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第5章 帝国決戦
閑話14 サカキ(オムカ王国軍先鋒隊長)
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大地を揺らして敵が殺到する。
残りの敵数がいくらいるか。
そんなことを考えるのはやめた。
ただジャンヌに言われたからここを死守する。
当然だ。
ここを突破されればあとは遮るものもなく王都まで一直線。
何が何でもここで食い止めなければいけない。
そのために俺がやること。
この場所を時間まで守ること。
いつまでか。それは知らない。
けどジャンヌが必ずやってくれる。そう信じているからいつまでも耐えてやる。
正直、自分がここまで1人に入れ込むとは思ってもみなかった。
それまで適当に恋して、適当に振って振られて、適当に人生を楽しんでいたのだ。
それが彼女と出会って急変した。
帝国の支配下にあるオムカが独立し、いち部隊長でしかなかった俺が、ジーンと共に王国の双璧なんて呼ばれるようになった。
さらにシータ王国、ビンゴ王国と同盟し、南群に勢力を伸ばし、ヨジョー地方を奪い取り、ビンゴ領の一部を割譲され、オムカは一大国となった。
ほんの数年前まで考えられなかったことが現実に起きている。
それを引き起こしたのが、15にもならない子供だったのだから他人事なら冗談だと笑い飛ばしただろう。
最初の出会いは今思えば最低だった。
ジーンの子供だとか、副官だとか、言ってる言葉が面白くて笑い転げていた。
だがその直後に鮮やかな手並みで敵を一蹴し、俺たちをかばい、ハカラの無茶難題に軽々と答え、そしてなんとオムカを独立に導きまでもした。
そのころからだ。
俺の彼女に対する目線が変わったのは。
見目の美しさもさることながら、その聡明さ、意志の頑強さに惹かれ、なにより時折見せる戦いへの憂い、打たれ弱いところを見せる彼女に心をわしづかみにされた。
何より彼女のパンチが効いた。
王都防衛戦の最終日。
シータ軍を連れて戻ってきたときのことだ。威力も何もないが、俺を本気で心配したことが分かる一撃で、それがなんとも愛おしいものに感じたのだ。
そうなるともう夢中だった。
すべてをジャンヌ中心に考えることになった。
正直、ビンゴ行きに同行できる時は嬉しかったし、彼女が撃たれたと知った時には初めてショックでぶっ倒れそうになったし、絶対に死なせないと誓ったものだ。
その時に聞かされたことには驚いたが、だからどうした。
――そう、だからどうしたのだ。
俺は女性であること以上に、ジャンヌ・ダルクという個人に惹かれたのだ。
その正体が何者であろうと、俺が知っている彼女は彼女でしかない。
だから変わらない。
彼女への愛情も、彼女への信頼も。
逆にそれを語ってくれたのが俺だけだと思えば、そんなことはもう2人だけの隠し事みたいで逆に燃える。
あとでジーンも知ったと聞いた時は、小一時間ほど殴り合ったが。
その結果のこの20万だ。
はっ、もう一度言ってやる。
――だからどうした。
俺の後ろには(正確には別の指揮のためここにはいないが)あの『旗を振る者』がいるのだ。
建国の英雄と同じ名前を持つ彼女がいるのだ。
負けるわけない。
そう思い一歩前に出る。
柵の一番前だ。
先鋒。つまり俺から戦闘が始まる。
名誉なことだ。
それを任せてくれた彼女には感謝しかない。
身長より長い鉄棒を地面に突き刺す。
30キロの鉄を鍛えに鍛えた逸品だ。
今回の戦い、長丁場になることから刃こぼれの起こる剣や折れる可能性のある槍は捨てた。
あるのはこの鉄棒のみ。これならば刃こぼれすることも折れることもなく、いつまでも戦える。
棒術を習ったのはここ1年のことだが、俺がこれを振り回すだけで十分凶器になる、と太鼓判を押してくれたのはジーンだ。
だからあまり気にせず戦えばいい。
長丁場で歩兵をまとめる立場にいることから馬にも乗っていない。それでいい。
敵の前衛。
