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第1章
森林の主
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暗い遺跡の中は、入るほどに不気味な静寂に包まれていた。 壁には朽ちかけたレリーフが彫られ、何かの言葉が記されているようだが、苔に覆われてほとんど判読できない。
(……この静けさ、外の森と似ている。でも、もっと濃い。まるで、嵐の前のようだ)
僕は重い背負い袋を担ぎながら、アルドたちの後を追う。 彼らは僕の警告には耳を傾けず、ただ「何か価値のあるもの」を求めて遺跡の奥へと急いでいた。ミリアは探知魔法を使いながら進んでいるが、その顔には次第に苛立ちが浮かんでいる。
「チッ、何もなさすぎね。こんな古い遺跡、魔力残滓なんてどこにでもあるでしょうに」 「焦るなよミリア。奥に行けば何かあるさ。僕の直感がそう言ってる」
アルドはそう言うが、彼の表情にも焦りの色がにじみ始めていた。 そして、彼らが辿り着いたのは、苔むした冷たい石壁が行き止まりを作っている、遺跡の最奥だった。
「……何もない。時間の無駄だ。戻るぞ」
ガラムが巨大な盾を地面に突き立て、苛立たしげに吐き捨てる。 その言葉に、ミリアは舌打ちを漏らし、アルドは悔しそうに石壁を蹴った。
「くそっ、ただのハズレ遺跡かよ! ここまで期待させておいて、マジで何もなしか!」 「時間の無駄だったわね。カイル何か感じないの?」
魔物使いである僕は、近くにいる魔物のサーチができる。といってもレベル0の僕は、ほとんど反応を検知できたことはないのだけれど。
ミリアに急かされて、サーチを行う。
「待って。嫌な予感がする。出口は、危ないかもしれない」
僕は、来た道から徐々に強まる「圧」を感じていた。まるで、巨大な獣がゆっくりと近づいてくるような、肌を粟立たせるような殺気だ。 しかし、彼らは僕の警告に耳を傾けるどころか、嘲笑した。
「黙れよ、レベル0。臆病風に吹かれたのか?」 アルドがせせら笑う。
「僕の直感が何も感じてないんだ。お前の妄想に付き合う暇はない。もう帰るぞ。ほら、さっさと荷物を持って歩け」
「非効率ね。あなたのせいで無駄な時間を食ったんだから、さっさと動いてちょうだい」 ミリアが冷たく言葉を被せる。
ガラムは無言のまま、先頭を切って出口へと向かっていく。 僕の予感は、確信に変わった。彼らは、間違いなく死地へ向かっている。
だが、僕はどうすることもできない。 彼らが角を曲がり、細い通路の先へと消えていく。
次の瞬間、遺跡の通路全体が、腹の底に響くような咆哮に震えた。 「――ッ!? な、なんだこいつは……!!」 アルドの悲鳴が響く。
通路を塞ぐように立っていたのは、森の最深部に君臨する主――『ビーストグリズリー』だった。 本来、こんな森の入り口にいるはずのない凶悪なバケモノ。 その圧倒的な質量と殺気を前に、エリートであるはずの三人でさえ、一瞬で金縛りにあったように硬直した。
「これを防ぐのは無理だ」
大楯使いのガラムがいち早く思考を終え、無表情に僕の襟首を掴んだ。 「おい、レベル0。お前の出番だ」
「え……? ガラム、何を――」
「お前が囮になれ。その間に俺たちは逃げる」
ガラムは僕を守るための楯を構えるどころか、僕をグリズリーの牙の前に全力で放り投げた。 「恨まないでよね。カイル、これが『効率的』な判断なのよ!」 ミリアの冷徹な声が響く。
「死ぬなよ! お前が足止めしてる間に、僕らは応援を呼んできてやるからさ!」 アルドの無責任な叫び声が遠ざかっていった。
逃げる彼らが放った牽制の魔法が天井を揺らし、僕の背後で出口が瓦礫によって塞がれた。 僕は一人、森の主の前に投げ出された。
視界を埋め尽くすのは、振り上げられた巨大な爪と、死を告げる咆哮。 (……ああ。結局、僕はこうなる運命だったのかな)
僕は震える手で、背負い袋の脇に差していた、使い古された「あの木剣」を抜いた。 勝てるわけがない。それでも、何もせずに食われるほど、僕が過ごしてきた3年間は安っぽくない。
