知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

第26話 軍議での出来事

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 王都バーベルを出発し、1日の野営を経て翌日の昼過ぎに西の砦に到着した。
 すでに到着していたクルレーンとセンド、サカキ、そして一緒に来たクロエとウィットを合わせてさっそく軍議に移った。
 仮設の陣幕だが文句は言ってられない。他の面々には食事の準備と見張りの順番だけ決めて、思い思いに休ませるよう指示は出してある。

「明日、ここから出発する。それからは時間との勝負だ」

 俺は『古の魔導書エンシェントマジックブック』を片手に、机の上にある地図とにらめっこしながら指示をする。
 地図は旧ビンゴ王国軍の案内役センドが使用していた旧ビンゴ王国軍のもの。自国内の地図だから信頼していいだろうが、もちろん帝国軍が手を入れている箇所はあるはずだ。そこは『古の魔導書エンシェントマジックブック』でリアルタイムの情報を反映しながら誤差を修正していくしかない。

 ただ、地図通りに進めると思うと痛い目を見そうだ。
 この砦から先はしばらく平地が続くがその先は木々が多くなり、高低差も激しくなる。地図で見る以上の距離はあるだろう。

 さらに、ビンゴ王国がオムカ王国に対抗するために多くの砦が築いてある。
 その数、およそ20ほど。それが10キロ先から旧ビンゴ王国の王都スィート・スィトンまで、ずらりと並んでいるのだ。
 どこかの砦が攻められてもすぐに救援に駆け付けられるようにしたのもあるが、何より大事なのは補給物資が円滑に輸送できるよう配慮しているのだろう。

 ただそれは逆に言えば、手前から一個ずつ潰していけば、こちらも輸送路を確保しながら安全に進むことができるということ。
 もちろんそれには欠点があって、時間がかかりすぎることと、犠牲が多くなりすぎることがあるわけだが。

 それはこの場にいる誰もが理解していること。その前提で話を進める。

「まず、3日以内にこの位置にあるこの砦を落とす」

 俺が指示したのは、この西の砦から一番近くにある砦――ではなく、そこから少し北西の奥まった場所にある砦だ。
 ここから直線距離でおよそ40キロほど先。
 近さで言えば、3番目ほどか。

「ここの砦の防備は比較的緩い。そうですね、センドさん」

 道案内とはいえ、一応元同盟国の軍人だ。
 ある程度礼を失しないよう言葉に気を付ける。

「はい。ここは首都までの本道から外れる場所にあるのでそれほど大きくなく、防備も強くはありませんので。我々だけでも落とせるかと(チラチラ)」

「問題は……時間、だな(チラッ)」

 サカキが重要な問題を指摘してくる。

「あぁ、その通りだ。敵は必ず援軍を出してくる。それが来る前に落とせないと挟み撃ちに遭う」

「なーに、こっちにはリンドーもいるんです! カルゥム城塞の時みたく、ドカーンとやれば一撃ですよ!(チラッ)」

「馬鹿か貴様。破壊した砦に籠ってどうするつもりだ。砦は壊さず、しても最小限で落とす必要があるんだよ(チラ)」

 クロエとウィットの漫才はいつものことだが、その着眼点はもっともだ。

「援軍を引き出して俺たちが殲滅するという方法もあるが?」

 クルレーンの提案は、過激で暴力的な内容だが、魅力的な部分もある。
 要は敵の数を減らせと言っているのだ。攻撃されている砦に救援に走る援軍を、待ち伏せて鉄砲で攻撃。
 それを繰り返せば、数で勝る帝国軍の数を減らすことができるし、援軍に出ることを躊躇ためらうことになるだろう。

 だがそれには精密な地図と地理。砦を攻める方と待ち伏せの連携。そして敵の数と位置、それから武器に移動速度、敵指揮官の性格を把握しないと危険だ。
 各個撃破のまとになる可能性も高い。

 オムカ軍にとって慣れない土地で、いきなりそれをやれと言われて実行できるものか……。

「いや、クルレーン。それはまず1つ拠点を確保してからにしよう。森に潜んでそれをやり続けるのは厳しい」

「はっ、了解しました(チラッ)」

 となるとやっぱりどれだけ迅速に動けるかだけど……。
 そんなことより!

