知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

閑話19 ルック(オムカ王国ジャンヌ隊部隊長)

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「ちっ!」

 寸でかわされた。
 相手も動く以上、狙い通りは難しい。
 けど、左肩を切り裂いた。

『ジャンヌ・ダルク奪還チーム、2ポイント!』

 よーし。
 予想通りの結果なんて求めてない。
 まずは先制。それでいいよ。

 とにかくこの態勢のままだと隙だらけ。
 敵が怯んだ今のうちに距離を取るべき。

 だけど――

「いっ……てぇじゃねぇか!」

 相手は痛みを怒りに変えて即座に反撃してきた。
 銃弾がかする。
 屋根を転がりながら銃弾の雨をかいくぐる。

 マズイなぁ。
 この状況。相手は一度退くと思ったのに。

「おら、おらぁ!! 乱・乱・乱射だぁ!!」

 銃弾の勢いはとどまることがない。
 とにかく屋根の反対に出よう。
 その思いが焦りとなって、足が滑った。

「ぐっ!」

 刃物をねじ込まれたような痛み。そして熱さ。
 右肩をやられた。

『キッド、2ポイント!』

「ひゃっはああ! 手ごたえありだ、この××××野郎が!」

 痛みを堪えてとにかく逃げようとする。
 けどその思い虚しく、左足に衝撃。そして痛みと熱。

『キッド、2ポイント! 合計4ポイント! これでリーチだ! てか腕と足をやられて逃げられないし弓も引けない、さぁどうなる!?』

 なんとか屋根の向こうに転がり出たけど、うん、確かにどうしようかなぁ……。

「さぁ、これで逃げられもしねぇ、反撃できもしねぇ。弓はよえぇなぁ!」

 悔しいけどあいつの言う通りだ。
 もう逃げられない。弓も引けない。
 こっちの負け、かな。

 ……いや、そんなわけにはいかない。
 弓が鉄砲に負けるわけにはいかない。
 それ以上に――隊長のため、ここで負けるわけにはいかないのだ。
 隊長はどんな困難な状況でも諦めなかった。だからここに自分はいるのだ。

 血の流れる左足をかばいながらも距離を取るために歩く。
 その背後、気配がした。

 咄嗟に建物の陰に隠れる。
 銃弾が空間を切り裂いていった。

「おらおら、逃げろ逃げろ! 後悔しろ、懺悔しろ、絶望しろ! そんでションベンまき散らしながら命乞いしなぁ! そしてら最後はてめぇの脳天にヘッドショット決めてエクスタシーにイカせて月までぶっとばしてやんよ!」

 とにかく距離だ。
 距離を取って、そこから。

 時間を稼ぐ。
 右手をあげる。それだけで激痛が走る。
 矢を取り、つがえる。再び激痛。涙で視界がゆがむ。

 放った。空へ。
 結果を見る前に移動。左足を引きずるようにして、けどその振動でまた右肩が痛む。
 これは厳しいなぁ。

「はっ、大外れだ! だがその腕で撃ってきたのは大したもんだよなぁ!」

 声。そして銃声。
 そこに目掛けて、再び射る。

「まだやってやがんのか! とっとと逝っちまえよ!」

 声。銃声。射る。痛い。

「逃げても無駄だっつってんだろうが! てめぇの血の跡が教えてくれんだよ! ヘンゼルとグレーテルかてめぇは!」

 逃げる。ひたすらに逃げる。
 距離。距離があれば、勝てる。
 あまり稼げてない。

 建物の隙間を抜けて、大通りに出た。
 いた。
 目指すもの。さっきちらっと見たもの。

 近づくと、馬がいななく。
 大丈夫だよ。別に危害は加えないから。
 右足で跳躍して馬に乗る。鞍がない。けど問題ない。

「馬……てめぇ、逃げる気か!」

 相手が飛び出してくる。
 その時には走り出した。
 馬体にしがみつくようにして。
 銃声。当たらない。距離。あと数メートル。

 瞬間、空中に放り出された。
 受け身も取れず、ごろごろと転がる。
 体を起こして見たのは、血を流して倒れる馬。ぶるんと小さくいなないて動かなくなった。
 ごめんな。自分がいなければ死ななかったのに。

 倒れた馬の奥に相手の男の姿が見える。
 ゆっくりと近づいてくるその距離……80、いや、70メートル。

 相手は撃ってこない。悠々ゆうゆうと近づいてくる。
 それは余裕か、それとも……射程外なのか。

「なら、外さないよ……」

 右手。動かない。左手で矢を取り出す。最後の1本。
 左足。動かない。右足で踏ん張りを利かせる。
 左手。動く。弓を構える。

 ――なら矢は?

 問題ない。口が使える。

 引く。口で。キツイ。けど離したら負ける。その思いで耐える。
 口の中に血の味。どうやら噛みしめすぎて血が出たようだ。
 けど耐える。

 なんでこんなに耐えているんだっけ。
 あぁ、そうだ。
 隊長を助けるためだ。
 そして、皆で帰るためだ。

 なんだかんだで楽しかったこの旅。
 笑顔で終わらせたいから。

 だから今、頑張らなきゃ。
 未来を、勝ち取るために。

 引ききった。

「はっ、くそったれ……」

 男の声が、聞こえた気がした。
 射た。
 まっすぐ飛ぶ。
 それが命中する前に、自分が倒れた。
 青く、本当の空みたいな天井が見える。
 結果は見なくても分かる。渾身の一矢。外すわけがない。

『胴体にヒットォォォ! これにてジャンヌ・ダルク奪還チーム、3ポイント! 合計5ポイント獲得でジャンヌ・ダルク奪還チームの勝利ぃぃぃ! いやー、いいもの見せてもらったよ、お兄さんは感動した!』

 別にあなたに褒めてもらいたくてやったわけじゃないけどねー。

 声が聞こえる。
 あぁ、皆の声だ。
 よかった。それを守れたなら、それでいい。

 そう思った。
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