捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです

木嶋隆太

文字の大きさ
31 / 32

第31話

しおりを挟む


 ……ケルズ王子は何も変わっていなかった。
 それどころか、前よりも増長したような気さえもする。正直、これ以上話していたくはなかったので、私は口を閉ざした。

「ケルズ王子……お久しぶりです」

 アシュート様が前に出て、ケルズ王子に一礼をする。ケルズ王子は露骨に眉間を寄せた。

「なぜ、貴様がここにいるのかは今は置いておくとしようか。また牢獄にぶち込まれたくなかったら、ここでオレを王と認めるんだな」
「ケルズ王子。あなたのこれまでにやってきた悪事に関して、すべて俺のほうで調べさせていただきました」
「悪事?」
「はい。異常なほどに税を引き上げ、また自分に賄賂を贈るものを特別待遇としていた。国のお金を自分のやりたい事に使い、足りなくなればまた市民から徴収――それを繰り返しているあなたに、この国を任せられるはずがありません」
「……そんな事実、どこにある?」
「こちらに、その一部が」

 アシュート様はそういって紙をケルズ王子の方へと渡した。
 ケルズ王子は目を見開き、それからびりびりと紙を破く。

「で、でたらめだ! オレを貶めたいだけだろう!」
「俺だって、あなたがここまでの人だとは思っていませんでしたよ。とにかく、あなたがこのままこの国の王になることを、多くの貴族と市民は望んでいません」
「……い、いいから! 貴様がオレを認めれば、誰が認めていなくとも、オレが王になる! さあ、言え!」

 ケルズ王子は、焦っている。
 アシュート様には、王から権限が与えられている。
 さすがのケルズ王子も、そこは無視できない。……だって、それを無視しちゃったら自分が王になっても無視しても良いと思われてしまうからだ。

「……今のあなたでは、王の器にはふさわしくありません。ですから、あなたは一度平民となり、そこで金の価値を、平民たちの声を聞いてください。それまでは、オレが代行で王となります」
「な、何を馬鹿なことを!」

 ケルズ王子が驚いたように目を見開いた。そんな彼へと、アシュート様は一枚の紙を突き付けた。
 アシュート様はその髪をケルズ王子に見せてから、すぐにしまった。

「……ち、父上の書状――そ、それは一体!?」
「あなたの父上が存命の際に、オレに渡してくれたものです。あなたに見せた遺言には続きがあり、これがその続きになります」

 アシュート様が持っている書状に書かれているのは、ケルズ王子が王としてふさわしくない場合、ふさわしい王となれるまではアシュート様が代わりを引き継ぐ、というものだった。

「お、オレは……王子なんだぞ!? その立場を失うというのか?!」
「もちろん、失わせるつもりはありません。俺が先ほど言ったように、ふさわしい王になってくだされば、俺はあなたに王座を譲ります。……だから、それまでの間は平民として、平民の生活を学び、平民のことを考えるようにしてください。それが、あなたに与える教育です」
「い、いやだ! へ、平民のような生活なんて送りたくはない!! あんな生活できるわけがないだろう!」

 絶望したような顔で、ケルズ王子は首を横に振っていた。

しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜

彩華(あやはな)
恋愛
 一つの密約を交わし聖女になったわたし。  わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。  王太子はわたしの大事な人をー。  わたしは、大事な人の側にいきます。  そして、この国不幸になる事を祈ります。  *わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。  *ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。 ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

聖女の魔力を失い国が崩壊。婚約破棄したら、彼と幼馴染が事故死した。

佐藤 美奈
恋愛
聖女のクロエ公爵令嬢はガブリエル王太子殿下と婚約していた。しかしガブリエルはマリアという幼馴染に夢中になり、隠れて密会していた。 二人が人目を避けて会っている事をクロエに知られてしまい、ガブリエルは謝罪して「マリアとは距離を置く」と約束してくれる。 クロエはその言葉を信じていましたが、実は二人はこっそり関係を続けていました。 その事をガブリエルに厳しく抗議するとあり得ない反論をされる。 「クロエとは婚約破棄して聖女の地位を剥奪する!そして僕は愛するマリアと結婚して彼女を聖女にする!」 「ガブリエル考え直してください。私が聖女を辞めればこの国は大変なことになります!」 「僕を騙すつもりか?」 「どういう事でしょう?」 「クロエには聖女の魔力なんて最初から無い。マリアが言っていた。それにマリアのことを随分といじめて嫌がらせをしているようだな」 「心から誓ってそんなことはしておりません!」 「黙れ!偽聖女が!」 クロエは婚約破棄されて聖女の地位を剥奪されました。ところが二人に天罰が下る。デート中にガブリエルとマリアは事故死したと知らせを受けます。 信頼していた婚約者に裏切られ、涙を流し悲痛な思いで身体を震わせるクロエは、急に頭痛がして倒れてしまう。 ――目覚めたら一年前に戻っていた――

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います

成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

処理中です...