知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

第35話 これまでとこれからと・前

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「というわけで現状の振り返りをします!」

 俺は一棟の小屋に集まったサカキ、クロエ、ウィット、クルレーン、センド、ヴィレス、そして里奈を見渡して言う。

 この小屋は俺とクロエ、里奈の3人が寝泊まりしている場所だから、必然的に里奈もいることになった。
 一応全員に紹介しているものの、軍属ではないので遠慮したように隅っこに座っている。

 時間は夜。
 外では鹿鍋を片付けるざわめきがまだ聞こえてくるが、小屋の中は俺の声1つだ。

「俺たちオムカ軍は無事、ビンゴ軍と合流してその本拠地に到着した。オムカ軍は500。その内訳は歩兵400に鉄砲隊100。ビンゴ軍は2千500、すべてが歩兵。さらに鉄砲隊が100いるがビンゴ側のはからいでクルレーンにつけさせてもらった。その合計3千と100が目下の戦力と考えてもらいたい」

「そのほかの味方戦力について私から説明させていただきます」

 センドが俺の後を継いで話し始める。

「首都降伏のどさくさで逃亡した我が国の王子や、キシダ将軍の奔走ほんそうにより首都から逃げ出した兵は2万強。その後の帝国の執拗しつような残党狩りを踏まえると……おそらくこの国にいる我らの味方はおよそ1万ほどかと」

「1万か……確か前にジャンヌちゃんからビンゴ軍は7万はいたと聞いたけどよ?」

 サカキが聞いた話は、俺が今年の春に喜志田から直々に聞いた話だ。数に間違いはないだろう。

「はい。もともと我が軍はおよそ7万おりました。それが帝国軍の強襲により2万ほどが戦死、3万が降伏という壊滅的な打撃を受けました。主都に戻った兵はわずか2万。守備隊と合わせても3万はおりましたが、2万は負傷、守備隊1万はほぼ戦を経験したことのない素人同然。それに対し帝国軍は百戦錬磨ひゃくせんれんまの大将に率いられた意気軒昂いきけんこうな10万。勝負にならず、我が国王は降伏を決意しました」

「2万も死んだのか……」

 サカキが青汁を一気飲みしたように顔をしかめる。
 大軍を預かる身としてその想いは当然だろう。

 軍は通常兵力の30%を失うと全滅と定義される。そこまで兵力が減れば軍を再編しなければならないし、逃亡や脱走が増えて戦いにならないと言われる。
 そもそも部隊を前衛、中衛、後衛に分けた場合、その3分の1つまり前衛の消滅に相当するからという見方があるからだ。

 死者2万は7万に対して約30%。
 それで降伏兵が続出し、戦闘の続行が不可能になったのも頷ける。

「その7万、もともとそのキシダ将軍とやらが指揮していたとか?」

 サカキがさらに突っ込んだことを聞く。
 それに気分を害することなく、センドは頷いた。

「はい。しかし、キシダ将軍は解任され、後任に充てられたのが名門出身の若き天才と言われたチョーカ将軍です」

「それで負けた、か……」

「キシダ将軍は勝っていました。ヴィー地方を制圧し、後顧の憂いを断ち、これから決戦という時に解任されたのです! そんな時に……くそ、首都の佞臣ねいしんどもめ……」

 やっぱりあいつ、政治ゲームに負けたんだなぁ。
 本当にいつの時代にも、自分のことしか考えない連中がいるものだ。それが決まって権力の近くにいるのだから性質たちが悪い。

「なるほど。それで軍は惨敗。王が降伏し主都は開城。キシダ将軍という方と王子が逃亡し、今も潜伏していると。その数が多くて1万ほどということですね」

 ウィットが要点をまとめると、それにセンドとヴィレスが頷く。

「むむ、ウィットのくせになに分かったフリしてるし!」

「分かったフリじゃなく、ちゃんと分かってるんだよ。貴様と違ってな」

「にゃにおー! ふん、私だってちゃんとわかってますからね!」

「なら何がどうやってどうなったか、100文字以内で説明しろよ」

「えっと……負けて大変!」

「7文字じゃないか、馬鹿か!」

「むむ、ウィットのくせに生意気! 表出やがれです!」

「はいはい、お前ら漫才は後でやれ」

 俺が止めないとどこまでもやり続けるからなぁ、こいつら。まぁこのやり取りは一種の清涼剤になってるのかもしんないけど、緊迫感ってのも大事にしてね。

 てかなんでこいつら事あるごとに対立すんの?
 そしてなんでクロエは言い負けると分かってるのに立ち向かうの? 馬鹿なの? 勇者なの?