「お前ら、何さっきからチラチラこっち見てくんだ!」

「えー、ジャンヌちゃん。それ聞く?」

 と呆れたような声はサカキ。

「いえ、これがオムカの文化なのかなと」

 などと大ボケをかますセンド。

「正直、心中穏やかじゃないんですけど……。クロエの馬鹿が我慢しているので、自分は何も言いません」

 口をへに曲げて言い募るのはウィット。

「ぐ、ぐぐぐー。こっちだって我慢してるんですよー! 正直ぐがーってしたいです!」

 爆発寸前で危険なクロエ。

「雇い主にはあまり干渉しない性質たちなので」

 冷静に言い放つのはクルレーンだ。

 あー、やっぱりそうだよな。
 正直俺も暑苦しいと思ってた。
 それでも軍議の方が大事だからと思ってたけど……気になるよな。

「というわけで、サール……離れてくれない?」

 俺は目線を下に。
 そこにはぴったりと俺の腰に体を寄せた形でしゃがみ込んでいるサールがいた。

「いえ、ジャンヌさんの護衛こそがわたしの任務。ここがわたしの居場所なので。お気になさらず」

 うん、そういう問題じゃないんだけどね。

「あーーー! もう! この際言わせてもらいます! なんなんですか、貴女は! 隊長殿の隣は私の場所です! 勝手に出てきて勝手に取らないでください!」

「貴様のものでもないけどな」

「ウィットのそういう的確なツッコミはとりあえず無視します! というわけでサール! ここは私がいるのですから、護衛は外に出て行ってください! 軍議の邪魔です!」

「俺は貴様の方が邪魔だと思ってるんだがな」

 爆発したクロエとウィットの容赦ないツッコミ。
 だがそれに対し、サールといえば顔色一つ変えず。

「お断りします。わたしはジャンヌさんを守れと近衛騎士団長様に言われました。ならばいかなる時も目を離さず護衛するのがわたしの仕事です」

 うん、でもなんでぴったりくっついているのかは不明だ。
 ちなみに兄のフレールは陣幕の外で警護している。
 普通はそれでいいんだよ。てかこの状況で俺が狙われるって、かなり詰んでる状況だからね。本陣まで敵が来てるってことだから。

「それに護衛がこの後の行動を知らなければ、それに適した動きが出来ません。護衛対象の行動を先読みしながら動く。それが本当のプロフェッショナルです」

 なんか格好いい感じに言ってるけど、お前、今の格好分かってる?
 俺の傍にしゃがみ込んで、体を俺に預けてる状況だからね。格好悪いからね?

「うむ。その心意気やよし。それこそプロフェッショナルというもの」

 クルレーンが何か変なところに共感しだした。腕を組んでうんうんと頷いている。なんだこいつ。さては変人だな?

「ま、いいたいことはわかるけどな。えっと、サールちゃんって言ったっけか?」

「師団長殿。わたしのことはサールと呼び捨てにしてください。でなければ、おいとかお前とかでも構いません。わたしは護衛、つまり置物。ないものと扱ってもらえれば」

「ならサール。師団長命令だ。出て行け」

 おお、さすがサカキ。王国のナンバー2。
 こういう時はビシッと決めてくれた。痺れる憧れる!

「お断りします」

「断るなよー」

 すぐに涙目になった。
 ダメだこりゃ。

「ぐ、ぐむむ……こいつ、下手したてに出たらいい気になって! 隊長殿! っちゃっていいですよね!?」

「やっていいわけないだろ」

 何考えてんだ、クロエ。

「クロエさん。迂闊な言動は慎んでください。ここで貴女がわたしを排除しようとすれば、それは必然的に護衛対象であるジャンヌさんにも被害が及びます。それを防ぐためわたしは全力で対抗しますが、その場合どうなると思いますか。貴女の短絡的で直情的で向こう見ずな行動が、ジャンヌさんを傷つけ、この作戦を失敗に終わらせることになるのですよ。ジャンヌ隊の副隊長という立場の人間がそのようなことをはかるとは。少し考え直したほうが良いと具申ぐしんします」

 理路整然としながらも、遠慮のない反論がサールから放たれた。
 それに対してクロエは何とか反論しようとするのだが、上手く言葉が出ないのか、鯉みたいに口をパクパクさせるだけさせて、

「ぐっ……ぐぐ……ぐわーん、隊長殿ー! なんかよく分からないこと言われましたー」

 サールに撃破されて泣く馬鹿2人。
 はぁ……てか軍議どころじゃなくなってるんだけど。

 周囲を見渡す。
 馬鹿2人(サカキとクロエ)は撃沈。クルレーンはまだ感じ入ってるし説得には不向き、ウィットはクロエよりはマシとはいえどっこいだろう。センドは他国の人間だし。

 俺がやるしかないよなぁ。

 嫌な役目だけど、一応、ここでは俺が主導している軍議。それにサールは俺の護衛になってるから、俺から言うのが筋ってものだ。

 というわけで、軍師の弁論。VS護衛編です。
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