その顔が見える位置まで敵が迫ってくる。
背後から動揺の気配を感じた。
当然だ。
こんな大軍を相手に、こんな粗末な柵と過少な人数で守ろうというのだから、自殺行為に思えるだろう。
仕方ない。
いっちょやるか。
「俺たちめがけて20万の敵が殺到してくる! 目の色を変えて殺戮をもとめて怒涛の如くやってくるぞ!」
振り向き、大音声で言い放つ。
20万の圧が背中に来るが、はっ、関係ないね。
まずは事実の確認。
そしてそれがどうでもないように言い切る。
「だからどうした!」
言ってやる。
そんなことへでもないと、兵たちに分からせてやる。
「俺たちの後ろには、王都がある! 国がある! 守るべきものがある! それを、帝国とかいう奴らの好き勝手にさせることはできねぇよな!」
兵たちのざわめきが静まった。
動揺した瞳が落ち着く。
守るべき人。家族。恋人。友達。
誰でもいい。
それが力になるなら。
そして何より彼らの力になるのは、ただ1つ。
「お前らは俺を信じなくてもいい! ジャンヌを信じろ! 『不敗のジャンヌ』の力をただ信じて、戦えぇ!!」
一瞬の間。
その時には彼らの瞳に炎がともったのを見た。
そして、熱気が来た。
大地を轟かすほどの咆哮。
誰もが熱気に支配され、今にも飛び出しそうな彼ら。
それを爆発させるのは、まだ早い。
向こう、後方で全体を見ているジーンはやれやれと思っているだろう。
大丈夫だって、そこらはわきまえている。
「よし、全軍! 力をためておけよ、すぐ爆発させてやる!」
俺がその場でどかり、と胡坐をかいてやる。
敵に背を向けて座り込む。
大将がどっかりと座っていれば兵たちは動揺しない。
ジャンヌから教わったことだ。
だから文字通り座ってやった。
俺の声に従ったのか、作戦を思い出したのか、彼らは爆発することなく、その場で待機した。
先鋒と言っても、戦闘の口火を切るのは俺たちじゃない。
さすがに無策で20万に突っ込むほどの無謀を俺は持っちゃいない。
まずはクルレーン率いる鉄砲隊。
さらにその背後に弓隊だ。
彼らはすでに銃に弾を込め、弓に矢をつがえている。
さて、じゃあ見せてもらおうか。
くるり、とその場で回転し、敵の方を見る。
俺の頭越しに撃て。
そのつもりで、味方に背を向ける。
それを認識したのか、どうでもいいと思ったのか、
「撃て!」
クルレーンの静かだが激しい号令の下、耳をつんざくような爆発音が響く。
俺の左右から鉄砲の弾と弓矢が飛ぶ。
誤射で背中から撃ち殺されるならそれもまたそれ。
俺の運命ということだろう。
目の前で敵がバタバタと倒れていく。
鉄砲に当たる者、弓に射られる者。
どちらにせよ、命が1つ、また1つと消えていく。
あいつは、これを悲しむだろうな。
ふとそんなことを思った。
あいつは味方に対し、情に厚いだけじゃない。
敵にもその慈悲を向ける。
それは悪いわけでは――いや、悪い。
命のやり取りをしているのだ。相手を殺さなければこちらが殺されるだけなのだ。
その慈悲を与えた敵が、味方を殺す世界なのだ。
もちろん彼女はそれをわきまえていて、それでいて心を痛めるのだから、もうひどい矛盾を抱えて生きているようなもの。
だからこそ逆に、そんな彼女の力になりたい。
痛めた心を癒せる存在になりたい。
「……はっ、戦いの最中に思うことじゃないな」
俺がここまで心を乱されるのは珍しい。
それほどの存在だということだろう。
だから守ろうか。
皆を、国を、家族を、彼女を。
鉄砲の音がやむ。
弓が断続的に敵を射撃するが、横に広がったため一度に倒せるのは前列くらい。
そして敵の方が圧倒的に多いのだ。犠牲を気にせず、ひたすらに突っ込んでくる。
立ち上がる。
「クルレーン、下がれ! 俺たちが時間を稼ぐ!」
俺の声が聞こえたのか、鉄砲隊と弓隊が下がる。
そして出てくるのは歩兵隊だ。
彼らは身長の倍以上はある長い槍を持っていて、剣は腰にさしたままだ。
それでどうやって戦うのかと思ったが、ジャンヌはまたとんでもないことを言い出したのだ。
「槍衾ねぇ」
