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第1章 黎明編
第3話 盗賊
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異世界に送られたその日、結局俺は一睡もできなかった。
そりゃそうだ。
あんな体験をして何がいるか分からない森の中一人で眠れるほうがどうかしている。
新は昨日途中で止まっていた荷物の確認を再開することにした。
刀、一振り、テント、一張り、食糧、全滅、数えていて腹が立ってきた。
昨日のあのスライム、途中で捕まえて食べてしまえばよかった。
スライムって食べれるのか? ゼリーみたいな見た目しているし意外とおいしいのかもしれない。
まてまて、思考が完全に迷子になっている。
引き続き荷物を確かめていくが衣類がない、というか今俺が来ている服は秋葉原にいた時に着ていた服じゃない。
白のスニーカーにYシャツと紺のズボン。
なんでこんな服を着ているんだ? まあいいか、考えるだけ無駄だ。
「これって大丈夫なのかな?」
これ——すなわち刀のことである。
手紙に書いてあったように新の手には刀が握られている。
刀剣に関する知識など皆無な新からすれば刀はすべて刀だがきちんと分類するならばこの刀は打ち刀である。
確か銃刀法かなんとかで規制されていたはずだけど一般人が持っていてもいいんだっけ? あやふやな法律の知識では違法かどうかなんて分からない。
「まいっか!多分ここ異世界だし」
適当な男である。
この世界に銃刀法のような役割の法律があった時のことなど微塵も考えていない。
あとはこの入門書か。
俺はその本を手に取り表紙を眺める。
―サルでもわかる日本刀の使い方 超初級編―
ページをめくると日本刀とは何か、刀の特性、正しい使用法、etc, etc 、見ていて眠くなってきた。
意識がシャットダウンしてしまう前に本を閉じて刀を持つ。
さっきの本を少し読んで最低限持ち方は覚えた。
鯉口を切る。
カタンと軽い音が鳴って刀身がチラリと見える。そのまま逆らわずに鞘を払うと、
「おおー」
なんか感動した。
とにかく綺麗だ。
美術館とかに展示されるのも納得だな。
そう思って鞘を地面に置き両手で持ってみると刀の先端が重力に引っ張られ僅かに沈む。
意外と重い、のか? 極端なトップバランスみたいなものなのかもしれない。
でも振れないほどではない。
適当に二、三度振ってみる。
なんだがしっくりこない。
再び本を開き刀の振り方が載っているページを探す。
「えーと。斬りつけるとき刀身の角度を振る方向に合わせて引くように斬る」
なるほど分からん。
とにかくしばらく刀を振る。
どうにもうまくいっている気がしない。
どこか気持ち悪い、振り終えた瞬間軸がぶれる。
これでは刀に振られている状態だ。
「うーん、こうかな?」
さらに何度か振ってみるがやはりうまくいかない。
新はすっかり刀を振ることに夢中になっていた。
異世界に来たことなんてすっかり忘れている。
構える、振る、止める、所作を振り返る、そしてまた構える、その繰り返し。
時間が過ぎることも忘れて繰り返す。
すっかり日が暮れてしばらく経ったころ、
「痛っ!」
ふと右ひじに鈍い痛みが走った。
「そうか、もう一年か」
新の肘には痛々しい大きな縫い目が強く自己主張をしていた、まるであの時の出来事を忘れさせるかと言わんばかりに。
約一年前、甲子園で敗退した二日後に限界であった肘を治すために手術をしたのだ。
新の右ひじは今でも手術の痕が痛々しく残ると同時に完全に伸ばしきることはできずにいる。
「練習なんてもうしなくていいのに。何やっているんだろ、俺」
急に虚しさが襲ってきた。
そうだ、もう練習する必要なんてどこにもない。
どうにも熱中すると周りが見えなくなって時間を忘れてしまう。
いつからこんな風になってしまったのだろうか。
中学生になった時くらいにはもう既にこんな感じだった気がする。
一度集中して体を動かし始めると周りが見えなくなる。
「野球選手の職業病みたいなもんか」
