知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第5話 敵勢力分析

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 水鏡に続いて、ジルたちからは少し離れた場所で俺は水鏡に対する。

「で、どうした?」

 そう聞きはするが、何の話かは大体検討がついた。

「なめられてるわよ、うちら」

「やっぱり、そう思うのか」

 何の話か、もちろん帝国軍の話だ。

「相手の方が多いのに、まだ攻めて来ず、私たちが来るまで待った。素人目で見ても、そう思うでしょ」

「いや、でも相手は攻城戦を嫌った可能性も」

攻城戦それよりも、兵数の多い私たちと戦った方が勝つ見込みが高いってことでしょ? 舐められてるのは変わらないわ」

 まぁ、確かに。
 けど水鏡が感じるほど怒りは感じない。
 そっちの方が合理的というのは分かるから。

「ま、いいわ。ただあの女? 元帥とかいうの? アッキーは手合わせしたんでしょ?」

「……ああ」

 ビンゴ王国の救援で確かに顔を合わせて手合わせした。
 いや、戦ったというか、最初は相手にされず、無視して城攻めしているところを横から殴りかかったのが正解だけど。
 しかもそれで完全な勝利じゃなく、喜志田を失うという勝ったのか負けたのか分からない状況になったわけで。

 その喜志田が言っていた。
 元帥の強さ、それは速さだと。

 自分の後任を倒した時も、ビンゴ王国を滅ぼした時も、そして北方で異民族と戦っていたという時も、圧倒的な速度で敵を強襲し勝利を重ねてきたという。

 さらに喜志田の死に一番近く、何より直接刃を交えたグリードからも聞いた。
 あの時、喜志田の方が兵が多く、あと一歩のところまで追いつめたと。

 だが急に敵の逆襲により、グリードは斬って落とされ、喜志田は死んだ、と。

「ふぅん……でも、それおかしくない?」

 俺の話を黙って聞いていた水鏡が首をかしげる。

「おかしいって、何が?」

「私だって一応、あの講和の場にいたわけだし、あの元帥ってのも見てるわ」

「ああ、それが?」

「鈍いわね。あなたそれでも天才軍師?」

「ちゃかすなよ」

「少しは考えなさいよ。私も見たけど、あの元帥って人。何かそれほど武芸の達人みたいな感じしなかったじゃない? すらっとしてて、モデル体型だけど、それって逆に筋肉がなくて強いのとはかけ離れてると思うんだけど」

「あ……」

 確かに。
 てゆうか何で今まで気づかなかったのか。

 その理由は簡単だ。
 オムカうちにはそんな女性チートがいっぱいいて、そういうものだと認識してしまったからだ。

 けど確かに、ブリーダも手こずったというグリードを、背丈はあるものの華奢な彼女が倒したというのは普通ではあり得ない。

 けどこの世界にはそのありえないを、ありえるようにするものがある。
 つまり――

「スキル、か」

「多分ね。私とかあきらみたいな補助系のものじゃなく、明らかに戦闘に直接関係するスキルでしょ」

 あるいは里奈みたいな、か。

 いやいや、改めて考えれば反則だな。

 この数日。
 復活してから頭を悩ませているのはまさにそれ。

 元帥の攻略法だ。

 喜志田やグリードの話だけじゃなく、前に帝国を探ってもらった時にイッガーが彼女の戦歴を調べてくれた。
 それらを総合すると、軍事に関してはほぼ無敵。

 数値化すれば統率100、武力は90前後、知力も80から90はあるだろう。
 さらに戦闘に有力なスキルまで持っているというのだから、演義補正のかかった関羽かんうを相手にするようなものだ。

 さらに怒りっぽいもくガキっぽいところがあるも全てが高水準な張飛ちょうひこと大将軍。
 反骨精神ありまくりだが堅実にあの手この手で攻め寄せてくる性格最低の趙雲ちょううんこと尾田張人。
 さらに彼らに君臨する、魅力MAXの劉備りゅうびこと煌夜。
 そして達臣がどう絡んでくるか分からないが、少なくともホウ統レベルのことはしてくるだろう。