槍なんてものは、騎馬兵が地上の敵を仕留めるのに使うものだと思っていた。
だが彼女の発想は違った。歩兵に槍を、身長の倍ある槍を持たせ、それでたたくというのだ。
なんとか、とかいう歴史上の人物が使っていたらしいが知らない。知らなくていい。
そして今回。
その長槍を、柵から突き出すのだ。
そうすれば柵と槍、二重の防備によって敵は近づけない。
いわば棘のついた盾のようなもの。
それだけで敵の勢いをそぐことができるのだから、面白いものだ。
とはいえそれは一時の時間稼ぎ。
結局は柵を境にした白兵戦が行われる。
そうなったら槍を投げて剣に持ち替えればいい。
敵が柵を倒そうとするのをひたすらに叩きのめせばいいのだ。
柵は時間もなく荒く作ったから、ところどころに隙間がある。
そこは俺のような白兵の達人が防備を固めるわけで、俺はそこで敵を待ち受ける。
「来るぞぉ!」
歩兵が長槍を柵に通すようにして構える。
俺は目をつむり、深く息を吐く。
鉄棒を1つ振って、握り具合を確認する。
緊張はしていない。
大丈夫、動く。
敵軍。
鉄砲と弓でかなり痛手を負ったとはいえ、絶対数が多く、未だに意気軒高。
遠距離攻撃がなくなったと安心してそのまま突撃してくる。
その距離が20メートルもなくなった時に、柵の間から体を踊りださせた。
「た、隊長! 危険です!」
部下の制止。
そんなの構うか。
危険?
それがどうした。
俺は先鋒だ。
なら誰よりも最初に突っ込まなきゃ、次が続かないだろ。
目の前の敵兵。
貧相な体つきに武具などかみっぺらのようなものでしかない。
弱い。
数を頼みにしているだけだ。
そう判断すれば早い。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
雄たけびを上げ、踏み込んだ。
手にした鉄棒を大きく振り回し、そのまま眼前の敵に叩きつける。
鎧、いや、骨の砕ける音。
5人ばかりが吹き飛んだ。
それでその周辺の温度が一気に下がる。
だが逆に燃えるのが俺だ。
だから叫ぶ。
この戦い。
そう簡単に、いや絶対に負けるわけにはいかないから。
「次、来いやぁ!」
残りの敵数がいくらいるか。
そんなことを考えるのはやめた。
ただジャンヌに言われたからここを死守する。
当然だ。
ここを突破されればあとは遮るものもなく王都まで一直線。
何が何でもここで食い止めなければいけない。
そのために俺がやること。
この場所を時間まで守ること。
いつまでか。それは知らない。
けどジャンヌが必ずやってくれる。そう信じているからいつまでも耐えてやる。
正直、自分がここまで1人に入れ込むとは思ってもみなかった。
それまで適当に恋して、適当に振って振られて、適当に人生を楽しんでいたのだ。
それが彼女と出会って急変した。
帝国の支配下にあるオムカが独立し、いち部隊長でしかなかった俺が、ジーンと共に王国の双璧なんて呼ばれるようになった。
さらにシータ王国、ビンゴ王国と同盟し、南群に勢力を伸ばし、ヨジョー地方を奪い取り、ビンゴ領の一部を割譲され、オムカは一大国となった。
ほんの数年前まで考えられなかったことが現実に起きている。
それを引き起こしたのが、15にもならない子供だったのだから他人事なら冗談だと笑い飛ばしただろう。
最初の出会いは今思えば最低だった。
ジーンの子供だとか、副官だとか、言ってる言葉が面白くて笑い転げていた。
だがその直後に鮮やかな手並みで敵を一蹴し、俺たちをかばい、ハカラの無茶難題に軽々と答え、そしてなんとオムカを独立に導きまでもした。
そのころからだ。
俺の彼女に対する目線が変わったのは。
見目の美しさもさることながら、その聡明さ、意志の頑強さに惹かれ、なにより時折見せる戦いへの憂い、打たれ弱いところを見せる彼女に心をわしづかみにされた。
何より彼女のパンチが効いた。
王都防衛戦の最終日。
シータ軍を連れて戻ってきたときのことだ。威力も何もないが、俺を本気で心配したことが分かる一撃で、それがなんとも愛おしいものに感じたのだ。
