知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第1章 オムカ王国独立戦記

閑話4 時雨(しぐれ)(シータ国オムカ方面陸軍都督)

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 夜が明けて事態の全体像が見えてきた。

 水軍の駐留地から見えた炎は、やはり敵の放火だった。
 火を見た時点で部隊を派遣すれば、放火した部隊を補足できたかもしれない。

 だが動けなかった。
 余闇で視界が悪い中、部隊を分けるのは愚策だからだ。途中で待ち伏せに遭えば全滅の危険があるし、何よりこちらの陣に夜襲をかけてくる可能性があったからだ。

 そもそも水軍のことは水軍で、陸軍のことは陸軍で決めるとシータ王国では決まっている。昔から陸軍と水軍は仲が悪いのだが、自分たちの代でそれが決定的になったというのはいささか心苦しく思う。
 だが水軍都督の淡英たんえいは父の仇なのだ。そうそう許せるものではない。
 戦場に私怨を持ち込むのは間違っていると頭で分かっているものの、どうしても心では納得できなかった。

 だからその時も水軍のことは水軍で、と考えてしまったのだろう。

 朝日が昇るころには事態が収束し、被害が報告された。
 大型船3隻が全焼。2隻は甲板が燃えただけで航行に影響はない。それより問題なのが夜襲に浮足立って、船を動かそうとして座礁したり味方の船に激突するものが多かったことだ。

 兵の被害は少ない。
 シータ国のしかも水軍の兵だ。泳ぎが達者でなければ生きていけないから、船を放棄して川に飛び込めば助かる。

 ただそれは兵の話であって、全焼した3隻を動かす水夫たちはかなりの被害が出たという。
 熟練の水夫を育てるのは、熟練した兵士を育てるより難しい。そう考えると無視できない被害であり、国王より承った兵士や水夫をむざむざ死なせたのは許しがたい。

 おそらく先鋒はいわおだろう。
 淡英の部下らしく、頭より先に手が出るタイプの野蛮人だ。それが油断してこの失態を生み出したというのであれば、それこそ死をもってあがなうべきだ。

 いや待て。本格的に戦闘が始まる前から味方を処断しては士気に響く。
 淡英の失態だからといって感傷的になるのはよくないと己を窘めた。

「伝令! 水軍は攻撃を開始する。陸も始めよ、とのことです!」

 どうやら淡英も同じ結論に達したらしい。
 あいつからの命令というのは気にくわないが、向こうから協調を取りに来たのだから無碍にするわけにはいかない。

「よし、では始める。第1隊、前へ。第2隊と第3隊は弓鉄砲で第1隊を援護。第4隊から6隊は攻城兵器を準備して待機」

 目標はカルゥム城塞。
 幾度この城壁に悩まされたか。ここを守る老将に苦汁をなめさせられたか。
 だが今やその老将はいない。今こそオムカに向かって領土を広げるチャンスだ。

 左手で歓声が聞こえる。
 どうやら淡英も始めたらしい。巌は先鋒だろうか。あいつの突破力はすさまじいものだが、この戦いで死んで欲しいという思いもある。

 いやしかし味方の死を願うとはひどい話だ。

 だがこれからを考えると、水軍にばかりいいところを見せられない。
 だからこそ、この城塞はわが手で落として見せる。その熱が伝わったのか、兵士たちはかなり高い士気を持って攻城戦に挑んでいる。これなら昼過ぎには城門が開くだろう。

 …………。
 ……………………。

 おかしい。まったく落ちる気がしない。
 昼を過ぎてもこちらの犠牲が増えるだけで、城門に達する前に弓や鉄砲が降り注ぐ。
 仮に城門に達したとしても、岩や油が落ちてきて被害が増えるだけだ。

 敵はハワードという柱石を失って狼狽しているはずだ。
 なのになんだ、この統率は。

 一旦退くか。
 いや、淡英もまだ退いてはいない。
 ここでこちらだけが退いたら、淡英になんと言われるか。

 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。

 ダメだ、落ちない。
 3日経ってもびくともしない。

 兵は城門にたどり着いても城門に傷を入れるだけでやっとだ。
 攻城兵器は城門にたどり着く前に破壊されるか燃やされる。

 北に兵を回したものの、大軍が展開できるわけではなく、もとより攻城兵器をおける地形ではないのだ。
 しかも北門にもしっかり守備隊が残っており、さんざんに打ち破られて帰ってきた。

 夜襲を交代で仕掛け、夜を眠らせない方法も取ったが効果はなかった。

 こうなったら国軍総帥殿の提案した策を進めるしかなかった。

 昨日の夕方、第5部隊を退かせて一部南下させた。

 そこに待つのは3艘の中型船。
 それに乗り込んで第5部隊は上流へ向かう。南門を攻める水軍の背後を通り過ぎ、城塞とは少し離れた場所にて降りてから闇夜を駆けた。

 そして今日、この朝。不眠不休で攻城兵器を組み立てた後は手薄な西門を突破するだろう。

 この3日間、一度も責められなかった西門だ。
 大きく回り込まなければ攻め込むことはできないため、手薄になっているに違いない。
 だからこそ、この奇襲は成功する。

 城塞の向こうにのろしが上がった。
 西門を攻める合図だ。

「総がかり! なんとしても門を壊せ!」

 のろしを合図に東西両方から責め立てる。
 これで敵は混乱し、城門に取り付けば後は攻城兵器で門を破壊するだけだ。

 だが――

 喚声が響く。
 朝の空に響くのは敵側の勝鬨かちどきだ。

 まさか、見破られたのか。ありえない。
 だがその思いを否定するように、東門に集中する矢の数がまた増えた。

「何故だ、何故こうも……」

 そもそも何故こうも準備が整っている。敵の矢も銃弾も途切れることはない。
 今回はハワードの危篤を聞き、即座に軍を編成し、ここまで駆けに駆けてきたから1週間もかかっていない。

 我々の動きを前もって検知していない限り、そんなことは――

「まさか、それが仕組まれていたことだとすれば……」

 悪寒。
 まさかハワードの危篤というのが敵の罠で、我らが編成をする前から籠城の準備を行ったとしたら……。
 この頑強な抵抗にも納得がいく。

 こうなっては仕方ない。淡英にも一度引くよう要請しなければ。
 軍をまとめ一時撤退をしようとした時、

「なんだ!?」

 陣が揺れた。
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