知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第35話 逆襲の女神

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「っしゃー! 帝国撃破ー! やったね、やっちまったね、やらかしちまったね! さっすがアッキー!」

 はぁ……やっぱりというか、なんというか。
 煌夜。
 ダメだったか。

「あったりまえじゃーん! このわたしを殺せるものがあるか! ここにいるぞってね! あんなのでわたしが死ぬとでも思った? ってやべっ、ちょっと髪の毛焦げてる!? うわー、最っ低! 女神サロンやってるかなー。ね、ね? わたしおかしくない?」

「存在自体がおかしいから安心しろ」

「もほほー、久しぶりにアッキーの毒舌いただきました! もうこれがないとやってけないね」

「やっていけなくなってしまえ。そしていなくなってしまえ」

「うんうん、でもねー。やっぱわたしの活躍を望んでいる人がいるから? その期待に応えたいと思います! これがわたしの政治理念です!」

「政治家か。汚職して捕まれ。むしろ冤罪で失脚しろ」

「もー、相変わらずアッキーは攻めるのが好きなんだからー。もっと激しくしても、いいよ?」

「うるさい、黙れ、消えろ」

 つか煌夜との会見の後のこれは辛いな。
 今はただ、彼らの冥福を祈るしかない。

「で? 今日は何の用だ? というかこれで終わりでいいんだろ? 帝国を倒した。それで俺たちの勝ちだ」

「え? 何が?」

「何がって。帝国倒して大陸統一したろ? これで俺たちの勝ち。元の世界にさっさと戻して……いや、ちょっと待て。最後にマリアたちとお別れをさせてくれ。それから元の世界に返してくれ。あぁ、それからオムカに投降してきたプレイヤーは助けてくれ。そんな取り決めはないから、もちろんそれでいいよな?」

「……ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」

「お前、約束を破る気か? 帝国を倒したら、俺たちを元の世界に戻すって約束は――」

「してないよ?」

「は?」

「そんな約束、してないし」

「お前、ふざけ――」

「――てるのはアッキーでしょ? わたしはそんな約束をしてない。帝国を倒したら? 何を砂糖のはちみつ漬けみたいな甘ったれたことを言ってるの? お前を虫歯にしてくれようか! わっはっは!」

「…………なにが、だよ」

「わたしは最初から言ってるよ。そしてこうも約束した。“この大陸を統一したら”元の世界に返してあげるって。統一って言葉、知ってるかな? 歴史に明るいアッキーならもちろん知ってるよね? 昔、秦の始皇帝が何をしたか?」

「まさか――」

「そう! まさにその顔! いただきました! いやー、いつバレるかと思ってひやひやしてたけど。ずっと勘違いしてくれてたね! 天才(笑)とか言われちゃって舞い上がっちゃった? いや、見事な勘違い! うん、勘違い侍!」

「かんち、がい?」

「そう、私が言ったのはこの大陸の統一。統一ってことは、他の国の存在を許しちゃいけないってこと! 今、南群はオムカの傘下に収まってて、帝国がこうして降伏してきたよね。うん、そこまではお見事! けどさ。他に国、あるよねー?」

「そんな……シータ王国とビンゴ王国は同盟国だぞ。それがなんで――」

「だーかーらー。秦の始皇帝が何したっての。くっついたり離れたりして、韓魏趙楚燕斉を滅ぼしたんでしょ? 同盟国? そんなものが残って、統一って言える? アッキーも好きでしょ、歴史シミュレーションゲーム。あれに同盟で終わりなんてある? ちゃんと最後まで滅ぼしてこその天下統一じゃない?」

「ばか……な」

「ばかなのはアッキーだよー。それに気づかずに、ほいほいここまで来ちゃったんだからさ」

「…………」

「あははっ、言葉がないかなー? さて、そこで問題です。裏切られたわけでもないのに裏切られた顔で絶望しているアッキーに、とってもお得なクエスチョンです! シータ王国がつい先日、国に帰りました。さて、何のためでしょー? 1! 国王の九神ちゃんが本当に重病だった。2! 帝国を倒して大陸統一したとかって誰かさんみたくバカみたいな勘違いして勝手に帰った。3! 来るべき女神ちゃんとの最終決戦のために、戦いの準備をしに帰った。さぁ、どれでしょー! ヒント! 国王の九神ちゃんには、コーヤくんが自爆った日にはこのことを伝達済みでーす!」