そうなるともう夢中だった。
すべてをジャンヌ中心に考えることになった。
正直、ビンゴ行きに同行できる時は嬉しかったし、彼女が撃たれたと知った時には初めてショックでぶっ倒れそうになったし、絶対に死なせないと誓ったものだ。
その時に聞かされたことには驚いたが、だからどうした。
――そう、だからどうしたのだ。
俺は女性であること以上に、ジャンヌ・ダルクという個人に惹かれたのだ。
その正体が何者であろうと、俺が知っている彼女は彼女でしかない。
だから変わらない。
彼女への愛情も、彼女への信頼も。
逆にそれを語ってくれたのが俺だけだと思えば、そんなことはもう2人だけの隠し事みたいで逆に燃える。
あとでジーンも知ったと聞いた時は、小一時間ほど殴り合ったが。
その結果のこの20万だ。
はっ、もう一度言ってやる。
――だからどうした。
俺の後ろには(正確には別の指揮のためここにはいないが)あの『旗を振る者』がいるのだ。
建国の英雄と同じ名前を持つ彼女がいるのだ。
負けるわけない。
そう思い一歩前に出る。
柵の一番前だ。
先鋒。つまり俺から戦闘が始まる。
名誉なことだ。
それを任せてくれた彼女には感謝しかない。
身長より長い鉄棒を地面に突き刺す。
30キロの鉄を鍛えに鍛えた逸品だ。
今回の戦い、長丁場になることから刃こぼれの起こる剣や折れる可能性のある槍は捨てた。
あるのはこの鉄棒のみ。これならば刃こぼれすることも折れることもなく、いつまでも戦える。
棒術を習ったのはここ1年のことだが、俺がこれを振り回すだけで十分凶器になる、と太鼓判を押してくれたのはジーンだ。
だからあまり気にせず戦えばいい。
長丁場で歩兵をまとめる立場にいることから馬にも乗っていない。それでいい。
敵の前衛。
その顔が見える位置まで敵が迫ってくる。
背後から動揺の気配を感じた。
当然だ。
こんな大軍を相手に、こんな粗末な柵と過少な人数で守ろうというのだから、自殺行為に思えるだろう。
仕方ない。
いっちょやるか。
「俺たちめがけて20万の敵が殺到してくる! 目の色を変えて殺戮をもとめて怒涛の如くやってくるぞ!」
振り向き、大音声で言い放つ。
20万の圧が背中に来るが、はっ、関係ないね。
まずは事実の確認。
そしてそれがどうでもないように言い切る。
「だからどうした!」
言ってやる。
そんなことへでもないと、兵たちに分からせてやる。
「俺たちの後ろには、王都がある! 国がある! 守るべきものがある! それを、帝国とかいう奴らの好き勝手にさせることはできねぇよな!」
兵たちのざわめきが静まった。
動揺した瞳が落ち着く。
守るべき人。家族。恋人。友達。
誰でもいい。
それが力になるなら。
そして何より彼らの力になるのは、ただ1つ。
「お前らは俺を信じなくてもいい! ジャンヌを信じろ! 『不敗のジャンヌ』の力をただ信じて、戦えぇ!!」
一瞬の間。
その時には彼らの瞳に炎がともったのを見た。
そして、熱気が来た。
大地を轟かすほどの咆哮。
誰もが熱気に支配され、今にも飛び出しそうな彼ら。
それを爆発させるのは、まだ早い。
向こう、後方で全体を見ているジーンはやれやれと思っているだろう。
大丈夫だって、そこらはわきまえている。
「よし、全軍! 力をためておけよ、すぐ爆発させてやる!」
俺がその場でどかり、と胡坐をかいてやる。
敵に背を向けて座り込む。
大将がどっかりと座っていれば兵たちは動揺しない。
ジャンヌから教わったことだ。
だから文字通り座ってやった。
俺の声に従ったのか、作戦を思い出したのか、彼らは爆発することなく、その場で待機した。
先鋒と言っても、戦闘の口火を切るのは俺たちじゃない。
さすがに無策で20万に突っ込むほどの無謀を俺は持っちゃいない。
まずはクルレーン率いる鉄砲隊。
さらにその背後に弓隊だ。
彼らはすでに銃に弾を込め、弓に矢をつがえている。
さて、じゃあ見せてもらおうか。
くるり、とその場で回転し、敵の方を見る。
俺の頭越しに撃て。
そのつもりで、味方に背を向ける。
