【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明

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王都ヴェンダル

第85話 被害者のこれからの対応

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 街の門を潜る時、社内にいる赤子について門番が何か言いたそうだったが、オスカーの身分を確認するなり納得した用で何も言わなかった。

 オスカーが自宅横まで送りとどけてくれた。その後オスカーと一緒に、6人の子ども達を元の状態に戻し、リビングのソファーや、ベッドマットの上に寝かせた。

 しばらく意識は戻さなくても良いだろう体調だけ気にかけておいた。

「よっし、これで全員だな、んじゃ俺はレベルトを教会に連れていくよ」
「お願いします」

 車の後部座席にいるレベルトに目をやるが、先ほど変わらずずっと下を見ていた。

「んじゃな、俺も用が済んだらこっち来るわ」
「了解~」

 オスカーは自分の車に乗り込み、去っていった。

 さて、子ども達の記憶を見ていくか、1人1人、名前や両親の名前、そして住んでいた街または村の名前までチェックしていった。

 全部が自分の知らない街や村だった。とりあえず1人1人の情報をメモして自分の役割は終わりだと思った。

 送り届けるのはオスカーかチェルシーの組織で何とかしてほしいなぁと思った。

 とりあえず、自分のやる事は終わったと思うことにして、鍛冶をやろう!
 鍜治場として使う予定のガレージに移動した。ダンジョンで作った時と同じ仕組みの大型の炉を作り、木炭に火をつけ炉の中に放り込んでいく、そして大量の砂鉄を流し込んだ。大気魔法で中の酸素濃度を濃いめに設定した。

 オリハルコンとダマスカスにアダマンタイトと色々な鉱石があるがどうするかな?
 一度どこかの本職鍛冶師の技術を見せてもらってから使いたい、とりあえずダンジョンで作った玉鋼を使って日本刀を作ってみよう! 

『チェルシーが玄関に来ているよ』

 玉鋼をアイテムボックから出そうと思った瞬間ヒスイがチェルシーの訪問を教えてくれ、次の瞬間インターホンがなった。

 玄関まで戻るのが面倒だったため、ガレージのシャッターを開けた。

「こんばんは、どうしたんです?」
「そっちに居たんだね、オスカーから子どもたちの件聞いたよ、洋服持ってきたんだけど上がっていいかな?」
「あぁどうぞ、玄関あけますね」

 最初から玄関に回っていればよかった。玄関を開けチェルシーを中に入れ子どもたちの元に案内した。

「これは?」

 チェルシーが、1人1人の情報をメモしたものを手にしていた。

「その子らの記憶から探った情報ですね」
「あなた記憶も見ることができるの?」
「出来ますよ、若返らせたり、リリィを治療した同じ力ですけどね」

 神の手スキルは本当に多才だなと改めて思った。

「拷問とか意味なさそうね、それで子ども達はどうするつもり?」
「できたら、オスカーとチェルシーの方で対応してくれると嬉しいかな……」
「そうね、4人は今度出発する。キャラバンが行く方向だしそれもいいかもしれない、1人は逆方向だけど、車を使えば4時間程で戻ってこれる距離かな?」

 ん?5人は何とかなるとして、最後の1人は?

「えっと、1人は?」
「言いづらいんだけど、その子が住んでいた村は先の戦争でヴォーネスに焼かれているの、多分故郷に戻っても何も残ってないんじゃないかな……」

 不幸中の幸いというべきなのか、攫われたから戦火から逃れて助かったのだろう。

「どうするんです?」
「そうだね、オスカーにお願いして現地を確認してもらいましょ、引き取り手が居なければ商業ギルドで働いてもらおうかな」

 とりあえず子どもたちの今後については、チェルシーとオスカーに任せて大丈夫そうだ、チェルシーと共に、服を着せていった。ふと、ナットの服がなくなっているな……、

「チェルシーさん、これくらいの男の子用の服もう1着ありません?」
「どうして?」
「この姿って、生前の姿なんですが、この世界の本来の姿って……」

 チェルシーの前で、着物を着たナットの姿になった。

「この姿なんですよ。」
「そういえばオスカーが転生って言っていたけどそういう事ね、そっちの姿で着られる服が欲しいってことね」
「そうです」

 チェルシーは、自分の姿を上から下までチェックし、ぼそぼそ独り言を言っていた。

「チェルシーさん?直人の姿戻っていいです?」
「あぁうん、いいよ、幸い明日から収穫祭だし、色々な服が露店に並ぶからナット君に合う服を色々探しておくよ」
「お願いします」

