332 / 627
第4章 ジャンヌの西進
第40話 喜志田の罠
しおりを挟む
「てかなんだよ! あの登場の仕方! 敵襲かと思っただろうが!」
「えー、てかあんな簡単な偽兵にかかっちゃうとか、それ軍師としてどうなの? 視野狭すぎじゃないですー?」
「ぐっ……てかどっから来たんだよ。北の山脈を超えてきたのか?」
「他国の人にはおっしえませーん」
喜志田はこちらをからかうように笑みを浮かべたまま舌を出してきた。
こいつ、殴ってやろうか。
とはいうものの、多くの人目がある以上軽々しく手は出せない。
今、村の広場にはこの村に住むほぼ全員が出張ってきていた。
場所は村の広場。
陽はすでに落ち、キャンプファイヤーのごとく燃え上がるたき火と、各所にあるかがり火で明るさが担保されている。
そして所かしこに料理が盛られた皿と酒が置かれ、その周りでは兵と村人たちが飲めや歌えやの大騒ぎとなっている。
喜志田に連れられた3千にヴィレスの2千500、そして俺たちの500で総勢6千の軍勢になったことの祝賀会だった。
3千の増員というのはやはり大きく、皆の顔には笑顔が張り付いている。
さらに一部の陽気な兵たちは喜志田を囲んで今後の展望を語りだしていた。
「将軍! さすがです、ここに3千もの兵をつれてきていただけるなんて!」
「んー? あぁ、あれでもまだ半分だから。あと2千くらいはいるよ。山の下だけどね」
「おお、更に2千! これなら砦に籠る連中とも互角以上の戦いができますね!」
「ん、そうだねーそれでいいんじゃない?」
「キシダ将軍、では……」
「ああ、そろそろ邪魔な侵略者たちには帰ってもらおうか」
「おお……」
ビンゴの兵たちから、声にならない熱が漏れ出てくる。
「ついに来た。あの薄汚い侵略者どもを、この我らの国から追い出す日が!」
「ビンゴ王国よ、永遠なれ!」
「そうだ、我々にオムカ軍も加えれば、帝国など鎧袖一触だ!」
ビンゴの兵が口々に意気込みを語り、酒席が良い感じに温まっていく。
これほどの士気なら少し敵が多くても善戦できるはずだ。
なんて思っていたが。
「えー、いや別に。オムカ要らなくない?」
喜志田がぶっこんで来た。
液体窒素でもぶちまけたように、急速に場の熱気が凍る。
「おい、それは……」
凍った空気を何とかしようと、俺は喜志田に反論しようとするもあっちの方が早かった。
「てかオムカ何やってんの? 500とか援軍の意味ないじゃん。もっと連れてこいよって感じ。君らも言いなよ。少ないってさ」
「や、それは、しかし……」
センドが汗をかきながら俺と喜志田へ視線を右往左往させている。
同盟国への配慮と上司に対する気遣いに板挟みになり、言葉が出ないらしい。
「え、でも最初思ったんじゃない? たった500? って」
「あ、それは……はい、もう……」
押し切られるようにセンドが曖昧に頷く。
こいつ……後からやってきて好き勝手言いやがって。
「こっちにはこっちの事情があんだよ」
「あぁ、そっか。そっちの台所厳しいもんねー。貧乏国は辛い辛い」
「お前、喧嘩売ってるのか?」
「違うよ、買ってるんだよ。たった500しか援軍よこさないとかって舐めたことやる、喧嘩売ってきたのは君たちだろう?」
「数じゃあそうかもしれないけどな、質じゃあ500以上の働きはできるぞ」
「うわ、そういうこと言う? 寒いわー。てかないわー」
こいつ。言わせておけば。
あまり自分を過大評価したくない俺だけど、マリアの国が不必要にけなされるのを黙って聞いていられない。思わず大言壮語が口に出た。
「はっ、俺が500指揮すりゃ、帝国1万なんて余裕で撃退してやるよ!」
だがそれが狡猾に張り巡らされた喜志田の罠だと気づかずに、俺は喧嘩を買ったのだ。買ってしまったのだった。
「はい、みんな聞いた? オムカ軍は1万と戦って勝てるって。じゃあオムカには先鋒を任せようねー」
あ、てめぇ!
