知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
8 / 627
第1章 オムカ王国独立戦記

第8話 宵闇の決断

しおりを挟む
 迷った。
 いや、迷う以前の問題なのかもしれない。
 だってここがどこなのかすら分からないのだから。正解がない状況で迷うということはありえないはずだ。……うん、戯言だけどさ。

 おばあさんの話では朝には着くというのだから、相応の距離があるはずだけど夜の森は方向が分からず、何より視界が悪い。
 こういう時にこそGPSがあったらと思う。科学万歳。

「地図、地図ねぇ……」

 あのスキルの魔導書をなくしたことが悔やまれる。もしかしたら地図くらい載っているのでは、と思ったからだ。
 やむにやまれぬ状況とはいえ、惜しいことをした。

 ……と待てよ。
 本当になくしたのか? スキルってそう簡単になくせるものなのか?

 そう思い、一瞬迷い、そして言ってみた。

「スキル!」

 出た。
 光もなく、右手に先ほど手にした薄い本が顕現した。さすがにそうそう消えたりするものではないと知って一安心。そして更なる安心を得るために、月明かりを頼りにページをめくる。

 ――が、

「ないな。キザ男のとこ以外、やっぱり白紙ばっか。あーあ、せめて地図があればなぁ」

 その時、手にした本が一瞬脈動したような気がした。

 まさかと思い、再び本を開ける。
 先ほどのキザ男の次のページ。見開きになっているところに木のマークが乱立する図――地図が現れていた。

「出た……!? まさかこの本!」

 再び注意書きを見る。

「スキル『古の魔導書エンシェントマジックブック』の使い方。この本は古今東西の本を網羅した本です」

 さっきは緊急事態だったから深く考えなかったが、この本の本当の意味というのはこういうことなのか。

 地図は本だ。
 そして先ほどのキザ男のプロフィール。あれもその人の一生と人となりを紹介するという意味では“伝記”という本だ。
 つまりこの魔導書とかいうスキルは、魔法は使えないけど様々な本を再現する魔法の本ということ。即戦力になるものではないが、使い方によっては様々に使える、応用の幅が広いスキルだ。

「これ拾いものじゃね!? ……まぁもっとカッコイイ、しかも即超強いスキルとか欲しかったけど」

 ためしに自分のプロフィールを読み込んでみる。

「えっと、名前はアキ。まぁこの状態で明彦ってのもな。うん、でやっぱり女だよなぁ。14歳……子供じゃねぇか。てか身長146センチ、ひっく! 体重40キロ、かっる! スリーサイズ……うわぉ。血液型は、O型とかどうでもいいや。えっと、でパラメータは……」

 統率力48。
 筋力1。
 知力99。
 政治力39。
 魅力95。
 瞬発力49。

 うーん、こうしてみると凄惨なものだな。
 歴史シミュレーションゲームだったら、知力か魅力を使う内政のお仕事につかせるだけで絶対前線には出さない。こんな並み以下の統率力で、力が最弱の奴を前線に出したら瞬殺されるわな。やっぱりあの女神許せん。

 復讐心を新たに、もう一度地図を表示させる。
 周囲はほんともう森。縮尺があるけれど、比較となるものがないのだから判断しづらい。とりあえずさっきの夫婦の家から北東に向かっているらしいが、地図にはまだ王都というのが出ていないから、まだまだということか。

 それより気になっているものがある。
 地図のいたるところに赤色の光点がちりばめられていた。さらに進路上の位置には青い光点が一か所だけある。何かの地図記号か、と思ったけどそうじゃないのはすぐに分かった。
 驚くことに、それが動いているのだ。それはつまり、この地図がリアルタイムに連動していて、何よりこの光点が意味するものは――

「まさか……軍か?」

 赤色は俺を襲ったビンゴ軍とかいう、戦闘に勝利した軍。
 青色はビンゴ軍に敗北した老夫婦の所属するオムカ王国の軍。

 青色の点はピクリとも動かない。それに対し赤色の点は大きな点を中心に、まるで何かを探るように、あるいは方々で略奪をしているかのように青い点を目指して進んでいる。
 幸い老夫婦の家の周りにはまだ赤い点はない。
 なんとかこのまま見つからずにいて欲しいが、そこは祈るしかなかった。

 とにかくこの地図は武器だ。
 これを見ながら進めば、少なくとも軍に遭遇することなく逃げられる。追いつかれても前もって身を隠せれば、やり過ごせる可能性は高い。
 だから地図を見ながら逃げればなんとかなる、そう思った足が止まった。

