知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話23 長浜杏(エイン帝国大将軍)

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 戦況は有利だった。
 敵の混乱に乗じて真っ向から攻めかかった。

 オムカ軍最強の部隊を封じたのが大きかった。
 鉄砲隊。ここまで近づいてしまえば、撃っている暇はない。

 だからあとは5千ほどの騎馬隊を押さえれば勝てる。
 右手のおそらく主力の3千は、張人きゅんが対応。左手の2千が浮いた形になったけど、さすがたっつん。臨機応変に対応してくれた。

 そして左手でどでかい炎が上がったことから、たっつんの勝利も確定した。
 あとはたっつんが敵の右翼に突っ込めばそれで終了。

 敵の砦群まで追撃すれば、これまでの負けを帳消しにしてもおつりがくるくらいの大勝になる。
 そう思った。

 その最中のことだった。

「敵、9時の方向から来ます!」

「どこの敵!? いや、迎撃!」

「ま、間に合いません!」

 中央の本陣まで届くんじゃないかと思うほどの激しい衝撃が、左翼で起きた。

 どこから敵が?
 目の前でそんな回り込めるほどのスペースはなかった。
 というかこっちはもう帝国領だ。

 けど現に敵はいる。

 なら――川か。

 おそらくあれはシータ王国の軍だ。
 シータ王国なら、川を遡上してこっちの裏に出ることくらい可能だろう。

 あとは綿密な地図があれば十分。
 タイミングは、あそこまでバカスカ撃ってた大砲で、戦闘の開始は伝わったはず。
 ここまでベストタイミングなのは少し解せないけど、どうせあの軍師が何かやったんだろう。

 軍師。
 ジャンヌ・ダルク、か。

 ここまでとは、やるとはね。
 元帥も勝てないわけだ。

 あーあ、勝ちたかったなぁ……。

 けど今はそんな悲観に浸っている場合じゃない。
 敗北による犠牲を最小限にする必要がある。

「全軍撤退! 鉦を鳴らす!」

「はっ! しかし、門を開ければ敵はそのまま入ってきます!」

「僕様が殿軍やる! だからさっさと行く!」

「そ、そんな……」

「おい、お前。馬鹿なこと言ってんじゃねーよ」

 毒舌な反論が背後から来た。
 部下じゃない。

「張人きゅん、早い到着で」

「んなこと言ってる場合か。あんたは逃げろ、おっさん。俺が殿軍をやる」

「ダメだよ。こうなった責任取らなきゃ。だから僕様がやる。いや、僕様にしかできない」

「大将が何言ってやがる! あんたが死んだら終わりだろうがよ!」

 珍しく本気で怒ってる。
 それがなんだか嬉しかった。

 けど、違うんだよね。

「終わらないよ。だって僕様たちの大将は、元帥だからね」

「お前……」

「言ったでしょ、今ここでは僕様が一番偉いの! だから言うこと聞く! さっさと退くよ! 鉦鳴らして!」

「は……はっ!」

 鉦が鳴る。
 退却の鉦だ。

 まさか、ここまで大敗するとは。
 いやいや、本当に戦いはどうなるか分からない。

 あとちょっと援軍が遅ければ、あとちょっとたっつんが敵を倒すのが早ければ、あとちょっと開戦を早くしていれば、あるいは勝っていたのはこちらだったかもしれない。

 いや、もしとか仮定の話をしてもしょうがない。
 今起きていること。
 それを受け止めて、それでいて、乗り越えなければ。

「じゃあ、行くよ。あとはお願い」

 部下を従えて本陣から離れる。
 その間際。

「おい」

 張人きゅんだ。
 うーん、最後の最後まで突っかかってくるかな。これから生死のぎりぎりの戦いをしようってのに。

「なんだよー」

「死ぬんじゃねーぞ」

 言われ、一瞬、心が空白になった。
 けどすぐに満たされていく。

 まさか張人きゅんからそんなことを言われるとは。
 いや、ほんとツンデレだよね、張人きゅん。

「……あはっ」

 本当、最後まで気が合わないやつ。
 でも、それがいい。

「当然だよ。僕様が死ぬなんてありえない。だから城に戻ったらこき使ってやるからね、覚悟しなよ」

「ふん、おっさん少女に顎で使われるとは、俺も落ちたもんだよ。おら、さっさと行けよ」

「ふん、べーっだ!」

 ったく、本当に生意気だ。
 あとでしっかりお仕置きしてあげなきゃ。

「ごめんね、とても辛い戦いになる」

 集まった部下たちに語り掛ける。
 上司のミスで危険なところに放り込まれるのだ。納得いかないところもあるだろう。

「望むところです。我々は、どんな状況でもあきらめない、大将軍の元で戦うことが好きですから!」

「どうせ、僕様の体目当てじゃないのー?」

「ははは! あと5年先に出直してきてください」

「ちぇー。じゃああと5年は生きなきゃね」

「……はい!」

 ったく、本当にこいつら。ドMじゃないの?
 ま、いーけどさ。

 その時、僕様は笑っていたと思う。
 これほど愉快で、楽しいことはそうそうないだろうから。
 思い通りにならないことは、辛くて苦しいけど、それはそれで面白いのだ。

 あぁ、やっぱりこの世界はいい。
 元の世界とかどうでもいいんだ。
 今を楽しめるか。今を生きるか。

 はてさて、元帥はそこらへんどうなのかな?
 今も昔も未来も、元帥はどこか違うような気がする。

 あーあ、もったいない。
 世界は、こんなにも面白いものにあふれているのに。

「じゃあ、追撃部隊、皆殺しにしちゃおうかな」
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