下手な言質取りやがって!
いや、今のは俺も迂闊だったけどさ!
しかし、喜志田の真骨頂は更にこれからだった。
「んんー? ってことはだよ? オムカの500にうちの精鋭5千500を加えた6千なら、12万と戦って勝てるってことだよね?」
そりゃ数字の上ではそうだろうけど、
おい、まさか――
「というわけで皆、俺なんかよりずぅぅぅっと頭が良くて謀略家の天才軍師様が皆を勝利に導いてくれるから。しっかり言う事聞くよーに!」
「おおおおおおお!」
「はぁ!?」
なに言い出してんの、こいつ!?
さっきまでこっちを散々、煽ってたのに! なんで俺が総責任者になってるんだよ。
「お前、何言い出すんだよ」
頭に血が登ったまま、喜志田に詰め寄る。
だが喜志田は何を怒っているのか分からないといった表情で、
「え? いやアッキーに任せりゃ大丈夫なんでしょ?」
「はぁ? お前もやれよ!」
「え、やだよ」
きっぱりと、すがすがしいまでに端的に断る喜志田。
頭がくらっと来た。
「俺さぁ、王国が滅亡してから、いやする前からこっち働きづめじゃん? てか牢に入れられたんだよ? 殺されかけたんだよ? そりゃもう萎えるわ。だから働くモチベじゃありません。というわけでアッキー、頑張ってー」
こいつ、俺に押し付けるだけ押し付けて逃げやがった!
いや待て。そんなことで押し付けられる俺じゃないぞ。
「他国の人間が指揮取って、言う事聞くわけないだろ。今は酒も入って熱に浮かされてるだけだ。すぐに言う事聞かなくなる。俺じゃあ無理なんだよ」
「大丈夫だって。聞いたよ。先日の戦闘の話。ぶっ倒れるまでやってしかも連戦連勝ってんだから。それでビンゴ将兵の心もわしづかみ。本当、どんな謙遜だよって話さ」
そう、なのか?
ビンゴ兵とはあまりかかわることがないから分からない。
「やれやれ、知らぬは自分だけってことかな。おーい、ヴィレス」
「はっ! なんでしょう、将軍」
「このジャンヌちゃんの言うこと聞いて指揮できる?」
「はっ、喜んで。もし不服従な者がいれば私が斬ります」
「ん、分かった。サンキュー」
礼儀正しく頭を下げてヴィレスが去っていく。
ヴィレス、お前もか。
お前もジルタイプか。
重いんだよ! 想いが!
「ま、そういうわけで。アッキーに任せてオールオッケーなわけ」
「どこがオールオッケーなんだよ!?」
「いや、だってさ。俺って頭良くって働き者だけど? なんかどーも人から色々言われてさ。気に食わないだの、生意気だの」
こいつこそ、自分のことあんま認識してないじゃねぇか。
今まさに気に食わなくて生意気だと思ってる人間が目の前にいることを教えてやろうか?
「だから更迭とかされて、もうこりたっていうの? だからこいつらはアッキーに任せて隠遁します!」
「うん、ふざけんなよ?」
「えー、それに言ったじゃん。張松になるって。劉備というアッキーを引き入れたら後は知りません」
「張松殺されてるからな、内通がバレて」
「あ、じゃあ孟達でいいや」
「孟達だって有能でちゃんと働いてんだよ! てか裏切る気マンマンかよ!」
まさかのここで三国志トークがさく裂するとは思わなかった。
ちなみに孟達は張松たちの仲間で劉備の蜀取りに貢献するも、後に劉備の義弟・関羽の死の責任を負わされそうになって敵国である魏に亡命。
けどその魏でも次第に冷遇されるようになって、再び蜀に寝返ろうとしたが殺されてしまう優秀なのに残念な武将だ。
「てか、お前も仕事しろよ。俺だけにやらせんな。それなら俺たち帰るぞ」
こうなったら俺も強気のカードを切る。
俺だけ貧乏くじを引いてたまるかって気分だ。
「えー、でもいいの? ここで俺たちが負けちゃったら、そっちこそ困るんじゃないの? 2方面から攻撃されたら終わるよね、オムカ?」
「ぐっ……」
「てかあのジャンヌ・ダルクが同盟国を見捨てて逃げるってヤバくない? 最初から見捨てるならまだしも、援軍出しておいて負けそうだから帰りますとかって、最も性質悪くない? そんなんで各国をつなぎとめられる? 南郡とかヤバいんじゃない?」
「ぐぐっ!」
「ま、その点俺はいいんだよ。別にビンゴに愛着ないし。死ぬ前に帝国に亡命するって手もあるからさ。ま、しないけど」
こいつ、どこまで本気なんだよ。
言葉の全てが嘘に聞こえる。
巧みに嘘と真実を混ぜてくるうちの宰相よりはマシだが……いや、どっちもどっちだな!
