知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成

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第4章 ジャンヌの西進

第53話 帰国そしてお風呂

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 駆け足の一歩手前で目一杯を走らせて、へばる直前に替え馬に乗り変える。
 それを繰り返して夜も駆け通した。

 翼があるなら飛んでいきたい気分だった。
 いや、電車が、車があればこんなに苦労することはないのに。そう思う。

 だがない物ねだりをしてもしょうがない。

 馬に慣れていない里奈がちょっと心配だったけど、文句も言わずに馬の背中にしがみついてひたすらついてきてくれた。

 最初に一緒に王都へ来てくれと言った時、

『分かった。明彦くんについていく』

 とだけ言って頷いてくれた。
 もうあの時のわだかまりはない。お互いの想いが聞けたから、遠慮することはなくなったと思う。

 だからこそ、里奈を連れて行く必要があった。
 今の里奈の境遇。そしてこれからの激しくなるだろう戦いにおいて、彼女を守って戦うことに自信がなくなってきた。だから里奈をオムカに戻すために、共に来てもらった。

 それは里奈には言っていない。
 きっと里奈は反対するだろうし、だけど俺は安全なところにいて欲しいという思いでどうにもならなくなっている。

 けど、あの村で起きた悲劇。
 その時の里奈の消えてしまいそうなほど儚い顔。
 そんな想いを、二度とさせたくないというのは、俺の身勝手じゃないはずだ。
 だから俺は心を鬼にして里奈を置いていく。

 そんな決意を心に秘め、王都に着いたのは、出発した翌日の太陽が沈む直前だった。
 城門が閉められる直前、滑り込むように城内に入り込んだので、敵襲だと思った衛兵に止められるなどのいざこざがあったが、俺の顔を知ってる人がいてなんとか事なきを得た。

 それから里奈は彼女の家に帰して――多分里奈は疲労ですぐに横になるだろう――俺は王宮へ向かった。

「これは……! ジャンヌ・ダルク。なぜここに?」

 王宮にいたマツナガは、幽霊でも見たように驚きの表情を浮かべていたので、その胸を叩いて

「マリアはまだ起きてるだろ。あとジルを呼んでくれ。緊急の話がある」

「はぁ……」

 要領を得ない様子のマツナガの尻を叩くと、10分後にはいつもの謁見の間に該当の人員が揃った。
 マリアとその横にはニーア。そしてその下座にジルとマツナガといった面々。

 マリアがどこかそわそわと、どこか嬉しそうな表情をしている。

「ジャンヌ、無事じゃったのじゃな」

「急に押しかけて申し訳ありません。緊急の議題がありましたので、前線から戻りました」

 俺はマリアのねぎらいをあえて無視して、先にこれまでの経緯を簡潔に説明する。
 そして今回の議題。増援の派兵についてを語る。

「つきましては、増援をお願いしたい。自分がそのまま連れて行きます」

 その言葉にマリアは少しがっかりした様子で、ニーアは顔色を変えず、ジルは感嘆の表情で、マツナガは眉をひそめた。

「ジャンヌ様は相変わらず運がお太い」

「総司令殿」

 マツナガが静かにジルをたしなめるが、ジルは小さく首を横に振って、

「実は今、王都にブリーダがおり、調練を終えた騎馬隊3千が明後日にはヨジョー城へ配属される予定になっていました」

「マジか。ブリーダが」

 しかも騎馬隊3千は大きい。

「はい。それから……」

「いや、いい。後は私から話しましょう。来たるべき決戦に備えて、ワーンス、ドスガ、トロン、スー、フィルフの5か国に援軍を要請しました。一番近いワーンス王国から4千の兵が昨日、到着しています」

