知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第4話 膠着と到着

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 出発した翌日、俺はヨジョー城に入った。
 結構な強行軍で、正直もう全身がくたくただ。

 けどいつ始まるか分からない以上、1日出発を後らせた以上、しょうがない。
 疲労を押して俺と里奈は軍営へ向かう。

「敵は?」

 俺は会議室に入るや否や聞いた。
 中にいたのはジルとサカキ、アークにブリーダとクルレーン。そしてイッガーだ。

「これはジャンヌ様。先鋒の1万ほどが2日前に向こうの城に入りました。その後、続々と軍が増えており、今では5万ほどになるかと」

「5万か……まだ来るかな」

「おそらくは。10万で押し寄せるだろうと考えています。元帥府の旗は見たのだな、イッガー?」

「あ、はい……最初の1万だけですが。その後のは、特に何も」

「全部元帥府の兵だろう。元帥と大将軍、合わせて5万でも少ないくらいだしな」

「へっ、どれだけ来ようが、頭さえ潰しゃあそれで終わりよ」

 威勢のいいことを言うのはサカキだ。
 その頭を潰すのが難しいだけどな。

「シータはまだ?」

「はい。下流に物見を放っていますが、まだ船団は見せません」

 状況は分かった。
 敵は5万で、こちらは約3万。
 シータが来れば兵数は逆転するが、今は劣勢だ。

 ただすぐに攻めてこないのは、兵数と、このヨジョー城の立地のせいだろう。

 ヨジョー城は去年、手に入れてから防備を固めている。
 さらに北にはウォンリバーという大河があるため、水際での防衛がしやすく、仮に渡られて攻城戦に突入しても敵は背水の陣だからある程度の兵力差なら覆すことが可能だ。

 30万とかで攻めてこられればどうしようもないが、今の兵数がそのある程度ということになる。

 だからそのために帝国はさらなる増援を待っているはずだ。

 しかし、どこか引っかかる。
 再び30万もの兵力を出せる余力があるのか、そして仮に出たとしてあの元帥がそれを使うのか。

 先月あったとおり、多すぎる兵は時としてそれが弱点となる。
 すべてが精強でなく必ず弱兵が存在する。それを狙い撃てば、敵はあっけなく瓦解する。

 だからあの戦い慣れしてるはずの元帥が同じてつを踏みにくるとは思えなかった。

 そう考えると、もうこれ以上の増援はないのでは、という結論が頭に浮かぶ。
 5万というのが、相手にとって適正な兵数ということだ。

 それでも打って出てこないのは、やはり城攻めになるからか。

 それならばそれでいい。
 俺たちはシータの援軍を待ち、そして打って出る。
 そうすれば兵数は逆転。
 戦って勝つ芽が出てくる。

 あるいは1つの可能性として、敵がその状況を待っているのでは、というものがある。
 攻城戦は難しい。なら相手を平地におびき寄せて一気にケリをつけたい、そう思うのもあるだろう。

 かの有名な関ケ原の戦いも、徳川家康が野戦で決着をつけるために石田三成をおびき寄せたという見方もある。

 だがそれは驕りだ。
 戦いというものは、古代からいかに有利な状況を作り出して、楽に勝つかを研究されてきた。命のかかった戦において、スポーツみたいなフェアプレイ精神を見せたところで、負けてしまえば誰にも褒められない。

 負ければ終わり、スポーツみたいに再戦はないのだ。

 だからもし、そうだとすれば。
 これはあの元帥の驕りということ。
 相手の弱点を突くのを信条としている俺からすれば、十分に突かせてもらう隙だ。

 結局、その日に動きはなく。
 旅の疲れを癒すために俺は早めに切り上げた。

 そして翌日。

「来たわよ。来てやったわよ。来てしまったわよ」

「お、おぅ」

 水鏡たちシータの援軍3万6千が到着した。
 そして当の水鏡が不機嫌そうなのだが、それはこれまでと違ったメンツだからだろうか。

「おお、お久しぶりです、ジャンヌ殿。この度は私もともに戦いますので、どうぞよろしくお願いします」

「はっは! 相変わらずちびっ子だな!」

 あまつ淡英たんえいだ。
 確かに久しぶりで懐かしい面々だから、会えて嬉しいけど。
 水鏡が不機嫌な理由が分からない。雫と吉川は彼女の背後で押し黙ってるし。

 なんて思っていると天が、

「ええ、ジャンヌ殿のためならば、火の中水の中穴の中泥の中、いかなる艱難辛苦もものとせず、あなたのためにまい進するつもりです。どうでしょう。2人の力で帝国を打倒した暁には、その帝都で結婚式をあげるのは?」

「は!?」

「あ、いやー。このことは忘れてくれ。てか総帥のこんな浮ついた姿、見たくなかった……船の中でずっとだもんな。あと何日で会える、あと何日で会える、みたいな」

「馬鹿なのよ。緊張感ないのよ。もういい加減にしてよ」

 淡英が嘆き、水鏡が罵倒する。

 ……うーん、水鏡も大変だな。色んな意味で。

 と、そこへこちらのめんどくさいのもやってきた。

「ちょおっと待ったぁぁぁぁぁ!!」

「今、聞き捨てならない言葉が聞こえてきたのですが」

 サカキとジルだ。
 2人は肩を怒らせながら、シータ王国の総司令官に食って掛かる。

「これはこれは。総司令殿と、帝国をひとりで押し返した大英雄殿。お久しぶりです」

「お、おぅ。さんきゅう……じゃなく! なんだその略奪婚は! ふざけるな! ジャンヌの結婚相手はこの俺だ!」

「ええ、サカキの言葉の前半は賛成です。ジャンヌ様はあたなには渡しませんよ」

 にらみ合う3人。
 いや、何やってんのお前ら。

「おいおい、これから一緒に戦うのになんで喧嘩腰なんだよ」

 両国合わせて帝国と対等に戦えるのに、それが分解したらもう終わりだ。
 だからこその心配だったのだが。

「大丈夫だろ。こんなん喧嘩のうちに入らねーよ。これで喧嘩だったら、うちの荒くれどもは毎日が殺し合いだな。ま、男同士の挨拶みてーなもんだ。嬢ちゃんにはちょっち分かんないかな」

「なっ……」

 淡英に説明され、元男の俺としては鼻白むばかり。

「ぷっ、アッキーは男心分からないもんねー。もちろん女心も」

 水鏡こいつ……俺が元男だと知って面白そうにしやがって。

「ふっ、どうやら帝国の後に白黒はっきりつけないといけないようですね」

「おう、受けてたってやらぁ」

「どうあがいたところで、貴方は他国の人間。ジャンヌ様を渡すわけにはいきませんね」

 俺のあずかり知れないところで、俺のことを3人が勝手にまとめてしまっていた。
 言っとくけど、俺、結婚するとか言ったことないからな?

「アッキー、ちょっと」

 そんな光景を見やっていると、水鏡が俺の袖を引いてきた。
 何やら話があるらしい。

 まだギャーギャー騒ぐ連中を後に、俺と水鏡はその場を静かに去った。
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