それを認識したのか、どうでもいいと思ったのか、
「撃て!」
クルレーンの静かだが激しい号令の下、耳をつんざくような爆発音が響く。
俺の左右から鉄砲の弾と弓矢が飛ぶ。
誤射で背中から撃ち殺されるならそれもまたそれ。
俺の運命ということだろう。
目の前で敵がバタバタと倒れていく。
鉄砲に当たる者、弓に射られる者。
どちらにせよ、命が1つ、また1つと消えていく。
あいつは、これを悲しむだろうな。
ふとそんなことを思った。
あいつは味方に対し、情に厚いだけじゃない。
敵にもその慈悲を向ける。
それは悪いわけでは――いや、悪い。
命のやり取りをしているのだ。相手を殺さなければこちらが殺されるだけなのだ。
その慈悲を与えた敵が、味方を殺す世界なのだ。
もちろん彼女はそれをわきまえていて、それでいて心を痛めるのだから、もうひどい矛盾を抱えて生きているようなもの。
だからこそ逆に、そんな彼女の力になりたい。
痛めた心を癒せる存在になりたい。
「……はっ、戦いの最中に思うことじゃないな」
俺がここまで心を乱されるのは珍しい。
それほどの存在だということだろう。
だから守ろうか。
皆を、国を、家族を、彼女を。
鉄砲の音がやむ。
弓が断続的に敵を射撃するが、横に広がったため一度に倒せるのは前列くらい。
そして敵の方が圧倒的に多いのだ。犠牲を気にせず、ひたすらに突っ込んでくる。
立ち上がる。
「クルレーン、下がれ! 俺たちが時間を稼ぐ!」
俺の声が聞こえたのか、鉄砲隊と弓隊が下がる。
そして出てくるのは歩兵隊だ。
彼らは身長の倍以上はある長い槍を持っていて、剣は腰にさしたままだ。
それでどうやって戦うのかと思ったが、ジャンヌはまたとんでもないことを言い出したのだ。
「槍衾ねぇ」
槍なんてものは、騎馬兵が地上の敵を仕留めるのに使うものだと思っていた。
だが彼女の発想は違った。歩兵に槍を、身長の倍ある槍を持たせ、それでたたくというのだ。
なんとか、とかいう歴史上の人物が使っていたらしいが知らない。知らなくていい。
そして今回。
その長槍を、柵から突き出すのだ。
そうすれば柵と槍、二重の防備によって敵は近づけない。
いわば棘のついた盾のようなもの。
それだけで敵の勢いをそぐことができるのだから、面白いものだ。
とはいえそれは一時の時間稼ぎ。
結局は柵を境にした白兵戦が行われる。
そうなったら槍を投げて剣に持ち替えればいい。
敵が柵を倒そうとするのをひたすらに叩きのめせばいいのだ。
柵は時間もなく荒く作ったから、ところどころに隙間がある。
そこは俺のような白兵の達人が防備を固めるわけで、俺はそこで敵を待ち受ける。
「来るぞぉ!」
歩兵が長槍を柵に通すようにして構える。
俺は目をつむり、深く息を吐く。
鉄棒を1つ振って、握り具合を確認する。
緊張はしていない。
大丈夫、動く。
敵軍。
鉄砲と弓でかなり痛手を負ったとはいえ、絶対数が多く、未だに意気軒高。
遠距離攻撃がなくなったと安心してそのまま突撃してくる。
その距離が20メートルもなくなった時に、柵の間から体を踊りださせた。
「た、隊長! 危険です!」
部下の制止。
そんなの構うか。
危険?
それがどうした。
俺は先鋒だ。
なら誰よりも最初に突っ込まなきゃ、次が続かないだろ。
目の前の敵兵。
貧相な体つきに武具などかみっぺらのようなものでしかない。
弱い。
数を頼みにしているだけだ。
そう判断すれば早い。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
雄たけびを上げ、踏み込んだ。
手にした鉄棒を大きく振り回し、そのまま眼前の敵に叩きつける。
鎧、いや、骨の砕ける音。
5人ばかりが吹き飛んだ。
それでその周辺の温度が一気に下がる。
だが逆に燃えるのが俺だ。
だから叫ぶ。
この戦い。
そう簡単に、いや絶対に負けるわけにはいかないから。
「次、来いやぁ!」
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