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第一章
【三】星夜ーミッションを遂行せよ!③
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「星夜は親父さんと同じ仕事に就くのか?」
「まだ考えてないな」
俺は父さんみたいなエリートにはなれないし、両親も悟ってるはずだ。
東京の学校じゃ田舎者とからかわれて、一部の生徒からは排除対象にされていた。もう過ぎたことだから、記憶を掘り起こすのは止めよう。
海人たちと楽しい学園生活を送るんだ。
ハッ。ミッションを忘れていたぜ。
『転校先で腐女子(BLを愛する女生徒)を見つけ出し、祖母ちゃんの小説についての生感想をもらう』
自己紹介がてら、速攻で作戦開始ってのはどうだろう。
「はじめまして、若生星夜です。東京からここへ戻ってきました。趣味は庭からボーッと海を眺めることです。もし腐女子の方がいたら、俺と友だちになってください!」
だめだ、絶対に腐男子認定されちゃうじゃんよー。
脳内シミュレーションやり直し!
教室へ入るとざわめきがピタリと止んだ。
「あれ誰?」
「イケメンじゃん」
「転校生じゃね?」
「紀文ちゃんがいってた人?」
【出席番号順に座ること】と黒板に指示されていたので、窓際の一番後ろの席に移動する。萩野妹は隣の席に、海人は斜め前に座った。
「隣でラッキー」
「お兄ちゃん、星夜君にノート見せてもらう気でしょ」
「当たり前じゃん」
月子ちゃんがため息をつきながら通学鞄から筆箱を取り出した。
見慣れないペンでスマホを擦って……書いてる?
「そのペンで何を書いてるの?」
「イラストよ。私、漫画家志望なの」
「凄いな! 俺は将来の夢は叶わなかったな……」
ため息をついたら、海人が俺の腕をバンバン叩いた。
「今からでも遅くないだろ!」
「うん、そうだな」
夢は叶わなくても、不可抗力や権力が作用する非日常的な生活だけはもう嫌だ。
「就職なら、うちの会社はいつでも大歓迎だぜ」
「スカウトありがとう」
始業のベルが鳴り、スーツのアラサー男性が教壇に立った。白チョークで黒板に紀文光一と刻んでいく。
「担任のきぶんこういち、です。現国担当です。文系大学進学コースの責任者も兼任しています。大学について知りたいことがあれば、俺に聞いてください」
「紀文ちゃん、彼女できた?」
メイクバッチリ女子から質問が飛んだ。
「俺は大学じゃないぞー。じゃあ出席番号一番の人から自己紹介していこうか」
廊下側の一番前の男子生徒が立ち上がり、窓側へ顔を向けた。
「相田よつおです。人間です」
「ツッコミどころがないぞー」
「母ちゃんの部屋にある色紙書いたの、お前かよー」
ツッコミを回避するのを失敗した相田くんは、なんだか涙目になっていた。マッシュルームカットが似合う、なかなかの美少年だ。
「よしなさいよ」
凛とした声は相田くんの後ろに座る女子だった。
「はい、じゃあ次の人~」
紀文先生はカバー付きのノートを開いて、何やらメモしていた。
あ、あれは?
「先生の持ってるペンに白い何かがついてる。もしかして、ハンペン?」
「そうよ。美味しそうだよね」
「食べれないけどね」
いや、レプリカだって俺でもわかるぞ。
「まだ考えてないな」
俺は父さんみたいなエリートにはなれないし、両親も悟ってるはずだ。
東京の学校じゃ田舎者とからかわれて、一部の生徒からは排除対象にされていた。もう過ぎたことだから、記憶を掘り起こすのは止めよう。
海人たちと楽しい学園生活を送るんだ。
ハッ。ミッションを忘れていたぜ。
『転校先で腐女子(BLを愛する女生徒)を見つけ出し、祖母ちゃんの小説についての生感想をもらう』
自己紹介がてら、速攻で作戦開始ってのはどうだろう。
「はじめまして、若生星夜です。東京からここへ戻ってきました。趣味は庭からボーッと海を眺めることです。もし腐女子の方がいたら、俺と友だちになってください!」
だめだ、絶対に腐男子認定されちゃうじゃんよー。
脳内シミュレーションやり直し!
教室へ入るとざわめきがピタリと止んだ。
「あれ誰?」
「イケメンじゃん」
「転校生じゃね?」
「紀文ちゃんがいってた人?」
【出席番号順に座ること】と黒板に指示されていたので、窓際の一番後ろの席に移動する。萩野妹は隣の席に、海人は斜め前に座った。
「隣でラッキー」
「お兄ちゃん、星夜君にノート見せてもらう気でしょ」
「当たり前じゃん」
月子ちゃんがため息をつきながら通学鞄から筆箱を取り出した。
見慣れないペンでスマホを擦って……書いてる?
「そのペンで何を書いてるの?」
「イラストよ。私、漫画家志望なの」
「凄いな! 俺は将来の夢は叶わなかったな……」
ため息をついたら、海人が俺の腕をバンバン叩いた。
「今からでも遅くないだろ!」
「うん、そうだな」
夢は叶わなくても、不可抗力や権力が作用する非日常的な生活だけはもう嫌だ。
「就職なら、うちの会社はいつでも大歓迎だぜ」
「スカウトありがとう」
始業のベルが鳴り、スーツのアラサー男性が教壇に立った。白チョークで黒板に紀文光一と刻んでいく。
「担任のきぶんこういち、です。現国担当です。文系大学進学コースの責任者も兼任しています。大学について知りたいことがあれば、俺に聞いてください」
「紀文ちゃん、彼女できた?」
メイクバッチリ女子から質問が飛んだ。
「俺は大学じゃないぞー。じゃあ出席番号一番の人から自己紹介していこうか」
廊下側の一番前の男子生徒が立ち上がり、窓側へ顔を向けた。
「相田よつおです。人間です」
「ツッコミどころがないぞー」
「母ちゃんの部屋にある色紙書いたの、お前かよー」
ツッコミを回避するのを失敗した相田くんは、なんだか涙目になっていた。マッシュルームカットが似合う、なかなかの美少年だ。
「よしなさいよ」
凛とした声は相田くんの後ろに座る女子だった。
「はい、じゃあ次の人~」
紀文先生はカバー付きのノートを開いて、何やらメモしていた。
あ、あれは?
「先生の持ってるペンに白い何かがついてる。もしかして、ハンペン?」
「そうよ。美味しそうだよね」
「食べれないけどね」
いや、レプリカだって俺でもわかるぞ。
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