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第1章 黎明編
第2話 printf("Hello, another world!");
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「パソコン!」
新は何かに触発されるように妙な声を上げながら飛び起きた。
おかしい。
さっきまでパソコンを買いに秋葉原に行って、えっと、刺されて………………
ここはどこだ? なんで東京のど真ん中のコンクリートジャングルにいたはずなのに一面ガチモンのジャングルが広がっているんだ?
新は今までの人生で体験したことの無い不思議体験に脳内をシャッフルされながらも、自らの身に起きた出来事を順を追って思い出す。
俺は意識を失う直前、
「さよーならー!」
マジか、本当にここは異世界なのか?
いやー手が込んでいるな。
何かのガスで眠らせてどこか山奥に運んで放置したのか。
ここがどこかは分からないがとりあえず道を探そう。
国道か県道が見つかれば御の字だな。
ひとしきり思考を終えいざ行動、そうしてあたりを見渡すとすぐ近くに明らかに不自然な荷物があった。
「ナニコレ?」
誰のものか分からないけどこんな山奥に置いてあるんだ、見るくらいはいいだろう。
そう考えて人ひとりで担ぐには少しきつそうなくらいの量の荷物を物色すると手紙が出てきた。
新はビリビリと封を破くとどこにでもある茶封筒の中に封入されていた手紙を読み上げる。
―千葉新君へ―
君はまだそこが日本のどこか山奥とかだろうと思っているだろう。残念そこは異世界です! とは言っても町のど真ん中に送るのも騒ぎになるので山の中に送ってあげたよ。食糧とテントと後は何といっても武器! これがないと始まらないよね。武器は日本人だし日本刀にしておいた。まあ武道の経験なんてない君が扱えば一発で曲げるか怪我するかの二択になるので壊れない仕様にしてみた! 後は剣術初心者の君のために入門書もあげちゃう! どう? 私かなり親切じゃない? 尊敬してくれてもいいよ! じゃあ後は頑張ってね。
P.S じゃんけんに負けた後の君は最高に無様で面白かったよ。
新は手紙をくしゃくしゃと握りつぶすとペッと荷物の場所に放り投げた。
……マジか。
本当にここは異世界なのか?
いやいや、あいつの言うことを信じるなんてどうかしている。
これはあれだ、とりあえず歩こう。
もしかしたら近くに家とか道路とかあるかもしれない、話はそこからだ。
俺はとにかく歩くことにした、一応迷わないように目印をつけて。
行く当てもないまましばらく歩いた新は自らのサバイバル能力の無さに辟易としながらも朧気ながら状況を把握しつつあった。
ひょっとしてかなり深いところに置いてかれた?
少し不安になってきたので元来た道を引き返し戻ることにする。
付けた印を辿り意識を取り戻した場所まで戻ってきた時、アラタの勘、というより何か布のようなものがこすれる音が聞こえた気がして立ち止まった。
…………何かいる。
荷物のところでごそごそと何かがうごめいている。
俺宛の手紙も入っていたし多分それ俺の荷物なんだけど。
「あのー。何やっているんです?」
話しかけながらあわよくば第一村人発見と行きたかった俺は動いていたものの正体を見て心臓がキュッとなった。
人じゃない、こんな生き物見たことない。
いや、見たことはなくても俺はこの生き物を知っている。
外国でどうかは知らないが日本人ならほとんどの人が知っているであろう架空の生き物だ。
スライム。
そうだ、こいつはスライムだ。
現実に存在するスライムは生き物ではないけどゲームに出てくるあれだ、水色でバスケットボール位の大きさのあれだ。
そんなスライムが今何をしているかというと……
食事をしていた。
俺の? ものであるはずの食料をムニムニ動きながら取り込んでいる。
おいおいおい、
「おい! それは俺のだぞ!」
さっきまで疑っていたのにもう俺のモノ発言であるが、当の本人にそんな余裕はない。
「それは俺のものだ! 食べたいならせめて許可を取れよ!」
その場にいなかった上スライムに許可を取ることを求めるなんてどうかしている。
そう、今の彼はどうかしているのだ。
スライムは不思議そうにこちらを見ている。
見ている、のか?
スライムが何を考えたのかは分からない。
だがしばらくにらみ合った後スライムはどこかに行ってしまった。
俺はスライムがいなくなると荷物に駆け寄り確認する。
「…………全滅、だと」
食料が丸ごとなくなっている。
他の物には一切手を付けていない。
俺だって長時間歩いておなかかがすいていたのだ。
一気に疲れがあふれてきてその場に座り込む。
「もう疲れた。寝ようかな」
予想外の事態に次々と見舞われ精神的にかなり疲れた彼はそう呟くとテントを引っ張り出そうとした。
が、その手が止まる。
見られている、なんだ? とにかく視線を感じる。
そんな何かの達人じゃないんだからと思うかもしれない。
でも本当に何かいるのだ。
動けない。
今動いてはダメな気がする。
息が荒くなる。
心臓の鼓動は速まる。
早くどっか行け、行ってくれ! 頼む!
どれくらいの時間が経過しただろうか。
随分長く感じたが実際には数十秒くらいだったかもしれない。
気配が消えた。
俺はため息をつくとへなへなとその場に座り込んだ。
「なんだったんだ、今の」
ここはやばすぎる。それになんだあれは。スライム?
