地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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「いよいよ最下層目前だ。よし、ここからは私達も前線に出よう」

 10階層からなるダンジョン。掃討作戦はかなり順調、というより僕たちが張り切り過ぎたせいでめちゃくちゃ早く降りてきてしまったらしい。

 5階層まではさほど強いモンスターはでなかった。

 6階層以降から段々と強敵が増え始め、僕たちは変わらず最前線に立ちながら魔物を掃討していった。

「ちっ……目立ちやがって、新人が」

 舌打ちをするベガルトが睨み付けている。
 ここ数日で彼ら純白の剣だけが大した活躍を見せていない。

 僕らが大半の魔物を倒してしまうので、後続の彼らはほとんど戦わなくてすんでいる。


 しかし、僕らや煉獄の騎士団を始め、ほとんどの冒険者は問題なかったが、唯一純白の剣だけは足を引っ張るようになった。

 正直あんな実力でよくもガンマランクになれたものだと思ってしまう。

 僕もにわかのガンマランクであるが、ハーカルの剣の腕だけとって見ても、やはり相応の実力があるとは思えない。

「やっぱり純白の剣ってリンカがいなかったら躍進できなかったんだろうな」

「客観的に見ても、そうなんだろうね。私は自分のことだから堂々と誇れないけど」

「僕は誇って良いと思う。あの人達のお守りをしながら、チームをガンマランクまで引き上げることができたんだ。ちゃんとしたチームに入ればあっという間にベータ、アルファになれると思う」

「ふふ、ありがとうセージ君……あら?」


「どうしたのリン?」

「セージ君、少し背が伸びたんじゃない?」

 おっふ、良い匂いがする。グッと顔を近づけてくるリンカから香る良い匂いに心臓が高鳴った。

 ぷるんとした唇が視界の間近に近づき、思わず顔を背けてしまう。

「ほら、やっぱり。少し前まで同じくらいだったのに、目線が上がってるわ」

「言われてみれば、リンカの頭の上が見えるようになったかも」

「ふふふ、たった1ヶ月ちょっとの間に急成長しちゃうなんて。これからドンドン伸びて高身長イケメンになるのかしら?」

「リンカは、背が高い方が好き?」
「うーん、どうかしら。あんまり気にしたことないけど、セージ君が高身長になったらきっとモテモテよ。今も凄く素敵なんだから」
「ありがとう。じゃあもっと格好よくなるよ」

「ふふ、楽しみにしてるね♡」



「おーい君たち。イチャイチャするのはその辺にして、そろそろ出発するよー」

「あ、は、はーい」

「イチャイチャだって」
「あはは。気を付けなきゃね。ねえセージ君」

「どうしたの?」
「今夜の見張り番、私達はルーティンに入ってないみたい」
「そっか。じゃあ朝までぐっすり眠れるね」

「うん、だから、ね。一緒に寝て、いい?」
「う、うん……。頑張る」
「ふふ、なにを?」

「そ、それはその……だって、ね」
「私は、いいよ♡」

「か、からかわないでよ」

「からかってるつもり無いんだけど」
「う、うん。じゃあ……今回のダンジョン攻略が終わったら、ちゃんとするよ。約束する」

「……それって、私の事、真剣に考えてくれるってこと?」

「う、うん。いい加減誤魔化すのも、男としてみっともないからね。ちゃんとする。この攻略が終わったら、リンカと真剣に向き合うよ。あ、いや、ああいうことをするために真剣にってことじゃなくてね」

 顔を真っ赤にした彼女の手がギュッと握られた。

「あはは、分かってるって。セージ君ってば可愛いんだから」
「やっぱりからかってるよね?」

「どうかな~」

 そういうやり取りも、心地良かった。
 リンカとの時間を大切にしたい。

 そんな風に強く思えるひと幕だった。
 
 ◇◇◇

 それから更に時間は経過し――――

「純白の剣。悪いが君たちは足手まといだ。後方支援に回ってもらおう」

 ハーカルが戦力外通告を受けていた。正直僕も同意見だ。

 純白の剣は明らかに全体の平均レベルを下げている。

「待ってくれアテン。なぜ僕らが後方支援なんて」

「言葉通りだ。君たちはどう考えてもガンマの器じゃない。ここ数日の戦いで分かった。ゼータからやり直せ。才能はあるんだ。基礎から鍛え直すんだな」

「ふざけるなよっ! 俺達は足手まといなんかじゃないっ」

「ならば後ろから勝手に付いてくるがいい。勝手に前に出ても私達は助けない。他の者も同様だ。純白の剣は戦力外通告する。後方支援以外の事をしても決して助けないように」

「バカにしやがってっ!」

「悔しかったら1番前に出てみるか? 私達は止めはしない。その代わり死ぬような事があっても自己責任だ。レッドゴブリンやキングオーク相手に戦ってみるがいい。彼のように」

