【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第四章 王宮炎上

第13話 アスターレン王宮炎上(6)

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 バンッ!

 全力で虹色の球体を叩くルリアージェが、拳の痛みに顔を顰めた。すると、ジルはようやく人間じみた表情を浮かべる。まるで己の手が痛んだかのように眉を寄せて、ルリアージェを捕らえる玉へ手を滑らせた。

「やめろ、お前の手が傷つく」

 ようやく自分に興味が向いたと気付いたルリアージェが騒ぐ。中で必死に叫び続けた。その言葉に耳を傾けていたジルは、鼻に皺を寄せて不愉快そうな顔をする。

「許せ、と? お前を傷つけた輩を生かす必要はない」

 言い切ったジルへ、再びルリアージェが言葉を向け……祈るように両手を組んだ。蒼い瞳が僅かに潤むのを見て、さすがに彼も考え直す気になったらしい。

「わかった、とりあえず出してやる」

 言うことを聞くと約束するわけじゃなく、ジルは言葉に逃げ道を用意して左手を球体に這わせた。

 音もなく消滅した虹色のボールから解放されたルリアージェは、咄嗟に目の前の手を掴む。ジルは左手でルリアージェの手を握ると、引き寄せて右手で腰を抱いた。

「いいか? 離すと落ちるぞ」

 脅す必要はない。離したら落ちると彼女も理解できていた。足元には何もないのだから……。



 手を繋いだまま、ルリアージェは目の前の惨劇を見回した。

 美しい王宮は焼け落ち、すでに半壊している。逃げ延びた王族は噴水の前で怯え、王太子が庇うライオットは無残に右手を斬られた。魔術師達の必死の働きで痛みと出血は抑えたようだが、元に戻すのは困難だった。

「頼む、もうやめてくれ」

 懇願するルリアージェに視線を向けるが、黒髪の魔性は浮かべた笑みをそのままに首を横に振った。

 逆に不思議そうに問い返す。

「なぜだ?」

「なぜ、とは……?」

 ルリアージェは言葉に詰まる。破壊された街は、きっと多くの人が傷つき喪われただろう。王宮を燃やされた国の行く末も心配だし、自分を助けてくれた医者や心配してくれたライオットの命も助けたかった。

 だが……その心境をまったく理解していない顔で魔性は尋ねるのだ。

 人の痛みなど知らない、気遣う必要もなく、思うままに力を揮う――それこそが魔性として当然だった。

 踏んだ足元で潰れた蟻を嘆く人間がいるか?
 邪魔な羽虫を叩く人間がその命を惜しむか?

 素直すぎる疑問に、ルリアージェは唇を震わせた。

 何と言葉をかければいいのか、わからない。どう説明したら彼は理解するだろうか。

「私が嫌だから……私を助けてくれた人が傷つくのは見たくない」

 正解ではないだろう。彼はこんな言葉で止まってくれない。そう思うのに、懇願することしか出来なかった。

 望みを口にして待つ。

「ルリアージェ、望むのか?」
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