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第3章 帝都潜入作戦
第45話 帰還、そして――
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馬車で護送されてきたハワードの爺さんが王都に戻ったのは、俺たち軍が先に戻ってから3日後だった。
すぐに病院に入れられ、そのまま入院ということになったらしい。
俺は事後処理に一息つけると、その病室を見舞った。
「ほれ、お見舞い」
とりあえず適当に買ったフルーツの盛り合わせを手に病室に入る。
「おうおう、ジャンヌ良く来たのぅ。ほれ、そこに座れ。今お茶を入れてフルーツを剥いてやろう」
「病人なんだからじっとしてろよ」
てゆうか大分やつれたな。
ほんの数日顔を合せなかっただけなのに、どこか痩せたというよりそんな印象を得た。
そんな爺さんに仕事をさせるわけにはいかないので、俺がフルーツを取り分けることにした。
――が、困った。
俺がフルーツを食べるのはすでに加工されたものばかり。
そのものを切るとか剥くとかほとんどやったことない。ミカンくらいだ。
こういうお見舞いの品ってなんでフルーツなんだろうなぁ。剥くのとか、超難しくない? 見舞い以外にそんな仕事させるなよ。
とりあえずなんとかなりそうなリンゴを手に取ると、ナイフを手にした。
「うん? おぉ、危ない! ちょ、その持ち方は……おお……」
なんかハワードの声がちょくちょくうるさかったけど、なんとか皮むきをコンプリートした俺は、リンゴを皿に盛って、ハワードに差し出す。
「……だいぶちっちゃいのぅ」
「い、いいんだよ。そこが一番美味しいんだよ!」
3分の1くらいの大きさになっちゃったけど、うん、美味しさに変わりはないよな!
リンゴを平らげ、そして一息つくと爺さんが口を開いた。
「さっき、正式に引退を届け出た」
「……そう、か」
こんな時、なんて言えばいいんだろうか。
お疲れ様なのか。ありがとう、というのもちょっと違う。おめでとうは絶対ないな。
「やれやれ、まだわしは戦えるんじゃがのぅ。医者のやつが、しばらくベッドに縛り付けたいらしい」
「ま、いいんじゃねーの? 静かに余生を過ごすってのもさ」
「ふむ……あの男みたく伴侶がいればのぅ。そうじゃ、ジャンヌ――」
「言っとくけど、爺さんと余生を過ごすつもりはないからな」
「うぅ、ジャンヌがいじめる」
ふん、泣きまねなんかして、わざとらしい。
「じゃが、まぁ最後にお主と共に戦えて楽しかったぞ。こんなギリギリの勝利は勘弁したいがな」
「欲張りな爺さんだな」
「ん。まぁいいじゃろ。及第点をくれてやろう。お主とジーン。2人にオムカの未来を任せる」
「……ん、任された」
なんだか変な気分だ。
嬉しいのか恥ずかしいのか複雑な感じ。
「ハワード、無事かの!?」
そこへ、騒々しいのがやってきた。
マリアがドアを破るように入ってきて、その後ろからニーアが続く。
「おお、これは女王様。わざわざかたじけない」
「なんの。ハワードはこの国を守る柱石だからの。そうじゃ! 余がお茶を入れてやろう! ニーア! 手伝うのじゃ!」
「あぁ、女王様。そんなはしゃがないでください」
「いやいや、女王様にお茶を振舞ってもらうとは。わしも果報者じゃの」
ハワードの爺さんは目を細めて、マリアたちを見つめる。
なんだか好々爺な感じで、本当に引退したんだな、と思える。
「ったく、病人がいるんだから静かにしろっての」
「ほっほ、よいではないか。賑やかな方がわしは好きじゃて」
「なるほど。つまりハワードさんは変態なのですね、とジャンヌ・ダルクさんにお伝えください」
「そういうものかな」
「ジャンヌー! ジャンヌも飲むかの?」
「ん、ああ。じゃあいただこうか」
「わたしもいただきたいとお伝えください」
「うむ。ではえっと、5人じゃの!」
「やれやれ、こんな狭い部屋に5人もいたのかよ」
……ん?
5人?
俺、ハワード、マリア、ニーア。4人、だよな?
