を開いた。

「ようこそいらっしゃいました、ジャンヌ・ダルク。そう兄さんは言っています」

「お待ちしておりました、ジャンヌ・ダルク。そう姉さんは言っています」

 同じ顔、同じ声の人間。
 これが――丹姉弟あかしきょうだい

 ついに、たどり着いた。
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