知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

第13話 包囲網

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 大急ぎで準備をすると、俺は隊を率いて川の傍を上流へと駆ける。ジルにつけられた歩兵3千も後からついてくる。
 火はつけない。だが『古の魔導書エンシェントマジックブック』があるから迷わない。

 俺は再度敵の位置を確認して、クロエを使いに出した。ブリーダにこちらの意図を伝えるためだ。
 夜だから同士討ちが怖いけど、そこはもう彼らの才覚に任せようと思った。

 俺たちがいる場所から北西に1キロほどの地点に白い点。
 そこを目指して敵が船で渡ってくる。敵船団の3分の1とルックが言っていたから、およそ20隻。200人乘りとして4千。
 ブリーダからの報告では、対峙する軍は歩兵が4千、騎兵が3千ほどというから合わせると1万1千ほどだ。

 対するこちらはブリーダの2千とクルレーンの900。そして俺たちの200に歩兵3千。
 合計約6千。いや、夜に鉄砲を撃つのは難しいだろうから実質5千だ。

 戦力的には倍。
 だが有利な点がある。

 1つはこちらの奇襲の形になること。
 1つはまだ船団の4千は上陸しきっていないこと。
 1つは敵は分散しており、連動しづらい状態だということ。
 1つは『古の魔導書エンシェントマジックブック』により奇襲のタイミングが分かるということ。

 これだけ有利な状況があるのだ。
 負けるはずがない。

 だから俺は進軍の命令を出した。
 敵の船が岸についた頃合いだ。そこから上陸するのだから、その時点が一番の無防備。ゲームみたいに一瞬で戦える部隊が出現するわけじゃないから。

 だからその近くまで馬にはばいをくわえさせ、馬を降りて音を立てないよう静かに近づく。
 上陸地点との距離が残り500メートルを切ったあたりで、俺はそこで騎馬隊には乗馬を命じた。
 そしてそのまま一気に駆ける。

 川岸。月明かり。船。見える。10数隻もの船が川岸に並び、次々に兵を地上に降ろしている。
 そこへ一気に襲いかかった。

 その直前。
 離れた場所から破裂音がいくつも轟き、悲鳴が聞こえた。

 クルレーンだ。
 どうやらこの夜闇でも鉄砲は健在らしい。火を焚いている野営地に放つくらいは楽勝ということか。タイミングもばっちり。
 ブリーダたちも突っ込んでいるはずだ。
 残りの敵はさらに1キロ離れているから、ここに来るまで時間はかかる。それまでにどれだけ討てるかが勝負だった。

「隊長は後ろに!」

 ウィットが俺を押しのけ前に出る。
 ルックが馬上から弓を引き絞り射る。

 騎馬隊が岸に降り立った兵を蹂躙する。
 そこに少し遅れて歩兵が突っ込んだ。

 まだ陣を組むほど人数のいない状態の無防備の一瞬。
 半ば賭けだった。これでそれぞれの船の兵が連携して陣を組まれたら、これほど楽には勝てなかっただろう。

 だが敵は連携らしい連携もない。俺たちが襲い掛かると、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うばかり。さらに次に降りようとした兵は、恐れをなして降りてこない。

 だから俺たちが走る後には敵の屍が積み重なり、ついには鉦を鳴らして敵船は岸から離れていってしまった。

 完勝だ。

 その音を聞いて、ブリーダの騎馬隊とクルレーンの鉄砲隊が合流してきた。

「軍師殿、ご無事ですね」

「あぁ、ブリーダ。ナイスタイミングだ。クルレーンを使ったな」

「はい、実は丁度話し合っているところにクロエさんが来たので」

「あれくらい、朝飯前だ。今は夜だがな」

 呟くようにクルレーンが言う。

 今のはジョークと受け取って良いのだろうか? いつもの真顔で判断がつかない。
 よく分からないからとりあえず頷いて流しておいた。

「とりあえず敵は散々に打ち破って、逃げ出しました。例の精強な騎馬隊の方へ。奴らもこの闇の中ではやる気はなかったのでしょう。俺たちが退いていくと、向こうもそれに合わせて退きました。合わせて5千くらいにはなったのではないかと」

「そうか。だが、今回は本当にギリギリだったな……」

 離れていく船を見ながら言う。

「我々は少し、下流に向かおうと思います。今いた位置と、本陣がある中間あたりに。そうすれば敵が渡河しようとしてきても対応ができると思います」

「あぁ、こちらでも監視は続けるけどそうしてもらえると助かる」

「いや、しかし危ないところでしたね。あの船から兵を降ろされてたら、もしかしたら俺たちはなぶり殺しにされていたかもしれないと思うと」

「あぁ。だがよく間に合ったものだ。相手の戦術から読み取ったのか?」

 クルレーンの質問には正直に答えづらいところだったので、

「まぁ、そういうことにしておいてくれ」

 と誤魔化すしかなかった。

 結果として、これ以上敵は攻めてくることはなかった。
 ジルも東から来る敵部隊を発見し、撃退することに成功した。どうやら遠路踏破してきた部隊だという。

 つまり前々からもっと下流で降ろした部隊ということか。
 気づけなかったら想像した通り、朝には夜間渡河と併せて3方向から包囲されることになっていたのだ。
 そう思うとゾッとする。

 敵はその策が破れたと分かると、一気に撤収していった。
 上流の敵は船に拾われ、60隻ほどに減った船は流れに乗って、悠々と下流へと去っていったのだ。

 俺たちとしては下流で一気に着岸されることがないよう、川を下りながら警戒しているが、船団は対岸の近くを通ってこちらにくる気配がない。
 だから見張りだけ残してヨジョー城に入り、俺たちは泥のように眠った。

 正直、薄氷の勝利だった。
 クロエたちの話と、『古の魔導書エンシェントマジックブック』、さらにみんなの頑張りがなければ勝てなかった戦だ。
 それに勝ったとは言ってもこれからの復興を思うと気が重いのだから嫌になる。

 だけど、少なくともオムカ王国滅亡の危機は、当面去ったということで満足した。
 そんな5月中旬の出来事だった。
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