知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話7 立花里奈(オムカ王国軍師相談役)

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 殺気が来た。
 それを先に感じてから、衝撃が来た。

 優勢に戦っていた味方が、どんどん押されて潰されていく。

 先頭の馬。
 黒い鎧。
 見覚えのある顔がいた。

 身震いがする。

 彼女の戦いは何度も見てきた。
 その時はのすさまじさは知っていたが、味方だということですぐに慣れた。

 けど今は違う。
 彼女を目の前にして。敵として対して初めて知った。

 堂島元帥の前に立つというのがどういうものか。

 圧倒的威圧感。
 彼女の前に立ちふさがることが罪だと思うほどの威圧。
 あんな細い体のどこにそんな力があるのか。

 馬が怖がって前に出ない。
 だから乗り捨てた。
 もとより地面に足がついていた方がいい。地面をしっかりと踏みしめる。それで生きる力が湧く。そう思うから。

 前へ。走る。


収乱斬獲祭ハーヴェスト・カーニバル・カニバリズム
 発動した。
 視界が赤く、いや、あかく染まる。

 嫌悪しつつも、この力があったからこそ、ここまで生きて来れた。
 明彦くんを守ってこれた。

 だからこれは私。私はこの力。
 そう理解して剣を抜いた。
 出陣前に、マリアにもらったもので、由緒正しいものらしい。
 華美な装飾の柄に、ぞっとするような美しい銀色が伸びている。

 けどマリアが私の身を案じて贈ってくれたのだ。

 だからこれで戦う。
 堂島さんを……この私の手で。
 明彦くんを狙う相手を――殺す。

 先頭。
 黒い鎧。
 敵。堂島。剣。迎え撃った。金属音。地面に足がめり込む。
 馬の体重が乗った一撃。普通ならそのまま両断されていただろう。

「はぁっ!」

 けど今の私は普通じゃない。それにマリアのくれた由緒ある剣がある。
 膝の伸縮を使って、思いっきり上に伸びる。
 それで相手の体を、馬ごと弾き飛ばす。

 相手の馬が1メートルほど浮いて、なんとか着地。
 その上では、少し驚いた様子の堂島さんがこちらを見る。

「里奈くんか……」

「お久しぶりです」

 言いながら、斬りつけた。
 それを馬上の元帥に防がれる。

「元気そうで何よりだ」

「おかげさまで」

「帝国に戻るつもりはないか?」

「すみません。姉として、守りたい人がいるので」

「そうか……惜しいな」

 言葉だけ追えば、そこそこ普通の会話。
 近況を聞いて、それに対する受け答え。

 だが状況が尋常じゃない。
 血と汗と泥にまみれた戦場。それもお互い必殺の一撃を放ちながらの会話なのだから。

「ならば死んでくれ」

「お断りします!」

 剣を振る。タイミングを変え、上からの斬りおろしでなく下からの斬りあげ。初の攻撃パターン。だがよけられた。馬を横っ飛びさせたのだ。なんて技術。
 振り返る。数百キロの塊が飛んできていた。

 馬が飛ぶ。
 いや、障害物レースとかあるくらいだから、馬だって跳ぶ。
 だがそれを前にすれば、トラックが突っ込んでくるくらいの迫力がある。
 さらにその上から、乗った人間が剣を振り下ろされればたまったものじゃない。
 馬の全体重が乗った一撃。

 それを受ければいかに由緒ある剣だって折れる。

 だから横に跳んだ。

 刹那、元いた場所を馬の蹄が潰し、剣が薙ぐ。

 2回転がって、立ち上がる。
 その際に、すぐそばにいた相手を反射的に斬った。

 こっちに殺気を見せた。だから敵。多分敵。

 もう思考が回らない。
 もはや問答もない。
 別れの挨拶もない。

 あれは敵。
 ただ殺すためだけにある存在。

「…………アァァァァァァァァァ!」

 叫び、跳んだ。

 馬上の堂島てき。目が合った。
 その高さ。横なぎで首を取れる。

 金属音。

 防がれた。
 ならもう一撃。

 だが相手の方が早い。
 押された。馬の力も加わり、力負けしたのだ。空中で。

 そこへ堂島てきの攻撃が来る。
 宙に浮いた状態。方向転換も回避もできない。
 あと数秒後に、私の胴体は両断される。

 だから蹴り飛ばした。
 堂島てきの馬を。
 反発の力で体は横に跳ぶ。

 痛みが走った。
 左肩。剣を振るのは、殺すのに支障はない。
 着地。背後から気配。堂島てきが追ってくる。振り返ったら死ぬ。だから前へ。走る。

 別の馬上の人物。敵。今度は間違えない。
 跳躍して男の体を蹴り飛ばした。

 乗り手がいなくなった馬の背。その鞍に着地した。背後の殺気は消えない。

 跳んだ。

 鞍を地面にして。背後に。

 視界が回転する。
 殺気が足元を通過する。

 目が合った。
 逆さになった堂島てきだ。
 瞳孔が開いて、感情といったものを排除した表情。少なくとも、バク宙に驚いているようではないようだ。

 逆さの堂島てきに向かって剣を振る。
 取った。堂島てきは剣を振り切った後。
 だからこちらの攻撃を防ぐ手立てはない。

 さようなら。

 そう、口の中でつぶやく。

 だが、相手の反応は予想を超えた。

 馬が棹立ちになった。
 斬った。

 舞ったのは――馬の首。

 防がれた。
 奇襲に似た完璧な一撃を。馬を犠牲に防がれた。

 だが、馬を仕留められたのは大きい。
 あの人馬一体の動き。それがなくなる。そういうことにしよう。

 回転して、着地。
 同時、近くにいた馬上の敵を斬り落としていた。

 ふぅぅぅぅ。

 大きく息を吐く。
 それでも集中は切らせない。敵はすぐ来る。だから。

 一瞬の静寂。
 だがそれはすぐに新たな戦いの幕開けなのだ。
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