捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです

木嶋隆太

文字の大きさ
32 / 32

第32話

しおりを挟む
「き、騎士たち! こいつらを捕らえろ!」

 ケルズ王子が叫んだが、騎士たちは動かない。

「な、何をしている! こいつらを捕らえたものには、特別手当を出してやる!」

 しかし、それでも騎士たちは動かない。ケルズ王子は貴族たちを見て、声を荒らげた。

「お、おまえたちでもいい! 誰でもいい! この者たちを殺すんだ!」

 ケルズ王子がそう叫んだ次の瞬間、貴族は首を横に振った。

「わ、私は……アシュート様の意見に賛成です」
「お、俺もだ」
「俺も……」

 皆がそういってケルズ王子から離れた。……そりゃあ、そうよね。
 この状況で力があるのはこっち。
 市民を味方につけ、また私がいるかぎり……無謀な戦いを挑んでくるはずがない。

 怯えた様子のケルズ王子が逃げ出そうとしたが、

「騎士たち。ケルズ王子を逃がさないでくれ。それと、聖女候補の三人もだ」

 すぐに騎士たちが逃げようとした彼らを囲んだ。
 そして、アシュート様がケルズ王子へと近づく。

「ケルズ王子。それに聖女候補だった三人に王の代理として、命ずる。おまえたちは一度平民として、労働についてを学んでくるんだ」
「……い、嫌だ! アシュート、貴様王子のオレにそんなこと言ってただで済むと思うのか!?」
「お、お願いします! アシュート様! 私たちそんなことできません!」
「したことないんです! 第一、平民なんかと一緒になんて絶対無理です!」

 ケルズ王子が泣きながら叫ぶが、アシュート様がその発言を取り消すことはなかった。


 〇


 ケルズ王子、ジャネット、アイン、ツヴァイの四人を含め、私は全員に与えた呪いを解除した。
 彼ら四人は、騎士の護衛(監視)のもとで、平民に混ざって労働をしているそうだ。

 毎日朝から晩まで仕事をさせ、以下にお金を稼ぐことが大変なのかどうか。そこから教育しているそうだ。

 ……まあ、どうなるかはわからないけれど、これまでまったく仕事なんてしてこなかった彼女たちはそれこそ毎日散々にこき使われ、使えないとののしられているそうだが、とりあえず仕事はできているようだ。

「……キミはまだ残ってくれるのか?」

 王の部屋に私が訪ねたとき、アシュート様がそう問いかけてきた。

「えーと、その……嫌、でしょうか?」
「別に嫌ということではなくてだな。……自由に生きたいと話していたから、どうするのかと思っていたんだ」
「私も少し自由に色々して、国を――市民を混乱させてしまいましたからね。その謝罪の意味も込めて、しばらくはこの国のために働こうと思っています」
「確かに、きっかけは私怨かもしれないが――結果的に国の膿を絞り出してくれた。俺はキミの行動が正しいものだと思っているよ」

 そう、にこりと微笑んだアシュート様に、私は照れくさくなって頬をかいた。
 ……アシュート様は、中々気づいてくれていないようだけど、私がここに残る理由はただ一つ。

 ……もう少し、アシュート様の隣でこうして一緒にいたいからだった。

「とにかく、もうしばらくはここにいますね」
「ああ、こちらこそよろしく」

 改めて私は彼と一度握手をかわした。


____________________________________________________

あとがき



愛想がないと王子に罵られた大聖女は、婚約破棄、国外追放される。 ~何もしていないと思われていた大聖女の私がいなくなったことで、国は崩壊寸前~

新作書きました! 気になる方は作者名をクリックして読んでくれたら嬉しいです!
しおりを挟む
感想 148

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(148件)

narumin #
2022.08.20 narumin #

それではこれより、緊急会議を開く…の後のゲコと鳴いたの文章で吹き出してしまった。爆笑で爆死(笑)しょうもないお笑い以上の破壊力にめっちゃお気に入りになりました(笑)おばちゃんの顔にまたひとつ笑いジワが…グスン

解除
深夜 朔
2021.06.05 深夜 朔

とりあえず王子の名前なんなのかハッキリしてくれ〜!!

解除
hiyo
2020.11.18 hiyo

サラリと読み易くて面白かったです。
楽しい物語を有難うございました。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜

彩華(あやはな)
恋愛
 一つの密約を交わし聖女になったわたし。  わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。  王太子はわたしの大事な人をー。  わたしは、大事な人の側にいきます。  そして、この国不幸になる事を祈ります。  *わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。  *ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。 ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

聖女の魔力を失い国が崩壊。婚約破棄したら、彼と幼馴染が事故死した。

佐藤 美奈
恋愛
聖女のクロエ公爵令嬢はガブリエル王太子殿下と婚約していた。しかしガブリエルはマリアという幼馴染に夢中になり、隠れて密会していた。 二人が人目を避けて会っている事をクロエに知られてしまい、ガブリエルは謝罪して「マリアとは距離を置く」と約束してくれる。 クロエはその言葉を信じていましたが、実は二人はこっそり関係を続けていました。 その事をガブリエルに厳しく抗議するとあり得ない反論をされる。 「クロエとは婚約破棄して聖女の地位を剥奪する!そして僕は愛するマリアと結婚して彼女を聖女にする!」 「ガブリエル考え直してください。私が聖女を辞めればこの国は大変なことになります!」 「僕を騙すつもりか?」 「どういう事でしょう?」 「クロエには聖女の魔力なんて最初から無い。マリアが言っていた。それにマリアのことを随分といじめて嫌がらせをしているようだな」 「心から誓ってそんなことはしておりません!」 「黙れ!偽聖女が!」 クロエは婚約破棄されて聖女の地位を剥奪されました。ところが二人に天罰が下る。デート中にガブリエルとマリアは事故死したと知らせを受けます。 信頼していた婚約者に裏切られ、涙を流し悲痛な思いで身体を震わせるクロエは、急に頭痛がして倒れてしまう。 ――目覚めたら一年前に戻っていた――

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います

成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。

木山楽斗
恋愛
妹のリオーラは、幼い頃は病弱であった。両親はそんな妹を心配して、いつも甘やかしていた。 それはリオーラが健康体になってからも、続いていた。お医者様の言葉も聞かず、リオーラは病弱であると思い込んでいるのだ。 リオーラは、姉である私のことを侮っていた。 彼女は両親にわがままを言い、犠牲になるのはいつも私だった。妹はいつしか、私を苦しめることに重きを置くようになっていたのだ。 ある時私は、妹のわがままによって舞踏会に無理な日程で参加することになった。 そこで私は、クロード殿下と出会う。彼との出会いは、私の現状を変えていくことになるのだった。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。