「えっと、話を戻して良いでしょうか」

「あぁ、すみません。はい、もうこいつらは無視していいので。いないものとして扱っちゃってください」

「は、はぁ……」

 センドが苦笑いして答える。
 うん、その気持ち。すごくよく分かる。

「とはいえ、その後のことは大方皆さまもご存じの通りです。私はオムカへ向かい、キシダ将軍はここを拠点と定めヴィレスに後を託して去ってしまいました」

「キシダ将軍については私から。あのお方はこの村で生活できる基盤を整えられ……およそ1か月前。他の生き残りを探してくると言って、ひとりで山を降りてしまったのです」

 ひとりでこの山を……。
 そりゃまた凄い、という思いを抱きつつも、ある種の不安が心をよぎる。

 まさかあいつ、逃げたんじゃないよな?

「その後、我々は何度か山を降り、帝国に支配された元ビンゴ王国の砦を攻撃したり、輸送部隊を襲ったりしていましたが……この度は網を張られていたようで。情けない限りですが皆さまに助けてもらわなければ、もっと多くの被害が出ていたでしょう。改めて感謝いたします」

 深々と頭を下げるヴィレス。
 相変わらず生真面目だと思う。そうでなければこの残党軍を統率できないだろうが。

「なるほど。味方については大体わかりました。あとは敵。帝国軍はどれくらいいて、誰が率いているか分かりますか?」

 俺はセンドに水を向ける。
 喜志田の近くにいたなら、ある程度の情報は集まっているはずだと思ったからだ。

「先ほど申し上げた通り、我々と対峙していた時はおよそ10万ほどの兵力でした。首都に入ったのも同じくらいの兵力だったかと」

「10万か」

「はい。そして彼らが掲げる旗は白地に金の縁取り、元帥府の軍であることが分かっています」

 元帥府。
 確かこないだヨジョー地方で戦ったのもそうだった。

「これは未確認情報なのですが……」

 帝国軍の話にヴィレスが入って来た。
 その顔には、いつになく眉間にしわが寄っていた。

「なんでも、帝国元帥がわずかな部隊を引き連れていたと」

「元帥……」

「はい。ドージマ元帥と呼ばれる女性で、『疾風のドージマ』『帝国不敗』などといったあだ名を持つ帝国最強の軍人です」

 ガタッ、と物音がした。
 目を向けると、里奈が少し腰を浮かしたようにして呆然としている。

「里奈?」

 不審に思って聞くが、里奈に反応はない。ただその顔は少し青ざめているように思える。

「いえ、失礼しました」

 ようやく我に返ったらしい。
 里奈は全員の視線から目をそらすと、逃げるように頭を下げてそう言った。

 何が起こったのか分からない。
 けどこれまでの経緯から大体のことは推測がつく。

 元帥の話をしているところでの反応。
 ドージマという名前。
 里奈が元帝国にいたこと(これはクロエしか知らない事実)。

 おそらく里奈はそのドージマ、もとい堂島というプレイヤーの元帥とは知り合いだったのだろう。

 そして、後から聞いたところその通りだった。なんでも里奈が最初に世話になった人物で、親しくさせてもらっていたという。スキルの内容は知らないが、戦って負けなしというのは本当らしい。

 ただ、なんとも複雑な気分だ。

 里奈を助けてくれた人物でありながら、戦いに引き込んだ人物ということだから。
 何より、今はビンゴ王国を滅ぼした大敵なのだ。

 てか俺たちより年齢が少し上とはいえ、あの平和な国で生まれ育った人間が、大帝国の軍のトップに腰を据えられるなんて。
 ったく、とんでもない化け物を敵にしたもんだ。

 里奈のことも思うと複雑だが、その元帥を倒す。それが一番の近道じゃないか。
 そう思ってしまう、この状況。あの女神の意地悪な高笑いが聞こえてきそうで、俺は深くため息をついた。
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