知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第26話 軍師と策士の化かし合い2

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「ハロー、リーナちゃん元気……って、めっちゃ沈んでる、って、あー、堂島さんか」

 撤収中の陣の端。
 とりあえず張られた天幕に、招かれざる客が現れた。

 治療用に建てられたもので、今は里奈がそこで治療を受けて休んでいた。
 1人で天幕を独占しているわけだが、言ってしまえば敵の総大将を討ち取った大殊勲ものなのだ。これくらいは許してもらえるだろう。

 俺は護衛のサールと一緒に里奈の様子を見に来たわけだけど、やってきた男が問題だった。

「尾田張人かよ。てかお前……なんで普通に来てんだよ。捕虜なら捕虜らしく大人しくしろよ」

「いや、俺って捕虜というか? これでも偉い人だし? それ相応の扱いしてもらいたいんだよね、てゆうか暇だからリーナちゃん見に来ただけだし」

「暇だからってやっていいことと悪いことあるだろ!」

「気に入らないなら殺せばー? ま、俺を殺したらスキルが解けて、数万の帝国兵が襲い掛かるかもしれないけどー」

 くっ、こいつ……。
 大人しくしてればいい気になって。

「いいのかなー? 堂島さんの部隊の人たちをけしかけたら、また大変なことになるよ? なんてったって帝国最強(笑)の人たち――」

 パンっと、乾いた音が響いた。

 見れば里奈が尾田張人のほほを張っていた。
 その瞳には枯れたと思ったはずの涙が。

「里奈……」

「あの人のことを、そんな風に言うのはやめて!」

 怒っていた。
 堂島元帥の、その部下の人たちを小ばかにした感じの尾田張人に心の底から怒っていた。

「いや、俺は別に堂島さんをさ……」

「あの人の部下の人を悪く言った。それはあの人を侮辱するのと一緒でしょ! ……っ!」

「あ、おい里奈!」

 感極まった様子で、里奈は俺たちから目をそらすとそのまま天幕を出て行ってしまった。
 一応、激しい運動をしなければ問題ないと医者からは言われているから大丈夫だろうが、少し心配だ。

 何より、なんだかんだで元帥を倒したことが心に残っていたことで、ショックを受けているのだ。

「えぇー俺はただ堂島さんのことは気にするなって言いたかったんだけどなぁ」

 あの流れでそこにつながるのかよ。
 絶対嘘だろ。

 もうこいつはどうでもいい。
 それより里奈がやはり心配だ。

「サール、こいつを見張って……」

 護衛のサールに尾田張人を監視させて里奈を追おうとした。

 いや、だめだ。
 こいつをプレイヤー以外の人と一緒にすると、スキルで洗脳してくる。

 かといってサールに里奈を連れ戻させるのも難しいだろうし……。
 なにこの川渡りパズル的なの。

「あの、どうかしましたかジャンヌさん」

「いや、こいつに猿ぐつわして連れてきて」

「それって捕虜虐待じゃないー? あ、でも俺のスキルのこと覚えてくれてたんだねー。でも全然信用してないって感じで複雑だわー」

 ぶつくさいう間に、サールによってテキパキと猿ぐつわをされ、ついでに後ろ手に鎖で縛られる尾田張人。

 うん、うるさいのがいなくなった。
 これで変なこともできないだろう。

 というわけで俺はサールに連れられた尾田張人とともに里奈を追う。

 里奈がいたのは、部隊から離れた丘の上にいた。
 丘と言っても数メートルの盛り土となっている場所で、それほど登るのに苦労はしない。

 その上で里奈は彼方を見つめて立っていた。

「里奈……」

 それ以上は言葉が出ない。

 彼女が失ったもの。
 それはきっと誰にも理解できないだろう。
 尾田張人もそれを感じたのか、何も言わない。

 だから俺たちはただ茫然と、阿呆のように里奈を見つめるしかない。
 あるいはもう、里奈は立ち直れないかもしれない。
 そんな不吉な予感も抱いていた。

 そして――

「すぅぅぅぅ――――あーーーーーーーーーっ!!!」

 耳を破壊されるかと思った。
 それほどの大音声で里奈が叫ぶ。
 太陽に向かって吠える。

 やがて胸の空気をすべて吐き出した里奈は、里奈はうーんと背伸びをして、

「あーー、すっきりしたー!」

「え……」

 それだけ?
 もっとなんか深刻な感じなのかと思ったけど。

 と、そこで里奈がこちらに気づいたようで、俺たちに振り向いた。

 そして俺、サール、尾田張人と視線を動かし、再び俺に視線を戻した里奈は、

「なっ、なななな、なんでいるのかな!?」

 顔を真っ赤にして、あきらかにうろたえた様子。
 どうやら俺たちには気づかずに、あんな行動をしてしまったことが恥ずかしかったのだろう。動揺して手足をバタバタさせる里奈は、どこか新鮮で可愛らしい。

