知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話34 堂島美柑(エイン帝国軍元帥)

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「尾田張人が命じる! 帝国軍は武器を捨て投降しろ!」

 戦場に響く大音声。
 そして武器を捨てていく兵士たち。

 あぁ、敗けたのか。

 尾田張人が戦機を誤るような人間ではないのは知っている。
 だから降伏か、敗走か、全滅かの3択しかない状況だというのも分かる。

 怒りはない。
 彼がそう判断したなら、それが最善ということ。

 指揮権は譲渡していたから、椎葉もそれに従うだろう。

「敗けた、か」

 今度は声に出してつぶやく。

 敗けた。負け。敗北。敗軍。

 ここにいる軍同士の戦いだけじゃない。
 エイン帝国がオムカ王国に敗けたのだ。

 もはや煌夜に抵抗する力はないだろう。
 軍を指揮する全員が戦死するか捕虜になるのだ。

 すまないな、煌夜。
 お前の役には立てなかった。

 だが。
 だが、だ。

 もはや元帥の名も、帝国不敗の称号もなにもない、ただの一兵卒。
 そうなってどこか重荷が消えた、そんな気がした。

 だから届けよう。
 自分の、最期の精一杯の力を煌夜に届けよう。

 ジャンヌ・ダルクを殺す。
 杏がやろうとしてできなかったこと、尾田張人と椎葉がやってできなかったこと。いや、ここまで幾人もの人間が行おうとして失敗してきたこと。

 それを、自分が最期に成す。

 武器を捨てた部下たちは連れて行かない。
 足手まといになるのは明らかだし、敗けたのなら戦後を生きてほしい。

 馬を走らせる。
 ズキリ、と右のわき腹が痛んだ。
 弾は貫通したが、今でも血が流れている。

 流れ弾、か。

 もはや自分に時間はない。
 だからこそ、最期に、最期に成す。

 走る。
 痛みは要らない。シャットアウトだ。必要なもの。それは剣。そして倒すべき敵。

 突っ込んだ。
 敵はいきなり現れた騎兵にひるみながらも果敢に抵抗してくる。それを刈り取った。

 1対5万。
 スキルが最大級に効果を発揮する兵数差だ。

 ジャンヌ・ダルクの位置は分かっている。
 あの旗。杏たちの願いを打ち砕いてきたあの旗だ。

 それを叩き落とす。
 それでこちらの勝利だ。

 あと100メートル。

 左。槍が来た。よけられない。肩で受けた。鎧がはじく。大丈夫。行ける。

 さらに敵を葬って、馬を前に進める。
 あと90メートル。

 気配がした。鉄砲。体をひねる。左肩に痛み。鎧を貫通して、肩の肉を少し抉り取る。問題ない。
 あと80メートル。

 力自慢そうな兵を最小限の動きで刺し殺す。さらに前へ。
 あと70メートル。

 再び鉄砲。味方の中でよく撃つ。それだけ目立っているからか。来る。いや、来ない。馬が脚を折った。馬が撃たれていた。頭だ。なんて命中精度。放り出される。同時、跳んだ。死んだ馬に申し訳ないと思いつつ、着地と同時に敵を斬る。
 あと60メートル。

 一斉に突き出された槍。その下をかいくぐって、敵の脚を斬った。悲鳴と共に包囲が崩れる。そのまま前へ。
 あと50メートル。

 そこで――

「堂島さん」

 出会った。
 出会ってしまった。

 いや、出会うべくして出会ったのだ。
 ジャンヌ・ダルクを殺そうとすれば、必ず立ちはだかる壁。
 ジャンヌ・ダルクの最強の盾であり矛。

「里奈くん」

 彼女が、立花里奈が立っていた。
 むき出しの剣を携えて待っていた。

 そのことに軽い苛立ちと、激しい興奮を感じていた。

「手出し無用でお願いします。下手にかかわると……死にます」

 こちらに向かって吐いた言葉ではない。
 周囲に邪魔をするなと釘を刺した。

 そう、もはや言葉は要らない。
 問答の時間はすでに過ぎた。

 私がジャンヌ・ダルクを殺そうとする以上、ぶつかることは必定。
 私がジャンヌ・ダルクを殺そうとするなら必ず殺さなければいけない相手だし、彼女がジャンヌ・ダルクを守ろうとするなら私を殺すしかない。

 もはやどちらかが死ぬしか終われない。
 そういう状況。

「『抜山蓋世はおうのはき』」

「『収乱斬獲祭ハーヴェスト・カーニバル・カニバリズム』」

 お互いのスキル。
 内容は分かっている。純粋強化のスキル。
 こちらの手の内もばれているだろう。

 だからあとは、どちらの殺意が上回るか。
 それだけだ。

「感謝する里奈くん。最期に、この晴れ舞台を用意してくれて」

「関係ないです。明彦くんを殺そうとするなら……排除します」

 それでいい。
 最期の戦いが、つまらないものにならなければ。

「行くぞ」

 そして、終わりが始まった。
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