「かかってこい。レベル0の意地、見せてやる」
絶望の中、僕は初めて自分のために剣を構えた。
(……この静けさ、外の森と似ている。でも、もっと濃い。まるで、嵐の前のようだ)
僕は重い背負い袋を担ぎながら、アルドたちの後を追う。 彼らは僕の警告には耳を傾けず、ただ「何か価値のあるもの」を求めて遺跡の奥へと急いでいた。ミリアは探知魔法を使いながら進んでいるが、その顔には次第に苛立ちが浮かんでいる。
「チッ、何もなさすぎね。こんな古い遺跡、魔力残滓なんてどこにでもあるでしょうに」 「焦るなよミリア。奥に行けば何かあるさ。僕の直感がそう言ってる」
アルドはそう言うが、彼の表情にも焦りの色がにじみ始めていた。 そして、彼らが辿り着いたのは、苔むした冷たい石壁が行き止まりを作っている、遺跡の最奥だった。
「……何もない。時間の無駄だ。戻るぞ」
ガラムが巨大な盾を地面に突き立て、苛立たしげに吐き捨てる。 その言葉に、ミリアは舌打ちを漏らし、アルドは悔しそうに石壁を蹴った。
「くそっ、ただのハズレ遺跡かよ! ここまで期待させておいて、マジで何もなしか!」 「時間の無駄だったわね。カイル何か感じないの?」
魔物使いである僕は、近くにいる魔物のサーチができる。といってもレベル0の僕は、ほとんど反応を検知できたことはないのだけれど。
ミリアに急かされて、サーチを行う。
「待って。嫌な予感がする。出口は、危ないかもしれない」
僕は、来た道から徐々に強まる「圧」を感じていた。まるで、巨大な獣がゆっくりと近づいてくるような、肌を粟立たせるような殺気だ。 しかし、彼らは僕の警告に耳を傾けるどころか、嘲笑した。
「黙れよ、レベル0。臆病風に吹かれたのか?」 アルドがせせら笑う。
「僕の直感が何も感じてないんだ。お前の妄想に付き合う暇はない。もう帰るぞ。ほら、さっさと荷物を持って歩け」
「非効率ね。あなたのせいで無駄な時間を食ったんだから、さっさと動いてちょうだい」 ミリアが冷たく言葉を被せる。
ガラムは無言のまま、先頭を切って出口へと向かっていく。 僕の予感は、確信に変わった。彼らは、間違いなく死地へ向かっている。
だが、僕はどうすることもできない。 彼らが角を曲がり、細い通路の先へと消えていく。
次の瞬間、遺跡の通路全体が、腹の底に響くような咆哮に震えた。 「――ッ!? な、なんだこいつは……!!」 アルドの悲鳴が響く。
通路を塞ぐように立っていたのは、森の最深部に君臨する主――『ビーストグリズリー』だった。 本来、こんな森の入り口にいるはずのない凶悪なバケモノ。 その圧倒的な質量と殺気を前に、エリートであるはずの三人でさえ、一瞬で金縛りにあったように硬直した。
「これを防ぐのは無理だ」
大楯使いのガラムがいち早く思考を終え、無表情に僕の襟首を掴んだ。 「おい、レベル0。お前の出番だ」
「え……? ガラム、何を――」
「お前が囮になれ。その間に俺たちは逃げる」
ガラムは僕を守るための楯を構えるどころか、僕をグリズリーの牙の前に全力で放り投げた。 「恨まないでよね。カイル、これが『効率的』な判断なのよ!」 ミリアの冷徹な声が響く。
「死ぬなよ! お前が足止めしてる間に、僕らは応援を呼んできてやるからさ!」 アルドの無責任な叫び声が遠ざかっていった。
逃げる彼らが放った牽制の魔法が天井を揺らし、僕の背後で出口が瓦礫によって塞がれた。 僕は一人、森の主の前に投げ出された。
視界を埋め尽くすのは、振り上げられた巨大な爪と、死を告げる咆哮。 (……ああ。結局、僕はこうなる運命だったのかな)
僕は震える手で、背負い袋の脇に差していた、使い古された「あの木剣」を抜いた。 勝てるわけがない。それでも、何もせずに食われるほど、僕が過ごしてきた3年間は安っぽくない。
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絶望の中、僕は初めて自分のために剣を構えた。
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