「しかもその指揮官、ジャンヌ様がご存じの方です」

 俺が知ってる? ワーンス?
 あー……いた。タキ将軍の後任の人。確か名前は……。

「アズって言ったっけか?」

「はい。彼は後任の将軍に就任し、今、王都内にいます。後で引き合わせましょう」

 ブリーダとワーンスの軍合わせて7千。
 1万には届かないが、今考えられるベストな数だ。

「わかった。助かる。さっそくブリーダとアズ将軍に会おう」

「ところで、出発はいつに?」

「今日、すぐにだ」

「無茶なことを」

「無茶でもやらないといけないんだよ、マツナガ」

 マツナガは嘆息し、首を振るだけで何も答えなかった。
 だから代わりにジルがマリアに振り向いて裁可を取る。

「よろしいでしょうか、女王様」

「う、うむ……よきようにするのじゃ…………」

 悲し気な様子でマリアが何かを言おうとした。
 無表情のままのニーアからも気配が来る。

「感謝します」

 俺はそれを無視して頭を下げた。
 そしてニーアの何かが爆発しそうになる寸前。

「準備を整えたら一度お部屋に伺います」

 これまではおおやけの時間。
 それが終わればわたくしの時間。
 そこらへんの切り替えはちゃんとする。
 それを教えるためにわざとじらす形になったが……。

「う、うむ! 待ってるのじゃ! 約束じゃぞ!」

 マリアが破顔した。
 隣のニーアは小さく、だが深くため息をつく。

 やれやれ。
 さすがの俺も懲りたから、マリアをほったらかしにはしない。後でニーアに絞られるのは嫌だからな。

 それからジルと共にブリーダとアズ将軍を訪れた。

「了解っす。いつでも行けるっすよー。あっ、アイザはヨジョー城の皆を頼むっす」

「は? 何を言ってるんですか? 私がついて行かないと、貴方は何もできないでしょう」

「え……いや、その……っす」

 なんというか、相変わらずで安心した。
 けどアイザ、彼女も来るのかぁ……苦手、というか負い目があるからなぁ。

 それに反してアズ将軍はかなりフレンドリーだった。

「これはお久しぶりです。また共に戦えるとは光栄です」

 実直一筋というか、なんとも頼もしい限りだ。
 ただ、彼には聞いておかないといけない。
 そう思って、切り出した。

「南郡すべてが増援に来るんです?」

「はぁ……どうやらそのようで。国王からは、マツナガ宰相の命令に従うように、と仰せつかりました」

 マツナガ? あいつ、また何かやってるのか。

 不穏なにおいを感じながらも、まぁ無茶なことはしないだろうと思う。
 ニーアも注意してくれてるし。

「ですので援軍の件、承知しました。すぐにでも出発できます」

「ああ、助かります。女王にもう一度お目通りしたらすぐに出ようと思うんで、よろしくお願いします」

「ジャンヌ様。夜通し駆けてきたのでしょう? 一晩くらいお休みになられては?」

 ジルが心配そうに聞いてくるが、俺は首を振った。

「いや、時間がないんだ。最悪の事態が起こる前になんとしてでも戻りたい」

 俺の覚悟を見て取ったのか、ジルは不承不承ながらも頷き、

「分かりました。お体だけはお大事に」

 そんなこんなを終えて、出発の報告のためにマリアの部屋を訪れた。
 挨拶だけしてすぐに出て行くつもりだったが、

「ジャンヌ、お主……におうぞ」

「え?」

「ニーア!」

「はっ! お任せを!」

 何が、と思った瞬間には、影が動く。
 そして直後には後ろを取られていた。
 そのまま視界がぶれ、体が重力から解放された。

「なっ、お、ちょい!」

 どうやら俺はニーアの肩に担がれているらしい。ニーアの背中にガンガンと顔面がぶつかる。

「きちゃないジャンヌはお風呂でキレイキレイしましょうねー」

「うむ! 隅々までゴシゴシするのじゃ!」

「や、やめろお前ら! 放せ!」

 手足をばたつかせて抗議するも、ニーアの鉄のような肉体には何ら響かない。

「だめだめー。そうしたらジャンヌ出てっちゃうでしょ? ほい、とうちゃーく。ほら脱いで脱いでー」

 ニーアの肩から解放されたかと思いきや、今度は背後から羽交い絞めにされた。

「ふふふー、ジャンヌのお肌、久しぶりなのじゃー」

「や、やめろ! 変態!」

 だが俺の悲鳴もむなしく、マリアに次々と服が脱がされていく。
 必死に抵抗しようにも、ニーアの力の前には抵抗など無意味。上着の袖を抜く瞬間に逃げようとするが、器用にもニーアは腕を取って俺の動きを封じてきた。抵抗虚しく、上着とシャツ、そしてスカートとブーツがはぎ取られた。

「うう……」

 背中を丸め、肘と膝で必死に隠そうとするが、こんな状況においては無意味。
 てかなんで俺がこんな目に……!?