「これはもう少し現役でいた方がよいかのぅ」
「そうですね。お元気そうで何よりです、とジャンヌ・ダルクさんにお伝えした後にハワードさんにお伝えください」
あれ、この喋り方。
メルがいた。
おかしい。ここは面会謝絶だったはず。
俺と、マリアたちしか入れないよう、ドアでちゃんと確認してあったのだが。
何よりメルの様子がおかしい。
まっすぐにこちらを見てきている。
ハワードの爺さんと喋っていたはずなのに。
そしてその口が弓のように曲がり、血に濡れたように赤い唇からどこか寒気を思わす吐息が漏れる。
目が、俺を捉えて離さない。そこにあるのはいつものおどおどした感じではなく、狂気の光。どこまでもどす黒く、深淵に染まった漆黒の闇。
メルが動く。こちらに突っ込んでくる。銀色。光。
刃物だ。
そう思った。
「ジャンヌ!」
衝撃が来て――鮮血が舞った。
すぐに病院に入れられ、そのまま入院ということになったらしい。
俺は事後処理に一息つけると、その病室を見舞った。
「ほれ、お見舞い」
とりあえず適当に買ったフルーツの盛り合わせを手に病室に入る。
「おうおう、ジャンヌ良く来たのぅ。ほれ、そこに座れ。今お茶を入れてフルーツを剥いてやろう」
「病人なんだからじっとしてろよ」
てゆうか大分やつれたな。
ほんの数日顔を合せなかっただけなのに、どこか痩せたというよりそんな印象を得た。
そんな爺さんに仕事をさせるわけにはいかないので、俺がフルーツを取り分けることにした。
――が、困った。
俺がフルーツを食べるのはすでに加工されたものばかり。
そのものを切るとか剥くとかほとんどやったことない。ミカンくらいだ。
こういうお見舞いの品ってなんでフルーツなんだろうなぁ。剥くのとか、超難しくない? 見舞い以外にそんな仕事させるなよ。
とりあえずなんとかなりそうなリンゴを手に取ると、ナイフを手にした。
「うん? おぉ、危ない! ちょ、その持ち方は……おお……」
なんかハワードの声がちょくちょくうるさかったけど、なんとか皮むきをコンプリートした俺は、リンゴを皿に盛って、ハワードに差し出す。
「……だいぶちっちゃいのぅ」
「い、いいんだよ。そこが一番美味しいんだよ!」
3分の1くらいの大きさになっちゃったけど、うん、美味しさに変わりはないよな!
リンゴを平らげ、そして一息つくと爺さんが口を開いた。
「さっき、正式に引退を届け出た」
「……そう、か」
こんな時、なんて言えばいいんだろうか。
お疲れ様なのか。ありがとう、というのもちょっと違う。おめでとうは絶対ないな。
「やれやれ、まだわしは戦えるんじゃがのぅ。医者のやつが、しばらくベッドに縛り付けたいらしい」
「ま、いいんじゃねーの? 静かに余生を過ごすってのもさ」
「ふむ……あの男みたく伴侶がいればのぅ。そうじゃ、ジャンヌ――」
「言っとくけど、爺さんと余生を過ごすつもりはないからな」
「うぅ、ジャンヌがいじめる」
ふん、泣きまねなんかして、わざとらしい。
「じゃが、まぁ最後にお主と共に戦えて楽しかったぞ。こんなギリギリの勝利は勘弁したいがな」
「欲張りな爺さんだな」
「ん。まぁいいじゃろ。及第点をくれてやろう。お主とジーン。2人にオムカの未来を任せる」
「……ん、任された」
なんだか変な気分だ。
嬉しいのか恥ずかしいのか複雑な感じ。
「ハワード、無事かの!?」
そこへ、騒々しいのがやってきた。
マリアがドアを破るように入ってきて、その後ろからニーアが続く。
「おお、これは女王様。わざわざかたじけない」
「なんの。ハワードはこの国を守る柱石だからの。そうじゃ! 余がお茶を入れてやろう! ニーア! 手伝うのじゃ!」
「あぁ、女王様。そんなはしゃがないでください」
「いやいや、女王様にお茶を振舞ってもらうとは。わしも果報者じゃの」
ハワードの爺さんは目を細めて、マリアたちを見つめる。
なんだか好々爺な感じで、本当に引退したんだな、と思える。
「ったく、病人がいるんだから静かにしろっての」
「ほっほ、よいではないか。賑やかな方がわしは好きじゃて」
「なるほど。つまりハワードさんは変態なのですね、とジャンヌ・ダルクさんにお伝えください」
「そういうものかな」
「ジャンヌー! ジャンヌも飲むかの?」
「ん、ああ。じゃあいただこうか」
「わたしもいただきたいとお伝えください」
「うむ。ではえっと、5人じゃの!」
「やれやれ、こんな狭い部屋に5人もいたのかよ」
……ん?
5人?
俺、ハワード、マリア、ニーア。4人、だよな?
「これはもう少し現役でいた方がよいかのぅ」
「そうですね。お元気そうで何よりです、とジャンヌ・ダルクさんにお伝えした後にハワードさんにお伝えください」
あれ、この喋り方。
メルがいた。
おかしい。ここは面会謝絶だったはず。
俺と、マリアたちしか入れないよう、ドアでちゃんと確認してあったのだが。
何よりメルの様子がおかしい。
まっすぐにこちらを見てきている。
ハワードの爺さんと喋っていたはずなのに。
そしてその口が弓のように曲がり、血に濡れたように赤い唇からどこか寒気を思わす吐息が漏れる。
目が、俺を捉えて離さない。そこにあるのはいつものおどおどした感じではなく、狂気の光。どこまでもどす黒く、深淵に染まった漆黒の闇。
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「ジャンヌ!」
衝撃が来て――鮮血が舞った。
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