 赤色の軍の動きが変わった。
 大きな光点が2つに分かれ、それぞれが迂回するかのような動きをとる。

 その意味は何か。
 分かりきったことだ。

 敵を発見し、挟撃するために軍を分けたのだ。
 負けたオムカ王国の軍は、逃げるのに精いっぱいでそれに気づいている気配はない。

 といっても知らない国の知らない軍が戦って負ける、それは俺には関係ないこと。

 けど――

 オムカ王国が負ければ、あの老夫婦に危険が降りかかる可能性は高くなる。

 確かに今から走れば、赤の光点がたどり着く前に俺は青色の光点に行けるだろう。

 それでどうする。
 俺が行っただけで事態が好転するほど生易しい状況じゃない。それこそこの状況をひっくり返すには、神がかった采配を行う名軍師のような――

「軍師?」

 そこで思考が止まる。

 軍師といえば、諸葛亮しょかつりょうとか竹中半兵衛たけなかはんべえのような兵法に通じ、地理気象に通じた天才のことだ。

 兵法は歴史を紐解いていく過程でかじった。
 気象は分からないけど、地理はこの通りGPS完備。
 そして何より、知力99が天才でないはずがない。

 改めて地図を見る。
 ただの森。これがタブレットだったらもう少し拡縮とか……できるのかよ! すげぇなこの本!

 ズームすると、青い光点は森の中の開けた場所で野営しているらしい。
 周囲は変わらぬ森ばかり。つまりそこに敵が潜んでいてもすぐには気づけないだろう。そうなったらこの青い光点は一撃で粉砕。あの置物のようになった人の形をした何かみたいに、そこらに転がることになる。

 ただ――

 森、夜、開けた場所、野営。

 ああくそ。思いついちまった。この赤い光点をぶちのめす策が思いついちまった。

 なら行くのか?
 あの戦場の中に行くのか?
 昼に見た光景。あの中に入ったら秒で死ぬ確信がある。

 けれど――

『ありがとうね。また会いましょう』

『…………』

 2人の笑顔を思い出してしまい、そして溢れる熱い思いがこれ以上この場に留まることを許さない。

「だぁ! くそ!」

 走り出す。
 もしかしたら終着点は2度目の死なのかもしれない。けど知ったことか!

「これは、あれだ! このまま青が負けたら、王都に行っても安全じゃなくなるから! ただそれだけだからな!」

 誰に向かっての言い訳か。
 世のため人のためとかこっぱずかしいことを大きく言うわけじゃない。

 あくまで自分のため。
 そう言い聞かせて夜の道を走る。
 青――オムカ王国の野営地に向かって。


//////////////////////////////////////
読んでいただき、大変ありがとうございます。
いいねやお気に入りをいただけると大変励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!

山田 バルス
ファンタジー
カールは学園の卒業式を終え、心の中で晴れやかな気持ちを抱えていた。長年の努力が実を結び、婚約者リリスとの結婚式の日が近づいていたからだ。しかし、その期待は一瞬で裏切られた。 「カール、私たちの婚約は解消するわ。」 リリスの冷たい声がカール…

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

勇者をしている者なんですけど、キモデブ装甲のモブAにチェンジ魔法を使われて、身体が入れ替わった!? ありがとうモブA!やっと解放された!

くらげさん
ファンタジー
 雑草のように湧いてくる魔王の討伐を1000年のあいだ勇者としてこなしてきたら、キモデブ装甲のモブAに身体を取られてしまった。  モブAは「チェンジ魔法」のユニークスキル持ちだった。  勇者は勇者を辞めたかったから丁度良かったと、モブAに変わり、この姿でのんびり平和に暮らして行こうと思った。  さっそく家に帰り、妹に理由を話すと、あっさりと信じて、勇者は妹が見たかった景色を見せてやりたいと、1000年を取り戻すような旅に出掛けた。  勇者は勇者の名前を捨てて、モブオと名乗った。  最初の街で、一人のエルフに出会う。  そしてモブオはエルフが街の人たちを殺そうとしていると気付いた。  もう勇者じゃないモブオは気付いても、止めはしなかった。  モブオは自分たちに関係がないならどうでもいいと言って、エルフの魔王から二週間の猶予を貰った。  モブオは妹以外には興味なかったのである。  それから妹はエルフの魔王と仲良くなり、エルフと別れる夜には泣き止むのに一晩かかった。  魔王は勇者に殺される。それは確定している。

処理中です...