 僕の方を指さし、その意味が伝わるとハーカルは憎々しげに睨み付けてきた。


「くっ……。分かった。後方支援に回る……ふん。今に見ていろ……」

 なんだか不穏な空気を感じるな。

 8階層に差し掛かった頃になると、魔の森のデビルグリズリーやブラッククロコダイルと同レベルかそれ以上の敵がウジャウジャ出始めていた。

 あいつらのレベルだと既に対処できず、もっと低いパイロサーペント相手でも手こずっていた。


 他の冒険者達が助けに入ったおかげで大怪我はしていないが、ポーションのストックをドンドン使うので全員から煙たがられている。

 
 おかげで僕らは魔素ストックが溜まりまくるし、リンカもレベルがドンドン上がっている。


 基礎能力が上がるので戦略の幅も広がっていく。
 新しい技は覚えなくてもちゃんと強くなっている。

 逆にリンカは自分で考えて次々に新しい戦い方を開発していた。


――――――

【セージ】LV45/100
魔素ストック 6,457,892

【リンカニア】LV55

――――――

 とりあえず目標としては、1000万か2000万のストックが溜まったらレベルを上げてみようと思う。

 ちょこちょこ限界値を上げてみたが、どうやらレベルは100で打ち止めらしい。

 欲を言えば一気に10レベルほどアップさせることができたらいいが、恐らくそれには3000万ほどの経験値が必要になりそうだ。

 レベル45でどこまで通じるか分からないが、可能な限りレベルを上げずに戦い続けてみよう。

 

 逆にハーカル達は自分達が足手まといであることが認められないのか、後方支援を命じられたにもかかわらず、ちょこちょこ前に出るようになった。

 そのたびにアテンさん達から怒られて、他の冒険者達からも苦情が出ている。 

 そして……。

◇◇◇



 攻略は更に順調な進み具合をみせ、とうとう最下層まで到達した。

 目の前には巨大な扉が鎮座している。この向こうにボスが待機しているはずだ。

 最下層に近づくごとに敵の強さは上がっていき、オメガランクやアルファランクパーティーの皆さんも協力して戦ってくれた。

 かなりの数を減らすことができたおかげで他のパーティーのケガ人もほとんど出ていない。

 だが、相変わらずハーカル達純白の剣の面々は酷いのひと言だった。


 そのことでとうとうアテンさんの怒りが爆発する。

「いい加減にしろっ! どれだけ戦いの邪魔をすれば気が済むんだっ」

「だからっ、周りが無能なんだよ。俺達の能力を活かせない無能なこいつらが悪いんだ」


「君はそれを本気で言っているのか?」
「無能を無能と言って何が悪い」

「なるほど。純白の剣が優秀な斥候のワンマンチームだという噂は本当だったようだな」

「なんだとっ!」

「違うというのか? 未熟な剣士と、身勝手なデカブツ。何もしない魔導師。その奴隷の女の子も何のために連れてきた? 雑用を押し付ける戦力外を組み込むなんて正気の沙汰じゃないぞ」

 確かにそうだ。彼女は戦闘には参加していないし、雑用以外の事をしている様子はない。

 戦いの最中はずっと後ろに控えたままだ。

「分かった。俺達は一番後ろに回る。これ以上邪魔はしない」
「最後通告だ。次に我々の邪魔をしたら即時追放。その場で置いていく。覚悟しておけ」

「はいはい。分かっておりますとも」

 何か企んでるのだろうか。あまりにもあっさりと引き下がった……。





「なんか気持ち悪いわねハーカルの奴……。いつもならもっと食い下がるのに。相手を言い負かすまで絶対やめないわよ、アイツ」

「変な方向にプライドが高いんだなぁ」

 まるでマハルみたいだ。人を見下すために生まれてきたような性格してるんだな。

「いっつもこっちが折れてやってたんだけど、言い負かした時に凄く気持ち悪い笑顔をするのよね。悦にひたってるっていうか。バカなケンカの仲裁を何度したことか……ああ、思い出したらムカムカしてきた」

「まあまあ。とりあえず後ろは警戒しておくに越したことはない」

 リンカの悪口が溢れ出して止まらなくなりそうだったのでなだめておいた。

 

 だが僕たちの予感は悪い方向へと当たることになる。

 最下層へと到着したその時、一番後ろにいた純白の剣が不穏な動きを見せる。


「よし、後は全員の合流を待ってボスを討伐するだけだ。しばらくここで待機しよう」

 予定よりもかなり早く最終目的地に到着したらしく、他のグループが合流するまで各自待機命令が出た。








 その時だった。

「ここだっ。発動しろ奴隷ッ」

「むっ」
「え、なにっ⁉」

 奴隷の少女がマントを取り払い、その異様な姿を見せつけた。

「あれはっ! まさか魔族ッ⁉」

 
 全身に入った入れ墨の紋様。紫色の髪。

 だが生気の無いその瞳に浮かび上がった細かな幾何学模様が彼女の特異性を物語っていた。

 
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