「お前!」

「はい、時間切れー。答えは4の、全軍が出払って隙だらけのオムカ王都バーベルを攻めるために出陣した、でしたー。残念無念」

「……本当に、そんなことが……」

「さて、追加の問題です。迂回して7日ほどかかるシータ軍の移動と、今からオムカに戻るオムカ王国軍の移動速度はどっちが早いでしょー? ちなみに、シータ軍は5日前に出発しているものとする」

「ふざけんな、そんなこと、そんなこと……」

「アッキー。残念だったね。最後の最後で足をすくわれちゃったね。ね、今どんな気持ち? どんな気持ち? せっかく一生懸命戦って、色んな人の死を乗り越えてここまで来たのに。最後の最後に、仲間に裏切られて負けを眺めるのって、ね、どんな気持ち?」

「……最悪だよ。本当に」

「ですよねー。うん、その顔が見たかったー。あー、余はもう満足じゃ。それじゃ、アッキー。処刑の日まで元気でいてねー。あ、先に死んじゃってもいいよ? そっちの方が楽かもね。ここまで引っ掻き回して面白がらせてくれたアッキーには、最後の最期までこのわたしを楽しませてもらいたいからね!」

「最悪すぎる。最悪すぎて嫌になる」

「うふふ、壊れちゃったかなー。意外と楽しめた玩具だったけど、ま、こんなもんか」

「ああ、最悪だよ。本当に、最悪だ」

「だから分かったって。アッキーにとっての最悪は、わたしにとっての最高! うぅん、人間の不幸ってどうしてこうも快感なのかしらー」

「最悪だな……最悪だ。一番最悪の想定が当たっただなんて」

「……は? なに負け惜しみ言っちゃってるんですかー? うぷぷー、見苦しいですよ、アッキー?」

「帝国の滅亡と大陸の統一。それがイコールでないなんて前から気づいてた。けどあるいは、それで通せないかって思って黙ってた。でも、この通りだ」

「今更気づいてたアピールですかー? ちょっとそれはなくない?」

「女神といえども万能じゃないらしいな。いや、これは煌夜のおかげなのか、あるいは裏でこそこそと動き回ってて気づかなかったのか。策士、策に溺れるってやつだな」

「だから何を言ってるの!? アッキー、ちょっと見苦しいよ?」

「見苦しいのはお前だよ。ただ見てるだけで、人の命をもてあそんで。それでうまくいかなくなったら、こうもヒステリーに叫びわめく」

「ひ、ヒステリー? わたしが? 女神のわたしが!?」

「それ以外の何だってんだ。あぁ、本当に最悪だ。本当に……当たってほしくなかった」

「だ・か・ら! 何がって言ってんの! もう間に合わないんだよ!? アッキーの大事な大事な、女王陛下はもう間に合わない! アッキーの暮らした王都は破壊の限りをつくして滅ぶ! リンちゃんも炎にまかれて死ぬ! あんたは何も助けられない! 間に合わない! それがアッキーの末路。知力99だとかなんとか自慢して、調子乗ったその罰を受けるんだよ! なのになんでそんな落ち着いてられるの!」

「はっ、やっぱりヒステリーじゃないか。甘やかされて育った子供みたいなもんだな。いや、いいさ。それでも。今言ったよな。お前が言ったんだ。いや、お前がそうしたんだ。俺の知力は99。筋力は最低ランクだけど、知力だけは99あるんだ。それに、これまでずっと戦ってきた。悲しいことも多かったけど、俺は学んできたんだよ」

「だから、何が……」

「あえてだけど言わせてもらう。こういうことはあまり好きじゃないけど言わせてもらう。女神だと言っても、所詮は戦場に出たことがない素人。そんな素人が……軍略で俺に勝とうなんて――」

「っ!」



「100年早い」
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