俺は目が覚めてからのすべての出来事を思い出す。
頭の中ではそれを拒絶していても思い出す事柄すべてが拒絶している考えを裏付けている。
まさかここは本当に、
「異世界なのか?」
その日俺は異世界にやってきた。
※※※※※※※※※※※※※※※
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おかしい。
さっきまでパソコンを買いに秋葉原に行って、えっと、刺されて………………
ここはどこだ? なんで東京のど真ん中のコンクリートジャングルにいたはずなのに一面ガチモンのジャングルが広がっているんだ?
新は今までの人生で体験したことの無い不思議体験に脳内をシャッフルされながらも、自らの身に起きた出来事を順を追って思い出す。
俺は意識を失う直前、
「さよーならー!」
マジか、本当にここは異世界なのか?
いやー手が込んでいるな。
何かのガスで眠らせてどこか山奥に運んで放置したのか。
ここがどこかは分からないがとりあえず道を探そう。
国道か県道が見つかれば御の字だな。
ひとしきり思考を終えいざ行動、そうしてあたりを見渡すとすぐ近くに明らかに不自然な荷物があった。
「ナニコレ?」
誰のものか分からないけどこんな山奥に置いてあるんだ、見るくらいはいいだろう。
そう考えて人ひとりで担ぐには少しきつそうなくらいの量の荷物を物色すると手紙が出てきた。
新はビリビリと封を破くとどこにでもある茶封筒の中に封入されていた手紙を読み上げる。
―千葉新君へ―
君はまだそこが日本のどこか山奥とかだろうと思っているだろう。残念そこは異世界です! とは言っても町のど真ん中に送るのも騒ぎになるので山の中に送ってあげたよ。食糧とテントと後は何といっても武器! これがないと始まらないよね。武器は日本人だし日本刀にしておいた。まあ武道の経験なんてない君が扱えば一発で曲げるか怪我するかの二択になるので壊れない仕様にしてみた! 後は剣術初心者の君のために入門書もあげちゃう! どう? 私かなり親切じゃない? 尊敬してくれてもいいよ! じゃあ後は頑張ってね。
P.S じゃんけんに負けた後の君は最高に無様で面白かったよ。
新は手紙をくしゃくしゃと握りつぶすとペッと荷物の場所に放り投げた。
……マジか。
本当にここは異世界なのか?
いやいや、あいつの言うことを信じるなんてどうかしている。
これはあれだ、とりあえず歩こう。
もしかしたら近くに家とか道路とかあるかもしれない、話はそこからだ。
俺はとにかく歩くことにした、一応迷わないように目印をつけて。
行く当てもないまましばらく歩いた新は自らのサバイバル能力の無さに辟易としながらも朧気ながら状況を把握しつつあった。
ひょっとしてかなり深いところに置いてかれた?
少し不安になってきたので元来た道を引き返し戻ることにする。
付けた印を辿り意識を取り戻した場所まで戻ってきた時、アラタの勘、というより何か布のようなものがこすれる音が聞こえた気がして立ち止まった。
…………何かいる。
荷物のところでごそごそと何かがうごめいている。
俺宛の手紙も入っていたし多分それ俺の荷物なんだけど。
「あのー。何やっているんです?」
話しかけながらあわよくば第一村人発見と行きたかった俺は動いていたものの正体を見て心臓がキュッとなった。
人じゃない、こんな生き物見たことない。
いや、見たことはなくても俺はこの生き物を知っている。
外国でどうかは知らないが日本人ならほとんどの人が知っているであろう架空の生き物だ。
スライム。
そうだ、こいつはスライムだ。
現実に存在するスライムは生き物ではないけどゲームに出てくるあれだ、水色でバスケットボール位の大きさのあれだ。
そんなスライムが今何をしているかというと……
食事をしていた。
俺の? ものであるはずの食料をムニムニ動きながら取り込んでいる。
おいおいおい、
「おい! それは俺のだぞ!」
さっきまで疑っていたのにもう俺のモノ発言であるが、当の本人にそんな余裕はない。
「それは俺のものだ! 食べたいならせめて許可を取れよ!」
その場にいなかった上スライムに許可を取ることを求めるなんてどうかしている。
そう、今の彼はどうかしているのだ。
スライムは不思議そうにこちらを見ている。
見ている、のか?
スライムが何を考えたのかは分からない。
だがしばらくにらみ合った後スライムはどこかに行ってしまった。
俺はスライムがいなくなると荷物に駆け寄り確認する。
「…………全滅、だと」
食料が丸ごとなくなっている。
他の物には一切手を付けていない。
俺だって長時間歩いておなかかがすいていたのだ。
一気に疲れがあふれてきてその場に座り込む。
「もう疲れた。寝ようかな」
予想外の事態に次々と見舞われ精神的にかなり疲れた彼はそう呟くとテントを引っ張り出そうとした。
が、その手が止まる。
見られている、なんだ? とにかく視線を感じる。
そんな何かの達人じゃないんだからと思うかもしれない。
でも本当に何かいるのだ。
動けない。
今動いてはダメな気がする。
息が荒くなる。
心臓の鼓動は速まる。
早くどっか行け、行ってくれ! 頼む!
どれくらいの時間が経過しただろうか。
随分長く感じたが実際には数十秒くらいだったかもしれない。
気配が消えた。
俺はため息をつくとへなへなとその場に座り込んだ。
「なんだったんだ、今の」
ここはやばすぎる。それになんだあれは。スライム?
俺は目が覚めてからのすべての出来事を思い出す。
頭の中ではそれを拒絶していても思い出す事柄すべてが拒絶している考えを裏付けている。
まさかここは本当に、
「異世界なのか?」
その日俺は異世界にやってきた。
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