知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

第10話 復興と戦争と

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 その日は5月中頃に入り、少し暑さを感じ始めた夜のこと。
 寝室を揺るがす揺れが俺を――いや、王都を襲った。

 ベッドにしがみつかないと振り落とされてしまうのではと思うほどの揺れ。

「た、隊長殿!」

 隣のベッドで寝ていたクロエが騒ぐ。
 問題ないと叫んだと思うが、それが声として出たのかどうか曖昧。それほどの激しい揺れだった。

 数分も続いた揺れの後、家の安全を確かめた俺はパジャマ姿に上着を羽織って王宮へ急いだ。王宮は一部が崩れていたが、全体的には問題なくマリアも無事だった。

「こ、怖かったのじゃ……ジャンヌ」

「大丈夫だ。俺はここにいる。ニーア、クロエ、すまないが街を見回ってくれ。火事が起きているかもしれない場合はその対処を。俺はここで指揮を取る」

「りょーかい、女王様はよろしく」

「分かりました、隊長殿! ジャンヌ隊の安全も確認したら、彼らも行かせます!」

 自分で行きたかったが、マリアのこともあるし、何より貧弱の俺が行くより2人が行った方が多くの人を救えるはずだ。

 それから一昼夜。
 上がってくる報告に対処しつつ、怖がるマリアをなんとか寝かしつけていると夜が明けた。

 それから休む間もなく王宮の外に出て復興作業に当たった。一部外壁は崩れており、火事で焼けた家もあった。人的な被害は少なかったがゼロではなかったのが胸に痛い。

 いや、それ以上に胸が痛んだのはさらに翌日の朝、早馬が来て情報を伝えてきてからだ。

「ヨジョー地方が……壊滅?」

 嘘だろうと思った。
 けど、書かれている内容はブリーダのものだから本当だろう。
 しかもサカキが救助活動の中で瓦礫に押しつぶされて重傷だという。送った文官の中でも死人が出て、一般人の被害は数えきれないほどだという。

 ところどころに地割れが起き、極めつけはウォンリバーからあふれ出た水が洪水となって、大地を飲み込んだという。
 たとえ水がはけても、向こう1年以上は作物は期待できない部分ができたのだ。
 
 俺はその報告を受けた時、思わず机に拳を振り下ろした。

 くそ、これだ。
 帝国軍の狙いはここにあったのだ。

 マツナガが言った爆弾。
 こうして復興を押し付けられれば、俺たちはしばらく動けない。しかも大量の金が消費される。

 経済的な意味で国家転覆の危機だ。

 だがここで疑問が残る。
 何故、帝国はこの地震を予測できたのか。

 まさかこの世界で正確な地震発生の予測システムが確立されたなんてわけはないだろう。何か予兆があったのか、またはそういうこことが多い地方だったのか。
 あるいは――誰かのスキルなのか。

 とはいえそれを考えても仕方ない。
 とにもかくにも災害復興が危急の課題なのだ。

「金策はお任せを」

 マツナガがそう言った時に、目に怪しい光をたたえていた。
 おそらくまた余計なことをする気だろう。
 そう思ったが言えなかった。ここで金策ができなければ、ヨジョー地方だけでなくオムカ王国も共倒れになる。

 そうなったら今以上の人が犠牲となるのだ。
 ここはマツナガを色んな意味で信じるしかなかった。

 俺とジルはヨジョー地方にとんぼ返りする形となった。
 クロエたちも連れていきたかったが、引き継ぎもあって1日遅れで出発となった。

 王都周辺の様子はさほど変わりなかった。
 北の砦も一部、石壁が崩れたくらいで被害は薄い。

 だがヨジョー地方に足を踏みいれると悲惨だった。地面には亀裂が入り、ところどころが水浸しになっている。田畑は文字通り壊れ、復旧には長い年月が必要そうだ。
 家も崩れ、田畑も失った農民たちは、どうすることもできずただ無気力に死を待っているようにも見えた。

