知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

第0話 とある未来の対談の光景

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「この世界はあの女神のおもちゃです」

 男は言う。
 神父みたいな黒い服――キャソックといったか――に身を包んだ男で、体型はほっそりとしていそうだが中は相当に鍛えられているのだろう。この男がバカみたいに体術も強いのは十分見せつけられた。

「だからこんなクソみたいな世界を真剣に生きるなんて恥さらしもいいこと、愚の骨頂です。それだけあの女神を喜ばせることになるのですから。我々にはこの世に生を受けた借りはあるものの、あの女神を喜ばせる義理はない。そうは思いませんか、ジャンヌ・ダルク?」

 その眠そうなぼうっとした表情からは出たとは思えない辛辣しんらつな物言いだ。
 細い目からはそれが本気で言っているのか、そう取りつくろっているのかが分からない。

「…………」

 俺は口を開かない。
 何か喋れば、そこに付け込まれそうな気がしたから。

「それとも君はあれですか。あの女神の口先三寸に惑わされたとでも言うのですか? 天下統一すれば全員を元の世界に返すという口約束に、まんまと踊らされてしまった愚物と同じなのでしょうか?」

 男は問う。不敵な笑みを浮かべて。

「…………」

 俺は口を開かない。
 考えを述べれば、自分のすがるものを壊されそうだから。

「ですが不思議に思いませんか? それならばプレイヤーがすべて、一番強大な国に属してしまえば、何ら悲劇も苦しみも悲しみも恨みもなく、元の世界に戻れるというのですから。なのに今この世界は混乱に満ちている。あなた方があらがうからです」

「…………」

 俺は口を開かない。
 認めてしまえば、かつて似たようなことを言った誰かを汚しそうだから。

「ただそれが悪いと言っているわけではありませんよ。これもあの女神のせいと考えればあなた方の行動理念も行動理論もなんとか理解できます。賛同はできませんがね。それにたとえ君がそこらの愚物と同等の思考回路をしていようと、この場、この時においてはどうでもいいことです。私の目的と君の目的。方向性は違えど、その終局点においては同じだと判断しますが、違いますか?」

「…………」

 俺は口を開かない。
 何か反論すれば、逆に相手の論述に飲み込まれそうだから。

「だから問いましょう。私は聞こう。このエイン帝国パルルカ教の教皇たる私、赤星煌夜あかぼしこうやが、オムカ王国軍師ジャンヌ・ダルクに1つの、たった1つのシンプルで単純で単調で自然で当然で当たり障りのない核心をついた革新をもたらす問いを投げかけようではないですか」

 男はそこで口を閉ざす。
 それでも不敵な笑みを消さない。

「…………」

 俺は口を開かない。
 先に動いてしまえば、この邪悪な笑みに俺自身が壊されそうだから。

 ただ黙って相手がカードをすべてさらけ出すのを待つ。 

「私と一緒に――」

 そして男は言う。
 何ら躊躇ちゅうちょもせず、ただ漫然と、つまらなそうに、面白そうに、愉快そうに、不快そうに、ただただ流れるがごとく、思いっきり、掛け値なしに、はっきりと。

「この世界を滅ぼしませんか?」

 そう問いかける男の瞳。
 まぶたの奥にある色は本気そのもの。

 一切の虚飾も虚言も嘘偽りもなく、ただただこのためにこんな大戦を引き起こしたのかとさえ思ってしまう。そんな表情。

 俺は考える。
 男の語ったことを反芻はんすうし、その言葉を分析し、その裏にあるものを読み、男の行動と照らし合わせ、世界の情勢と比較して、そのうえで自分の気持ちを乗せる。

 知力99の面目躍如と言わんばかりに脳が高速回転し、灰色の脳細胞を活性化させる。

 シンクシンクシンク。
 考えろ。
 考えることは神が人間に与えた最強の武器だ。
 考えることがあまねく与えられた平等の力。
 考えることで凡人は天才を打倒しうる。

 だから思考を止めるな。
 鼻血がでようが目がくらもうが頭痛がしようが関係ない。
 寝落ちしようが気絶しようが卒倒しようが絶え間なく。
 飢えようが衰弱しようが死に瀕しようが最期の最期まで。

 考えぬけ。さすれば与えられん。

 だから俺は口を開いて――

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これまで読んでいただきありがとうございます。新章開幕となります。
ここから大陸最強となる帝国との戦いに話は進展していきます。
なお、この回は自分が特に大好きで敬愛する作品の一部をオマージュさせていただいております。
分かった方がいらっしゃいましたらコメントなどいただけると幸いです。

また、いいねやお気に入りをいただけると励みになります。軽い気持ちでもいただけると嬉しく思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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