知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第5章 帝国決戦

第34話 ヨジョー地方防衛戦4日目・終戦

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 敵が消えて、残ったのは無数の死骸と未だ完全には消えない炎の残滓。

 敵の死傷者は3万を超える。焼け死んだのが一番多く、鉄砲、弓にあたった者や爆雷で吹き飛ばされた者が次ぐ――かと思いきやそうではなかった。

 敗走する味方につきとばされ、踏みつぶされた人が思いのほか多かった。
 その負傷者が1万以上にもおよび、それらは武器を奪ったうえで捕虜としている。

 捕虜の管理に人的にも金銭的にも余裕はないが、今彼らを放てば腹をすかせた盗賊団を世に放つだけだ。
 だから落ち着くまではこちらで監視しながら管理するしかない。

 まぁ怪我人が多いから、そう無茶なことはすぐにはしてこないだろう。

 対してこちらの被害は……5千人ほどだ。

 これまでの過去最多。
 だが5万対20万の犠牲としてはとんでもなく少ない数字だ。それもこれも、綺麗に策にはまったのもあるが、あいつの鬼神のごとき働きによるものだ。

「よぅ、ジャンヌ」

 急ごしらえのテントに入ると、毛布の上に寝かされたサカキが弱弱しく声をかけてきた。
 もはや彼の原型はなく、包帯の白と血の赤で包まれたミイラ男だった。

「ちっとばかし、無茶しちまったよ」

 力なく笑うサカキ。
 包帯の間から見える唇を微妙にしかめるのは、傷の痛みのせいだろう。

「まったく、貴方という人は……」

 一緒にお見舞いに来たジルが嘆息する。

「ジル、彼は」

「残念ですが……」

 ジルは声を落として悲痛な表情を浮かべる。

 まさか――

「ええ、殺したくても死にやしないですよ。残念ながら」

 と言って、サカキの頭を叩くジル。

「いってぇ! てめぇジーン!」

「ほら、死にそうにないでしょう?」

「な、なんだよぉ……」

 脱力する。
 まさかと思ったから、ちょっと涙が出てきてた。

 慌てて袖で目をこする。

「ええ、ですがそもそもこいつが、こんな無茶をしなければ――いえ、もっと犠牲が出てたでしょうね。というわけでその功績を踏まえて、労わってあげているのです」

「痛い! だから叩くな、痛いだろうが!」

 これで労わっているのだろうか。
 まぁこの2人ならではのものがあるんだろう。ここまで茶目っ気全開のジルも珍しい。

「ま、まぁなんいせよ良かった。あれだけ盛大なフラグかました後だからな」

「おお、言っただろ。俺の心にはジャンヌのフラッグがなびいてるってな。よし、帰ったら挙式だな」

「どうやら傷に頭をおかしくする菌が入ったようです。さっさと王都に送り返すべきですね。そして二度と出てこれないよう監禁し、そして結婚式でなく葬式を出してあげましょう」

 笑みを浮かべたまま、とんでもないことを言い出すジル。

「だぁー! 嘘だよ、嘘。つか送り返されんの? 俺は残るぞ。残って帝国の奴らを――あ、痛ててて!」

「この傷じゃ無理だろ。大人しく帰れ」

「でもよぅ、ジャンヌ」

「俺も王都に帰るぞ」

「よし、一緒に帰るか、ジャンヌ」

 前言撤回が早すぎる。
 本当に調子がいいんだから。

「ジャンヌ様」

 ジルが少し不満そうな声を出す。

「言うなよ、ジル。捕らえた皇帝の処遇について、マリアにマツナガと話し合わないとな」

 一国の王を捕らえた以上、その処遇を現場の判断でするのは重すぎる。

 いや、仮に判断してもマリアは怒らないだろう。
 だが世間様はどう思うか。

 俺の越権行為と見て、マリアが舐められてると見る人も出てくるだろう。
 そうなったら、俺を気に入らない人間が足を引っ張ってくるかもしれない。
 最悪の展開として、マリアを担いで国を二分する内戦に発展する可能性もある。