「それにね。これは本気で思ってるんだけど。俺じゃ無理なんだよ。俺じゃあ皆がついてこない。ただ成り行きで戦って、たまたま勝っただけで将軍になった男だよ。軍学とかも知らないし、ただ若干歴史を知ってるからなんとかなってるただの素人だ。いつ化けの皮がはがれるか戦々恐々してたんだ。そして更迭されて……国が滅んだ。俺が頼りなかったから……何もできなかったから。だから俺なんかより、アッキーの方が向いてる。そう思うから言ったんだ」
それは、喜志田が見せた初めての弱気だった。
やる気がないという見せかけも、あるいはその自信ののなさにつながっているのかもしれない。
そんなことはない。お前はできる奴だとけしかけることは可能だ。
けど、今こいつはこいつなりに責任を感じているのだと知った。
ったく。しょうがねーな。
これでも一時とはいえ一緒に戦った仲間だ。同じ国から来たプレイヤーだ。
見捨てるのは、さすがに後味が悪い。
「分かった。ここでの戦は俺が引き受ける。けどお前はここにいて、せめてこの戦いの行く先だけは見て、それから決めろよ。亡命するのか、隠居するのか、それともまだ戦い続けるのかを」
「…………」
喜志田は俯いたまま答えない。
何か感じ入ることがあったのだろう。
そう思ったのだが――
「っしゃー! アッキーからお墨付きもらったー。これでグータラ三昧しても怒らないってことだよねー。さーて、引きこもるぞー」
「は!?」
コイツイマナンツッタ?
ナニヲドウスルッテ?
「夜に寝て昼に起きる。睡眠は1日12時間。仕事もせずにゴロゴロ人生。それこそが人間のあるべき姿だと思うんだけど、どう思う、アッキー? ん? どうしたんだい。そんな怖い顔して。可愛い顔が台無しじゃないか。ほら、もっと飲んで飲んで。辛いことは飲んで忘れる。年齢? そんなのこの世界、この時代には関係ありませんー。さって、寝るぞー」
喜志田は固まってしまった俺からさっさと離れると、そのまま近くの小屋へと入って行ってしまった。
扉が激しい音を立てて閉まる。まるでここから出ないと言わんばかりの覚悟を示したようだった。
そして残された俺。
周囲のどんちゃん騒ぎの中、俺の周囲1メートルが氷河期のように冷たい空気に包まれる。
その中で俺の体は熱く燃えたぎっていた。
なぜかって?
それはもちろん――
「あんのクズ野郎!」
喜志田に対する怒りでだよ!
