【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明

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王都ヴェンダル

第86話 妖狐族の女性

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 翌朝、子ども達の体調確認を行ってからログハウスに1人1人移していった。
 庭に垣根の代わりに何を植えようか考えていると、商業ギルドから子守要員として派遣された一人の女性がやってきた。

「すいません、こちら秋津様のお宅でしょうか?」
「はい、そうですよ」
「私商業ギルドから派遣されましたリノアと申します。しばらくの間よろしくお願いします」

 20代半ばから後半くらいの女性かな?優しい感じの人だった。

「あぁ、自分が秋津直人です。よろしくお願いします。子ども達でしたらそちらのログハウスにいます」
「はい、上がってもよろしいですか?」
「どうぞ、あと中の物は好きに使ってもらって大丈夫です」
「かしこまりました」

 女性をログハウスに案内し庭に戻ってきた瞬間、ログハウスの入口から女性が顔をのぞかせながらこちらに質問した。

「すいません、それぞれの使い方を教えてもらう事は出来ますか?」

 あぁ、この世界の人にはちゃんと説明しないとか、ログハウス内に戻り、様々な家具家電の使い方を伝えた。

「ありがとうございます。この冷える箱はすごいですね~」

 まぁまだこの世界に冷蔵庫冷凍庫に代わるものは無いだろうね……
 子守要員で派遣されてきた女性は色々な物に興味を持っていた。

 しばらくすると、オスカーがやって来て2人の子どもを引き取りにきた。

「おっす、直人2人を連れていくぞ」
「お願いします~」
「こいつらの意識は戻るのか?」

 あ~考えてなかったな、条件設定できないかな、何でもできるという神の手を信じて液体を飲ませたら目を覚ますようにしてみよう。ちゃんと発動するか知らないけど……、オスカーが連れていく子どもに触れて、口に水分を含んだ瞬間に意識を取り戻すように念じた。

「それぞれの家の前に着いたら水でも何でもいいので口に含ませてもらっていいです?」
「そんなんでいいのか?」
「たぶん……?」
「疑問形かよ……まぁいい、解った。んじゃ2人を連れていくよ」

 オスカーと共に、2人の子どもをオスカーの車に乗せた。

「んじゃまた夕方にでも顔を出すわ」
「了解です~」

 さて、自分はどうするか、闘技場で武術会のエントリーだけしてナット用の服とか見て回ろうかな。

 リノアは、ログハウスの中で子ども達の清拭をしていた。目が覚めない事に疑問はないのかな?

「リノアさん、自分少し買い物とかしてきます。子ども達の事お願いしても良いですか?」
「はい、ゆっくりしてきてください」
「ありがとうございます。リノアさんは子ども達が目を覚まさない事に対して何か疑問を持ったりしないんですか?」

 リノアは少し考える素振りを見せつつ答えてくれた。

「マスターから訳アリの子ども達と聞いています。なのであまり気にはしていませんね」
「そうなんだ」
「はい」

 チェルシーが信用されているって事なのかな?
 まぁいいか、あまり考えないようにしよう。

「んじゃ出かけてきますね」
「はい、いってらっしゃい」

 自宅を後にし、大通りにでると、収穫祭初日のせいか多くの露店と多くの人でごった返していた。

 この道が闘技場まで続くのか……?ん~屋根沿いを走っていくか?でもなぁ……2階部分ならまだしも3階部分はなぁ足場を気にしなくていいし隠密+縮地+行動速度上昇で道の上を駆けるか?

『ヒスイ、自分の隠密スキルのレベルってどうなの?』
『ん、まだまだだね~』

 隠密使っても騒がれる可能性があるって事ね、仕方ない我慢して露店巡りしつつ闘技場に行くか、

 人混みをかき分けつつ露店巡りをしていると、大通り以外はそんなの混んでないと教わり大通りから外れると、大通りの半分程の混み具合だった。

 露店巡りじゃなく目的地がある場合は裏通りを通ったほうがいいのか、とりあえず行動速度上昇を使いつつ闘技場に急いだ。

 闘技場遠い!王城の真横にあった。
 そして学園も闘技場を挟んで反対側に存在していた。
 王城側、学園側両方からの入口が見えるあたり、騎士団や学生さんが使ったりしているのかな?

