知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第14話 攻城戦

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 古来、攻城戦というのは、人と人とのぶつかり合いだった。

 弓矢や投石器といった間接的なものはあるにせよ、最終的には城門を破るか、城壁にはしごをかけて登るかして、直接の激突があってこそ城が落ちるという現象が起こるのだ。

 だがある発明によりそのすべてが崩れる。

 そう鉄砲。
 もとい、大砲だ。

 それによって遠距離から撃っているだけで、勝敗がつくことも可能になった。
 もとより籠っているだけでは勝てない籠城戦を加速させた。

 日本においてはこれまで定例とされていた攻めるのに難しい山城が、大砲の出現によりただ迎撃に不向きな攻めるに易いものとなったのもその通例だ。
 大坂冬の陣など、大砲によって(厳密には違うが)城が陥ちた好例だろう。

 また逆に守城側も、これまで『守る』ことに特化した城は、西洋を発祥とする星形要塞(いわば五稜郭)などの敵の砲撃に耐え、迎撃を行える城壁を持ち、鉄砲や大砲を備え付け『攻めれる』城に進化した。

 このように1つの開発によって、従来の価値観がまるっきり変わってしまった、いわゆる歴史のターニングポイントみたいなものは、歴史を学ぶ上でとても興味深いものだ。

 というわけで今回は、その大砲による攻城戦だ。

 似たようなものは、カルゥム城塞でやってはいたけど、その時とはまた規模が違った。

「あれ、落とせるのか……」

 敵城の近くに偵察に行って見てきたが、かなりのものだと思った。

 去年、ヨジョー地方を奪った後に急遽建造された城だが、帝国の威信というべきか、人と金をつぎ込んで改良を続けてきたのか、石造りの高い城壁に鉄砲を撃つための狭間さまなどが大量にあり、かなり堅固に見えた。

「ヨジョー城より高く、おそらく厚さも倍近くあると思われます」

 ジルがうなるように言う。
 そんな俺たちに口をはさんだのが水鏡だ。

「問題ないわ、雫がやるって言ったんだから。ちゃんとやるわよ」

「そうか」

 当の雫は、俺たちがいる本陣から500メートルほど先、そして敵の城から1キロメートルほど離れた場所で、大砲を並べて作業をしている。
 あれで届くのか、と思いながらも見ていたわけだが。

「ったく、城攻めっつっても大砲撃つだけだろー。つまんねー」

「っすねー。城攻めは騎馬隊がやることないから暇っす」

 サカキとブリーダが退屈そうに、のんびりとした様子で雫たちの動きを眺めている。

「サカキだけでなくブリーダも……。そんな心構えでは困りますよ。一兵卒からやりなおしますか?」

「別にお前に言われなくてもしっかりやりますー。ジーンは総司令になって、より石頭になったよなー」

「そっす。つかその言い方やめてほしいっす……アイザが、ことあるごとに言うっすから……」

 ジルの小言にもサカキとブリーダはこたえた様子はない。
 ブリーダは違う方向に堪えているが。

 まったく、こいつらは……。

「サカキ! ブリーダ! お前ら、だらけてんじゃない!」

 雷を落とした。
 昨日は里奈たちに、今日はこいつらに。最近、俺って怒ってばっかだな。

 けどこの状況では仕方ない。

 というのもいつ敵が出てくるか分からないからだ。

 孫子いわく、

『よく敵を動かす者は、これに形すれば敵必ずこれに従う』

 とある。

 要は、敵の行動を操る――つまり、こうせざるを得ない状況に追い込めば、おのずとこちらが望む状況になる、ということ。

 今、俺は帝国軍に、籠ったまま大砲に押しつぶされるか、それとも大砲を潰すために打って出るかを突きつけているのだ。

 攻めるより守る方が有利なのは当然。
 クルレーンを護衛兼迎撃役として、雫の近くに置いているのはそのためだ。

 敵が出て来なければ大砲で潰すもよし、打って出ればそこをクルレーンが狙い撃つという寸法だ。

 そういうわけで、いつ敵が出てきてもおかしくない状況なのに、こうも腑抜けていれば万が一のことが起こりかねない。
 だからこそ、雷を落としたわけで。

「や、やだなジャンヌ。ちょっと言ってみただけだって」

「そ、そうっす! 別に暇とか退屈とか思ってないっす!」

 慌てて言い訳する2人に、俺はため息をつく。

「お前ら、人の上に立つ者がそんな気概でどうするんだよ。俺だって、いつまでもいられるわけじゃないんだぞ」

 言いながら、少し寂しくなった。
 その気配を感じたのか、サカキとブリーダも神妙な様子になって、

「悪かった。ジャンヌ。どんな時も気は抜かない。約束する」

「っす。自分も昔怒られたのを思い出したっす。肝に銘じるっす」

 はぁ、いつもこんな感じならいいんだけどな。
 まぁいつでも明るいのがこいつらの取り柄とも言うけど。

「ん、雫が戻ってくるわ」

 水鏡の言葉通り、雫が小走りに、隣に吉川を連れてぴょこぴょことやってくる。
 戦陣にも関わらず、その走り方にほんわかした気分になってしまった。

「準備、できた」

「そうか、じゃあいつでも始めてくれ。いいな、水鏡?」

「ええ、そこらへんはアッキーに任せるわ。だから雫。いいようにやっちゃって、でも気を付けて」

 こくりと小さく頷く雫。

 だがまだ何かあるのか、こっちをじっと見つめてきた。

「…………」

 なんだ?
 こうじっと見つめられると、それはそれで困るんだけど。

「えっと、どうした?」

「クッキー?」

「え? あ、クッキーな。ごめん。まだ届いてない」

「クッキー……」

「頼んますよ、ジャンヌさん。雫さんの好物なんすから!」

「じゃあ吉川、お前がとってこいよ」

「いや、雫さんの背中を守る。それがオレのレーゾンデートルってやつですよ。ね、雫さん?」

「別に。頼んでない」

「えぇ!? 雫さん、ちょっとパネェっすよ……」

 この2人のやり取りって、なんだかなぁ。緊張感……。

「ともかく、じゃあ頼んだ。クッキーは明日には届くと思うから。くれぐれも無理するなよ」

 そう語り掛けると、雫はコクっと頷いて、

「見てて」

「あ、待ってくださいよ、雫さーん!」

 パタパタと駆けていく雫と、それを追う吉川。

「いいコンビじゃないか?」

「そうね。良介に付きまとわれる側になると、うるさいけど」

 相変わらず手厳しい。
 ま、そうなるのも分からないでもない。うちにも、うるさい輩がいっぱいいるからな。

「……ん? あの2人だけ、なんであんな前に行く?」

 見とがめたのは、雫と吉川が、大砲の列を離れ、北東に向かって歩を進めていたからだ。

「あぁ。あれね。……うん、まぁ見られたら分かるからいっか。それに、アッキーだし」

「何がだよ」

「あの2人のスキルよ。雫のスキル『創造する紙片ピース・メーカー』は見たでしょ?」

「ああ。確か、折り紙に命を……って、あぁそうか。また爆弾を飛ばすのか。そのための距離が1キロだと遠いと」

「さらにそこに吉川のスキルを乗せるわけ。『ホメロスの起爆剤ホーマー・ボマー』っていう、触れたものを爆弾に変えるスキルをね」

「あー、それで折り紙を爆弾にして。そのために近づいたのか。しかし、えぐいスキルだなぁ。あれ? 吉川のスキルって、なんかもっと違う名前じゃなかったか?」

「あれはあの馬鹿が勝手に命名したのよ。『ホメロスの起爆剤ホーマー・ボマー』ってのが本当らしいわ」

「なるほど、あいつにホメロスって言っても誰? ってなるよな」

 ちなみにホメロスは古代ギリシャの詩人で、叙事詩『オデュッセイア』の作者と言われている。その起爆剤とか言われてもよく分からないけど……まぁ、語呂はいいよな。
 閑話休題。

「じゃあ私もそろそろあまつの方に戻るわ。あっちはもう、いいわけ?」

「ああ。まずは大砲の音が合図だ」

「そう。じゃあ、あとは相手次第ね」

「間違いなく来るさ」

「ん、それじゃあね」

「ああ、また」

 水鏡が去っていき、残ったのは俺とジル、そして背後にサールだ。

「出てきますでしょうか? いえ、ジャンヌ様の言を疑うわけではないのですが」

「出てくるさ。いくら堅牢だといっても、籠ってる側からすれば、大砲をばかすか撃たれたら安心して眠れない。一昨年、俺たちも感じただろ? 大砲じゃなく、投石器だったけど」

「そうですね。もうあれから2年ですか……」

「早いよな。本当に、あっという間だった」

 そしてもうあと少しで、ジルたちともさよならなのだ。
 そう思うと、なんだか感慨深いものがこみあげてくる。

 ええい、まだ終わってないんだぞ。
 しっかりしろ、しっかり!

「ジャンヌ様」

「……どうした」

「勝ちましょう。必ず」

 ジルからのすべてを分かっていると言わんばかりの投げかけに、俺は一瞬胸がつまり、そして吐き出すように、

「ああ」

 そう答えて、深くうなずいた。
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