知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第2章 南郡平定戦

第78話 結びに代えて

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 圧倒的だった。

 声量、声域、それだけじゃない。
 彼女の歌は台風だった。

 激しいロック調なわけではない。
 こぶしを利かせた演歌調なわけでもない。
 彼女から放たれる圧倒的な歌の力が、想いの力が客席を襲う。

 しがらみから解放された彼女は、その圧倒的な力強さで舞台に立っていた。
 いつものなよっとした彼女からは想像もつかない力強さ、いや、自己顕示欲とでも言えばいいのか。

 正直、舐めていた。
 歌なんて、楽しんだ者勝ちだとか言ってた馬鹿の通り、それだけのものだと思った。

 けどこれは違う。
 楽しいだけ、という表面的なものだけじゃない。
 彼女の歌は心の奥底にある何かを揺り動かす。

 揺り動かすだけならまだいい。
 それを動かし、増幅させ、そして外へと弾けさせるような、思わず叫びたくなるような衝動を与えるのだ。

 客席を見る。
 呆気にとられるもの、頬を紅潮させるもの、涙を流すもの。
 千差万別。
 だが揃って誰もが彼女の歌に引き込まれていた。

 そして、何かの起爆スイッチを押されていた。

 彼女の声が途切れた瞬間。
 一瞬の間をおいて大歓声が響いた。
 それは王都を全域に広がるような大音量。

 審査員席にいる俺も思わず指で耳栓をしてしまうほど。

 いや、本当に舐めていた。

 このオーディションだって、マリアが面白そうだからと勝手に始めたものだったし、少しでも歌が上手い人がいれば、とりあえずの体裁は整うと思った。
 まさか自分が審査員の1人になるとは思わなかったけど。

 それ以上のまさかで、こんな人材を掘り起こしてしまうとは。

 少し不安はある。
 この歌。
 ただ魂を揺さぶるだけじゃない。
 どこか危うさをはらんだこの感覚。

 扇動の歌、というべきか。
 マツナガが知ったら嬉々として謀略の駒に使いそうな力だ。

 ならば落とすか。
 ……いや、ここで彼女を落としたら俺が悪者、暴動が起きる。それほどまでに彼女は観客の、民衆の心をつかんでいた。

 やれやれ、参ったな。

 ふと視線を感じて顔をあげた。

 アヤだ。

 目が合った。
 それで彼女はちょっと驚いたような表情をして、少しほほ笑んだ。

 あぁ、そういえば名乗ってもなかったような気がする。
 半年近くも通っていたのに、店員と客でしかなかったからしょうがないとはいえ、薄情なものだ。

 とりあえず後で謝っておこう。
 いや、先に言うことがあるはずだ。

 まずはおめでとう。
 そしてごめんなさい。
 うん、これでいこう。

 鳴りやまない喚声が蒼天に響く。
 それが彼女の新しい門出を祝っているようで、俺は少し安堵して目を閉じた。

//////////////////////////////////////
2章完結、です。本当に。
次回から3章に入ります。
帝都潜入篇。厄介な敵と最強の敵、そして最大の敵とが登場し、里奈との凄惨な出会いが待ち受けていますので、この後も楽しんで読んでいただければと思います。

また、いいねやお気に入りをいただけると励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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