 まさかと思うが、そのまさかが起こりえるのは歴史が証明している。

 だから一度王都に戻って、話を詰めなければならないわけで。

「ジルには悪いが、少し待っていてくれないか。ブリーダたちが戻ったら、陣を少し北に向ける感じで。相手もヨジョー城に籠ると思うが、まさか皇帝陛下がいる以上、下手な攻撃はしてこないだろう」

「はぁ、それは問題ありませんが……」

 正直、人質なんてやり方は気が進まないが、ここに至っては仕方ない。
 こうでもしなければ、負けていた可能性だってある。

 俺が不在の間は心配だが、相手も相手で現場では判断しづらい――というか曲がりなりにもトップが不在になるのだから、うちよりも動きは鈍くなるだろう。

「へっ、どうやら俺のやったことは無駄じゃなかったみたいだな」

「ああ、大殊勲ものだ、サカキ。だから帰るまでに死ぬなよ?」

「死ぬかよ。へっ、じゃあちょっとばかし寝るわ。愛してるぜ、ジャンヌ」

 そう言うと、電池が切れたように夢の世界へと旅立つサカキ。
 呼吸は聞こえる。大丈夫だ。

 俺とジルは彼を起こさないようテントの外に出た。

 するとジルが大きくため息をついて、その場であろうことか膝をついた。

「ど、どうした?」

 ジルのいきなりの行動に、俺が逆にびっくりした。

「正直、よく持ってくれました。ジャンヌ様の前では強がっていましたが、本当に死んでもおかしくなかった……」

 ジルが少し涙ぐんでいることにまず驚いた。
 そしてサカキが本当にギリギリだったことにも。

 あれだけの憎まれ口も、心配の表れだったようだ。

 男の友情ってやつか。
 なんだか羨ま――って待て待て。俺も男のはずだろ? こういうことは分かるべきなんじゃないのか!?
 うん、分かる。俺にはジルの想いがよぅく分かる!

 と、サカキの無事を祝いつつも、個人的な危機を感じていると、

「隊長殿ー! 大変ですー!」

 うるさい奴が来た。

 サカキを起こすのはまずいから、テントから少し離れてクロエを迎えた。
 その後ろから困り顔のウィットが来るのも見えた。

「もう、本当に勘弁してくださいよ。なんですか、あの男? 『俺様を誰だと思っている? 皇帝にふさわしい扱いを。そうだな、まずは酒と女。ふむ、お前はどうでもいい。そっちにしゃくをしてもらおうか? なに? マールというのか? 良い名ではないか』ですってぇ! 本当に失礼! てか捕虜ですよね!? ちょっと2、3発ぶん殴っていいです!?」

「いいわけないだろ」

 つーかこの期に及んでそんな態度かよ。
 あの皇帝様。大物か、何も考えてないか。

 多分後者だな。

「で? その何が大変なんだ? 皇帝に気に入られなかったから、任務を放棄して愚痴を言いにここに来たなら……怒るぞ?」

「あ、いえ、違うんです! えっと、えっと……」

 と、クロエがテンパっている間に、ウィットが追い付いた。

「はぁ……はぁ……こいつ、なんで……はぁ、こんな元気……はぁ」

「えっと、ウィット? 大丈夫か?」

「あ、はい……。いえ……お気遣いなく……」

 と言ってもまだ息を切らせている。
 しかしこの2人をこんなに慌てさせるとは何が起きたか?

「あ、そうだ! 白旗です!」

「白旗?」

 脈絡のないクロエの言葉に首をひねるしかない。
 だからウィットに説明を求めるために視線を向ける。

 ウィットはようやく呼吸を整え、

「えっと……はい。落ち着きました。それが、帝国の軍装をした者が3人。馬に乗って白旗を上げて近づいてきました。要件を聞くと、なんでも皇帝の身柄と和平交渉のためにジャンヌ隊長にお会いしたいと」

 ジルと顔を見合わせる。
 まさか相手から、しかもこんなに早く対応が来るとは思わなかった。

 そして、さらに驚かせる内容が俺を待っていた。

「自分の名前を言えば必ず応じるとも言ってました。相手の名前はエイン帝国元帥府大将軍、ナガハマ・アンとのことです」
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