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103.お義母様の子に生まれたかった
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リリアナの就学に必要な物が届き始めた。制服、靴や鞄、筆記用具に教科書。学院から渡されたリストと照合していく。通学手段については、専用の馬車を用意した。御者や護衛も宮殿で手配したので、手抜かりはない。
「大丈夫みたいね」
「良かった」
「足りなければ、都度買い足せばいいわ」
勉強は家庭教師が付いていたので、特に問題ないだろう。制服を試着したリリアナは、ぷくっと頬を膨らませた。
「少し大きいわ」
「それでいいのよ」
ふふっと笑う。私が王国の学園へ入学した時とまったく同じセリフだった。だから、あの時お母様が口にした言葉をそっくり返す。
「すぐに成長してぴったりになるの。背が伸びてすらりとした美人になりますように、って願掛けなのよ」
モンテシーノス王国では、ぴったりサイズに仕立てる。貴族なので成長してサイズが合わなくなれば、作り直すらしい。だがカルレオン帝国は逆の考えだった。大きめの制服を作り、その服が似合うまで成長するよう願掛けを行う。1年に一度制服を作り直し、また大きめに作るのが慣わしだった。
あの頃は知らなくて、一人だけブカブカなのが恥ずかしかった。でもお母様の話を聞いて、用意してくれたお祖父様やお祖母様の気持ちが嬉しくなる。やや緩い制服を着て通ったわ。でも思ったより成長して、半年で作り直しになったのよ。
笑いながら過去の経験を話した。リリアナは目を輝かせて聞き入る。
「お祖母様って、物知りなのね」
「刺繍もお上手よ。ぜひ教えていただけばいいわ」
お母様はリリアナを気に入っている。大切な家族として迎え入れ、孫と過ごす時間を楽しんでいた。だから、お母様の得意な編み物や刺繍を教わったら、きっと素晴らしい時間になるはず。
今になれば、お母様にもっとお裁縫を習っておけば良かったわ。リリアナにお人形を作る時、結構苦労したもの。
エルが仰け反って泣き出した。抱き起こしてぽんぽんと背中を叩く。徐々に落ち着いたエルを、私の背中側からリリアナがあやし始めた。きゃっきゃとはしゃぐエルの声が響き始め、機嫌が良くなったところで寝かしつける。まだまだ眠る時間の方が長いエルは、素直に目を閉じた。
「ありがとう、リリアナ。立派なお姉様がいて、エルも幸せだわ」
「ううん、私……お義母様の子に生まれたかったな」
ぽつりと溢れた本音を、慌てて口を押さえることで隠そうとする。幼いリリアナの仕草に、私は彼女を抱き締めた。
「いいえ。あなたを産んだお母様は素敵な方だったと聞くわ。だから私は、素敵な方の愛らしい娘を、お姫様に育てる役割なの。欲張っていいのよ、あなたは二人も母親がいる」
産みの母が生きていたら、今も公爵家で暮らしていただろう。大切な実母を忘れることも、諦めることもしないで欲しい。両方得たと誇って頂戴。私の強引な話に、リリアナは何度も頷いた。
この子はずっと不安だった。幼くて記憶は曖昧でも、嫌われ罵られた感情は浴びる。暴言の意味を知らなくとも、響きの恐ろしさは感じ取った。でももう不安はいらない。なんでも相談して、一緒に乗り越えましょう。
だって、私達は家族なんだもの。リリアナは抱きついたまま、いつの間にか眠っていた。
「大丈夫みたいね」
「良かった」
「足りなければ、都度買い足せばいいわ」
勉強は家庭教師が付いていたので、特に問題ないだろう。制服を試着したリリアナは、ぷくっと頬を膨らませた。
「少し大きいわ」
「それでいいのよ」
ふふっと笑う。私が王国の学園へ入学した時とまったく同じセリフだった。だから、あの時お母様が口にした言葉をそっくり返す。
「すぐに成長してぴったりになるの。背が伸びてすらりとした美人になりますように、って願掛けなのよ」
モンテシーノス王国では、ぴったりサイズに仕立てる。貴族なので成長してサイズが合わなくなれば、作り直すらしい。だがカルレオン帝国は逆の考えだった。大きめの制服を作り、その服が似合うまで成長するよう願掛けを行う。1年に一度制服を作り直し、また大きめに作るのが慣わしだった。
あの頃は知らなくて、一人だけブカブカなのが恥ずかしかった。でもお母様の話を聞いて、用意してくれたお祖父様やお祖母様の気持ちが嬉しくなる。やや緩い制服を着て通ったわ。でも思ったより成長して、半年で作り直しになったのよ。
笑いながら過去の経験を話した。リリアナは目を輝かせて聞き入る。
「お祖母様って、物知りなのね」
「刺繍もお上手よ。ぜひ教えていただけばいいわ」
お母様はリリアナを気に入っている。大切な家族として迎え入れ、孫と過ごす時間を楽しんでいた。だから、お母様の得意な編み物や刺繍を教わったら、きっと素晴らしい時間になるはず。
今になれば、お母様にもっとお裁縫を習っておけば良かったわ。リリアナにお人形を作る時、結構苦労したもの。
エルが仰け反って泣き出した。抱き起こしてぽんぽんと背中を叩く。徐々に落ち着いたエルを、私の背中側からリリアナがあやし始めた。きゃっきゃとはしゃぐエルの声が響き始め、機嫌が良くなったところで寝かしつける。まだまだ眠る時間の方が長いエルは、素直に目を閉じた。
「ありがとう、リリアナ。立派なお姉様がいて、エルも幸せだわ」
「ううん、私……お義母様の子に生まれたかったな」
ぽつりと溢れた本音を、慌てて口を押さえることで隠そうとする。幼いリリアナの仕草に、私は彼女を抱き締めた。
「いいえ。あなたを産んだお母様は素敵な方だったと聞くわ。だから私は、素敵な方の愛らしい娘を、お姫様に育てる役割なの。欲張っていいのよ、あなたは二人も母親がいる」
産みの母が生きていたら、今も公爵家で暮らしていただろう。大切な実母を忘れることも、諦めることもしないで欲しい。両方得たと誇って頂戴。私の強引な話に、リリアナは何度も頷いた。
この子はずっと不安だった。幼くて記憶は曖昧でも、嫌われ罵られた感情は浴びる。暴言の意味を知らなくとも、響きの恐ろしさは感じ取った。でももう不安はいらない。なんでも相談して、一緒に乗り越えましょう。
だって、私達は家族なんだもの。リリアナは抱きついたまま、いつの間にか眠っていた。
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