知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

文字の大きさ
309 / 627
第4章 ジャンヌの西進

第23話 2人の里奈

しおりを挟む
 翌朝。
 まだ眠っているマリアをしり目に、すでに起きていたニーアに挨拶して部屋を出る。

 それから一度家に戻り、すでに起きだしていたクロエと一緒に朝食を取った。
 出発の準備はクロエ任せで済んでいたから、今日1日はまだ動ける余裕がある。

 パンがメインの朝食を終え、クロエと食後のお茶を一服した後。
 俺は里奈のところに向かった。

 そして里奈に昨日のくだりを話すと、

「……うん、分かった」

 本人も色々思うことがあったのだろう。
 少し緊張しながらもそう快く頷いてくれた。

 一応、マリアとニーアについては前もって話していたから、そこは問題ないはず。
 問題はそこまでの道のり。街では兵の誰かに見とがめられる可能性もあるし、王宮にはジルやサカキといった、敵としての里奈を知っている人たちがいる。
 里奈はそうなったら素直に言い分を受け入れると言っているが、俺からすればとんでもない話だ。

「んー……この季節だからマフラーで顔の半分は隠すとして。帽子と、あとはサングラスみたいなのがあればいいけど……」

「分かった。ちゃんと準備していくから。心配せずに待ってて」

 何やら里奈には作戦があるようだ。
 里奈がそこまで言うならと、約束の時間と場所だけ伝えて俺はその場を後にした。

 それから先に王宮に出仕して残った仕事を片付けて午後。
 王宮の門の前で待っていると、向こうから里奈と思わしき人物が歩いてくるのが見えた。

 思わしきというのは、最初は里奈と気づかなかったからだ。
 顔半分をマフラーで隠しているのは分かる。けど、それ以上に問題なのが上半分。

 てっきり帽子でもかぶってくるのかと思ったけど違った。
 里奈だとすぐに分からなかったのは、その頭部がまるっきり変わっているからだ。

 里奈の流れるようなさらさらの黒髪。
 それが今では短く適当に刈り揃えられているだけの、無残なものになってしまっていた。

「お待たせ、明彦くん」

「お待たせって……お前、その髪……」

「あ、変だったかな。オムカと戦ってた時は、ロングだったから切れば分からないかなって。どうかな?」

 マフラーをずらして、ニッと笑う里奈。
 どこかボーイッシュな感じがして新鮮だ。

「いや、その……なんというか……」

 いや、いいだろ。めっちゃ似合ってる。これなら前までの里奈だとはパッと見で分からない。本当、女性は髪型1つで印象が変わるんだなぁ。

 俺も少し変えてみるか。
 去年の夏、シータ王国の夏に暑苦しくなって切ったまま放置したままだから、今ではかなりボリューミーだ。そういったおしゃれでの髪型をしたことないから、考えてみよう。

 っと、それより今は里奈だ。
 感想を聞かれている以上、ごまかすのはよくない。
 とはいえなんだか恥ずかしいな。面と向かって言うのも。

「い、いい……んじゃないかな」

「本当? 良かった」

 花が咲くように、里奈が嬉しそうに笑う。

 うわぁ、くそ可愛いじゃないかよ。
 ありだな、ショートも。

 てかその笑顔もまたマリアと似ている。
 姉妹なんじゃないかって思うくらい。
 ま、ありえないけど。

 というわけで心も軽くなったところで里奈を王宮へと案内する。
 だがその心が油断を招いたのか。早速、難敵に見つかった。

「おっすー、ジャンヌちゃん。元気ー?」

「おや、そのお方は……?」

 ジルとサカキだ。
 くそ、今一番会いたくなかったのに!