「恥じらうジャンヌ、可愛いのじゃ」

「さすがです、女王様。というわけでジャンヌもうこれで自由、逃げてもいいわよ? あ、脱いだものはぽいっとして、侍従の人が洗ってくれるから。はい、どうぞ」

「できるか!」

 下着姿にニーソックスとかどういうプレイだよ。
 こんなんで外に出たら変態呼ばわりされるのは俺の方だ。

「そうなのじゃ! こうやって服をはいでしまえば、すぐに出て行けないという策略なのじゃ!」

「は、謀ったなぁー!」

「ほらほら、叫んでないで最後まで脱ぐ! お風呂に入ってサパッとしてきなさい」

 ニーアに言われ、心が揺らぐ。
 ここ長いところ、お風呂に入っていないのを思い出したのだ。村にも砦にも風呂なんて上等なものはなく、みんな川の水で洗うか体を拭くことで満足していた。
 一度、耐えきれずに村で五右衛門風呂を作ったことがあったが……あれはリラックスとは程遠い代物だった。

 だからこの王宮にある豪奢なお風呂は、今の俺にとっては垂涎すいぜんまとで、ゆったりと疲れを取りたいという思いは出てくる。
 けど今も前線で頑張っているサカキたちを思うと、そんなことをしている場合じゃないという思いが沸き上がる。

「ほらほらー、ちょっとだけだからさ。ほんのちょっと」

「そうなのじゃ。ほんの10分ばかり遅れたところで変わらんのじゃ」

「そーそー逆にその疲れた体で行っても、頭が働かないし。ならここで疲れを取って、その分、元気な体で急いだほうが効率的じゃなくて?」

 こいつら……手際が良くなってる。
 俺を追い詰める手際が各段に向上している!

 ありがた迷惑だけどな!

 ああ、もう!
 そこまでやられたらどうしようもないじゃないか!

「しょうがない! ひとっぷろ浴びるか!」

「さすがジャンヌなのじゃ!」

「よし、そうと決まったら……さ、女王様」

 俺を解放したニーアがマリアの背後に寄ると、いそいそと服を脱がしにかかる。
 あぁ、さすが女王陛下。自分では脱がないってことか。

 俺はそんな2人を見るのが恥ずかしくて、急いで下着を取り去ると先に風呂場へと向かう。
 公共の浴場並みに広い室内に木々をあしらった南国風のお風呂。どこかのレジャースパみたいに思える。

 とはいえもうここまで来た以上、毒を食らわばなんとやら。

 お湯を体にかける。
 ひさびさのお湯に、肌がピリピリと歓喜の声をあげる。

 体をこすればボロボロと古い皮膚が落ち、奥から卵のようなツルツル肌が現れる。

 うん、やっぱり気持ちがいい。

 十分に汚れを取ったところで、足をお湯に入れて体を慣らす。
 そこへ――

「ジャーンヌ!」

 背後から抱き着かれた。
 小さいのと大きいの。

「はぁー、ジャンヌのお肌……すべすべなのじゃ。これ、これなのじゃ、これ! これがないと女王の仕事なんてやってられないのじゃー」

「分かります。さすが女王様。さ、今のうちにジャンヌ成分を吸収しましょう!」

「お前ら……いい加減にしろ!」

 背後へ手を伸ばし、その脇をくすぐる。

「わきゃー! ジャンヌの反撃なのじゃー!」

「女王様ずるい! さぁ、ジャンヌ! もっと来なさい!」

 お風呂でリラックス。
 こいつらがいる限り永遠に無理だな。

 ――なんて思ったわけだけど、そんな時間は長く続かなかった。

 というのも、お湯に肩までつかってホッと一息。
 それがいけなかったのだろう。

 頭がぼぅっとしたと思ったら、まぶたが重力に逆らえずに落ちていく。
 体から力が抜け、そのまま落ちていく感覚。

「ジャンヌ!? ジャンヌが溺れてるのじゃー!」

「ちょ、この馬鹿!」

 そんな音が聞こえたような気がしたが、そのまま俺は、暗い水の底に落ちていった。
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