知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話37 赤星煌夜(エイン帝国パルルカ教皇)

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 報告はほぼ同時に来た。
 帝国軍の敗北、そして降伏。
 さらに堂島元帥の戦死も。

 敗けた、か。
 そして堂島さんもいなくなってしまうなんて……。

 城の中に立てた小さな教会、その一室で静かに黙とうを捧げていると、ドアを壊すんじゃないかという勢いで部屋の扉が開く。
 そこから入ってきたのは、

「ハロハロー。元気? 元気じゃないよね、知ってまーす!」

「今、猛烈に貴女に腹が立っているのですが、いえ、前からだが」

「およよー? そりゃ大変。てか大変も大変。帝国軍が負けちゃったもんねー。帝国不敗の美柑ちゃんが死んじゃったもんねー。あ、もう不敗じゃないかー。不敗が腐敗。ね、今どんな気持ち? どんな気持ち?」

「楽しそうだな」

「そりゃモチ! なんてったって頂上決戦だったからねー。順当にいけば美柑ちゃんの方が有利だったけど、アッキーはそれを上回るえげつなさだったよねー。人為的にお腹を空かせた状態にして戦うスキピオの策と、天才軍略家のハンニバルの策を合わせたようなものだからね。あの包囲殲滅って難しいんだよ? 各部隊の連携はもちろんのこと、相手に力が残ってたら、一点突破ですぐ崩壊するからね。アッキーたちの歴史の中では、成功例はほんの数例って話じゃない? これってやっぱり――」

「少し黙れ」

「あーん、コーヤくんこわーい。麗明、おびえちゃうー!」

「その都合のいい時だけ麗明を使うの、やめてくれないかな」

「だが断る! このわたしが最も好きな事のひとつは、相手を徹底的にいじりたおすことでーす! なんちってー」

 本当にコレと話していると頭が痛くなる。

「大丈夫? 頭痛薬いる?」

「頭の中を読まないでほしいな」

「読んでませんー、だって顔に書いてあるんだもん。ぽんぽん痛い、って!」

「それってお腹痛いってことだと思うが」

 どこまで本気なんだか。
 仮にこいつが女神だというのなら、人の思考や想いを読み取ることなんて簡単なのだろう。

 本当に、厄介だ。

「んふふー、悩んでるねー。でも安心して。本当に人の心は読めないよ。これはもう長年、人間と付き合ってたから分かる、読心術っていう技術の賜物だからね」

「なるほど、数億年生きた化け物には相応の能力ということか」

「そんな生きてませんー! せいぜい1万年くらい……って違う違う。わたしは永遠に17歳! てか化け物ってひどくなーい? こんな可憐な麗明ちゃん捕まえてさー。ほら明るいうららで麗明ちゃんだよー」

「どうでもいい。とにかく黙ってもらえるか?」

「うーい、そうだね。コーヤくんの判断1つでこの後の流れがガラッと変わるからね。うん、楽しみだよ。これで終わるのか、まだまだ続くのか、それともどんでん返しが早まるか、どうなるか見ものだね!」

「……死ぬのが怖くないのか?」

「え?」

「私が降伏して、お前を殺すとは思わないのか?」

「またまたー、そんなことするわけないじゃん? だって麗明ちゃんだよ? ま、それに怖いとかそういうのないかなー。だって、死なないからね。わたし、神だもん」

「……化け物め」

「だーかーらー、化け物じゃないです、女神ちゃんでーす! ぶいぶい!」

 もはやツッコミを入れる気力さえ失われる。
 だからまだつべこべ言って来る女神を無視して、外に出る。

 城外にはオムカら連合軍が群れをなして囲んでいる。
 対するこちらも3万ほどの人はいるが、非戦闘員や負傷兵がほとんど。

 いや、彼らをすべて戦闘員に変えることはできる。
 死をいとわぬ、強靭な兵士にすることは可能だ。

 教皇の名のもとに命じれば、そうなる。

 だからまだ抵抗はできる。

 だが、思うのだ。
 その先に何があるのか。

 堂島さんと長浜さんを失い、尾田張人もつかまった現在、あのジャンヌ・ダルクに勝てる道理はない。

 それなのに抵抗して、この世界に住む何万もの人たちの命をさらに浪費させるのか。

 もはや自分の望みである、あの女神への復讐の芽は途絶えた。
 ならば敗者はいさぎよく、勝者に道を譲るべきではないか、という少し達観した思いも芽生えてくる。

 いや、あるいは彼女にこの夢を託す手もある。
 彼女ならきっとうまくやってくれる気がする。

 それを見ることができないのが心残りだが……。

 もはや一度死んだ身だ。
 麗明のことが気の毒だが、その時は一緒に逝けば彼女も許してくれるのではないか。

 そう思えば、少し気持ちが楽になった。
 偽善かもしれないが、そう思わずにはいられなかった。

「暗い顔をしているね」

 声に振り向く。
 そこにいたのは、もう会えないと思った友の姿。

 1日会わなかっただけなのに、ずいぶんとやつれた気がする。

「……達臣。生きていたのか」

「なんとか、ね」

 そう言って、椎葉達臣は力なく笑った。
 それでも彼が生きてくれて、ここに戻ってきてくれて、自分としてはありがたかった。

 彼になら託せる。
 そう思ったからだ。
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