なんとなく呟いてみたが誰かが聞いているわけでもない、独り言が多いのは彼の癖だ。
「いや、プロにもなれなかったのに職業病なんておかしいな」
彼は自嘲気味にそう笑うとすっかり暗くなった空を見上げた、一面の星空がきれいだ。
もう色々とどうでもよくなった、寝よう。
どうせ何も来ないだろ。
もし来たらその時はその時だ。
そう考えるとテントの中で横になった。
かなり疲れていたのかその日は泥のように眠った。
※※※※※※※※※※※※※※※
「っっっ、いってー」
背中の痛みで目が覚めた。
いくらテントの中でも下に何も敷いていなければ地面に直接横になるのと大差ない。
それに筋肉痛も来ている。
最近は惰性でトレーニングを続けていただけだったからな。
本気で体を動かすと流石に翌日はきつい。
とにかく腹が減った。
昨日は一日無駄にしてしまったのだ、笑い事ではないほど愚かな行動だったが我ながら笑うしかない。
一昨日歩いたときに見つけた川で顔を洗うことはできるが飲み水がない。
昔練習中に川の水で水分補給したら後で死ぬほど腹を下したことを思い出す、あれはきつかった。
飲まず食わずで二日、今日こそは人を見つけなければ本当にまずい。
「ここも離れるか」
ここにきて二日になるが誰とも出会えていない。
一日目はそれなりに歩きまわったのにそれでも見つからないなら少しずつ移動したほうが良いかもしれない。
そう思って新は刀と本を持って歩き始めた。
近くを流れている川に沿って歩いていく。
そんな世界か分からないけどやみくもに歩くよりはましなはずだ。
歩く、歩く、しばらく歩いて休憩してはまた歩く。
持っている刀が重く感じるようになってきた。
けれども歩く、ほかに手がないのだ、今俺にできることはこれしかない。
どうしよう。
このまま誰も何も見つけられずに空腹で倒れたら。
死ぬのか? 新は秋葉原で刺されたことを思い出す。
あの時は結局死ななかったな。
刺されても死なないなんて結構頑丈にできているんだ、きっと何とかなる。
体力にはそこそこ自信のある彼だったが流石にそろそろ歩くことすらしんどくなってくる。
もう限界だ、何か食べ物を口にしなくては本当に倒れてしまう。
そう思って川沿いを歩くのをやめて食料を探そうとすると、
「何か聞こえる。なんだ? …………人の声? 人の声だ! やった! 助かった!」
疲れなんてとっくにどこか遠くに吹き飛んでいる。
良かった、人だ! 間違いなく人の声だ! よかった、本当にやばかった。
これで助かる! ご飯を食べて、ベットで寝て、あと風呂にも入りたい。
俺は声のするほうに駆け出した。
だんだんと声のもとへ近づいていく。
何を話しているかなんてどうでもいい。誰が人がいる、その事実以外に今俺は一切の興味がないのだ。
とにかく早く助けてもらおう。
そう考えながら走り続け声のもとに辿り着いて俺は見た。
ナニコレ。
あからさまに素行のよくなさそうな武装した男たちが同じく武装した女の子たちを囲んでいる。
一目でわかる。
なんだ、盗賊か。
「……はあ。ふざけんなよ」
力なく座り込む。
もう限界だってのになんだこの仕打ちは、あり得ないだろ。
新がそんなことを考えている間、終始全員不思議そうな顔をして彼の方を見つめている。
当然の反応だ。急に変や奴が現れていきなり座り込んだのだ。
「なにやっているんだ?お前」
清潔感のかけらもないあからさまに盗賊っぽい男たちが新に声をかける。
「何そこに座っているんだよ、見てわかんねーのか?邪魔だからさっさとどこか行け」
「なんだ、こいつらの仲間じゃねーのか?何しに来たんだ?」
「…………助けてもらいに来ました」
力なくぽつりとつぶやいた、男たちはぽかんとした顔をして、
「助けてもらいに来た……ぶはっ、助けてもらいに来たってよ!」
「あはは! どうした? 助けてやろうか?」
「おいおい、助けてもらえるように見えるか?」
盗賊達は爆笑している。
その笑い声を聞いているとなんだか無性に腹が立ってきた。
人が必死に歩いて探してきて、ようやく念願の人に出会うことができたと思ったらよりによって盗賊?
ふざけんな。
大体、この手のアニメを何度か見たことあるけどみんなこんなに苦労していなかったぞ。
何が親切で森に送りましただ。
最初から街に送れよ。
最初からスライム倒せるくらいの力を寄越せよ。
最初から、最初から、最初から……盗賊に遭遇させるなよ!!!
「なんだ、泣いてんのか?」
なんだか悔しくて自然と涙が出てきた。
ふつふつと怒りが湧きだしてくる。
今の自分を取り巻く森羅万象ありとあらゆる状況に腹が立っていた。
くそっ
「なんでお前らなんだよ、なんでよりにもよって最初からお前らなんだよ。ふざけんな! もっかい出直してこい!」
自分でも訳が分からないことを口走りながら盗賊たちめがけて殴り掛かった。
渾身の右ストレートは意表を突かれた男の顔面にクリーンヒットする。
男は予想外の一撃によろめきそのまま後ろ向きにどさりと音を立てて倒れた。
「おい、何やってんだ!」
「こいつ、気が狂っているぞ!」
「構わねぇ、やっちまえ!」
お約束ならそこから新が無双するはずだったがそうはならなかった。
おそらく人を殺したこともあるであろう盗賊に三日前まで普通の大学生だった人間が敵うはずがない。
しかも今彼は極めて疲労しており精神的にも身体的にもかなり参ってしまっている。
少なくとも相手との実力差や武装の違い、それらを正常に認識できていないのだ。
彼は蹴られ、殴られ、組み伏せられて倒れた。
意識が朦朧とする中誰かの声が聞こえる。
「そろそろ限界ですかね?」
「ああ、早くしないとこの男が死んでしまう」
盗賊達の声ではない。
そういえば女の子が二人いたような……俺の意識はそこで途絶えた。
※※※※※※※※※※※※※※※
第1章 黎明編は9話までで完結します。
そこまででもぜひお付き合いいただけると嬉しいです。
そりゃそうだ。
あんな体験をして何がいるか分からない森の中一人で眠れるほうがどうかしている。
新は昨日途中で止まっていた荷物の確認を再開することにした。
刀、一振り、テント、一張り、食糧、全滅、数えていて腹が立ってきた。
昨日のあのスライム、途中で捕まえて食べてしまえばよかった。
スライムって食べれるのか? ゼリーみたいな見た目しているし意外とおいしいのかもしれない。
まてまて、思考が完全に迷子になっている。
引き続き荷物を確かめていくが衣類がない、というか今俺が来ている服は秋葉原にいた時に着ていた服じゃない。
白のスニーカーにYシャツと紺のズボン。
なんでこんな服を着ているんだ? まあいいか、考えるだけ無駄だ。
「これって大丈夫なのかな?」
これ——すなわち刀のことである。
手紙に書いてあったように新の手には刀が握られている。
刀剣に関する知識など皆無な新からすれば刀はすべて刀だがきちんと分類するならばこの刀は打ち刀である。
確か銃刀法かなんとかで規制されていたはずだけど一般人が持っていてもいいんだっけ? あやふやな法律の知識では違法かどうかなんて分からない。
「まいっか!多分ここ異世界だし」
適当な男である。
この世界に銃刀法のような役割の法律があった時のことなど微塵も考えていない。
あとはこの入門書か。
俺はその本を手に取り表紙を眺める。
―サルでもわかる日本刀の使い方 超初級編―
ページをめくると日本刀とは何か、刀の特性、正しい使用法、etc, etc 、見ていて眠くなってきた。
意識がシャットダウンしてしまう前に本を閉じて刀を持つ。
さっきの本を少し読んで最低限持ち方は覚えた。
鯉口を切る。
カタンと軽い音が鳴って刀身がチラリと見える。そのまま逆らわずに鞘を払うと、
「おおー」
なんか感動した。
とにかく綺麗だ。
美術館とかに展示されるのも納得だな。
そう思って鞘を地面に置き両手で持ってみると刀の先端が重力に引っ張られ僅かに沈む。
意外と重い、のか? 極端なトップバランスみたいなものなのかもしれない。
でも振れないほどではない。
適当に二、三度振ってみる。
なんだがしっくりこない。
再び本を開き刀の振り方が載っているページを探す。
「えーと。斬りつけるとき刀身の角度を振る方向に合わせて引くように斬る」
なるほど分からん。
とにかくしばらく刀を振る。
どうにもうまくいっている気がしない。
どこか気持ち悪い、振り終えた瞬間軸がぶれる。
これでは刀に振られている状態だ。
「うーん、こうかな?」
さらに何度か振ってみるがやはりうまくいかない。
新はすっかり刀を振ることに夢中になっていた。
異世界に来たことなんてすっかり忘れている。
構える、振る、止める、所作を振り返る、そしてまた構える、その繰り返し。
時間が過ぎることも忘れて繰り返す。
すっかり日が暮れてしばらく経ったころ、
「痛っ!」
ふと右ひじに鈍い痛みが走った。
「そうか、もう一年か」
新の肘には痛々しい大きな縫い目が強く自己主張をしていた、まるであの時の出来事を忘れさせるかと言わんばかりに。
約一年前、甲子園で敗退した二日後に限界であった肘を治すために手術をしたのだ。
新の右ひじは今でも手術の痕が痛々しく残ると同時に完全に伸ばしきることはできずにいる。
「練習なんてもうしなくていいのに。何やっているんだろ、俺」
急に虚しさが襲ってきた。
そうだ、もう練習する必要なんてどこにもない。
どうにも熱中すると周りが見えなくなって時間を忘れてしまう。
いつからこんな風になってしまったのだろうか。
中学生になった時くらいにはもう既にこんな感じだった気がする。
一度集中して体を動かし始めると周りが見えなくなる。
「野球選手の職業病みたいなもんか」
なんとなく呟いてみたが誰かが聞いているわけでもない、独り言が多いのは彼の癖だ。
「いや、プロにもなれなかったのに職業病なんておかしいな」
彼は自嘲気味にそう笑うとすっかり暗くなった空を見上げた、一面の星空がきれいだ。
もう色々とどうでもよくなった、寝よう。
どうせ何も来ないだろ。
もし来たらその時はその時だ。
そう考えるとテントの中で横になった。
かなり疲れていたのかその日は泥のように眠った。
※※※※※※※※※※※※※※※
「っっっ、いってー」
背中の痛みで目が覚めた。
いくらテントの中でも下に何も敷いていなければ地面に直接横になるのと大差ない。
それに筋肉痛も来ている。
最近は惰性でトレーニングを続けていただけだったからな。
本気で体を動かすと流石に翌日はきつい。
とにかく腹が減った。
昨日は一日無駄にしてしまったのだ、笑い事ではないほど愚かな行動だったが我ながら笑うしかない。
一昨日歩いたときに見つけた川で顔を洗うことはできるが飲み水がない。
昔練習中に川の水で水分補給したら後で死ぬほど腹を下したことを思い出す、あれはきつかった。
飲まず食わずで二日、今日こそは人を見つけなければ本当にまずい。
「ここも離れるか」
ここにきて二日になるが誰とも出会えていない。
一日目はそれなりに歩きまわったのにそれでも見つからないなら少しずつ移動したほうが良いかもしれない。
そう思って新は刀と本を持って歩き始めた。
近くを流れている川に沿って歩いていく。
そんな世界か分からないけどやみくもに歩くよりはましなはずだ。
歩く、歩く、しばらく歩いて休憩してはまた歩く。
持っている刀が重く感じるようになってきた。
けれども歩く、ほかに手がないのだ、今俺にできることはこれしかない。
どうしよう。
このまま誰も何も見つけられずに空腹で倒れたら。
死ぬのか? 新は秋葉原で刺されたことを思い出す。
あの時は結局死ななかったな。
刺されても死なないなんて結構頑丈にできているんだ、きっと何とかなる。
体力にはそこそこ自信のある彼だったが流石にそろそろ歩くことすらしんどくなってくる。
もう限界だ、何か食べ物を口にしなくては本当に倒れてしまう。
そう思って川沿いを歩くのをやめて食料を探そうとすると、
「何か聞こえる。なんだ? …………人の声? 人の声だ! やった! 助かった!」
疲れなんてとっくにどこか遠くに吹き飛んでいる。
良かった、人だ! 間違いなく人の声だ! よかった、本当にやばかった。
これで助かる! ご飯を食べて、ベットで寝て、あと風呂にも入りたい。
俺は声のするほうに駆け出した。
だんだんと声のもとへ近づいていく。
何を話しているかなんてどうでもいい。誰が人がいる、その事実以外に今俺は一切の興味がないのだ。
とにかく早く助けてもらおう。
そう考えながら走り続け声のもとに辿り着いて俺は見た。
ナニコレ。
あからさまに素行のよくなさそうな武装した男たちが同じく武装した女の子たちを囲んでいる。
一目でわかる。
なんだ、盗賊か。
「……はあ。ふざけんなよ」
力なく座り込む。
もう限界だってのになんだこの仕打ちは、あり得ないだろ。
新がそんなことを考えている間、終始全員不思議そうな顔をして彼の方を見つめている。
当然の反応だ。急に変や奴が現れていきなり座り込んだのだ。
「なにやっているんだ?お前」
清潔感のかけらもないあからさまに盗賊っぽい男たちが新に声をかける。
「何そこに座っているんだよ、見てわかんねーのか?邪魔だからさっさとどこか行け」
「なんだ、こいつらの仲間じゃねーのか?何しに来たんだ?」
「…………助けてもらいに来ました」
力なくぽつりとつぶやいた、男たちはぽかんとした顔をして、
「助けてもらいに来た……ぶはっ、助けてもらいに来たってよ!」
「あはは! どうした? 助けてやろうか?」
「おいおい、助けてもらえるように見えるか?」
盗賊達は爆笑している。
その笑い声を聞いているとなんだか無性に腹が立ってきた。
人が必死に歩いて探してきて、ようやく念願の人に出会うことができたと思ったらよりによって盗賊?
ふざけんな。
大体、この手のアニメを何度か見たことあるけどみんなこんなに苦労していなかったぞ。
何が親切で森に送りましただ。
最初から街に送れよ。
最初からスライム倒せるくらいの力を寄越せよ。
最初から、最初から、最初から……盗賊に遭遇させるなよ!!!
「なんだ、泣いてんのか?」
なんだか悔しくて自然と涙が出てきた。
ふつふつと怒りが湧きだしてくる。
今の自分を取り巻く森羅万象ありとあらゆる状況に腹が立っていた。
くそっ
「なんでお前らなんだよ、なんでよりにもよって最初からお前らなんだよ。ふざけんな! もっかい出直してこい!」
自分でも訳が分からないことを口走りながら盗賊たちめがけて殴り掛かった。
渾身の右ストレートは意表を突かれた男の顔面にクリーンヒットする。
男は予想外の一撃によろめきそのまま後ろ向きにどさりと音を立てて倒れた。
「おい、何やってんだ!」
「こいつ、気が狂っているぞ!」
「構わねぇ、やっちまえ!」
お約束ならそこから新が無双するはずだったがそうはならなかった。
おそらく人を殺したこともあるであろう盗賊に三日前まで普通の大学生だった人間が敵うはずがない。
しかも今彼は極めて疲労しており精神的にも身体的にもかなり参ってしまっている。
少なくとも相手との実力差や武装の違い、それらを正常に認識できていないのだ。
彼は蹴られ、殴られ、組み伏せられて倒れた。
意識が朦朧とする中誰かの声が聞こえる。
「そろそろ限界ですかね?」
「ああ、早くしないとこの男が死んでしまう」
盗賊達の声ではない。
そういえば女の子が二人いたような……俺の意識はそこで途絶えた。
※※※※※※※※※※※※※※※
第1章 黎明編は9話までで完結します。
そこまででもぜひお付き合いいただけると嬉しいです。
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