 だがこの程度は想定内。
 だから俺は動揺を押し殺して、ジルとサカキに里奈を紹介する。

「あぁ、彼女は里奈。俺の友達。里奈、こっちは軍部の総司令のジルと、師団長のサカキ」

 とりあえず先制攻撃。
 下手に探られるよりは公開してしまった方が良い。

「初めまして」

 里奈がぺこりと頭を下げて挨拶する。
 それに対して男2人は挨拶を返しながらも少し首をひねる。

 よし、今だ。

「じゃ、そういうことで――」

 俺は里奈の手を取って2人の間を通り抜けようとする。
 三十六計逃げるにかず。こういうことはためらったら負けだ。

「ん? んん? ねぇ、リナちゃん? 前にどこかで会ったことない?」

 だがその前に、サカキがずいっと里奈の前に一歩踏み出して進路を塞いだ。
 こいつ、野生の勘でも働いてんのか!?

「というよりどなたかと似ていられるような……女王様?」

 そしてジルは持ち前の鋭さを出してんじゃない!
 ええい、ここは一時撤退!

「その女王様からのお呼び出しだから、じゃ!」

 サカキの体をどけるようにして先へ進む。

 はぁ……いきなりどっと疲れたぞ。
 サカキなんて、里奈に斬られてるわけだからな……。バレたら一大事だった。

 だが里奈は俺のそんな心配をよそに、

「なんか、ドキドキしたね?」

 なんで笑ってられるんだよ。
 里奈ってこんな感じだったっけか? 肝が据わってるというか、鈍いというか。

 ともかく、最初の難問はクリアした。
 あとは最後の難問をどうにかするだけだ。

 面会場所は謁見の間だった。
 一応、公式の場で行ったという体面が必要なのでそこだった。

 衛兵に通され、誰もいない広間で待つこと1分。

「女王陛下のおなり」

 ニーアの声と共に、マリアが姿を現した。
 俺がひざまずき頭を下げると、里奈もそれに倣う。

おもてをあげよ」

 マリアの声に顔をあげる。
 玉座にマリア、その隣にニーアがいるだけの閑散とした室内。そこで俺と里奈は2人に向き合った。

「お初に、お目にかかります、立花里奈です。女王陛下におかれましては、ご機嫌うるわしく。この度は御前に招かれましたこと……大変光栄に思います」

 たどたどしいながらも、礼儀を整えた挨拶を行う里奈。
 だが里奈の口上を受ける側は、目を見開いてどこか上の空だ。

「マリア?」

 口上が終わっても反応を示さないマリアに問いかける。
 だがそれでも動かない。その視線ははっきりと里奈に注がれているが、心ここにあらずといった感じ。

 対するニーアはまず里奈を見て目を見開き、そしてマリアを見て、再び里奈を見る。
 ご主人を見失った犬みたいだった。

 まぁでも分からないでもない。
 確かにこうやって並ぶとますます似ているんだから。

 それこそ肉親、そう――

「姉、さま?」

 姉妹みたいに……って、え!?

 まさかの言葉をマリアがつぶやいたので、俺は思わず立ち上がってマリアとニーアに視線を向ける。

「姉? いたのか?」

「え、ええ……。12ほど離れたお方が。ただ10年ほど前にお亡くなりになられたのだけれど」

 さすが。幼いころから付き人だったというのだから、ある程度は詳しいのだろう。

 マリアが今14歳。
 10年前というと、つまり16、7歳くらいで亡くなったということか。
 里奈の今の姿。16と言われればそうだが、もう少し上な気もする。この年頃の少女というのはあまり変化がないか、大違いかの極端なものだからないということはない。

