知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第5章 帝国決戦

第52話 和平交渉3・教皇様かく語りき

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 人間、小さな衝撃でも立て続けにくらえば頭が働かなくなるらしい。
 それがまさに今の俺だ。

 達臣の登場に加え、この男が再び俺の前に出てくるとは思わず、明らかに精神が揺さぶられる。

「尾田、張人……なんで、お前が?」

「戻ってこないとは言わなかっただろ? つかひっでーなぁ。せっかく各地を回って色々な情報仕入れてきたってーのに、俺を置いてこんな面白いことやってんだからさ」

「でもここの警備は――」

「はっ、確かにすっげぇ警備よ? でもさ、俺のスキルのこと、忘れてないか?」

 そうだ。この男のスキル。
 それがあればプレイヤー以外の人間は、すべて言うことを聞く。

 強引に突破してここにたどり着くのもわけないってことか。

「張人……」

 水鏡が呆然としたように尾田張人を見やる。

「ハロー、ミカ姉。相変わらず綺麗で何より」

「む……」

「なっ! てめぇ! 姐さんに気安く!」

 張人が手をひらひらと振る、その軽薄そうな態度に雫と良介が噛みつく。

「はいはい。弱い雑魚ほどよく吠える」

「ぐっ、てめぇ……」

「良介、ちょっと黙る」

「あ、はっ。すみません、姐さん」

 そういえばシータ王国とも因縁あったんだよな。
 てか色々なところに敵作りすぎだろ、こいつ。

「張人、久しぶりですね」

「あら、これは赤星さん。お久しぶりー。って、怒ってる? リーナちゃんを連れてったこと」

「いえ、まったく微塵も怒っていません。あれは予知に出ていたことですから。ええ、ちっとも怒ってませんよ」

「あはは、そんな風に言いながら青筋立ててんじゃん。うわー、こえぇ」

「…………ま、いいでしょう。この際、不問にしましょう。ここにすべてのプレイヤーが打倒女神のために集うのですから」

「ふーん、まぁいいけどね。それよりそっちの男は誰よ?」

「ああ、彼は――」

 と、いつまでも雑談が続きそうだったので、俺は2人の間に割って入った。

「おい、ちょっと待ってくれ。そんな雑談してる場合じゃないんだ」

「んだよ、久々の再会なんだからもうちょっと喋らせろよ」

「ここがなんでもない町中だったらいくらでも喋ってろよ。けどここは公共、むしろ外交の場だ。用がないなら出て言ってくれ」

「ちっ、面白味のねーやつ」

「そりゃ面白味で食ってるわけじゃないからな」

「相変わらずの減らず口だな。友達いないだろ」

「お前に心配される交友関係じゃ――」

「ちょっと、アッキー。あんたも話外れてるわよ」

 水鏡に指摘され、俺は一度、口を閉じた。
 ったく。やっぱりこの男との相性はよろしくない。いつまでも平行線のイメージだ。

 いや、落ち着け。
 こいつにペースを乱されたら負けだ。せっかくこぎつけた和平交渉。こんな奴の乱入で駄目にされてたまるか。

「聞きたいことがある、煌夜。今、尾田が言ってた“全部は言っていない”ってことについて」

「聞こえていましたか」

 煌夜が忌まわしそうに顔をしかめて尾田張人を見る。

「おいおい、俺に当たるのは筋違いじゃないか?」

「……ええ、そうですね。どのみち話すつもりでした、全てを。まずは私たちがこの世界に来たところからですか」

 そして小さく深呼吸して煌夜は物語を始める。

「私と麗明は幼馴染でして、将来を誓った仲でした」

「初っ端がノロケかよ」

「張人、怒りますよ?」

「へーへー、部外者は黙ってますよっと」

 こほん、と煌夜はわざとらしく咳ばらいをして再び口を開いた。

「しかし私たちは死に、この世界へとやってきました。ただこの世界のことを知り、私は愕然としました。あまりに、声の出せない麗明には厳しすぎる環境だと。故に、私は女神と取引をしました」

「取引?」

「ええ。麗明と一緒にいさせてくれ、そして彼女の声を戻してくれ、と」

「それであの女神は?」

「叶えてくれましたよ――半分だけ」

「あぁ」

 今の2人を見れば、それが前者だけ叶えられたと分かる。
 そりゃ声を戻してくれ、なんてのも、そう簡単に叶うような望みではないだろう。いかに相手が女神とはいえ。

「残りの半分は、条件を完全達成した暁にと言われました」

「条件?」

「パルルカ教の再興です」

 そこで出てくるわけか。
 それから5年かそこらでここまで隆盛させたというのだから、その手腕とバイタリティと執念は凄いと素直に思う。

「でも今なら再興と言っていいほどの成果なんじゃないのか?」

「…………」

 煌夜が沈黙する。
 そこから放たれる気配は、殺気と言い換えてもそん色ないほどに大きく歪んでいた。

「そこが私があの女神を見損なっていたところです。あの女神はことあるごとに『うーん、まだまだだよね?』とか『え? コーヤちゃんはもっとできる子だと思うんだけど?』などと言って対応を引き延ばしたのです」

「あー……」

 悪徳商法かよ。
 再興の定義をしっかり決めていなかったがゆえに、契約書の隅をつつかれるような。

 そりゃ恨み言の1つや2つぶつけてもいいだろう。

「――って、え? ってまさかそのために女神を殺すとか言ってる!?」

 完全に私怨、っていうか…………うん、なんていうかさ。いや、確かにかわいそうなところはあるけど……そのためにわざわざ? という気持ちもある。

 てゆうかそんなので争いを引き起こすなんて、許されるようなものじゃないだろ。

「当然ではないですか! あの女神は私たちを侮辱した! 希望をちらつかせ、馬車馬のように働かせる。そんな者に頼った自分が恥ずかしいくらいです!」

「えーっと……」

「というのは冗談です」

「冗談なのかよ!」

 いや、それにしてもさっきの怒りは結構本気と見たぞ。
 それがすべてでないにせよ、彼が本気だということは分かった。

 ただ当の煌夜は先ほどまでの殺気もどこへやら。
 柔和な表情で話を続ける。

「もちろんそれだけのことで、ここまで大がかりなことはしませんし、死んでいった人たちに申し訳が立ちません。それくらいの分別は私にもついています」

「じゃあなぜ――」

「おそらくこのことを話せば、貴女はきっと頷いてくれる。そう信じて語りますよ」

「いいから早く結論を言えよ。教皇だからって説教好きになられても、こっちとしては回りくどいんだよ」

「失礼しました。それではお話ししましょう。私がどうしても、女神を殺さなければいけない理由。たとえどれだけ血が流れようと、達成しなければならないわけ」

 そして俺はこの後、この日、いや、これまでで最大の衝撃を受けることになる。

「このまま我々プレイヤーの中の誰かが生き残ると、この世界が滅びます」

「は?」

「そしてその生き残ったプレイヤーも、元の世界に戻ることなく――死にます」
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