「えー、てかあんな簡単な偽兵にかかっちゃうとか、それ軍師としてどうなの? 視野狭すぎじゃないですー?」
「ぐっ……てかどっから来たんだよ。北の山脈を超えてきたのか?」
「他国の人にはおっしえませーん」
喜志田はこちらをからかうように笑みを浮かべたまま舌を出してきた。
こいつ、殴ってやろうか。
とはいうものの、多くの人目がある以上軽々しく手は出せない。
今、村の広場にはこの村に住むほぼ全員が出張ってきていた。
場所は村の広場。
陽はすでに落ち、キャンプファイヤーのごとく燃え上がるたき火と、各所にあるかがり火で明るさが担保されている。
そして所かしこに料理が盛られた皿と酒が置かれ、その周りでは兵と村人たちが飲めや歌えやの大騒ぎとなっている。
喜志田に連れられた3千にヴィレスの2千500、そして俺たちの500で総勢6千の軍勢になったことの祝賀会だった。
3千の増員というのはやはり大きく、皆の顔には笑顔が張り付いている。
さらに一部の陽気な兵たちは喜志田を囲んで今後の展望を語りだしていた。
「将軍! さすがです、ここに3千もの兵をつれてきていただけるなんて!」
「んー? あぁ、あれでもまだ半分だから。あと2千くらいはいるよ。山の下だけどね」
「おお、更に2千! これなら砦に籠る連中とも互角以上の戦いができますね!」
「ん、そうだねーそれでいいんじゃない?」
「キシダ将軍、では……」
「ああ、そろそろ邪魔な侵略者たちには帰ってもらおうか」
「おお……」
ビンゴの兵たちから、声にならない熱が漏れ出てくる。
「ついに来た。あの薄汚い侵略者どもを、この我らの国から追い出す日が!」
「ビンゴ王国よ、永遠なれ!」
「そうだ、我々にオムカ軍も加えれば、帝国など鎧袖一触だ!」
ビンゴの兵が口々に意気込みを語り、酒席が良い感じに温まっていく。
これほどの士気なら少し敵が多くても善戦できるはずだ。
なんて思っていたが。
「えー、いや別に。オムカ要らなくない?」
喜志田がぶっこんで来た。
液体窒素でもぶちまけたように、急速に場の熱気が凍る。
「おい、それは……」
凍った空気を何とかしようと、俺は喜志田に反論しようとするもあっちの方が早かった。
「てかオムカ何やってんの? 500とか援軍の意味ないじゃん。もっと連れてこいよって感じ。君らも言いなよ。少ないってさ」
「や、それは、しかし……」
センドが汗をかきながら俺と喜志田へ視線を右往左往させている。
同盟国への配慮と上司に対する気遣いに板挟みになり、言葉が出ないらしい。
「え、でも最初思ったんじゃない? たった500? って」
「あ、それは……はい、もう……」
押し切られるようにセンドが曖昧に頷く。
こいつ……後からやってきて好き勝手言いやがって。
「こっちにはこっちの事情があんだよ」
「あぁ、そっか。そっちの台所厳しいもんねー。貧乏国は辛い辛い」
「お前、喧嘩売ってるのか?」
「違うよ、買ってるんだよ。たった500しか援軍よこさないとかって舐めたことやる、喧嘩売ってきたのは君たちだろう?」
「数じゃあそうかもしれないけどな、質じゃあ500以上の働きはできるぞ」
「うわ、そういうこと言う? 寒いわー。てかないわー」
こいつ。言わせておけば。
あまり自分を過大評価したくない俺だけど、マリアの国が不必要にけなされるのを黙って聞いていられない。思わず大言壮語が口に出た。
「はっ、俺が500指揮すりゃ、帝国1万なんて余裕で撃退してやるよ!」
だがそれが狡猾に張り巡らされた喜志田の罠だと気づかずに、俺は喧嘩を買ったのだ。買ってしまったのだった。
「はい、みんな聞いた? オムカ軍は1万と戦って勝てるって。じゃあオムカには先鋒を任せようねー」
あ、てめぇ!
下手な言質取りやがって!
いや、今のは俺も迂闊だったけどさ!
しかし、喜志田の真骨頂は更にこれからだった。
「んんー? ってことはだよ? オムカの500にうちの精鋭5千500を加えた6千なら、12万と戦って勝てるってことだよね?」
そりゃ数字の上ではそうだろうけど、
おい、まさか――
「というわけで皆、俺なんかよりずぅぅぅっと頭が良くて謀略家の天才軍師様が皆を勝利に導いてくれるから。しっかり言う事聞くよーに!」
「おおおおおおお!」
「はぁ!?」
なに言い出してんの、こいつ!?
