【完結】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが ライト文芸大賞【奨励賞】

桐乃乱

文字の大きさ
8 / 39
第一章

【三】星夜―ミッションを遂行せよ

しおりを挟む



 書斎の机には鍵のついた引き出しがある。

 祖父ちゃんの死後、そこを開けた父さんは、祖父ちゃんの通帳や土地の権利書などが入った金庫についての遺言を見つけた。

 俺は同じ場所へ年賀状を入れた。

 転勤族の俺に返事をくれた律儀な友人は、数名になってしまった。

 スマホを持っていなかった俺は自宅の電話番号を印刷していたが、かけてきたのは一名だけ。

 引っ越しも落ち着いたことだし、引っ越し直前に買ってもらった最新機種でそいつに電話してみよう。


「まずは連絡先を登録したほうがいいのか?」
「にゃーん」
「ルビー、かわいい返事をありがとう。でも、太腿が痺れてきたよ……」

 潤んだ瞳で首をかしげる様は、さながらアイドルだ。

 コンコンコン。ガチャリ。

「星夜、ちょっといいかしら」
「うん。どうぞ」
「今日は日勤なの?」
「ええ」


 ルカ叔母さんがジーンズにコート姿で現れた。東北は桜が開花するまで厚手の外套が手放せない。叔母さんは隣区の総合病院に勤めるベテラン看護師なのだ。

「母さんが居ないところで話したかったの。星夜のおかげで母さんが明るくなったわ。ありがとう」
「俺は何もしてないよ」
「あなたにお願いがあるのよ。母さんは小説を書くのが楽しいって言ってたでしょ」
「うん」
「母さんの小説を読んだ?」
「う、う~あ~。実は、ネコたんがチューしたところから読んでないんだ……」
「まあ、わかるわ。好みのジャンルじゃなかったでしょ」
「うん、ごめん。でもポイント数すごいね。あれって、たくさん読まれてるって事だよね」
「そうなの。母さんが嬉しそうに写メ見せてくれたんだけど、ほら、これ見てよ」


 ルカ叔母さんのスマホへ転送させた写真はランキングのデータだった。

「日刊完結ランキング四位……。こっちの作品も十位以内だ。すごいね、ラン祖母ちゃん」
「私は同人誌の件を本気で考えてるの。一冊でも頒布すれば、もっと母さんが元気になると思うのよね」
「俺も手伝うよ」
「我が甥よ、よくぞ申した。叔母さんは嬉しいぞ!」
「なんだか時代劇みたいだね。それか、舞台女優」
「実は目指してました! なぁんてね」

 アラサーのてへペロは今ひとつだった。

「なんだって?」
「いいえ、なんでもございません」

 叔母さんの頼みはこうだ。
 俺が転入する高校で腐女子(BLを愛する女生徒)を見つけ出し、祖母ちゃんの小説についての生感想をもらう。

「なんだか凄く高難度なミッションの気がするんだけど……」
「星夜が意識してえくぼを作れば、女子はイチコロよ!」
「俺、イケメンでもないし、無理でしょ。都会はレベルの高いイケメンが電車にぎゅうぎゅう詰まってたぜ」
「無自覚って怖いわ……でもそこが星夜の良いところよ。そのままでいてね」
「ちょっと、何言ってんのかわかんない」
「じゃ、報告を待ってるわ」
「いってらっしゃい」


 颯爽とした後ろ姿は三十代に見えない。
 ひいき目に見ても叔母さんは美人だと思う。

 涼しげな一重に白い肌、つやのある黒髪。正統派の日本女性は異国人にモテる。

 思い出した。たしか元旦那はデイヴィッドって名前だった。叔母さんと別れるなんて馬鹿な男だ。

 もし会ったら、ルカ叔母さんを悲しませた野郎を殴ってやる……なあんてね。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

処理中です...