【完結】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが ライト文芸大賞【奨励賞】

桐乃乱

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第一章

【三】星夜ーミッションを遂行せよ!②

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 新しいブレザーの制服に身を包み、鏡でネクタイが曲がっていないか確認した。やや目つきがきついのは、若生家の特徴だから仕方ない。


「星夜、ヘルメット忘れてるわよ」
「祖母ちゃん、ありがとう」
「いってらっしゃい」
「行ってきます」

 スポーツタイプのヘルメットを装着すると、祖母ちゃんと叔母さんからプレゼントされた自転車で出発した。沿道の木蓮は花が散り、民家の桜が主役の座を奪っていた。

 始業式の始まりに相応しい快晴。まるで俺の門出を祝ってるかのようだ……なあんて。

 転校先の生徒全員が祝福されてるんですけどね。


 両親からは市内中心部にある『青葉学園』を勧められたが、バスに乗るのが嫌で姉妹校の『紅葉学園』に即決した。

 自転車で仲山の北環状線を一直線に下るだけ。気分爽快この上ない。俺はこの三年間、半世紀分の二酸化炭素を満員電車で吸い込んだ。

 もうラッシュアワーは懲り懲りだった。

 坂道の終点にある交差点を左折して百メートル進むと、青葉城の城壁を彷彿とさせる学園の高い塀が現れた。

 校舎もぱっと見では日本の城にしか見えない。山の一部を残して造成された団地に、なぜ建てたんだろう。理事長は武家の子孫なのかな。

 分厚い門扉の横に立つ警備員に生徒手帳の提示を求められた。

「おはようございます。その自転車の許可証はもらいましたか?」
「おはようございます。今日から転校してきました。これが許可証です」
「下校までにステッカーをもらってください」
「わかりました」

 ふう。随分とセキュリティーが厳しいんだな。校門から続く緩い坂は、自転車を引いていった。駐輪場には十台ほどの自転車が。す、少ないなぁ。

 自家用車送迎用の校門が南方に見えた。そっちは十台以上の高級車が列を作っている。さ、さすが坊ちゃんが多い学校だぜ。


「星夜、こっち、こっち!」
海人かいと、久しぶり!」

 生徒用玄関口の横に張り出されたクラス分けの掲示板には、二学年に上がる生徒が群がっていた。


「お前、でっかくなったな~」
「お前もな」

 電話した友人は転校先に在学していた。理由を聞いたら、家から近いから。俺と同じ思考回路で思わず吹いた。

「星夜は俺と同じ三組だぜ」
「マジか。やった!」
「おはよう、若生くん」
 
 振り向いたら、ポニーテールの可愛い女の子が微笑んでいた。

「?」
 心当たりがなくて首を傾げたら、ケラケラと笑われた。

「やだあ、私よ。萩野月子はぎのつきこ。海人の妹」
「あー、双子の?」
「なんだよ、忘れてたのか?」
「だって、可愛いからびっくりして」
「それって、前は違ったってこと?」
「ムニャむむ~」
「お前はアニメキャラかよ!」

 バァンと海人に背中をたたかれた。豪快な笑いと容赦ないツッコミは健在だ。一方、海人の妹は大人しいイメージだったけど、記憶違いだったのかな。

「私も三組よ。よろしくね、若生くん」
「星夜って呼んでよ」
「じゃあ、私は月子で」
「さ、教室に行こうぜ!」
「うん」

 転入生の緊張感を取り去ってくれた友人に感謝だ。上靴に履き替えて階段を上がっていく。二年生は四階建て校舎の二階に五クラス。1、2組が理系、残りが文系クラスだと双子が教えてくれた。


「星夜は大学に進学するんだろ?」
「まあ、一応。海人は地元の大学か?」
「姉妹校の青葉大学に進んで地元に就職するさ」
「親父さんの会社に入るんだろ?」
「その前に提携先で修行しろって言われてる」
「提携先?」
「老舗デパートの松越さ」
「へ~」
「実はね、社長令嬢と見合いがあるのよね、兄さん」
「噂だろ。俺は結婚相手は自分で選ぶよ」

 萩野家は地元優良企業の経営者だから、高校生の内から縁談が舞い込むのも頷けた。

「星夜は親父さんと同じ仕事に就くのか?」
「まだ考えてないな」



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