さっきまでこっちを散々、煽ってたのに! なんで俺が総責任者になってるんだよ。
「お前、何言い出すんだよ」
頭に血が登ったまま、喜志田に詰め寄る。
だが喜志田は何を怒っているのか分からないといった表情で、
「え? いやアッキーに任せりゃ大丈夫なんでしょ?」
「はぁ? お前もやれよ!」
「え、やだよ」
きっぱりと、すがすがしいまでに端的に断る喜志田。
頭がくらっと来た。
「俺さぁ、王国が滅亡してから、いやする前からこっち働きづめじゃん? てか牢に入れられたんだよ? 殺されかけたんだよ? そりゃもう萎えるわ。だから働くモチベじゃありません。というわけでアッキー、頑張ってー」
こいつ、俺に押し付けるだけ押し付けて逃げやがった!
いや待て。そんなことで押し付けられる俺じゃないぞ。
「他国の人間が指揮取って、言う事聞くわけないだろ。今は酒も入って熱に浮かされてるだけだ。すぐに言う事聞かなくなる。俺じゃあ無理なんだよ」
「大丈夫だって。聞いたよ。先日の戦闘の話。ぶっ倒れるまでやってしかも連戦連勝ってんだから。それでビンゴ将兵の心もわしづかみ。本当、どんな謙遜だよって話さ」
そう、なのか?
ビンゴ兵とはあまりかかわることがないから分からない。
「やれやれ、知らぬは自分だけってことかな。おーい、ヴィレス」
「はっ! なんでしょう、将軍」
「このジャンヌちゃんの言うこと聞いて指揮できる?」
「はっ、喜んで。もし不服従な者がいれば私が斬ります」
「ん、分かった。サンキュー」
礼儀正しく頭を下げてヴィレスが去っていく。
ヴィレス、お前もか。
お前もジルタイプか。
重いんだよ! 想いが!
「ま、そういうわけで。アッキーに任せてオールオッケーなわけ」
「どこがオールオッケーなんだよ!?」
「いや、だってさ。俺って頭良くって働き者だけど? なんかどーも人から色々言われてさ。気に食わないだの、生意気だの」
こいつこそ、自分のことあんま認識してないじゃねぇか。
今まさに気に食わなくて生意気だと思ってる人間が目の前にいることを教えてやろうか?
「だから更迭とかされて、もうこりたっていうの? だからこいつらはアッキーに任せて隠遁します!」
「うん、ふざけんなよ?」
「えー、それに言ったじゃん。張松になるって。劉備というアッキーを引き入れたら後は知りません」
「張松殺されてるからな、内通がバレて」
「あ、じゃあ孟達でいいや」
「孟達だって有能でちゃんと働いてんだよ! てか裏切る気マンマンかよ!」
まさかのここで三国志トークがさく裂するとは思わなかった。
ちなみに孟達は張松たちの仲間で劉備の蜀取りに貢献するも、後に劉備の義弟・関羽の死の責任を負わされそうになって敵国である魏に亡命。
けどその魏でも次第に冷遇されるようになって、再び蜀に寝返ろうとしたが殺されてしまう優秀なのに残念な武将だ。
「てか、お前も仕事しろよ。俺だけにやらせんな。それなら俺たち帰るぞ」
こうなったら俺も強気のカードを切る。
俺だけ貧乏くじを引いてたまるかって気分だ。
「えー、でもいいの? ここで俺たちが負けちゃったら、そっちこそ困るんじゃないの? 2方面から攻撃されたら終わるよね、オムカ?」
「ぐっ……」
「てかあのジャンヌ・ダルクが同盟国を見捨てて逃げるってヤバくない? 最初から見捨てるならまだしも、援軍出しておいて負けそうだから帰りますとかって、最も性質悪くない? そんなんで各国をつなぎとめられる? 南郡とかヤバいんじゃない?」
「ぐぐっ!」
「ま、その点俺はいいんだよ。別にビンゴに愛着ないし。死ぬ前に帝国に亡命するって手もあるからさ。ま、しないけど」
こいつ、どこまで本気なんだよ。
言葉の全てが嘘に聞こえる。
巧みに嘘と真実を混ぜてくるうちの宰相よりはマシだが……いや、どっちもどっちだな!
