知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

閑話42 水鏡八重(シータ王国四峰)

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 約7日の行軍でやってきた。
 オムカ王国王都バーベル。

 これまで何度もここに足を運んだ。
 その時は味方として。
 その時は中に招かれて。

 そして今は、攻める側として外にいる。

 オムカの王都。
 それを5万の軍勢で叩き潰す。
 3万のシータ軍と、2万の帝国軍残党の混成軍だ。

 まさかあきらが帝国軍と手を組むとは思わなかった。
 これまでずっとウォンリバーの北岸で領地を争っていた相手が、いきなり味方になるなんて。

 彼らとしてはここで勝たないと完全な敗北しかないわけで、私たちと組まざるを得ず、必死になっているのは分かる。

 今頃、アッキーはこの報告を聞いているのだろうか。
 けど帝都からここまでどんなに急いでも5日はかかる。帝都はまだ安定していないことも踏まえると、もっと時間がかかるかもしれない。

 つまり、間に合わない。
 ほぼ全軍を北に連れて行ったオムカの王都は、今や空だ。

 だからこそ、この奇襲が通用する。
 主力が戻ってくる前に王都は落ちる。

 そして、可愛そうだけどあの女王を殺せば、そこで終了だ。
 女神の指定したターゲットで生き残っているのは明だけ。
 その時点で、私たちの勝ちが確定する。

 元の世界に戻れる。
 東馬とうま美玖みくにまた会える。

 それだけを考えて今まで生きてきた。
 それが私の最上。選んだ一番大事なもの。

 何かを選ぶために何かを捨てなければいけないとして。
 元の世界に戻ることを選ぶなら、アッキーは捨てないといけない。

 そんな、簡単な理屈だ。

「じゃあ、水鏡。始めようか」

 明が豪華な輿に乗った状態でそう言ってくる。
 その態度が、どこか気に入らなかったけど仕方ない。

 彼は王で、私はその部下なのだから。
 それに彼は私のために立ち上がってくれたようなものだから。

 どれだけ気が進まなくても、軍を進めなければならない。

あまつに伝令、全軍を前進させて。それから雫の砲兵は城門を狙える位置でひたすらに砲撃を加えて」

 本来ならあまつが総大将なのだけど、明が今回は私にそれを任命した。
 あまつは文句1つ言わず、笑顔でそれに従ってくれた。

 軍が動き出す。

 今頃、王都内部では上を下への大騒ぎだろう。
 心中察する。
 けど、手加減はしてられない。

「攻撃、開始!」

 喚声と共に兵たちが城門へと突撃する。
 それに合わせて、雫の大砲が城門を攻撃し始める。

 相手から反撃はない。
 勝った。

 そう思った刹那。

 右手で何かが爆発した。

 違う。
 雫のところだ。
 大砲が破壊されている。
 それが分かった。

 分かったけど、誰が、どうやって??

 分からない。
 そしてさらに分からないことに、王都から反撃が来た。

 やけっぱちになった散発的な反撃じゃない。
 銃と弓による組織だった反撃。

 城壁にとりつこうとした兵たちが、血しぶきをあげて倒れていく。

 その城壁。
 城門の上に、1つの影が躍り出た。

 そこにはオムカの旗が掲げられ、その人物は戦場に響き渡る大音声でこう叫んだ。

「シータ王国の逆賊! どの面下げてここに参ったか! このオムカ王国総司令ジーン・ルートロワがいる限り、王都は私が守る!」

 ジーン総司令。
 まさか。
 なんでここにいるの。
 なんで帝都にいないの。
 アッキーと一緒にいたんじゃないの!?

「全軍、奮戦せよ! ジャンヌ様が戻られるまで、決してこの王都、とさせるな!」

 城内から喚声が起こる。
 何百、いや、何万もの人の声。

 兵だけじゃない。
 王都に暮らす国民たちも一丸となってこちらに牙をむこうとしている。

 見破られていた。
 こちらの奇襲を。
 誰に?
 アッキーだ。
 それ以外にいない。

 私たちの離脱を不審に思い、そしてジーン総司令と軍をオムカに帰していた。
 川を下ってぐるっと回りこむ私たちと違って、一直線に駆ければ7日はかからない。

 だから私たちがここに来る前には、すでに防備の態勢は整っていたということ。

「で、伝令! 森からの騎馬隊の奇襲により、オオヤマ隊壊滅! 大砲はほぼ破壊されました!」

 伝令が飛び込んできて言った。

 壊滅……雫は? 雫はどうなったの!?

「あっ、ちょっと。手当てを!」

「んなこたいい! 姐さん! 姐さん!」

 伝令に続いて良介がやってきた。
 背中に傷を受けているのか、息も絶え絶えで顔も青白い。

「良介、大丈夫なの」

「俺はいい。けど、すまねぇ。雫さんが……」

「雫が……まさか」

「いや、敵に連れ去られていった。すまねぇ……すまねぇ、姐さん」

 良介が悔し涙をボロボロとこぼして膝をつく。

 連れ去られた……。
 雫が。

 いや、死んでないだけマシ。
 そう思おう。

「良介、あんたは治療を受けなさい。雫は、たぶん大丈夫。だから安心して」

「……本当か? 雫さんが、大丈夫なのか?」

「大丈夫。相手はアッキーだもの。だから」

 確約はできない。
 そこまでアッキーも、戦場から離れたところから指示は出せないだろうし。
 けど、その場で雫を殺さなかったことを見ると、あるいはと思ってしまう。

「これは参ったね。まさかアッキーがここまでやるとは」

 良介が救護班に連れていかれて、戦況はかんばしくないというのに明はどこか面白そうだ。

「戦場に出ずに引きこもってるばかりの王様にはわかんないわよ」

「これは辛辣。でもね、こっちだって遊んでたわけじゃない。お金を稼がないと、水鏡たちに送る食料も武器もなくなっちゃうんだからさ」

 それは真理だ。
 けど、なんだろう。
 何かが違う。
 アッキーとは。
 そう思えてしまう。

「さて、じゃあ今日はここまでにしようか。遠征してきて疲れてるだろうからね。アッキーが戻ってくるまでどれくらいあるかわからないけど、ちゃんとあれを落とせる算段が出ることを祈ってるよ」

 ふぁ、とあくびをして背伸びをする明。

 こんな男だったか?
 こんなひどいやつだったか。

 いつも会っているはずなのに、どこかずれを感じてしまう。
 アッキーならもっと真剣に、自分ごととしてちゃんと取り組んでいた。
 他人任せには絶対にせず、いつも全力疾走だった。

 その差が、どこか悲しい。

 それでも私に文句は言えない。

 これは、私のための戦いでもあるのだから。
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