 いやいや、ずるいだろ。
 何で蜀のメンツが大国にいるんだよ。

 それならうちもそれに対抗して魏に当てはめてみるか。
 ジルとサカキの双璧が夏侯惇かこうとん夏侯淵かこうえん
 騎馬隊の曹洪そうこうがブリーダで、守護の曹仁そうじんが……いないや。
 てか鉄砲隊がいる時点でもう色々違うわけで。だったら織田五大将の方がまだ……いや、もうやめよう。

 たとえは別にして、厳しい戦いになることは間違いない。

 と、そんなことを考えていると、あることを思いついた。

「いいのか、尾田張人のこと」

「……あいつは敵よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「すまん。できるだけ当たらない配置にする」

「それで負けたら意味ないでしょ。遠慮することないから」

 とはいえ顔見知りが殺し合いをするというのもなぁ。
 いや、それを言えば俺もそうか。

「それより問題はあの元帥でしょ。策はあるの?」

「……あるには、ある」

「煮え切らないわね」

「それほど強敵なんだよ。ただ、つけ入る隙はなくはない」

 そう、彼女の戦いを分析した結果。
 1つの傾向が見える。

 それはつまり、最終局面においては、必ず彼女が少数を率いて先頭を切って突っ込んでくるのだ。

 全軍の大将が少数で先頭から突っ込んでくるなんて、自殺行為以外の何物でもない。良いまとだ。

 近代以前。
 総大将というのは、兵たちの精神的支柱であるのと同時、その軍のシンボルだった。
 総大将が生きてこそ勝つことができて褒賞にあずかれるのに、死んでしまっては勝つことすら困難になる。

 さらに総大将になりうる人間は、一般兵とは身分も家格も装備も力量も違うし、親衛隊による武力も違う。
 それが死ぬということは、それを討ち取った敵はその総大将より強い――すなわち一般兵では勝ち目がないと思ってしまうのだ。
 だから総大将討ち死ににより、全軍崩壊という現象が起こりうる。

 それを現状に当てはめれば、その突っ込んできた元帥を討ち取れば勝利は間違いない。
 だがこれが難しい。

 戦況が互角か劣勢で敵味方が入り乱れているところに突っ込んでくるのだ。
 だからそれをピンポイントで討ち取れというのは無理な話。

 唯一対抗できるのはブリーダの騎馬隊だが、そのためにブリーダらを温存して元帥が出てくる前に負けてしまっては元も子もない。
 仮に無事に対決までいけたとしても、先述の通り、グリードですら斬って落とされた相手にブリーダが勝てるのか、ということ。
 ブリーダが弱いというわけじゃない。
 相手が反則的に強い――つまりスキルが強力すぎるということだ。

「なにそれ、隙じゃないじゃない」

「まぁ、そうなる、かな?」

「呆れた。天才軍師の名が泣くわ」

「うるさいな。無理なものは無理。諸葛亮しょかつりょうだって、攻め来る大軍に長坂では太刀打ちできなかっただろ」

「なにそれ。意味わかんないけど」

 ぐっ……そりゃそうか。
 あーあ、喜志田だったらこういう時に乗ってくれるネタだったのに。

「まったく、厄介ね。敗勢になったら一気に勝負をつけにくる。しかもそれがめっぽう強いとか。手の打ちようがないわ」

「いや、あるさ」

「え?」

 そう、あることにはある。
 それをひたすらに考え続けた。
 そして今、スキルのことも考慮に入れて、さらに考える必要があるが、大枠は間違っていないはず。

 問題はいかにしてその状況に持っていくか。それだけだ。

「簡単な話だよ。最終局面で元帥を動けない状況にすればいい」

「……バカ?」

 それができれば苦労しないわよ、と言わんばかりの冷ややかな視線を向けてくる水鏡。
 けど、今の俺にはそれしか考えつかなかったわけで。

 成功の確率があるのなら、そこに全力を注いだ方がまだ確率は高い。

「そのための仕掛けはいくつか用意してあるよ。ま、それはおいおい皆に伝えてく」

「あっそ。ま、期待しないで待ってる」

 そうぶっきらぼうに言うが、水鏡はどこか肩の力がおりたような表情を浮かべた。

 思えばこいつも勝って元の世界に戻りたい人間だ。
 できれば勝たせてやりたい。戻させてやりたい。

 また1つ、負けられない理由ができた。

 逆に俺の肩には重しが乗っかった気分だった。
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