 センスのない自分が探すよりはまともな物を探し出してくれると期待してよと考えていると、インターホンが鳴った。

「直人はいるぞー」

 外からオスカーの声が聞こえた。玄関の方にいきオスカーを迎え、家に上げたがそこにはレベルトの姿は無かった。教会にでも預けてきたのかな?

 オスカーもリビングに居る子ども達1人1人のメモを見るとチェルシーと同じような反応を見せた。

「直人このメモはなんだ?」
「子ども達の名前と両親の名前、住んでいた場所ですね」
「オスカー子どもたちの事なんだけど……」

 先ほどチェルシーが言っていた子ども達の対応についてオスカーに伝えていた。

「構わん2人は俺が引き受けよう」
「お願いします。」
「あぁ」

 子ども達の事が終わったと思ったら、オスカーから教会であった事を話してくれた。

「俺の方からの話だが、結果から言うとレベルトは消えた。」

 ぇ?個人的に結果が知れればいい派だけど、意味が解らなかった。

「オスカーどういうこと?」
「そうだな、順を追って話すと……」


◇◇◇◇◇◇

 オスカー視点

 自分とレベルトが教会に足を踏み入れた瞬間、転移するときに居たような白い空間に居た。

「オスカー久しぶりですね、転移するとき以来ですかね」

 この世界に招いてくれた恩神だ敬礼をしなければ失礼に当たるだろう。

「ネア様!お久しぶりです!」
「フフフ、あなたは変わりませんね、楽にしてください。」
「ッハ!」

 敬礼から手を後ろに組んだ。

「教会に来た理由は解っています。そこの者の罰の事でしょ?」

 ネア様が自分の横を見た。自分も横を見るとそこにはレベルトが居た。自分はネア様に向き直った。

「その通りです!」
「この者の処罰は私に任せてくれませんか?」

 ネア様が直々に罰を与えてくれるなら願ってもない。

「お願いします!」
「秋津直人さんに伝言をお願いしてもいいですか?」
「ッハ!なんなりと!」
「何年か後にこの者を彼の元に送ります。その際は改めて彼を弟子にしてあげてください。と」
「ッハ!必ず伝えます!」
「フフフ、今の生活を楽しめていますか?」
「楽しんでいます!この世界に導いてくださったことを感謝しています!」
「そう、それは良かった、その命が終わるその時まで楽しんでください」
「ッハ!ありがとうございます!」

 暫く雑談した後、元の教会の入口に戻ってきた。その時横にはレベルトの姿はなくなっていた。

◇◇◇◇◇◇

 秋津直人視点

「というわけだ」

 何年か後自分の元に来ると、罪を滅ぼした後なら十分だろう。

「伝言ありがとうございます」
「いや構わない、それよりも冒険者ギルドに行こう、S級に書き換えないとな、チェル留守番頼んでもいいか?」
「いいよ~2人が戻ってくるまで子ども達を見ているよ」
「ありがとうございます。お願いします。」
「直人行くぞ」
「了解」
『ヒスイ、子ども達の脈や呼吸の変化があったら教えて』
『OK』

 これで何かあった時はヒスイがすぐに教えてくれるだろう。
 オスカーの後について冒険者ギルドに移動した。
 ロビーに入ると以前と変わらず人がごった返している。

「人が多いですね~」
「ここに居る者達はみな収穫祭絡みだからな、依頼する者、依頼を受ける者がごった返すのは毎年の事だ。カードを貸してくれ」

 秋津直人名義の2枚のカードをオスカーに手渡した。

「預かるぞ、少しその辺で待ってってくれ」
「了解~」

 オスカーがカウンターの奥に行ったのを見届けた後、久々に依頼掲示板を見ていた。

 B級とA級の所に気になる依頼があった。
 
 “怪盗捕縛依頼” “怪盗討伐依頼”この内容の依頼が複数あった。

 これは、すべて同じ怪盗を指しているのだろうか? 

