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第31話
しおりを挟む……ケルズ王子は何も変わっていなかった。
それどころか、前よりも増長したような気さえもする。正直、これ以上話していたくはなかったので、私は口を閉ざした。
「ケルズ王子……お久しぶりです」
アシュート様が前に出て、ケルズ王子に一礼をする。ケルズ王子は露骨に眉間を寄せた。
「なぜ、貴様がここにいるのかは今は置いておくとしようか。また牢獄にぶち込まれたくなかったら、ここでオレを王と認めるんだな」
「ケルズ王子。あなたのこれまでにやってきた悪事に関して、すべて俺のほうで調べさせていただきました」
「悪事?」
「はい。異常なほどに税を引き上げ、また自分に賄賂を贈るものを特別待遇としていた。国のお金を自分のやりたい事に使い、足りなくなればまた市民から徴収――それを繰り返しているあなたに、この国を任せられるはずがありません」
「……そんな事実、どこにある?」
「こちらに、その一部が」
アシュート様はそういって紙をケルズ王子の方へと渡した。
ケルズ王子は目を見開き、それからびりびりと紙を破く。
「で、でたらめだ! オレを貶めたいだけだろう!」
「俺だって、あなたがここまでの人だとは思っていませんでしたよ。とにかく、あなたがこのままこの国の王になることを、多くの貴族と市民は望んでいません」
「……い、いいから! 貴様がオレを認めれば、誰が認めていなくとも、オレが王になる! さあ、言え!」
ケルズ王子は、焦っている。
アシュート様には、王から権限が与えられている。
さすがのケルズ王子も、そこは無視できない。……だって、それを無視しちゃったら自分が王になっても無視しても良いと思われてしまうからだ。
「……今のあなたでは、王の器にはふさわしくありません。ですから、あなたは一度平民となり、そこで金の価値を、平民たちの声を聞いてください。それまでは、オレが代行で王となります」
「な、何を馬鹿なことを!」
ケルズ王子が驚いたように目を見開いた。そんな彼へと、アシュート様は一枚の紙を突き付けた。
アシュート様はその髪をケルズ王子に見せてから、すぐにしまった。
「……ち、父上の書状――そ、それは一体!?」
「あなたの父上が存命の際に、オレに渡してくれたものです。あなたに見せた遺言には続きがあり、これがその続きになります」
アシュート様が持っている書状に書かれているのは、ケルズ王子が王としてふさわしくない場合、ふさわしい王となれるまではアシュート様が代わりを引き継ぐ、というものだった。
「お、オレは……王子なんだぞ!? その立場を失うというのか?!」
「もちろん、失わせるつもりはありません。俺が先ほど言ったように、ふさわしい王になってくだされば、俺はあなたに王座を譲ります。……だから、それまでの間は平民として、平民の生活を学び、平民のことを考えるようにしてください。それが、あなたに与える教育です」
「い、いやだ! へ、平民のような生活なんて送りたくはない!! あんな生活できるわけがないだろう!」
絶望したような顔で、ケルズ王子は首を横に振っていた。
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