捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです

木嶋隆太

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第27話

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 宿でその日、ゆっくり休んだ私たちは、それから二人でワーちゃんの背中へと乗った。
 ワーちゃんは体こそ大きいが、それでもさすがに私とアシュート様の二人を乗せると少し狭かった。

 ワーちゃん自体は、二人を乗せても問題なさそうに走ってくれるんだけど。

「……すまない」

 アシュート様がそういって、私の背中に軽く触れた。
 たまに激しく揺れ、そのたびにアシュート様が私の背中に軽く触れる。
 アシュート様は真面目な方であり、私に触れてしまうのを申し訳なさそうにしていた。

「い、いえ……気にしないでください」

 私は熱くなる頬、きっと赤くなっている頬を聖女の魔法で隠しつつ毅然とした声を返した。
 ……あ、アシュート様が私とこんな密着するようにいることがすでに私にとってはかなり緊張するものだった。

 昔助けてもらったときに抱いていた感情が、すっと沸き上がる。
 あ、あれは……幼い頃の気持ちなんだから。べ、別に好きとかそういうわけじゃない。

 意識しないようにしても、時々触れると体が熱くなってしまう。
 ……ああ、もう!

 アシュート様と久しぶりに会えたことが嬉しい……けどそれを必死に頭から追い払う。
 ドキドキしながら、しばらくワーちゃんとともに走っていると、魔物が現れた。

 ゴブリンの群れだ。ワーちゃんがちらとこちらを見てくる。別にワーちゃんの足なら軽々とやり過ごせる。
 けど、そのときアシュート様が耳元でささやくように言ってきた。

「……すまない。一度自分の体の調子を確かめておきたい。軽く戦闘をさせてもらってもいいか?」
「え? はい、もちろんです。ワーちゃん、止まって」
「ガウ!」

 ワーちゃんが一度鳴き、減速して止まった。
 ゴブリンたちはこちらを見て、わーわーわめくように声をあげながら迫ってくる。
 アシュート様がワーちゃんの背中から降りて、腰に差していた剣を抜いた。

 ゴブリンとの戦闘が始まる。……アシュート様は騎士学校にも通っていたらしく、騎士の中でも一、二位を争うほどの剣の腕前。
 
 やっぱり、凄い。ゴブリンが相手とはいえ、牢獄に入れられていたブランクを感じさせないくらいの動きだった。

 ……かなり痩せてはいるが、それでも最低限の食事と運動はさせてもらっていたようで、まったく動けないということはないみたい。
 まもなく、ゴブリンたちは倒され、アシュート様が戻ってきた。

「すごかったですね」
「いや……全然だ。前とは比べ物にならないくらい、体が動かないな」
「そ、そうだったのですね」
「まずは俺自身が戦えるように準備しておかなければならない、な」

 アシュート様は剣の腹を一度見てから、鞘へと戻した。
 ……これから先、戦いは増えていくもんね。
 ケルズ王子を失脚させるために、戦わなければならない。

 ……私はワーちゃんのもふもふを堪能しながらも、改めて決意を固めた。


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