知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第6章 知力100の美少女に転生したので、世界を救ってみた

第44話 対峙する王と王

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 王宮に戻ったところで、クルレーンの訃報ふほうを聞いた。

 川から侵入し、南門を内側から開けようとした敵を防ぐため、自らを犠牲にして城門を破壊したという。

 また1人、知り合いが死んだ。
 敵の侵入を許した、俺の判断ミスだ。

 あの黙々とした職人気質の、だが心に熱い想いを秘めている彼を、二度と見ることはできない。

 本当に、どこまでいっても成長しない。
 そんな自分が嫌になる。

 そう思うと、泣き叫びたくなる衝動に駆られる。

 けどそれは抑えた。

 この世界。
 マールやクルレーンだけじゃない。
 死んでいるのだ。毎日。
 こんなふざけた戦いで。兵たちは死んでいく。
 誰も得しない、誰も救われない。
 こんな騒乱。
 もう終わりにさせたい。

 いや、させる。
 そのために激情を抑え、こうして馬を走らせているのだから。

「明彦くん!」

「ジャンヌさん!」

 王宮の前で里奈とサールに合流した。
 2人して、この異変に王宮の門前を固めていたという。

 再会を喜ぶまでもなく、事態は刻々と変化していく。

 空から水が降ってきた。

 陽の光が照らし始めた空は晴天。
 天気雨、狐の嫁入りか。
 いや、そうではない。

 頭上を左から右へと横切るように、水の筋が中空に浮かんでいる。
 まるで誰かがホースで水をまいているように見えるが、高度が違う。

 それは南門のあたりから伸び、そしてこの王都の中央である王宮へと伸びている。
 そしてそれを俺は知っていた。

 2年前。
 あの人物と共に俺はあれを体験している。

 やはり来たのか。水鏡。

「急ぐぞ!」

 俺は50人を連れて、騎乗のまま王宮へと乗り込む。
 そうしなければならないほどの緊急。
 高そうな絨毯を馬蹄が踏みつけながらもひた走る。

 残りの兵は王宮の守護に回した。
 そう何百人で王宮に乱入するわけにもいかない。万が一という時の備えだ。

 そしてこれまで何百回と通った道を通り、そしてたどり着く。

 馬を降り、重厚な扉に体当たりするようにしてその中へと入る。

「おや、これはこれは。お早いお着きで、アッキー」

 芝居がかった口調で首だけこちらを振り向くのは、赤い刀身の剣を携えた九神だった。
 相変わらずのスーツ姿。
 久しぶりに顔を合わすが、何も変わっていないように見える。

 けど、その手に持つ赤い剣が――滴る赤い液体からそれは血を吸ったものだと分かる――どこか普段の彼とはまた違う、どこか狂気じみた雰囲気をまとわせている。

 さっと室内に目を走らせる。
 体育館並みの大きな広間にいる人間は5人。

 九神とその横に水鏡。
 それに対するようにニーアが肩を抑えてうずくまっている。
 その傍に雫と――

「マリア!」

 叫ぶ。
 すると、マリアはこちらにようやく顔を向け、

「ジャンヌ……」

 その顔は引きつって青ざめている。

 ニーアが怪我をしている。
 そのことに動揺しているのかもしれない。

「残念、少し遅かった」

 九神が無感動にそう告げると、剣を振り上げる。
 その先に目指すのは、もちろんマリア。

「女王様、お逃げください!」

「ダメなのじゃ! ニーア!」

 ニーアが身を挺してマリアを守ろうとする。
 だがマリアは涙を流してニーアにしがみつく。

「よせ! 九神!」

 走り出す。だが間に合わない。
 それは分かっている。

「では主従ごと、一思いに」

 九神が剣を振る。
 俺の前に閃光が走った。
 里奈だ。
 だがそれでもこの距離を一瞬でゼロにすることはできない。

 間に合わない。

 だが――

「ダメ!」

 1つの影が、マリアたちの前に出た。

 血が、舞った。

「……雫?」

 起こったことが理解できない。
 そんな様子で水鏡がつぶやく。

 俺は止まっていた。
 いやすべてが止まっていたように思える。

 雫が、その小さな体を大きく広げてマリアたちの前に立ち、九神の剣を受けたのだ。
 血しぶきを上げ、

「……ミカ……ダメ……」

 そして膝をついて倒れた。

「雫っ!」

「あんたは!」

 水鏡が走り出すのと、里奈が九神に殴りかかるのは同時。

 里奈のスキルが発動している。
 目にも止まらぬ速さで突っ込んだ里奈は、九神が反応するより早くその弾丸のような拳を叩き込もうとする。

 とった。

 誰もがそう思った。

 だが――

「遅いよ☆」

 里奈の必殺の一撃を、まるで知っていたかのように一歩後ろに下がることで、九神は避けた。

「っ!」

 目標を失った里奈はつんのめるようにしてたたらを踏む。
 だが、それでも無理やり足を踏ん張って態勢を整えると、再び九神に殴りかかる。
 だがむなしく空を切る。

 それでも里奈は前に出る。
 それが九神を引き付ける里奈の心遣いだと分かり、俺はマリアたちの方へと向かった。
 先に到着していた水鏡は雫の体を抱きかかえるようにして、涙を流していた。

「雫……雫……ごめんね、ごめんね」

「ミカ……」

 どうやら雫は死んではいないようだ。
 けど浅い傷とは思えない。
 今も抱きしめる水鏡の服を命の水が濡らしていく。

「隊長殿、医者を呼んでます。とりあえず止血しますが」

「頼む」

 追いかけてきたクロエが機転を利かせてくれた。
 あとはそれまで持つかどうか。

 もう、誰にも死んでほしくない。
 祈るような気持ちで、そう思った。

「ジャンヌ……助かるかの」

 マリアが心配そうに聞いてきた。
 とりあえず傷はなさそうだ。そのことに安堵。

「ああ。お前も大丈夫か? ニーアも」

「うん、大丈夫なのじゃ。ニーアが、彼女が守ってくれたからの」

 そのニーアが、ゆっくりと立ち上がってこう言った。

「ひとまずクロクロたちに女王様を守らせて。それからあたしが加勢する」

「けど、お前が出ても……」

「そんなこと言ってる場合? あのリナって子。死ぬわよ」

「え?」

 ニーアがそんなことを言ったのが信じられなくて、俺は慌てて振り返る。

 そこでは信じられない光景が展開されていた。

「はぁ……ッ、はぁ……ッ、はぁ……ッ!」

 これまでどんな敵と相対しても、どれほどの数の敵と戦っても、圧倒的な力で退けていた里奈が。

「うん、なかなかに強い。噂に聞いていた里奈くんが君か」

 無傷の九神を前に、息を切らせて跪いていた。

「けど、僕には及ばない」
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