「ひどい……」

「ええ。ですから彼らのためにも、これを届けなければなりません」

「ああ……」

 もちろん俺とジルだけで来たわけじゃない。
 2千の軍は俺の護衛でもあり、王都からの食料と衣服、医療品といった補給物資を輸送隊でもあり、ヨジョー地方の救助隊でもあったのだ。

 途中で遅れてきたクロエたちと合流した。
 普段は陽気な彼らも、さすがにこの状況においては沈鬱ちんうつな表情を隠せない。
 そしてそれはヨジョー城の崩落した城壁を見て更に深まり、城内の凄惨せいさんな光景を目の当たりにして一気に深淵へと突き落とされた。

 崩れた城壁、潰れた建物。そこらじゅうでけが人がたむろし、満足な治療もできないままでいる。瓦礫の下に人がいるらしく、数人がなんとか救助活動を行っている。子供が鳴き声をあげ、両親を求めてさまよっている。

 まさに地獄だ。
 ほんの数日前までは、平和に暮らしていたのに。

「サカキ、無事か!?」

「おお、ジャンヌ……ちゃん、来たか。へへ、どうよ、包帯男だぜ」

 サカキを訪れると、そう言って力なく笑った。
 全身を包帯で巻いてミイラ男みたいになっているが、全然笑えなかった。

「師団長殿は、崩れる家屋から子供たちを助けようとして……子供は助かったんすけど、本人はこのザマっす……」

「ブリーダ。お前も無事でよかった……」

「いえ、俺なんて……戦場じゃあどうだって言ってるっすけど、今ほど自分の無力さに打ちのめされることはなかったっす」

 それは俺もだよブリーダ。

 なにが知力99だ。
 何が天才軍師だ。

 情けない。
 それがどうしたというのだ。それでこの人たちが救えたというのか。
 あるいは――どれだけいきがっても、人間は自然に勝てないのか。
 無力感。

 それ以上に湧き上がる感情がある。

 そうだ、これは怒りだ。おそらく、帝国の上層部はこの地震を知っていた。その方法は分からないが、おそらくスキルであることは間違いないだろう。
 だからタイミングよく軍を撤収できたわけだ。

 だが、それが逆に不審と、そして怒りを呼び込む。

 ――ならば何故。

 どうしてここにいる皆に、どうして避難勧告をしなかったのだ。
 そうすればこうやって怪我に苦しむことも、肉親を亡くして悲しむことも、明日への希望を失うこともなかっただろうに。

 ……分かってる。
 俺たちに彼らを押し付けるためだ。そのためには健康で未来に希望溢れる良民ではいけない。傷を負い、苦しみ、明日への希望を失った避難民でなくてはならないのだ。

 マツナガが可愛く見えるほどの非情の一手。
 これで帝国は、対オムカ戦線に割く兵力を、対ビンゴ、対シータに振り分けられる。今でも拮抗とした状況なのに、これ以上の増援があれば彼らも苦しいだろう。

 いや、その程度ならまだ優しい。
 もし本格的に俺たちを潰そうというのなら――

「伝令! 対岸に続々と軍船が集まっています! その数、100以上! 3万ほどの帝国軍が攻めてくると思われます!」

 目の前が真っ暗になりそうだ。
 だがここで呆然としていられない。

「動ける兵は川岸に陣を張れ! それから王都に伝令! マール、城の守りと救助は任せる、ザインはその補佐! ジル、ブリーダ、クルレーン! 迎え撃つぞ!」

 ここを抜かれれば王都まで一直線だ。
 崩壊しているヨジョー城には籠れない。
 なんとか川岸で止めなければならなかった。

 こうして俺たちの対エイン帝国戦線は、いきなり危急存亡のときを迎えることになった。

//////////////////////////////////////
ここまで読んでいただきありがとうございます。

最近、各地で地震が起きている中でこの展開は、と思うところはありますが、この後の展開としてここは避けられない内容となりこうして書かせていただきました。
お気分を悪くされた方には申し訳ありませんが、ご了承いただけると幸いです。
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