知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第3章 帝都潜入作戦

閑話21 立花里奈(エイン帝国軍所属)

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 目が覚めた。
 そう思ったけど眠りについた覚えがない。

 頭が痛い。

 ピチャ

 なんでこんな最悪な気分。
 いや、違う。
 本当は良いことがあった。
 やっぱり明彦くんだった。

 ピチャ

 この世界にいてくれた。
 この世界で出会えた。
 それだけでもう満足だった。

 ピチャ

 水の音。

 なんだろう。
 うるさいな。

 思い、見る。

 あぁ、違う。
 またやっちゃったんだ。

 私の足元で倒れる少年。
 水たまりに溺れているみたいだ。

 でもなぜだろう。
 全く記憶にない。
 これまでは『収乱斬獲祭ハーヴェスト・カーニバル・カニバリズム』を発動しても、そこそこ記憶はあったのに。

 頭が痛い。

 また○した。
 私がこの手で○した。
 もう辞めたいのに。もう嫌なのに。どうしてここまで意思が弱いんだろう。

 そうだ、明彦くん。
 このことは内緒にしないと。
 人○しの最低の人間だなんて明彦くんに知られたら――

「……?」

 ふと視線を感じた。
 上。見上げる。
 ドームのような空間に、一か所突き出したような場所。中二階部分にあるガラス張りの観覧席。
 そこに煌夜がいた。

 そして、その横。
 少女がいる。

「――――あ」

 誰だっけ。
 すごい、とても大事な人だったはず。
 そうだ。彼女は……ううん。彼は、明彦くんだ。
 ようやく会えた。とても嬉しかった。生きる希望を見出した。

 ――けど。

 パシャ

 足元で水が跳ねる。
 違う。色がある。絵の具? 違う。じゃあ何? 吐しゃ物? 違う。血。命の血。大事なもの。

 倒れている少年。見覚えがある。
 さっきモニターみたいなのでちらっと見た。
 明彦くんの仲間だ。
 それが、死んでいる。
 誰がやった。誰のせいだ。誰がこんな酷い事を。

 ――私だ。

 私が、『殺』した。

 記憶にない、けど間違いなく私だ。
 返り血でぐちゃぐちゃになった洋服。
 血がしたたる刀は私の手に握られている。

 私が『殺』した。

 そして、見られた。
 彼女、ううん彼、明彦くんに、これ以上ないくらいはっきりと目の前でしっかりまざまざと見せつけてしまった。
 彼の仲間を、私が『殺』す瞬間を。

 頭が真っ白になる。
 見られてしまった。もうダメだ。私のこんな汚いところを。人を『殺』すところを。明彦くんに見られるだなんて。
 きっと明彦くんは絶望する。私を、見限る。
 だってこんな人『殺』しの最低の『殺』人鬼の極悪人を許してくれるわけがない。
 ましてや、彼の仲間を『殺』してしまった犯罪者を。
 許さない。

 そんなのない。嫌だ。怖い。もう嫌。独りになるのは。
 消えたい。消えてしまいたい。でも死ぬのは怖い。あんなに熱かった。あれをもう一度やれなんて酷い。

「あ――――」

 口から声が漏れる。
 それは抑えられない奔流となって爆発した。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 どうしてこうなった?

 煌夜に従ったから?
 明彦くんと会ってしまったから?
 プレイヤーの人と仲良くできなかったから?
 帝都にいたから?
 ――人を『殺』したから。
 帝国で戦ったから?
 ――人を『殺』したから。
 この刀を手に入れたから?
 ――人を『殺』したから。
 このスキルを手に入れたから?
 ――人を『殺』したから。
 ――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから――人を『殺』したから。

 この世界に来たから。
 この世界で生きたから。
 元の世界で死んだから。
 元の世界で生きたから。
 私が――生まれたから。

 私なんて、生まれる意味なんてなかったんだ。
 そうすれば、彼は死ななかった。もっと、色んな人も死ぬ必要はなかった。
 明彦くんも、そんな絶望する必要はなかった。

 本当。私なんて、生きる価値もない人間だったんだ。
 生まれて、ごめんね。

 でも、嬉しかったんだよ。

 明彦くん。
 きっと君は覚えてないよね。
 学科のオリエンテーションの時。たまたま日にちが重なっただけの、別学科の私を助けてくれた。
 それからずっと気になっていた。
 けど話しかけようとして、やっぱり思い悩んで、気づけば1年が経っていた。
 これじゃダメだと思って、勇気を出して言った言葉。

『あの……と、友達になってくれませんか?』

 正直、後になって思う。
 あれはないかなーって。
 でも君は笑って、頷いてくれた。
 だから嬉しかったんだ。幸せだったんだ。

 その幸せの代償を今、受けているに違いない。

 でもそんなに……そんなにダメなことだったのかな。
 私が、幸せだと思うことが罪だったのかな。
 こんなに辛い思いをするぐらい、数多の人の命を奪うくらい、その幸せは酷いことだったのかな。
 教えてください、神様。

 ――神は、敵である。

 そう言ったのは誰だったっけか。
 そうだ。赤星煌夜だ。
 あの男の言う事。
 従っていれば、間違いないって言ってたのに。
 明彦くんと会えるって言ってたのに。
 この結末は……何?

 あの……男さえ、いなければ。

 不意に頭の中で言葉が再生される。

『警告、煌夜様に歯向かうことは許しません』

 うるさい。

『警告、煌夜様に歯向かうことは許しません』

 うるさい。

『警告、煌夜様に歯向かうことは許しません』

 うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。

「黙れ!」

 痛みが走った。口の中にドロッとしたものがあふれる。
 舌の先を噛みきっていた。

 凄い痛い。けど、目が覚めた。
 何かを『収穫』した。そんな気がした。

「ぺっ――」

 口に溜まった液体を吐く。
 床が赤く染まった。
 それは明彦くんの仲間のものと混じって、判別つかなくなった。

「……ごめんね」

 謝って許されるものではないのは分かっている。
 けどこうでもしないと、私はもうダメになってしまう。

 だからせめて、明彦くんだけでも。
 刀を目の高さまで持ち上げる。
収乱斬獲祭ハーヴェスト・カーニバル・カニバリズム
 なんて最低なスキル。
 けど、彼を救うなら、あの男を排除するなら、ちょうどいい。

 脚に力を溜める。
 解放する。跳んだ。いや飛んだ。

 目指すは中二階のガラス。
 それが急速に大きくなる。刀をガラスにたたきつけた。
 破砕音。

 ガラスが砕ける。

「明彦くん!」

 呼ぶ。
 いた。いてくれた。まだ無事だ。
 何かを喋った。気がした。

 赤星煌夜。驚いた表情をしている。
 これだ。この男だ。

 明彦くんを傷つける者。
 赤星煌夜、そして――私。
 この世界にいてはいけない者。

 だから――

「私と一緒に、死ね」

 刀を振りかぶった。
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