「それにね。これは本気で思ってるんだけど。俺じゃ無理なんだよ。俺じゃあ皆がついてこない。ただ成り行きで戦って、たまたま勝っただけで将軍になった男だよ。軍学とかも知らないし、ただ若干歴史を知ってるからなんとかなってるただの素人だ。いつ化けの皮がはがれるか戦々恐々してたんだ。そして更迭されて……国が滅んだ。俺が頼りなかったから……何もできなかったから。だから俺なんかより、アッキーの方が向いてる。そう思うから言ったんだ」
それは、喜志田が見せた初めての弱気だった。
やる気がないという見せかけも、あるいはその自信ののなさにつながっているのかもしれない。
そんなことはない。お前はできる奴だとけしかけることは可能だ。
けど、今こいつはこいつなりに責任を感じているのだと知った。
ったく。しょうがねーな。
これでも一時とはいえ一緒に戦った仲間だ。同じ国から来たプレイヤーだ。
見捨てるのは、さすがに後味が悪い。
「分かった。ここでの戦は俺が引き受ける。けどお前はここにいて、せめてこの戦いの行く先だけは見て、それから決めろよ。亡命するのか、隠居するのか、それともまだ戦い続けるのかを」
「…………」
喜志田は俯いたまま答えない。
何か感じ入ることがあったのだろう。
そう思ったのだが――
「っしゃー! アッキーからお墨付きもらったー。これでグータラ三昧しても怒らないってことだよねー。さーて、引きこもるぞー」
「は!?」
コイツイマナンツッタ?
ナニヲドウスルッテ?
「夜に寝て昼に起きる。睡眠は1日12時間。仕事もせずにゴロゴロ人生。それこそが人間のあるべき姿だと思うんだけど、どう思う、アッキー? ん? どうしたんだい。そんな怖い顔して。可愛い顔が台無しじゃないか。ほら、もっと飲んで飲んで。辛いことは飲んで忘れる。年齢? そんなのこの世界、この時代には関係ありませんー。さって、寝るぞー」
喜志田は固まってしまった俺からさっさと離れると、そのまま近くの小屋へと入って行ってしまった。
扉が激しい音を立てて閉まる。まるでここから出ないと言わんばかりの覚悟を示したようだった。
そして残された俺。
周囲のどんちゃん騒ぎの中、俺の周囲1メートルが氷河期のように冷たい空気に包まれる。
その中で俺の体は熱く燃えたぎっていた。
なぜかって?
それはもちろん――
「あんのクズ野郎!」
喜志田に対する怒りでだよ!
1
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~
猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。
――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる
『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。
俺と俺の暮らすこの国の未来には、
惨めな破滅が待ち構えているだろう。
これは、そんな運命を変えるために、
足掻き続ける俺たちの物語。
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
勇者をしている者なんですけど、キモデブ装甲のモブAにチェンジ魔法を使われて、身体が入れ替わった!? ありがとうモブA!やっと解放された!
くらげさん
ファンタジー
雑草のように湧いてくる魔王の討伐を1000年のあいだ勇者としてこなしてきたら、キモデブ装甲のモブAに身体を取られてしまった。
モブAは「チェンジ魔法」のユニークスキル持ちだった。
勇者は勇者を辞めたかったから丁度良かったと、モブAに変わり、この姿でのんびり平和に暮らして行こうと思った。
さっそく家に帰り、妹に理由を話すと、あっさりと信じて、勇者は妹が見たかった景色を見せてやりたいと、1000年を取り戻すような旅に出掛けた。
勇者は勇者の名前を捨てて、モブオと名乗った。
最初の街で、一人のエルフに出会う。
そしてモブオはエルフが街の人たちを殺そうとしていると気付いた。
もう勇者じゃないモブオは気付いても、止めはしなかった。
モブオは自分たちに関係がないならどうでもいいと言って、エルフの魔王から二週間の猶予を貰った。
モブオは妹以外には興味なかったのである。
それから妹はエルフの魔王と仲良くなり、エルフと別れる夜には泣き止むのに一晩かかった。
魔王は勇者に殺される。それは確定している。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる