知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話20 大山雫(シータ王国四峰)

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 時折思う。
 自分は何をやっているんだろうと。

 訳の分からないまま流されて、訳の分からないまま軍を指揮して、訳の分からないまま城を陥とす。
 別に自分の意志はそこにない。
 ミカがやってと言われたからやるだけだ。

 だから罪の意識とかはない。
 自分が大砲を打つことで、スキルで爆弾を飛ばすことで何が起こるかなんて、考えたこともない。

 いや、考えないようにしているだけかもしれない。
 時雨あのひとに、そういわれたからかもしれない。

 彼がいなくなって、もうすぐ1年が経とうとしている。
 それが信じられなかった。

 この世界に来て、一番に親身になってくれた人。
 そして、何も言わずに消えてしまった人。

 今でもまだ忘れられない。

 彼の声。
 彼の笑顔。
 彼の息遣い。

 なんでか分からないけど、彼と一緒にいると安心した。

 元々、感情を表に出すのは好きじゃない。
 気持ちを言葉にするのもめんどくさい。

 けど、彼とは通じ合っていた。
 そんな安心感がどこかにあった。

 だからいつまでも一緒にいるために、必死に努力した。
 そして、その努力が報われて、彼と同じ立場に立てた。

『それは恋ですね! 間違いなく恋です! ええ、誰かとは聞きませんが、ええ、もう少し詳しく聞いて――もぉ!!』

 なんて言ってきたあまつには、折り紙の鶴をボディに直撃させて悶絶させた。

 恋とか言われてもよく分からない。
 自分が人を好きになるとか。
 そういう感情は、抱いたことはなかったから。

『あまり焦らなくていいと思うわ。それがどういう想いか、雫の中にきっと答えはあるから。時間はまだあるわけだし』

 そう諭してくれたのはミカだった。

 けど、時間はなかった。
 彼はなぜか敵になり、そして滅んだ。

 滅ぼした側に、自分がいることがいまだに信じられない。

 もっと話をすればよかったのか。
 もっと感情を出せばよかったのか。

 分からない。
 何も分からない。

 何も分からないまま、ただ日々を過ごし、そして今はこんなところにいる。

「し、雫さん。これ以上近づくと鉄砲が飛んでくるからよ!」

 帝国軍の築いた城から500メートルほどの位置。
 馬の影に隠れながら、良介が叫ぶ。本当にうるさい。

「別に。ついてこなければいいし」

「そんなこと言わないでくださいよ! オレは雫さんの相棒なんですから!」

「頼んでない」

 訳が分からない。

 そもそもなんでこんなところにいるんだろう。
 なぜ自分は帝国とかと戦っているのだろう。

 いや、それは答えが出ている。
 ミカが戦っているから。
 あきらが死ねば、きっとミカは生きていられない。
 だからミカを守るために明を守るために帝国と戦っている。

 分かりづらいけど、分かりやすいからそれはいい。

 けどここまで前線に出て戦う必要はあったのか。
 皆と一緒に、大砲のところにいた方がよかったのではないか。

 わざわざ危険を冒してまで、自分のスキルで戦う必要もないのだ。

 あるいは――

「死にたがってる?」

「え? なんすか!?」

「なんでもない」

 とっさに出てきたけど、もしかしたらそうなのかもしれない。
 自分は死にたいと思ってる。
 彼が死んで、いなくなって、この世界に価値を見いだせなくなって。

 それでも大好きなミカが元の世界に戻ろうと頑張ってるから、それを助けたいとは思っている。
 けど、元の世界に戻る時に、自分が生きている必要はない。

 だからミカのためにこの命を捧げようと、こうやって無謀な行いをしているのかもしれない。

 破裂音。

 風に乗って、何かが飛んできて、自分の2メートル右の地面が破裂した。

「わっ! 撃ってきた! 雫さん! 危ないすって!」

 へたくそ。
 当てるならちゃんと当てろし。

 できれば苦しまないよう、頭に一発。

 けど、狙われたことに少し怒りを感じる自分もいて。
 それがスキルを発動させる。

「『創造する紙片ピース・メーカー』……」

 取り出した折り紙の束を宙に放る。
 するとそれは自動で鶴の形に折られて宙に浮かぶ。
 まるで命令を待つ犬のように。

「良介、やって」

「え……あぁ、はいはい! やりますよ、やりますとも!」

 良介が馬の影から飛び出して、宙に浮く鶴に触っていく。

 彼のスキル。
 それによって、この鶴の折り紙は空飛ぶ爆弾と化した。

 だからそれを連続で、発砲してくる城の方へと飛ばした。

 すぐに折り紙は小さくて見えなくなり、数秒の間を開け――

 ――爆発した。

「うぉぉぉ! すっげぇー!」

「うるさい。さっさと次、やる」

 再び折り紙を取り出し、鶴が出来上がっていくのを良介がタッチして、それが飛ぶ。

 大砲と自分の鶴により、城壁に無数の穴ができていく。
 それでも崩れないのは、何か仕掛けがあるのだろうか。建築に興味はないからよく分からない。

 なら、壊れるまで放てばいい。

 大砲と爆弾の激しい砲火が城を次々と爆炎に染めていく。

 このまま黙ってつぶれるならそれでもいい。
 そう思い始めたころだ。

「あ、雫さん、あれ……」

 良介に喚起されて見た。
 城の右手――東のところあたりから、何か動くものが出てきた。

 それは大地を揺るがす馬の大軍。
 いや、こちらを殺そうと明確な殺意を向けてくる騎兵隊。

「て、敵!?」

 良介がうろたえた声を出すけど、それがどうしたって感じ。

「邪魔」

 残った鶴をそちらに飛ばした。

 けど、地面から吹き上げた炎の壁に包まれ、小爆発を起こして消えてしまった。
 もちろん、敵の騎馬隊に届いてはいない。

 自然現象で、そんな炎の壁が出るわけがない。
 スキル。敵のプレイヤーだ。

「雫さん、逃げましょう!」

「一人で逃げれば?」

「なっ!?」

 驚く意味が分からない。
 逃げたいならさっさと逃げればいいのに。

 自分は、ミカのためにプレイヤーを1人巻き沿いにする。
 そうすればミカは助かるはずだ。
 だから逃げたいやつは逃げればいい。

「それ本気で言ってるんすか?」

 敵が迫る中、良介はそんな当然のことを聞く。

「当たり前でしょ。馬鹿じゃん」

「っ!!」

「それよりどいて。ミカの邪魔はさせないから」

 それで良介は引き下がるだろう。
 いつもそうあしらってきたから、今回もそうなると思った。

 けど――

「だぁぁぁぁぁ! もう、いい加減にしてくれ! 俺は頭がよくねーんだよ!」

 身もだえるように頭をかきむしる良介。きもかった。

 けどそんな視線もなんのその。
 真剣な表情でこちらを睨みつけるようにして吠える。

「雫さんは間違ってる! 何がかは上手く言えねーけどよ! そんなことして何の意味があるんですか!」

「意味はある。ミカの助けになる」

「そんなわけないでしょう!」

「なっ……」

 真っ向から否定されて、思わず目を見開いた。
 良介がこんな反論してくるなんて、思いもよらなかったから。

「いいっすか? 水鏡の姐さんが雫さんが犠牲になって喜ぶと思いますか!? それはホント、もうひでぇっすよ!? あれほど姐さんは雫さんを大事にしてるってのに!」

「でも……」

 ミカがそんなことを思うか?
 うん、そうかもしれない。

 けどそれはミカから自分への一方通行の想い。
 自分からミカへは、その気持ちはない。
 あるのは恩返ししたいという想い。
 そこに自分の命は含まれていないのだから。

「あーもー! ちょっと失礼!」

「え?」

 良介の体が動いたと思うと、自分の体が浮いた。
 良介のお尻が見えるということは、荷物みたいに肩に担がれているらしい。屈辱。

「ちょ、なに、変態!」

「ぐぅ……その言葉、堪える。けど、問答してる場合じゃねぇって!」

 そのまま動く。いや、生き物の上。馬だ。乗っていた。

「さぁ逃げますよ!」

「馬鹿! 降ろす!」

「聞かないっす!」

 暴れる間もなく、地面が動く。違う。乗っていた馬が動いたんだ。

 良介の体に遮られて背後の景色は見えない。
 けど左右の景色はどんどんと後ろから前に流れていく。

 気になって良介の脇の下から目をのぞかせる。

 騎馬隊が速度を上げてこちらに向かって来る敵の騎兵隊。
 あちらの方が馬がいいのか、どんどんと迫ってくる。

 その先頭の男が手を挙げた。
 すると後に続く騎馬の上に乗った男たちが、何かを取り出してこちらに向ける。

 そのポーズ。まるで弓矢をうつように見えて、

「矢! 矢!」

「あぁん!? っとぉ!」

 自分たちの横を矢が通り過ぎていく。

 当たれば楽に死ねた。
 そう思うけど、恐怖もついてきて心をかき乱す。

「雫さん、反撃よろしく!」

「もう!」

 折り紙はまだある。
 それをカエルに折った。

「投げて。適当でいい」

「合点!」

 良介の手に折り紙のカエルを押し付ける。
 それを良介は後ろを見ずに後方へ放り投げた。

 床に落ちた折り紙のカエル。
 それはぴょこぴょこと敵の騎兵隊の方へと跳ねる。

 そして――

 悲鳴。
 爆発が起きて数名が馬から転げ落ちた。

「やりましたか!?」

「まだ来る」

 敵の追撃。そこから逃げ切れるのか。
 胸の中に、黒々とした想いがこみ上げてきた。
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