知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話5 長浜杏(エイン帝国大将軍)

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 敵の布陣は変わらなかった。
 当然だろう。ほんの数時間前に大隊の指揮官が1人死んだのだ。

 そうなれば他の指揮官が立つか、あるいは本隊に吸収されるかするしかない。
 けどそれは下策らしい。

「新任の指揮官が1万もの大軍をすぐに掌握できるはずもありません。それに本隊に取り込めば指揮系統や動きが重くなります。どちらにせよそこが弱点となります」

 たっつんが軍議の席でそう言っていた。
 軍議と言っても敵と対峙している最中。
 敵軍を見下ろす丘の上で、馬を並べての軍議だ。

「敵の布陣に変更はありません。つまり前者の新任の指揮官が立ったのでしょう。これならば昨日お話しした通りの戦術で勝てるかと」

「それで勝てるって? もうここは机上の空論じゃねーぜ?」

 張人きゅんがたっつんに突っかかる。
 意地悪い言い方だけど、確かにその通り。たっつんは考えただけだけど、それを命を張って実行するのは僕様たちだ。
 気軽に言ってダメでした、というのは無責任にもほどがある。

「安心してください。これはあくまで1つの案。そして最終的に決定するのは堂島元帥です」

 無理に主張しないところは好ましい。
 けど、なんかそれって責任の丸投げじゃない?

「ふぅん。この地形を使えば敵はあの馬を使えないってのは納得するぜ? さすがだよ。けどよ。本当に相手がこっちの思う通りに動いてもらえるかどうかなんて、分からねぇよ。第一、指揮官を失ったから一旦さがるなんてこともあり得るだろ?」

「それはあり得ません」

「なんでだよ」

「相手が、あのジャンヌ・ダルクだからです」

「意味が分からねーけど?」

 それは同感。
 だから援護射撃じゃないけど自分からも聞いてみる。

「たっつんは何かわかってるわけ?」

「あのジャンヌ・ダルクにそう時間はありません。ここで我々に勝たないければ、彼らは敗北するのですから」

「ふぅん? そうは思えないけど?」

飛鳥馬あすまさんが東の戦線で優勢ということです。それはそうでしょうね。シータ王国の主力はここにいるのですから。さらに今、帝都では軍の再編が行われています。といっても1万程度ですが。それが川を下ってシータの王都を突く構えを見せればシータ王国の軍は撤退しなければなりません。いえ、こちらの戦線に来てヨジョー城を襲って彼らの背後を断ってもよいでしょう。そうなれば相手はオムカ一国。兵数差は逆転します」

「ふーん」

 なるほどね色々考えてるわけだ。
 まぁ若干僕様たちじゃあ勝てないから、色々裏で動かれてる感じでイラっとくるけど。

「不満はわかります。しかし我々にとって大事なのは勝つことです。死んでしまってはなんの意味もない」

「ま、そこは俺も賛成だけどよぉ」

 張人きゅんが口を尖らせつつ不満顔。
 困ったなぁ。僕様も張人きゅん側だから、一概にうなずけないわけで。

「元帥は? 元帥はどう思ってるの?」

 こうなったら元帥に決めてもらうしかない。
 今まで腕を組んで目を閉じていた元帥は、静かに目を開け、

「…………この戦場ばしょに身を置いて分かったことがある」

 穏やかな様子で語り始めた。
 まるでアフタヌーンティートークをするような優雅さで。

「この戦場ばしょに過程はない。要は勝ったか、敗けたか、だ。昨日、私は初めて敗北した。あのジャンヌ・ダルクにしてやられたのだ」

 おお、元帥が敗北を認めた。
 このプライドと自己しかない元帥が。

「だからといって熱くなっているわけではない。ただ、あのジャンヌ・ダルクを、圧倒的に打ち破って勝ちたい。そう思っているだけだ」

 それって結局熱くなってると思うんだけどツッコミは自重。
 だって僕様もカチンと来ちゃってるわけだし。

「だから背後の軍や、飛鳥馬の軍を頼りにすることはない。こちらから打って出て勝つ。それだけだ。たとえ椎葉の進言が間違っていたとしても、相手が罠を張っていたとしても、それらすべてを食い破り、最後の一兵となってでも勝つ。それだけだ」

 うわぉ。この自意識過剰なまでの闘争心。
 さすが元帥だね。

「うん、僕様が間違ってたよ。元帥はそれでいい。それじゃなきゃ元帥じゃない。うん、うん。いいんじゃない。たっつんの策でこっちから攻めてみようよ」

「あーあー、熱くなっちゃってさ。ま、お二人がそう言うなら? 出戻りの俺からは何も言えないけど」

「ありがとうございます。この作戦はひとえに大将軍がオムカ軍3万を半数以下の兵で抑えられるかにかかってます。どうぞよろしくお願いします」

「あー、はいはい。一番難しいところをもらっちゃってさ。本当にいい性格してるよ。さすが元帥の友達」

「お褒めの言葉としていただきますよ」

 褒めてないけどね!

「あれ、敵、動いてね?」

 張人きゅんが眼前に目を凝らして言う。
 確かに敵が動いている。こちらに来ている。

 だが地の利はこちらにある。
 高いところに陣取ってるし、あちらは身の隠しどころのない原野だ。

 だが――

「ここまで攻めては来ない。配置につけ。こちらから仕掛ける」

「はい」

「へーへー」

 ま、それが元帥だよね。
 地の利なんて不要。圧倒的な力で相手をねじ伏せる。

「了解だよ!」

 答えて部隊に戻る。
 そのまますぐに進発した。

 敵はもう止まっている。
 ほんの目の前。駆けだしたらぶつかる距離。

「作戦は話した通り、部隊を2つに割って敵の一番弱いところを突く! 進め!」

 5万の軍が動き出す。
 それが2万5千に分かれてオムカとシータの両方に向かう。僕様はオムカに対する軍に入った。

 兵力が劣る方が兵を割る。
 多分、それは愚策に見えるだろう。

 けどそれでも勝てる気がしてしまうのは、あの元帥の不思議な魅力というべきか。
 多少は苦戦するだろうけど。

 ま、いいさ。
 ここまで来たら最後の最後まで、全力でぶち殺してやろうじゃん。

「全軍、射撃はじめっ!!」

 僕様の号令で、2日目の戦端が切って落とされた。
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