 入口近くで、参加者の受付と思しき場所に移動すると、騎士団部門、青年の部門と幼年の部門に分かれていることが判明した。
 騎士団部門はプロが参加する部門らしく、所属する騎士団や冒険者ランクを記入する場所があった。条件もB級以上が求められると、青年の部門は16歳以上、幼年の部門は16歳未満と条件が書かれていた。

 ん~全部参加すればよくない?
 騎士団部門にはS級冒険者秋津直人として、青年の部門は変装して、幼年の部門はナットで参加すれば、色々な流派の武道が見られるし、楽しそう!自分でも大会荒らしなのは自覚している。色々な人と対戦はしてみたいという好奇心のほうが勝った。

 とりあえず、すべての部門に姿や声を変えエントリーした。エントリーする場所がそれぞれ違ったため、受付の人達が変な事を思われる事もなかった。

 幼年の部は収穫祭2日目と3日目、青年の部が収穫祭4日目と5日目、騎士団部門が収穫祭6日目と7日目となっていた。収穫祭初日を除いて毎日開催!やばいな、凄く楽しめそう!

 目的果たしたし、地下オークションとやらに行ってみようかな、そう思ってエントリー受付していた人に聞くと、入ってすぐの所に降りる階段があるのでそこから降りればいいとの事、言われた通りに進んで行くと、弧を描いた廊下に出た。内側への扉と外側への扉があり、中からは歓声が聞こえてきた。

 中に入ると、貴族と思しき人や、商人と思しき人達がいっぱいいた。そして中央の円形リング上の台の上に何かが置かれていた。

「それでは商品ナンバー8番、龍の血です!とあるA級パーティがキャッセル帝国の竜の巣より持ち帰った本物です!こちら白銀貨1枚からスタートです!」
『あれって本物なの?』
『うん、間違ってないよ』

 ヒスイが本物というなら本物なんだろう。
 出品カタログとかないのかな……、欲しいんだけどなぁ……、と思っていると。

『ねぇ、直人10時の方向の女性見覚えない?』
『10時?』
『うん』

 ヒスイに言われた通り、手前から奥へと目をやると、見覚えのある女性がいた。鬼人族のミリちゃんを助けた妖狐族の女性がいた。

『ミリちゃんを助けた人?』
『うん、直人より強いよ、ネア様だけじゃなく、地神ソラリス様と天神エルメダ様の加護を持っている。しかも適正武器もすべて持っている』
『ぇ?転生とか転移者じゃないの?』
『ちがうよ』

 転生、転移者じゃなくてもそんな加護貰えるの!?
 この世界の勇者とかそういうやつなのか?

『何者なの?』
『彼女の名前はリース、君の遠い親戚だね』

 ぇ?

『どういうこと?』
『んとね、リースの先祖は君と同じ秋津則宗様だね、そして彼女の能力は則宗様の先祖返りって感じかな?加護についてはなんでだろうね~?秋津則宗様の子孫だからかな?』

 同じ先祖なのはわかったけど、人族じゃなくて妖狐族という部分が気になった。

『なに、先祖は妖狐と結婚したの?』
『そうだよ、元々九尾狐だった女性と結婚したんだよ』

 意味が解らなかった。

『九尾狐だった女性と?』
『そうだよ、その女性こそが妖狐族の始祖だし、その女性についていた狐達が狐人族の始まりだね』

 ご先祖様は何をやらかしてそう言うことになってんの?

『ご先祖様は、その人以外と結婚したの?』
『してないよ、生涯その女性とだけだね』

 この世界の親戚は全員が妖狐族という事らしい。

『そっか……』
『なんとなくだけど、あの人の目的って君と会う事なんじゃないかな~』

 ヒスイが言っている事は、自分もなんとなく感じた。
 自分と同じ先祖を持ち、この世界の3神の加護を持っている女性か……

『会いに行った方がいいかな?』
『そんなことしなくても、巡り合うべくして巡り合うし、どこかで接点が生まれると思うよ』
『そっか、1つ質問だけど、彼女は隠密と幻影魔法のスキルレベルってどうなの?』
『極めているよ、もっと言うなら縮地も持っているし極めている』
『んじゃラゴスだったかラルゴだったかを殺したり、ミリちゃんを助けた実力って……』
『直接見てわかったけど、納得できる強さだよね、幻影魔法や隠密も使っていただろうけど、君と同じように縮地ですぱっ!本物だね!』

 そっか、どんな事がきっかけで接点が生まれるのかな?なんとなくだけどこの収穫祭期間中な気がした。

『目的を果たしたし帰ろうか』
『OK』

 背を向け会場から外にでる刹那の瞬間、その女性からの視線を感じた気がした。
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