「すまない、またせたな、何か気になる依頼でもあったか?」
「オスカーさんこの怪盗捕縛、討伐の依頼ってなんですか?」
「ほれ、まずはカードを返しておく、S級おめでとう」

 オスカーから、普通のS級冒険者カードとオリハルコン製のS級冒険者カードを受け取りアイテムボックスに入れた。これで旅に出た1つ目の目標を達成した。1年もしないうちにSになれると思わなかった。幻のSSを目指してみるのもありかもしれない。

「ありがとうございます。」
「毎年収穫祭の時期になると王都内のあちらこちらで盗みの被害が発生するんだ、目撃者なし、いつ被害に遭ったのか不明なんだよ、まぁ悪徳商人が税金を払いたくないから悪あがきとも思うが、毎年地下オークションだけは必ず狙われているな」

 地下オークションというと、違法性の高い物のやり取りが行われているのかな?

「地下オークションに張り付いていてもですか?」
「あぁ、俺も何度か行ったが、気づけば盗まれている。透明人間でもなければ不可能だろうよ……」

 透明人間じゃなければね……、この時鬼人族のミリの記憶に出てきた妖狐族の女性を連想した。
 まさかね……

「その地下オークションってどこでやるんですか?」
「ん?行くのか?地下オークションとか見てて面白いものじゃないぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ、珍しい薬草や武器なんか物は良いんだが、希少種の奴隷とかはな……」

 それは面白いものじゃないな……、

「それって犯罪じゃないんですか?」
「攫って奴隷にしているなら違法だがな、その前に複数人の精霊使いが全員チェックするから違法性の有無は大丈夫だ。」

 精霊にチェックさせているって事か、真実を見る眼には経緯もわかるのかな?

「そうですか」
「場所は地下闘技場だ、王城と学園の間に闘技場があるんだが、そこの地下にも別に闘技場があってそこが会場だ」
「気が向いたら行ってみます」
「結局武術会はでるのか?」
「一応出ますよ。村を出た理由の一つですから」
「そうか、明日から闘技場の入口でエントリー出来るようになる」

 明日朝一でエントリーしにいこう、後回しにして忘れてましたなんて事の無いようにしておきたい。

「教えてくれてありがとうございます」
「あぁ、チェルも待っているし戻るか」
「了解~」

 冒険者ギルドを後にして、オスカーと共に、チェルシーの待つ自宅に戻った。

「おかえり~Sになった?」
「なりました」
「お~おめでと~」

 チェルシーも自分の事のように喜んでくれていて少しうれしかった。

「これで直人も1人前だな」
「S級が1人前って、厳しくないです?」
「そうだね、それならBの私は半人前になっちゃうね」

 チェルシーはB級だったのか、チェルシーの機嫌が斜めになっている気が……、オスカー失言だったのではと思った。

「違う!直人は彼女の前で胸を張れるように頑張っているんだろ?まずは1つ目の目標S級を達成したから男として半人前から1人前にって事だよ!」

 なんか適当に言った?

「あ~そういうことにしておきましょう……」
「そうだね……」
「んだよ……」

 しばらく気まずい沈黙が流れた。

「子ども達は自分の方で体調を見ておくので、2人はそろそろ帰ったら?」
「ん~そうするか」
「そうだね、私も帰るよ」

 2人を玄関で見送っていると、チェルシーから提案があった。

「明日、商業ギルドから子守要員を派遣するから使ってくれる?」

 子守要員か、邪魔になりそうだなと一瞬思ったが、出かける事もあるだろうから、その時見守ってくれる人が居てくれれば助かるかな、庭に設置してあるログハウスのほうに子ども達を移動するか。

「ありがとうございます。それなら子供たちをログハウスの方に移しておきますので、そちらで見てもらえますかね」
「は~い」
「2人は俺が明日届けるわ」
「了解」
「んじゃな、」
「直人おやすみ~」
「おやすみなさい~」

 2人が夜の闇に消えていった。
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