 ……いや、待て待て。
 そもそも里奈は、俺と同じ元の世界から来たプレイヤーだ。この世界の人間と瓜二つだといって、血縁関係があるわけがない。

 そう。だから他人の空似。この世には3人のそっくりさんがいるという。それが異世界の人間だった。ただそれだけのこと。

 …………それだけのこと、だよな。

「あ、いや。すまぬのじゃ。余がオムカ王国第37代女王じゃ」

 慌てて姿勢をなおしたマリアが威厳をもってそう告げた。

「しかし似ているとは聞いていたが、これほど……これほど姉さまに似ているとは」

「お前とも似てるだろ?」

「うぅむ……それが、よく分からんのじゃ。似ておるのか、ニーア?」

「そうですね……目と耳が2つあって、鼻と口が1つあるくらいには」

「それ似てないって言ってるよな」

「いや、嘘うそ。まぁ似てなくもない、かなぁ」

「じゃあ声は? 声ならマリアも分かるだろ?」

「うぅーん……」

 マリアは唸ってしまったし、ニーアは首をかしげるばかり。
 里奈に至っては苦笑いしている。なんだよ。俺の勘違い、というか補正が入ってたってことかよ。

「でもお前の姉と似てるんだろ。ならマリアも成長すれば似るんじゃないのか?」

「うーん。確かに姉さまは、ちっちゃいころにそっくりと言ってくださったが……」

「その前にジャンヌ。残念だけど女王様と彼女は2つも大きな違いがあるわ!」

 と、ニーアがビシッと人差し指と中指を立てて突き付けてきた。

「そう、1つ目は髪の色! 女王様の家系は雪のような白い御髪みぐしが特徴なの。対する彼女は黒。これは大きな違いよ!」

「まぁ、そりゃ見れば分かるさ」

 そんなことを我が物顔で語られても困る。

「そしてもう1つ、これがとっても重要なの……」

 ニーアが真剣な表情で腕を降ろすと、マリアをじっと見つめる。
 そして次は里奈。もう一度マリア、そして里奈。

 一体なんなんだ。
 ん、いや待てよ。なんかあいつ。顔じゃないところを見ているぞ。マリアと里奈の違い。顔より下。その違い。すなわち大か小か。
 つまり――

「あぁ、マリアは胸が小さいからなぁ!」

 声に出していた。
 そして、あっ、と後悔した。

 謁見の間を冷たい空気が流れる。
 そして、

「ジャンヌがいじめるのじゃーーー!」

「こらーーー! 女王様を泣かせるな!」

 マリアが泣き出し、ニーアがつっかかってくる。

「お、お前が言い出したんだろ!」

「言ってませんー。見ただけですー」

「あ、あの明彦くん。今のってどういう意味?」

 里奈が食いついてきた。
 だがそれがさらに別方向に油を注いだ。

「ん? アキヒコ? 誰それ? ん……アキヒコ。アキヒーコ。アキ。アッキー!? ジャンヌ? なにその名前!?」

「あーいや、これは……」

「そうじゃ! 聞いたぞ! ジャンヌがアッキーと呼ばれてる! どういうことなのじゃ!」

 俯いて泣いていたはずのマリアまで参戦してきた。

「マリア、お前ウソ泣きかよ!」

「えっと、明彦くん。何かダメだったかな、明彦くんって呼ぶの」

「あ、いや……里奈、だからその名前は……」

「また言ったのじゃー! なんなのじゃ、アキヒコクンってー!」

「そうだそうだ! あたしたちには秘密かー!」

「あ、ごめんね、明彦くん。そのわざとじゃないから、明彦くんって呼ぶの、もうやめるね、明彦くん」

「分かったから! 里奈、頼むからそう呼ぶのをやめて……」

 もはやこの場は収拾不可能なほど混乱していた。
 ひたすらに明彦くんを連呼する里奈。まさかわざとじゃないよな。そしてひたすらにそのことで俺を糾弾するマリアとニーア。

 玉座から降りたマリアと、大股で近づいてきたニーアに詰め寄られ、きゅうした果てに出した答えが、一時保留。

 ビンゴ王国から帰ったらじっくり話す場を設ける。
 そう約束して、解放された時にはもうぐったりだ。なんでこんなことで疲れてるんだよ、俺……。

「面白い人たちだったね」

 色々問い詰められて疲労困憊の俺に対し、顔が似てるとあってか親しみをもって会話が広がった里奈。
 なんだ、この差は。

 まぁ、里奈とマリアがうまくいってくれただけでもまだマシか。
 正体がバレることもなかったし。意外とこのまま行けるんじゃないか。

 なんて軽く思ったものの、この一件が後に重要な意味を持つことを、俺はまだ知らなかった。

――――――――――――
7/30
マリアの年齢が間違っていたのを修正させていただきました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...