「えっとね! あのね! 違うの! これはただ、その……」

「いやいや、リーナちゃんは悪くないよ。悪いのは追いかけようって来たこいつね」

 と、尾田張人がペラペラと弁解を始める。
 鎖は外れてないものの、両手を体の前に回して、さらに猿ぐつわもとれている。

「あ! いつのまに!」

 サールが気づかぬままに自由を獲得している尾田張人を見てわなないている。

「お前、どうやって」

「ん? これ、こうやってさ」

 小田張人はジャンプすると同時に、両手を足の下に通して背中の方に、もう一度ジャンプして今度はお腹の方へと移す。
 それで猿ぐつわも外したということらしい。器用な。

 ただそれを素直に褒めるわけにはいかない。

「あー、つまり足が短いからうまくいったってことか」

「カッチーン。イラっと来ちゃいました。もしかして俺に喧嘩売ってる?」

「そういう風に聞こえたなら、お前の方にも多少自覚があるってことじゃないのか? アバター選びに失敗したな。いや、元からそうだから同じにしたってか?」

「うわ、なにその勝者的発言。勝ったからって調子のらないでくれる?」

「いや、実際に勝ったしな」

 と、いつまでも続きそうな口論に、さすがに見かねたのか里奈が仲介に乗り出してきた。

「あはは、まぁまぁ。2人とも仲良く、ね?」

「はーい、リーナちゃん」

 こいつの変わり身の早さ、すんごいいらつく。
 てか里奈を前にデレデレするな。

「うん、てかごめんなさい。いきなりぶっちゃって」

「いや、里奈。あれはこいつが悪い。この無神経でKYで人の心のない外道の言うことなんざ気にするな」

「それって誰のことかなー?」

「誰って1人しかいないだろ」

「あー、そっかそっか。自分のことがよく見えてるってことかな? さっすが天才軍師。彼を知り己を知ればってやつ?」

「いやいや、そこまで俺は自分を過大評価できないね。せいぜい心優しくて気配りができて心ある真人間ってくらいさ」

「うわ、それ自分で言う? 言っちゃう? そこまで自意識過剰になれるなんて、さすが不敗のジャンヌ。いや、腐敗のジャンヌかな。頭の腐り具合が」

「2人とも!」

「「はーい」」

 お母さんに怒られる子供2人みたいだった。

 まぁ、とりあえず里奈も元気になったみたいで、良かった。のかな?

「あ、それはそうとして。例の口利きの件、ヨロシクね」

「口利き?」

 尾田張人の言葉に里奈が首をかしげる。

 ったく、このタイミングでそっちの話するかよ。

「ただの命乞いだよ。帝国が負けると、こいつも死ぬってことになるだろ。だから女神にとりなして、命を助けてくれっていう。まぁ恥もプライドもかなぐり捨てて来たわけだな」

「言うねぇ。ま、実際そうだけど」

「ん? 明彦くん、それっていいの?」

「あの女神は何も言わなかったからな。寝返り、降伏などで所属を変えたらいけないとか。ま、もし最初に決めた勢力以外認めません、とかだったら色々ごねたり、亡命とかって手を使ったりするけど」

「いーつもすまないねー」

「別にお前のためじゃねーよ」

「ダメダメ。いつもすまないねぇ、って言ったら、それは言わないお約束でしょ、って返さなきゃ。てかその前にお前のためじゃないって、ツンデレ!? うわ、なんかおっさん少女とはまた別のトキメキ?」

「とりあえず当分黙れ」

 敗けて捕虜の身になったってのに、なんでこんなテンションでいられるんだ、こいつ?

「あ、もしかして明彦くんそれって愛良のため?」

 里奈が何かに気づいたようにそう言った。

 そう、別に尾田張人のために女神に対するつもりはない。
 すべては澪標愛良のため。

 彼女はもとはといえばうちらと一緒だったが、開戦の時には帝国にいた。

 だからこのまま帝国が滅びれば彼女も運命を共にすることになる。
 それはいただけなかった。

 彼女を失望させてしまったのは俺だ。
 だからその責任を取る意味でも、俺は彼女を救う気でいた。

「そっか。それじゃあ私もくよくよしてられないね。うん、大丈夫。明彦くんならきっとできるよ。それに、もしあの女神が駄々こねたら……ま、首根っこをキュッと締めればすぐでしょ」

 里奈の励ましを嬉しいと思いつつ、後半の言葉に俺は尾田張人と顔を見合わせる。
 彼の顔は引きつっていた。多分自分も同じだろう。

 お互いとんでもない人を好きになってしまった。
 そんな色がありありと見て取れた。
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